著者
熊谷 成子 佐川 了 星野 次汪
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1068-1072, 2009-11
被引用文献数
1

雑穀の定義にもよるが、雑穀は世界中で20種類ほどが栽培されている。雑穀の栽培の歴史は古く、世界中の人々にとって、食料、油料、アルコール用、行事食用などとして雑穀は生活の中で重要な役割を果たしてきた。戦前までの日本では、雑穀が畑作や輪作体系の中で重要な位置を占め、地域によっては主食として、あるいは地域固有の食文化資源作物として利用され、現在でも伝統祭事などと強く結びついている。しかし、戦後の日本では、雑穀はコメやムギと異なり主要食料ではないため、研究対象となることは希で、最近まで雑穀に陽が当たることは少なかった。そのため、現在栽培される多くの雑穀は在来系統で、長稈種が多く、脱粒しやすく、多肥栽培や機械化には不向きで、収量が低い。しかし、雑穀は、世界規模での主穀の大量生産、大量消費とは対極にあることから、地域に根ざした高付加価値作物ともいえる。最近では食の多様化や雑穀のもつ有用成分に注目が集まり、雑穀ブームを迎えている。現在の雑穀に対する国民の信頼に応え、健康食への追い風を定着させるためにも、研究から生産、流通、加工、販売、調理までの一連の態勢確立が早急に求められる。そこで、本稿では雑穀などの用語に注目し、その生産の現状を考察し、問題点を整理してみたい。
著者
徳田 誠
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.635-646, 2013 (Released:2014-02-07)
著者
山下 泉
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.560-563, 2008-05

IPM防除体型による施設栽培での新害虫コナカイガラムシの発生とその対策。高知県の促成栽培ナスや促成栽培ピーマンでは、主要害虫のミナミキイロアザミウマやアブラムシ類などに対して、タイリクヒメハナカメムシ、コレマンアブラバチなどの天敵類や防虫ネット、黄色蛍光灯などを利用した総合的な害虫防除対策が普及しつつある。このような防除体系を導入している栽培圃場において、これまでの化学合成殺虫剤を中心とした防除体系による栽培圃場では発生の見られなかったコナカイガラムシ類が1990年代後半から発生するようになり、排泄物に発生するすす病による果実や植物体の汚れ、落葉や吸汁による生育抑制などの被害が顕在化し問題となってきた。そこで、発生種および防除対策などについて検討を行った。本稿では、天敵類を利用した総合的害虫防除体系による栽培を行っている圃場で発生しているコナカイガラムシ類の発生種、促成栽培ピーマンでの発生状況と防除対策などについて述べる。
著者
加藤 修
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1189-1197, 2008-11

短果枝を主体とした栽培の是非。側枝更新の功罪。今日、千葉県では、'幸水'は最も心血が注がれて栽培が行われている品種と切言できる。生産農家はすべてこの品種を中心に生産体制を整え、すべて最優先で管理を遂行している。せん定では花芽を樹冠内にまんべんなく配置するために側枝更新を頻繁に行ない、同時に翌年度に備えて新たな予備枝の設置に余念がない。大果生産が強く求められているので、開花前には花芽摘除(休眠期に開花数の制限を目的として花芽を基部を残して手でかいて除去する方法、一方で、短果枝群の短果枝などに対してせん定鋏を用いて基部ごと除去するのを花芽整理と呼び、両者を区別した)や摘らいが行われている。開花後は摘果を真っ先に行って果実肥大を促すとともに樹勢の低下を防ぐ管理がなされている。同時に、予備枝育成にも力を入れる。さらに、黒星病などの病害虫の発生に常に気を使う。裏を返せば、'幸水'はこうした生産農家の努力により生産が支えられている。見方を変えれば、果実が小さく収量が低いわりには栽培管理に最も注意が払われ、かつ多くの人員と労働力が投下されていると言える。
著者
岩間 和人
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.743-753, 2008-07

バレイショの乾燥抵抗性品種「根優」誕生秘話。1975年春、大学卒業後、ヒッピーとしてネパールを訪れた。首都カトマンズでの偶然の出会いから、西部カリガンダキ地域に駐在している農業改良普及員を訪ねて1カ月間を過ごした。地域の入り口であるダナでは折しも田植えの真っ最中であった。縦も横もバラバラで、日本の整然とした植え方とは異なったが、その理由は自分で田んぼに入って田植えをしたらすぐに納得がいった。土の中にはこぶし大の石がゴロゴロしていて、その隙間に苗を差し込んでいくのであった。バレイショは収穫期で、こぶしよりも大きなイモが収穫されていた。一泊2食付きで1ルピー(約23円)の宿の夕食にはイモの入ったカレー汁がご飯とともに供された。ご飯はパサパサのインディカ米で、筆者は当時若くおなかがすいていたので何でもおいしかったが、しばらくすると日本のお米がなつかしくなった。しかし、バレイショは日本のものと同じ味わいで、鶏の卵とともに、世界中で変わらぬ味であると感じた最初の体験であった。ダナ近くのタトパニに1週間ほど滞在する間に日本の氷河調査隊の人と一緒になり、その人たちについて谷の上部を旅した。タトパニは標高800mほどの亜熱帯であったが、3日歩いて到着したツクチェ村は標高3,000m近くの亜寒帯であった。大麦が収穫された直後で、村のあちこちで棒の先に板をつけた農具を用いた脱穀作業が行われていた。バレイショは培土直後で草丈20cmほどであった。タトパニからツクチェまでの道々にバレイショが栽培されていたが、その草丈の変化に興味をそそられた。谷にそって標高が増すに従いバレイショの草丈が小さくなっていった。植え付け時期の差異もあったが、どうもそれだけではないように思えた。地上部は目で見てわかるが、地下部がどうなっているのかと興味を引かれた。今から思うと、バレイショの根系を一生の研究テーマとして選んだきっかけがこのカリガンダキでのバレイショとの出会いにあった。
著者
久保寺 秀夫
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1091-1096, 2008-10

マージ土壌は南西諸島に分布する土壌で、堆積岩や礫層を母材とする酸性の赤色土や黄色土の国頭マージと、石灰岩上で生成する弱酸性〜アルカリ性の暗赤色土の島尻マージからなる。マージ土壌は沖縄本島では全農耕地の72%を占める重要な土壌だが、全般的に物理性が不良で、保水性の低さや下層土の緻密性(島尻マージ)、排水不良や受食性(国頭マージ)などが営農上問題となる。その問題の一つに、土壌が乾燥した際に強く硬化して砕けにくい土塊となり、耕耘砕土の障害となることがあげられる。このように物理性が不良な土壌の改良方法として、一般に、堆肥など有機物資材の施用が有効な方法とされる。有機物資材の施用は土壌の団粒化を促進し、膨軟化、通気性・保水性・排水性の向上を促す作用があり、その効果は多くの試験により実証されてきた。一方、有機物の施用により、土壌の過乾、過湿、排水不良など物理性の悪化が生じる例も報告されている。物理性がもともと良くないマージ土壌に有機物を施用する場合、物理性のさらなる悪化が生じないよう、施用が土壌の物理性に及ぼす影響を詳細に把握し、適正な施用を行うべきである。本稿では、有機物資材の施用がマージ土壌の乾燥時の硬化に及ぼす影響について、久保寺(2007)を元に紹介する。
著者
菅野 洋光
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.241-249, 2008-02
被引用文献数
1

東北地方では、梅雨季から夏にかけて「やませ」と呼ばれる低温の東よりの風が吹く。やませは、日本の北にオホーツク海高気圧が出現し、本州南岸付近に低気圧や前線が停滞するような気圧配置で発生する。また、やませは平年でも15〜30日程度は吹走して、主に東北地方太平洋側に低温をもたらすが、夏の太平洋高気圧の勢力が十分に強ければ、盛夏期にはほとんど吹かず、東北地方も関東地方並みに暑くなる。ところが、太平洋高気圧が弱く、梅雨前線を十分に北まで押し上げられない夏もある。そのような場合、オホーツク海高気圧の勢力が強く、やませが10日以上も吹き続ける。そして、8月になっても梅雨が明けず、冷夏が決定的になる。さて、このような不安定な気象条件下では、的確な気象予測に基づいた早期の被害軽減策を施すことが有効であると考えられる。そこで、2003年冷害を受けて発足した、先端技術を活用した農林水産研究高度化事業プロジェクト「やませ気象下の水稲生育・被害予測モデルと冷害回避技術の開発(2004〜2006年)」で、気象予測データを基にした農作物被害軽減情報のウェブサイトを作成し、冷害などの異常気象による被害軽減の支援を開始した。
著者
高橋 肇
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.247-255, 2009-02

パンの原料は、小麦である。小麦を栽培したことのある人は、少ないながらもいるであろうが、さらにそのなかで「自分で栽培した小麦を使ってパンを焼いた」という人はどれくらいいるだろうか?今、都会に暮らしていても、農家の出身であるという人はたくさんいる。農家でなくとも、「田舎のおじいちゃんが作ったお米を食べている」という人も大勢いるはずである。しかしながら、「田舎のおじいちゃんが作った小麦粉でパンを焼いている」という人はいるだろうか?地産地消のパンは、おいしいことも大切であるが、「安全で安心できること」も求められる。安全で安心できることは、ふつうのパンでも小麦の栽培や貯蔵、小麦粉の製粉工程、製パン工程において、それぞれの製造・管理のなかですでに実現されてきたことではあるが、「地産地消」であるからには、「有機」や「減農薬」、「顔の見える製品」であることまでもが求められるであろう。さらに、地産地消のパンは、その土地で生産されたものをその土地で消費するというこだわりから生まれるストーリーのなかに「おもしろく楽しいこと」が求められる。本稿では、地産地消のパンづくりをめざす前提として、まず、「味覚としてのおいしさ」とは何かを、小麦栽培からパンづくりまでの工程別に検証する。次に、これに対して「安全で安心できるおいしさ」を加えていくうえでの問題点を考察する。最後に、地産地消のパンづくりに「おもしろく楽しいおいしさ」を加えるための方策を「難しいからこそおもしろい」という観点で考えてみたい。
著者
笠島 一郎 平林 孝之 川合 真紀
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.633-636, 2010-06

ワサビは日本料理(サシミ、すし、そば、漬物等)に独特の香辛料として用いられ、その歴史も古い。ワサビは我が国が原種と考えられる数少ない植物種である。すでに7世紀の飛鳥時代に登場し、江戸時代には静岡地方で栽培が推奨された。これまでいくつかの代表的栽培種が育成されているが、それらの遺伝学的類縁関係に関する知見は少ない。本研究ではRAPD法と呼ばれるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)多型解析により、栽培ワサビ品種及び野生種の類縁関係の解析を試みた。
著者
神宮字 寛
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.256-266, 2015-02
著者
小川 正巳 猪谷 富雄
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.1084-1089, 2012-11
著者
吉田 重方
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.437-446, 2003-04
著者
鈴木 亮子
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.258-264, 2007-02
著者
長谷川 利拡 吉本 真由美 桑形 恒男
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.42-45, 2009-01

子実を収穫対象とする穀類においては、花器形成や開花・受精の段階で異常温度に遭遇すると、たとえ短期間でも大きく減収することがある。寒冷地でしばしば発生する冷害は、その典型例である。また、異常高温でも受精障害が発生する。これまでの実験から、開花時に高温にさらされやと、葯が裂開しにくくなったり、葯が裂開しても花粉が落ちにくくなったりすることで、受粉が不安定になることが知られている。受精過程の温度感受性は非常に高く、開花期頃の温度が34〜35℃以上になると不稔籾の割合が増加し、40℃以上になるとほぼすべての籾が不稔になることが、チャンバー実験で示された。そのため、今後予想される温暖化は、高温障害の発生を増加させて収量を大きく低下させることが懸念されている。2007年8月、関東、東海地域は、熊谷、多治見で観測史上最高の40.9℃を記録したほか、100以上の観測地点で過去の最高温度記録を更新するなど、広い範囲で異常高温に見舞われた。とくに関東平野では、埼玉県北部から群馬県南部、濃尾平野では愛知県北部から岐阜県南部で35℃を超える猛暑日が頻発した。このような異常高温は、これまで顕在化していなかった高温不稔を誘発する温度域であり、不稔による被害発生が懸念された、また、温暖化が水稲に及ぼす影響を検証するためにも、高温条件下での不稔発生の実態解明が必要であった。そこで、筆者らは群馬県、埼玉県、茨城県、岐阜県、愛知県と協力して、7月下旬から8月下旬までに出穂した132水田を対象に不稔発生を調査し、被害実態の解明を試みた。