著者
大澤 史伸
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.382-391, 2013-03

厚生労働省では,「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下,障害者雇用促進法と記述する。)に基づき,1人以上の身体障害者又は知的障害者を雇用することを義務づけている事業主等から,毎年6月1日現在における身体障害者,知的障害者及び精神障害者の雇用状況について報告を求めている。2012年11月14日現在における同報告では雇用障害者数は,38万2,363人と過去最高を更新した。このことを受けて,小宮山洋子厚生労働大臣は,2012年5月23日,現行の法定雇用率1.8%から2.0%に引き上げる案を労働政策審議会の分科会に諮問した。分科会は同日,妥当と答申し,6月中にも政令改正を閣議決定し,2013年度から新しい雇用率が適用される見通しになった。しかし,民間企業(56人以上規模の企業)をみると,法定雇用率1.8%に対して実雇用率が1.69%であり,法定雇用率未達成企業は,53.2%と依然,民間企業における障害者雇用は進んでいるとはいえない状況である。
著者
高倉 直
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.953-957, 2008 (Released:2011-12-19)

耕地からの蒸発散量を環境要因から算定するとき、そのすべてが耕地のエネルギー収支式から始まっていることは明らかである。すでにいくつかの手法が報告され、その改良法等も報告されている。歴史的に見れば、Penman-Monteithの式があまりにも有名である。50年以上も前にPenmanが植被のない状態での式を提案し、その後、Monteithが植被を含む場合にも適用できるように改良し、多くの論文や書籍等に紹介され、多くの研究に用いられてきた。このように、エネルギー収支式の残余項として求められることは明らかなことで、誰でも気が付くことであるが、最近放射温度測定が手軽になったにもかかわらず、この手法は意外に研究されていない。温室内や限られた面積の耕地の場合には、広大な面積に用いられる手法は適切とは言い難く、これまで水蒸気フラックスを測るPenman-Monteith法やボーエン比法が多く用いられているのが現状である。もう1点、重要なことは、蒸発散の算定は単に、耕地の微気象解析そのものが目的であるばかりでなく、それに基づく植物群落への灌水制御という側面があることである。そのためには、高価な測器を使うことなく、また限られた面積の植物群落にも適応出来る手法が望ましい。
著者
横手 新治郎
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.90, no.7, pp.734-739, 2015-07

・私の町には,大江高山(808m)が雄大にそびえています。大代のシンボルであり,誇りとする山,豊富な水をもたらしてくれる大切な山です。・写真1の中央部に柿田地区の集会所があり,下の黄色の帯状は荒廃農地で,菜種を栽培し,満開の時期ですが,今はこの風景の再現ができません。その理由は後ほどお伝えします。山好きの方からは,自然がよく守られておる自然豊かなこと,山野草も多く,4月の始めには,ギフチョウの乱舞がみられる山です。・ギフチョウが生息するには,カンアオイという食草がたくさんあることです。大代小学校での飼育観察は,延べ5回実施しましたが,統合により廃校になり,今後は統合された高山小学校で実施していただく予定です。・写真3は,ギフチョウの卵で,写真4は幼虫です。写真5は雌のギフチョウです。
著者
三浦 周行
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 = Agriculture and horticulture (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, 2015-08

精油目的のハーブなどの栽培では,得られる量が僅かであり,収穫の時期の他に,時刻が問題となる。Filhoら(2006)はブラジル北東部の温室で栽培したバジル'Fino Verde'の地上部を3月の満開日の異なる時刻に収穫し,そのままあるいは40~60℃で葉を乾燥後,精油を水蒸気蒸留した。8,12および16時区それぞれのha当たり平均精油収量は9.7,7.9および7.4L,GC/MS分析した主成分リナロール量の全成分量に占める割合は60.0,56.1および55.1%であった。4月に再生した地上部を8時に収穫後,40℃で0~16日間葉を乾燥した結果,リナロール割合は5日区で86.8%と最高であった。午前中に収穫し,5日間40℃乾燥後の抽出が良いとされた。Ramezaniら(2009)はリナロールを主成分とする精油を生成するコリアンダーを4月にイラン西南部の圃場に播種し,7月の果実が緑色となった日の4時刻に地上部を収穫後,乾燥した。乾物重100g当たりの精油収量は6,12,18および24時区それぞれ0.432,0.436,0.404および0.319mLであり,12時の収穫が勝った。
著者
堀 兼明
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.60-69, 2010-01

中山間地の小規模野菜産地では、平坦地にくらべて法面や畦道等の比率が高いために、こうした場所に発生する雑草の処理が問題となっている。とくに除草剤を使いづらい有機栽培や減農薬栽培では、雑草処理の問題は一段と深刻である。露地圃場において雑草を土壌にすき込んだ場合、雑草種子等の発芽を抑制するため、夏季にビニルマルチを用いた太陽熱利用土壌消毒(以下太陽熱処理)が行われている。太陽熱処理は、ビニルハウス内では十分な地温上昇が見込まれるために、土壌生息性の病害虫や雑草に対して安定した効果を発揮するが、露地では地温が気象条件に大きく左右されるので、安定した効果が得られる条件を明らかにすることが求められている。そこで、未利用植物質有機物資源である雑草を有効利用するために、夏季の露地畑に刈り取った雑草を積極的にすき込み、ビマニルマルチを用いた太陽熱処理により雑草の種子の発芽を抑制すると同時に、粘質土壌の物理性改善をめざす技術の開発をめざした。
著者
大山 卓爾 横山 正 安藤 象太郎
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 = Agriculture and horticulture (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.203-212, 2009-01 (Released:2011-03-05)
著者
中野 明正 安 東赫
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.997-1004, 2016 (Released:2017-04-06)
著者
村上 圭一 後藤 逸男
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1290-1294, 2007 (Released:2011-01-20)

農業生産者が土壌の性質に合わせた土壌改良や施肥を行うための手段として、土壌診断が奨励されている。しかし、生産現場では必ずしも土壌診断が土づくりに貢献しているとは言い難い。筆者らは全国各地の野菜生産地において土壌診断調査を行い、かつては生産性が低かった日本の土が現在どのように変化しているか、あるいは農業生産者が土づくりに対してどのような意識を持ち、どのような土づくりを実践しているかなどについて調べてきた。ここでは、土壌のリン酸過剰がアブラナ科野菜根こぶ病の発病を助長するメカニズムを紹介する。
著者
平 智 山本 貴子 丹野 ゆか
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.711-717, 2016-07

一般に果実の食味を左右する主な要因は,糖度(糖または可溶性固形物含量)と酸度(有機酸または滴定酸含量)ならびにそれら両者のバランスであるといわれる。そのバランスの指標としてしばしば糖酸比(糖度/酸含量)が用いられる。人間の味覚は,糖が持つ甘味に対しては寛大で,糖含量が高いほど嗜好度は高まるが,酸味に対しては厳しく,ある濃度を限界にしてそれ以上になると嗜好性が急激に低下するといわれている。ただし,どの程度の糖酸比がよいかは果実の種類や品種によって異なる。一方,1個の果実でもその品質は一様ではなく,果肉の部位によってかなり異なることが知られている。例えば,ニホンナシ'二十世紀'の可溶性固形物含量は,果梗部付近の果肉より果頂部付近の方が,また,果心部より果皮に近い部位で高く,赤道部付近の果皮と果心との中間部位の果肉で果実全体の平均値に最も近いといわれる。モモ'白鳳'では,中心部付近より周縁部付近の,果梗部より果頂部側の果肉の可溶性固形物含量が高い傾向が認められる。さらに赤道部の果肉についてみると,縫合線付近で低く,縫合線から離れるにしたがってしだいに高くなるが,縫合線の反対側では再び低くなるという。リンゴ5品種('つがる','スターキング・デリシャス','ジョナゴールド','陸奥'および'ふじ')の可溶性固形物含量は,果心側から果皮側に向けて,'ジョナゴールド'以外の品種ではこうあ部から果頂部に向けて高まること,また,滴定酸含量は果頂部およびこうあ部で高く,赤道部に向けて低下し,最も低くなる部位は果皮側から果心側に向かうにつれて果頂部側からこうあ部側へ移行するという報告もある。しかし,その他の種類の果実や品種についてはあまり明らかではない。本報告は,数種類の果実を対象にして,果肉の部位の違いが品質に及ぼす影響について調査した結果を取りまとめたものである。
著者
村松 昇
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.12-17, 2015 (Released:2015-05-14)
著者
東尾 久雄
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.779-783, 2007 (Released:2011-01-20)
著者
桂 圭佑 Bonifacio A. 藤倉 雄司 安井 康夫 藤田 泰成
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.951-958, 2018 (Released:2019-04-18)

キヌア(Chenopodium quinoa Willd.)はその高い栄養学的価値と幅広い環境適応性から,近年注目を集めている。また,2016年にキヌアのゲノム概要配列が解読されたことから,今後有用遺伝子の単離などの研究も急速に進むことが期待されている。そのような中,世界最大のキヌア生産地の一つであるボリビア多民族国(以下ボリビア)のアルティプラノでキヌア栽培の視察を行った。現地では主に高地型(Altiplanoタイプ)キヌアと塩地型(Salarタイプ)キヌアが栽培されている。高地型キヌアは比較的降水量の多い地域(年間約400mm)でバレイショやムギ類と輪作して栽培されている一方で,塩地型キヌアはウユニ塩湖畔の降水量が少ない地域(年間約200mm)において単作で栽培されている。近年のキヌアブームにより栽培面積の拡大や休閑期間の短縮が進み,現地では土壌劣化の進行が指摘されており,キヌア栽培の持続性の低下が懸念されている。そのため,育種による耐病性の付与や早生化,生物農薬や生物資材の開発,現地に自生する植物を利用した風食対策や土壌肥沃度の維持・向上,耕畜連携による持続可能性の向上などの数多くの取り組みがなされている。また,キヌアの遺伝資源の管理やその効率的な利用体制の構築は喫緊の課題である。
著者
桂 圭佑 Bonifacio Alejandro 藤倉 雄司 安井 康夫 藤田 泰成
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.951-958, 2018-11

キヌア(Chenopodium quinoa Willd.)はその高い栄養学的価値と幅広い環境適応性から,近年注目を集めている。また,2016年にキヌアのゲノム概要配列が解読されたことから,今後有用遺伝子の単離などの研究も急速に進むことが期待されている。そのような中,世界最大のキヌア生産地の一つであるボリビア多民族国(以下ボリビア)のアルティプラノでキヌア栽培の視察を行った。現地では主に高地型(Altiplanoタイプ)キヌアと塩地型(Salarタイプ)キヌアが栽培されている。高地型キヌアは比較的降水量の多い地域(年間約400mm)でバレイショやムギ類と輪作して栽培されている一方で,塩地型キヌアはウユニ塩湖畔の降水量が少ない地域(年間約200mm)において単作で栽培されている。近年のキヌアブームにより栽培面積の拡大や休閑期間の短縮が進み,現地では土壌劣化の進行が指摘されており,キヌア栽培の持続性の低下が懸念されている。そのため,育種による耐病性の付与や早生化,生物農薬や生物資材の開発,現地に自生する植物を利用した風食対策や土壌肥沃度の維持・向上,耕畜連携による持続可能性の向上などの数多くの取り組みがなされている。また,キヌアの遺伝資源の管理やその効率的な利用体制の構築は喫緊の課題である。
著者
楠谷 彰人 松江 勇次 崔 晶
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.853-861, 2018 (Released:2018-12-10)
著者
堀 兼明
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.60-69, 2010 (Released:2011-03-28)
著者
八木 忠之
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.29-35, 2009-01

九州の友人からもらった昨年の年賀状に、水稲の作柄が悪かったことが書かれていた。聞いてみると、数年前から出穂後の台風、高温少照により収量・品質が低下しており、さらにこの現象は地球温暖化による影響で、主力品種のヒノヒカリが高温に弱いと評価されている…ということであった。筆者にとっては思ってもみないことであり、何かの間違いではないかとの気持ちもあった。しかしその後、全国紙にもほぼ同じ内容の記事が掲載され、いよいよヒノヒカリが高温に弱いとされていることが確かなことと思われた。筆者は、ヒノヒカリが高温に弱いという状況すなわち立毛、品質、収量に現れた影響に出会ったことがなかった。育成期間はもちろん、普及開始から数年後に、猛暑続きの夏を経過した年も、ヒノヒカリの収量品質は従来の九州向け多収良質品種と同等、ないしは上回る成績を示していたことから、逆に高温にも強いという印象を持っていた。また、家畜の糞尿を大量投入し、倒伏といもち病が激甚で、どす黒い玄米がわずかしか収穫できなかったという厳しい場合であっても、従来の食味水準をはるかに超えていることも確認していたし、ヒノヒカリの安定多収能力にはひそかに自信を持っていた。いくつかの農家圃場で証明されてもいた。しかし、多収能力についてはヒノヒカリに多収品種というイメージを与えるとむしろ不利であるとして口を閉ざしてきた。なぜなら、ヒノヒカリで多収が得られるとなると、生産者はさらに多収をねらい高品質米生産が2次的になる恐れがあり、また、流通業者は買い叩く要因にすることはもとより、極良食味という特性に虚偽の疑いを抱くことにつながりかねないからであった。さらに栽培面積を拡大し、西日本の基幹品種として稲作の安定を図るためには多収のイメージを避ける必要があった、しかし一方で、多収能力がなければ現在ほど栽培が広がることはなかったと確信している。本稿は、九州稲生産の不作・品質不良の要因に対して、一因とされているヒノヒカリの育成者側からの分析と対策への提言を行うものである。
著者
高橋 郁郎
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, 1955-01