著者
皆川 明子
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.363-371, 2015-03
著者
豊田 剛己
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.213-218, 2009-01

ミミズは土壌生態系において粗大有機物の第一次分解者として、また土壌の攪乱者として大きな役割を担っている。古くは、進化論で有名なチャールズダーウィンもミミズの働きに注目し、ミミズが"土壌の耕耘・改良"に大きな役割を果たしていることを明らかにした。ミミズは周囲の環境を効果的に変化させる役割を有することから生態系改変者と呼ばれる。ダーウィンによれば、肥沃な土はすべてミミズの腸管を何度も通過したものであり、10年間に3〜4cmもの厚さの肥沃な土が作られるという。日本とは異なり、イギリスでは図1に示すようなミミズの糞塚を至るところで目にする。ダーウィンが注目した理由がわかる気がする。日本でも森林や草地ではミミズ糞を見ることがある。一方、堆肥化にミミズを用いて、より効果的な堆肥を作るなど、自然条件下のみでなく、ミミズを作物生産へ積極的に利用しようとする試みもなされるようになっている。本報告では、ミミズが土壌微生物に及ぼす影響を概説し、土壌病害防除のための可能性について論じる。
著者
近藤 始彦
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.31-34, 2007 (Released:2011-12-19)
著者
姫宮 雅美 神門 卓巳 宮廻 克己
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.188-201, 2013-01

近年,全国における障がい者の就職件数が年々増加している。それに伴い,農業への障がい者就労や障がい者施設の農業参入,また特例子会社による農業経営など,農業分野における障がい者就労件数も増えている。そうした背景を踏まえ,島根県農業技術センターでは,平成23年度から農福医連携による園芸作業プログラムの開発を目指し,実証調査を行っている。また,農福連携の支援に向けた基礎的調査として,島根県内の障がい者施設に対するアンケート調査のほか,障がい者施設や農家への聞き取り調査を行ってきた。こうした調査研究を通じて,栽培技術面での課題を整理し,障がい者にも取り組みやすい農業技術や作業体系の構築について検証しているところである。ここでは,障がい者が取り組む農作業の実態と可能性を明らかにし,今後の島根県における農業と福祉の連携方策について考察する。
著者
井上 徹彦 池川 誠司 飯村 成美
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.884-890, 2008 (Released:2011-01-20)

球根専用緩効性肥料を用いた施肥法。富山県は冬季に積雪があり、チューリップに適した地温と湿度を保つことができることや、球根生産に最適な砂壌土水田に恵まれていること、ウイルスを伝搬するアブラムシの飛来が暖地と比べて遅いこと、また、水田の用排水路が完備されているため畝間灌水と徹底した排水が可能であることなど栽培条件が整っており、1993年にはチューリップ球根出荷球数が6118万球まで増加した。しかし、1988年以降オランダ産球根の隔離検疫制度の緩和により安価な球根が大量に輸入され、国内での球根単価が低迷していること、さらに近年は土壌伝染性病害などによる単収減にも悩まされていることから、2005年には出荷球数は2720万球にまで減少した。そのような状況の中、球根生産者は農業普及指導センターや富山県花卉球根農業協同組合などの指導機関による栽培技術や経営のアドバイスを取り入れるなどして、さらなる省力・低コスト栽培や新たな栽培技術の導入による経営の安定化を図っている。野菜花き試験場(現園芸研究所)では栽培技術の改善などによる品質・単収向上技術の開発に取り組んでいるが、ここでは新たな施肥体系技術について紹介する。
著者
高橋 成人
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.1047-1053, 1990 (Released:2011-03-05)
著者
髙倉 直
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.1173-1176, 2013-12

最近,垂直農場という言葉が使われ始めた。アメリカの微生物学が専門の教授が著したVertical Farmの訳であり,訳本まで出ている。大都市の高層ビルの各層の窓からあふれんばかりの植物が生育しているバーチャルな構想図が示されており,インターネットでも大々的に宣伝されているし(Despommier 2013),似たような構想図がいろいろとあふれてくるようになった(e. g.,Gordon-graffs 2013,Skygreen 2013)。植物栽培と環境調節を専門とする研究者ならこれはおかしいと直感するのではないだろうか。立体栽培の構想ないしは実験は古くから存在する。バビロンの塔もその一つである。立体栽培は大きく分けて,3つになる。高層建物の室内に観賞用として植物を栽培する。展示会や博覧会場で,人集めのシンボルとして作られる。立体農場として作物を栽培するものであるが,問題は作物栽培であり,インターネット上ではこれらが混同されているので,注意が必要であろう。明確な過去の事例をいくつか紹介しながら,このような構想が安易に実現されないことを祈りたい。窓の限られた高層ビルより,はるかに太陽光が中に多く入る,数十メートルのタワー状の温室すなわちタワー温室がヨーロッパと我が国にかつて存在し,その末路がどうであったかを知る人が少なくなっている。タワー温室は人工光でも実験された。人工光植物工場だけでなく,太陽光利用型温室でも,植物を立体栽培した例はアメリカ,英国,我が国にもあったし,我が国では現存するものもある。その問題点を改めて紹介しよう。
著者
松浦 昌平
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.999-1002, 2009-10
被引用文献数
1

トマト黄化葉巻病は、ジェミニウイルス科ベゴモウイルス属のTYLCVによって引き起こされるトマトの重要病害で、現在、日本には、イスラエル系統(TYLCV-IL)、マイルド系統(TYLCV-Mld)に属するいくつかの分離株(Isolate)が発生している。本ウイルスは、タバココナジラミによって特異的に媒介され、感染したトマトは、数週間程度の潜伏期間を経て、退緑しながら縮葉、巻葉症状となり、生育は著しく抑制される。発病すると開花しても十分に結実せず減収する。極細糸を使用した0.4mm目合い防虫ネットのタバココナジラミ侵入防止効果と、それが媒介するTYLCVによるトマト黄化葉巻病発生抑制効果を施設内環境要因と併せて調査した。
著者
内野 彰
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.174-180, 2015-01

水稲作では1980年代から一発処理型除草剤が広く普及し,一発処理型除草剤に含まれるスルホニルウレア系除草剤成分(SU剤)が水田の広い範囲で使用された。これに対し1990年代半ばからSU剤に対する抵抗性(SU抵抗性)が確認され,現在は21種類の雑草で抵抗性が報告されている。水田雑草では19種類でSU抵抗性が確認されており(内野・岩上2014a),このうちの6種類(イヌホタルイ,タイワンヤマイ,へラオモダカ,オモダカ,ウリカワ,マツバイ)が多年生の水田雑草である。イヌホタルイ,タイワンヤマイおよびへラオモダカの3種類は大量の種子を生産し,多年生雑草であるが水田では主に種子によって繁殖する。オモダカ,ウリカワおよびマツバイも種子を生産するが,これらは主に栄養繁殖体(塊茎または越冬芽)によって繁殖する。6種類のうちイヌホタルイのSU抵抗性については定(2015)の解説があるため,そちらを参照ねがうこととし,本稿では,6種類の中でイヌホタルイに次いで全国的に報告の多いオモダカのSU抵抗性を中心に,他の多年生雑草のSU抵抗性について解説する。
著者
内野 彰
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.174-180, 2015 (Released:2015-05-14)
著者
長谷川 和久 福山 厚子 伊東 志穂
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.319-323, 2013-03

生物は一度理化学的に傷つくと,修復に時間を要する。茨城県大宮町のガンマーフィールドにおける放射線による育種・品種改良のように,この線がプラスに効果を発揮すれば幸だが,マイナスでは問題となる。すなわち,福島原発事故では小出裕章氏(京都大2012)によるとヒロシマ型の原子爆弾100個相当分の放射性物質がすでに放出されたという。今後予想される被害は,全く不明と解説される。ちなみに,山陰。湯村温泉街に建てられている有名な吉永小百合さん演ずる夢千代(日記)さんの像は,昭和20年8月6日,広島で胎内被爆された永井左千子さんがモデルで,昭和50年代に建てられた。本人は胎内被爆の影響をずっと危惧して,生涯結婚されなかったという。放射性セシウムの半減期が30余年ということを考えれば,我々農業関係者も科学的事実とその持つ意味を深く考える必要がある。政策的に技術推進された結果の反省が問われている。ふと福井若狭,石川志賀および新潟柏崎の原発において同様の事故が万一発生すれば,「北陸の農業はどうなる?」との思が心をよぎる。生命と環境を大切にする地域の資源・風土を極力利用した安全な科学技術の発展が広く求められる。敬土愛農。
著者
髙倉 直
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.551-555, 2014-05

最近,世界的に都市農業が話題になり,連日のように奇抜な温室や栽培システムの紹介が園芸の電子新聞に登場している(Hortdaily 2014)。かつて,ヒートアイランド現象が顕在化し,その対策の一つとして屋上緑化が話題となり,地方都市単位での助成がかなり幅広く行われるようになり,さらに屋上緑化だけでなく,壁面緑化もとりあげられるようになったし,我が国では補助対象にはならないものの,屋上園芸がそれなりに普及しつつあるが,海外の様子は少し異なる。その大きな理由はすでに本誌でとりあげた垂直農場(Vertical Farming)という考え方の提案があったからであろう(高倉 2013)。都市農業の重要性は言うまでもない。このまま放置すると,都市の緑はますます減少し,もともと東京都など公園面積の少ない我が国の都市域では,ヒートアイランド現象も悪化することはまちがいない。さらに都市農業として食料を生産することは多くの利点をもつ。すなわち,生産地と消費地の近さからフードマイルの短縮があり,省エネルギーや汚染ガスの減少,都市から出る大量の食物残渣の堆肥化,雨水の灌水としての利用,さらに一般的な環境問題や心理的効果など,今更言うまでもないことが多い。しかし,すでに筆者が警鐘を鳴らしていたにもかかわらず,この垂直農場という概念だけで,土地生産性の高さだけを念頭に,まったく具体的な例証もないまま,安易にとびついて,1年でハイテク垂直農場の最初の倒産として大きく報じられる事例まで出てきた。天空農場(skyfarm)はカナダのウオータロー大学建築学科の大学院生が提唱したもので,トロントの約60階のビルの中で,太陽光を取り込み,バイオガスを発生させエネルギーを自給するという構想で植物だけでなく動物も飼育する内容である。このように,垂直農場だけでなく,天空(sky)や高層ビル(skycraper)農場という,驚くような構想が乱れ飛んでいる状況である。ここでは主として海外の事例を紹介しながら,都市農業での栽培環境とくに光環境の重要性についてまとめてみたい。
著者
市原 実
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.413-424, 2015 (Released:2015-06-08)
著者
中野 明正 安 東赫
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1071-1079, 2010 (Released:2011-05-27)
著者
髙倉 直
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.40-43, 2014-01

最近ハウスの環境制御で,相対湿度でなく飽差(Vapor Pressure Deficit; VPD: 直訳は水蒸気圧差)が話題になることが多い。なぜなのか,その理由ははっきりしないが,相対湿度よりハウスの乾燥や湿潤の様子がわかりやすいと感じるためであろうか。ただ,一般的には相対湿度よりなじみのない専門語であり,これらの気象用語の関係もあまり理解されずに,ブームのようになっている感じもあり,ここで,これらの関係を明確にするとともに,すでに約40年も前にオランダにおいて,まだコンピュータ制御もなかった頃,飽差制御器が開発されていたことは我が国にも詳しく紹介されているので(高倉 1974a,b,c),その内容にも触れながら,飽差制御の意味と重要性を検討したい。
著者
松田 友義
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.720-730, 2013-07

東日本大震災直後の原発事故によって,放射性物質による食品汚染が危惧され,いわゆる「風評被害」が発生,その影響が未だに残っている。残念ながら,今のところこれを避けるための有効な手立ても見つかっていない。「風評被害」のやっかいなところは,往々にして過剰反応に繋がるというところである。一人の生産者が誤って残留基準値以上の農薬に汚染された農産物を出荷すると,殆どの場合,その生産者が所属する産地の農産物が忌避されてしまう。ときにはまるで別の産地の同じ農産物まで避けられたりする。中国産冷凍餃子事件の際に,冷凍餃子ばかりか生餃子までもが忌避され,挙げ句に冷凍食品全体の需要が冷え込んだのが良い例である。「風評被害」の対象となる産地が,県を超える地方にまで拡がったり,似たような食品にまで拡がったりするのである。放射性物質による食品汚染の「風評被害」が被災県以外に,汚染の実態に関わらず広く東北・北関東全域にまで拡大したのも,そうした消費者行動の結果といえる。通常,「風評被害」は根拠のない情報,不確かな情報に踊らされた消費者,もしくは流通関連業者が悪い,と言うようにして語られる。しかし本当に消費者が悪いのだろうか?消費者には自分が購入する商品を選択する権利がある。言葉を換えると,何を買おうと非難される筋合いではないということもできる。原子力損害賠償紛争審査会が2011年8月に公表した「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」では「風評被害」は以下のように定義されている。「いわゆる風評被害については確立した定義はないものの,この中間指針で風評被害とは,報道等により広く知らされた事実によって,商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念した消費者又は取引先により当該商品又はサービスの買い控え,取引停止等をされたために生じた被害を意味するものとする」。
著者
石坂 宏
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.624-629, 2009-06

サクラソウ科の中にはシクラメン属というグループがあり、その中に22種が存在する。シクラメン属のすべての種は塊茎を作るが、自然分球による栄養繁殖は行わず、種子繁殖を行う。市販されているシクラメンの園芸品種は、22種あるシクラメン属の中のCyclamen persicumという野生種の改良により作出された。C. persicumの野生種は播種後2〜3年で開花個体に成長し、開花できるようになった個体は、2月に開花し、5月に結実して、その後9月まで休眠する。休眠が終了した個体は葉を展開し、翌年の2月に再び開花する。この生育サイクルをくり返し、10年くらい生存する。 C. persicum の野生種は、花弁の長さが約2cm、花色は白、ピンクおよび純白である。主な原産地はトルコ、キプロス、ギリシア、イスラエル、チュニジアであり、1700年頃に原産地から西ヨーロッパに導入され、主にイギリス、オランダ、ドイツ、フランスで栽培と育種が行われた。
著者
古在 豊樹
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.994-1006, 2014-10

日本の都市における農業の現状(農地・農業就業者・生産額の動態など),多面的機能(生産,環境保全,防災,レクリエーション,市民農園,コミュニティー,教育など),法律(都市計画法,農業振興地域整備法など)・税制などに関しては,数多くの識者により報告され,また都市の農地・農業・緑地のあり方や解決すべき課題が論じられている(たとえば,進士 2003,蔦屋 2005,樋口 2008,東 2011)。本稿では,都市の住民が消費する生鮮食料を都市で生産することの意義を,(1) 都市への有用資源流入と都市からの劣化資源排出,(2) 都市での植物生産による資源内部循環,(3) 輸送に伴うCO2排出(すなわち,石油資源消費),(4) 都市に適した植物生産方式,(5) 都市住民の生活の質の向上,および(6) 都市における農業以外の諸活動との関係などに留意しつつ考察する(古在 2014)。
著者
並河 良一
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.794-802, 2009-08
被引用文献数
1

農産物・食品の輸出促進が日本の重要な政策となっている。そのターゲットとして、イスラム市場が注目を浴びつつある。国際金融都市化するドバイに代表される中東産油国などのイスラム諸国の経済成長は著しく、その購買力が急上昇し、高級食品・食材への二一ズが高まっているからである。イスラム市場開拓の最大のハードルは「ハラル(Halal)制度」である。ハラル制度はイスラム教を基礎とする制度であり、宗教の素養がないと理解できないと考えられているからである。現実に、日本・欧米諸国の企業や団体が、ハラル制度に関するトラブルを経験しており、同制度を非関税障壁のように感じてきた。しかし近年、貿易や投資の促進のため、ハラル制度を非イスラム世界にもわかりやすい技術制度として構築する国が現われてきた。その一つがマレーシアである。同国のハラル制度については、これを利用すればイスラム市場の開拓が容易になるため、日本・欧米諸国の企業は関心を示している。本稿では、ハラル制度の概要、その問題点を示し、日本企業はハラル制度にいかに対応すべきかを、マレーシアのハラル政策に焦点を当てて検討する。