著者
奥野 洋子 萬羽 郁子 青野 明子 東 賢一 奥村 二郎
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3-4, pp.115-124, 2013-12-01

[抄録] 対人援助職は, 職務におけるストレッサーが大きい一方, 対人援助職としての成長もあることが明らかになっている. しかしこれらの研究は, 一時点における横断的調査であり, ストレス体験が対人援助職の自己成長感につながっているのかについての縦断的研究は行われていない. 本研究では, 105人の看護師に対して1年間の縦断的調査を行い, 仕事上のストレス体験と1年後の自己成長感との関連を明らかにすることを目的とした. 自己成長感(心的外傷後成長尺度), ストレッサーとソーシャルサポート(職業性ストレス簡易調査票), 個人特性(15項目ハーディネス尺度), 体験ストレスに関する質問紙調査を看護師に対して実施し, 1年後の自己成長感について重回帰分析を行った. その結果, 周囲の状況に対してコントロールできると考える性格傾向であること, 看護職の経験が浅いこと, そして仕事上のストレス体験が多かったこと, 仕事を自分のペースでできていたこと, 働きがいを感じていたこと, 加えて1年後の現在の, 職務上の身体的・環境的なストレッサーが強いこと, 同僚からのサポートがあることと自己成長感との有意な関連性が認められた. 仕事上のストレス体験の多さは, その時点よりも1年後の自己成長感を高め, 個人特性としてのハーディネスのコントロール傾向の高さも自己成長感を高めることが示唆された.
著者
島岡 昌生 釣谷 充弘 小池 英爾 老木 正彰 塩田 充 星合 昊
出版者
近畿大学医学部
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.101-108, 2008-06-01

ヒト正常妊娠におけるエリスロポエチン情報発現ならびに妊娠過程における役割を調べる目的で,人工妊娠中絶術後の子宮脱落膜組織を用いてエリスロポエチンmRNA,エリスロポエチン受容体mRNAおよびエストロゲン合成酵素であるアロマターゼmRNAの発現量を5週から8週の子宮脱落膜組織で測定した.免疫組織化学的にこれらの蛋白の組織内局在も調べた.標本取得には近畿大学医学部倫理委員会のガイドラインに従った.エリスロポエチンmRNA,エリスロポエチン受容体mRNAおよびアロマターゼmRNAはそれぞれの標本間で発現量の偏りがみとめられたが,各週毎の発現量の平均値を比較すると, 6週の脱落膜組織に3つのmRNAが有意に高値を示した.更にこの時期の脱落膜組織を検索したところ,特に栄養膜細胞の血管壁への侵入と,栄養膜が2細胞層に分化していく過程でエリスロポエチンとエリスロポエチン受容体蛋白およびアロマターゼの分布が共存していることを見出した.アロマターゼの分布はその場でのエストロゲン合成を示唆する.更にエリスロポエチンは分泌型の蛋白であるので脱落膜から初期匪着床部位に移動する可能性も考えられる.本研究では,妊娠6週を前後する週における妊娠維持,特に胎盤形成に関与する栄養膜細胞の分化過程にエリスロポエチンとエストロゲンの関与が示唆された.
著者
瀬戸 司 丸谷 怜 益海 大樹 西 孝輔 今岡 のり 竹村 司
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3-4, pp.109-114, 2017-12-20

[抄録]症例は1歳11ヶ月の男児.川崎病が疑われ,加療目的にて近医小児科へ入院した.第5病日に川崎病と診断され,アスピリン(30mg/kg),ウリナスタチン(15000 U/kg),免疫グロブリン(2g/kg)による治療が開始され,第7病日に追加の免疫グロブリン(1g/kg)療法が行われ,第11病日に退院となった.しかし,同日の夜間より再度発熱を認めたため,再燃として,第12病日より免疫グロブリン(1g/kg)の追加治療が行われた.第13病日も発熱が継続,約40秒の全身性強直性痙攣を認めたため,同日当院へ転院となった.転院当日,再度全身性強直性痙攣が出現,ミダゾラムの持続投与にて鎮痙した.頭部MRI 検査で白質脳症の所見を認めたため,ステロイドパルス療法を開始した.しかし,第15病日より痙攣重積状態となり,人工呼吸器管理,脳保護治療を開始するも,同日の夜には瞳孔が散大し,尿崩症の状態となった.2度目のステロイドパルス療法にて炎症反応は陰性化するも汎下垂体機能低下症,自発呼吸の消失,瞳孔散大,対光反射消失など,脳幹機能の消失を認めた.その後も意識状態の改善は認めず,深昏睡の状態が継続している.川崎病経過中に痙攣重積型急性脳症から,最終的に深昏睡の状態に至った稀な症例を経験したので報告する.
著者
丹羽 幸司 織田 裕行 石井 慧 康 純 諸富 公昭 磯貝 典孝
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1-2, pp.9-15, 2019-06-19

[抄録]性同一性障害(Gender Identity Disorder, GID)は,Female to Male(FTM)と Male to Female(MTF)に大別される.MTF患者に手術治療を行う場合,その精神医学的な特性から,医療側として特別な対応が必要と考えられる.ロールシャッハ・テストに基づく分析によれば,MTFは,FTMに比較して情緒的に不安定であり,悲観的な自己イメージ,逸脱した思考を持つ傾向にあることがうかがわれる.このMTFの精神医学的な特性を鑑み,手術適応の判断においては慎重な医療体制を整える必要があると考える.日本精神神経学会の「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」に則した身体治療適応判定会議で手術治療の承認が得られている患者であっても,GIDに精通した精神科医の外来診察を設けて検討し,場合によっては身体的治療を行う前に精神療法を行うことが重要であると考えられる.そのうえで身体治療医から十分過ぎるインフォームドコンセントを行い,それでもなお手術治療を受けたいと希望する患者を受け入れるべきである.GID患者を受け入れるに際して,特にMTF患者の望ましくない特性を引き出すことのないように,きめの細かい病院対応が求められる.加えて,身体治療を行う医師,特に外科医としての心構えを考え続けたい.
著者
玉井 那奈 松永 和秀 榎本 明史 村本 大輔 森川 大樹 向井 隆雄 内橋 隆行 土井 勝美 濱田 傑
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.91-95, 2016-12-20

[抄録] 上顎正中過剰埋伏歯と同時に鼻腔内過剰歯を認めた小児の1例を経験した.【症例】患者:9歳,男児.主訴:歯列不正(無症状).既往歴:特記事項なし.【現病歴】近在歯科にて上顎正中過剰埋伏歯を指摘され,当科紹介となった.【現症】歯牙欠損および萌出に異常所見は認めなかった.CT画像にて,上顎右側中切歯歯根の口蓋側に逆生過剰埋伏歯ならびに,左側鼻腔底粘膜内に過剰歯を認めた.【処置および経過】歯科口腔外科および耳鼻咽喉科と共同で,全身麻酔下にて鼻腔内過剰歯は鼻腔から,上顎正中過剰歯は口腔からのアプローチで抜歯を施行した.鼻腔内過剰歯は犬歯様形態を呈していた.【考察】今回,1990年以降に報告された鼻腔内過剰歯の33文献46例と自験例を併せた47例について検討した.鼻腔内過剰歯の初発症状は鼻症状が多いため,耳鼻咽喉科領域からの報告が多く,歯科領域からの報告は比較的少ないとされているが,歯科・口腔外科からも耳鼻咽喉科とほぼ同数の報告がなされていた.10歳以下が最も多く,そのほとんどが鼻症状よるものであった.抜歯した鼻腔内過剰歯の過半数が犬歯様形態を呈していた.47例のうち上顎正中過剰埋伏歯と同時に鼻腔内過剰歯を認めた症例は自験例も合わせて4例であった.4例はいずれも口腔外科からの報告で,鼻腔内過剰歯は経鼻から,上顎正中過剰歯は経口からのアプローチで抜歯が施行されていた.
著者
折原 茂樹 目黒 忠道
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.21-30, 2006-03-25
被引用文献数
1

大学生の生活習慣と健康意識などとの関係をみるために,大学生を被験者として,「日常生活調査」,「疾病経験・相談者調査」,「健康意識調査」の3種の質問紙調査を実施した.その結果,(1)「日常生活調査」質問紙より「規則的生活リズム因子」,「生活習慣妨害因子」,「健康生活習慣因子」を,(2)「疾病経験・相談者調査」質問紙より「健康サポータ因子」,「疾病経歴因子」を,(3)「健康意識調査」質問紙より「健康将来展望因子」,「健康楽観因子」,「生活習慣不安因子」,「健康情報希求因子」をそれぞれ抽出した.(4)「健康楽観因子」以外の因子に性差がみられた.(5)住居別(自宅通学者と自宅外通学者)の差がみられた因子は「規則的生活リズム因子」,「生活習慣妨害因子」であった.(6)各因子得点間では「規則的生活リズム因子」と「生活習慣不安因子」との間に相関があった.(7)「生活習慣調査」調査の各因子に関連した「健康意識調査」調査等の各因子と,関連しない因子を認めた.(8)学年差では,「規則的生活リズム因子」と「健康楽観因子」で学年差がみられた.
著者
山﨑 晃嗣 竹村 豊 長井 恵 井上 徳浩 竹村 司
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1-2, pp.9-16, 2016-06-23

食物アレルギーは小児期において,有病率が高く,増加傾向にある重大な健康上の問題点である.しかしながら,現在のところ,根治に至る有効な治療法はない.そのため,食物アレルギーの発症予防は極めて重要である.食物アレルギーの発症に近年,経皮感作が注目されている.そのため,乳児期の早期に湿疹治療をプロアクティブ療法で行うことで,食物アレルギー発症予防が可能かどうかを検討した.我々の施設を受診した乳児128人を,初診時に生後4か月以下であった早期群66人,5か月以上であった晩期群62人に分けて比較した.結果,晩期群では19人,25アレルゲンの食物アレルギー発症を認めたのに対し,早期群では9人,9アレルゲンでの食物アレルギー発症を認めた.乳児期早期からの湿疹治療により,食物アレルギーの発症と,複数の食物アレルギー発症の予防効果が認められた.食物アレルギー発症予防のためには,乳児期早期からのアレルゲン摂取とあわせて,皮膚治療を行なうことが重要である.
著者
中森 康浩 安田 卓司 今本 治彦 加藤 寛章 岩間 密 白石 治 安田 篤 彭 英峰 新海 政幸 今野 元博 塩﨑 均
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.31-40, 2010-03-01
被引用文献数
2

[抄録] 高齢者が多く侵襲度の高い食道癌術後の誤嚥性肺炎は最も危険な合併症のひとつである.高齢者の誤嚥はサブスタンスP(SP)の分泌低下による咳嗽反射低下がその要因とされている.食道癌周術期における血中SP 濃度と咳反射の推移および誤嚥/肺炎の発症との関連を明らかにする.胸部食道癌手術予定で文書により同意が得られた26例を対象とした.術前,術後2日目(POD2),術後7日目(POD7)に血中SP 濃度測定,クエン酸誘発咳嗽反射閾値検査を行い,誤嚥/肺炎の発症との関連を前向き臨床研究で検討する.血中SP の平均値は術前,POD2,POD7の順に108.2pg/ml,66.8pg/ml,62.2pg/mlと推移しPOD2に大きく低下した.クエン酸誘発咳嗽反射閾値は測定可能の23例中19例(82.6%)でPOD2に閾値の上昇(15例)または最大のレベル10(4例)を示した.65歳以上のE群と65歳未満のY群に分けて検討したところ肺炎は3例(E群:2例,Y群:1例),不顕性誤嚥を2例(E群)に認め,全例POD2に咳嗽反射閾値の上昇をみた.E群の誤嚥/肺炎の4例はいずれも術前血中SP 濃度は40pg/ml以下でPOD2においても上昇をみなかった.食道癌術後の誤嚥/肺炎とのリスク因子を検討した結果,E群において術前の血中SP 濃度≦40pg/mlが最も有意なリスク因子と判明した(p=0.008).食道癌術後は血中SP 濃度の低下と咳嗽反射閾値の上昇により誤嚥性肺炎を容易に発症する状態にある.65歳以上で術前の血中SP 濃度≦40pg/mlは術後の誤嚥/肺炎に対するハイリスク群と考えられた.
著者
塩山 実章 三井 良之 木原 幹洋 高橋 光雄 中尾 雄三
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.101-104, 2001-10-25

症例は38歳女性.23歳で出産後左眼瞼下垂が出現し, 重症筋無力症(MG)と診断された.以後経過良好であったが, 36歳時重篤な呼吸困難を呈し(クリーゼ), 人工呼吸管理の上ステロイドパルス, 血漿交換療法が行われた.翌年感冒の後, 再度クリーゼとなり, 胸腺摘出術施行(胸腺組織は過形成像を呈していた).38歳時右眼視神経炎, 約半年後左眼視神経炎を発症.多発性硬化症(MS)の合併と診断した.MGとMSの合併率は各疾患ごとの統計学的な推定値より高いことが知られている.この理由として共通の免疫異常の他に, MGに対する胸腺摘出術, その他の治療がMSの発症経過に何らかの関与の可能性があるとする指摘もある.本例はMGとMSの発症の原因や治療方針を考える意味で示唆に富む症例と考えられた.
著者
河田 圭司
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.9-15, 2003-07-25

中枢性血圧調節にはアミノ酸系神経伝達物質の関与が重要であると考えられているが,高血圧発症への関与には不明な点が多い.本研究では脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットと正常血圧ラットであるWistar-Kyotoラットの脳脊髄液中アミノ酸濃度の加齢による推移を比較することにより,高血圧症発症へのアミノ酸系神経伝達物質の関与について検討した.8週から22週まで隔週齢のラットの血圧測定と脳脊髄液の採取を行った.アミノ酸濃度の定量は電気化学検出器を用いた高速液体クロマトグラフィーで行い,アスパラギン酸,グルタミン酸,γ-アミノ酪酸,グリシン,アルギニン,タウリンの6種について分析した.測定した全週齢で脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットがWistar-Kyotoラットより高値を示したアミノ酸は,グルタミン酸とアルギニンで,グルタミン酸濃度は若齢期においてとくに高値を示し,アルギニン濃度はほぼ一定であった.タウリン濃度は全週齢でWistar-Kyotoラットが脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットより高値であった.γ-アミノ酪酸,グリシン,アスパラギン酸では有意な差を認めなかった.興奮性アミノ酸の週齢変化は遺伝性高血圧の発症過程における中枢性交感神経活動の亢進状態に関与し,抑制性アミノ酸であるγ-アミノ酪酸あるいはタウリンによる抑制効果は大きくないと考えられた.
著者
岡田 正道
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.43-50, 2001-04-25

骨の成長は骨端軟骨板の閉鎖により停止するが, そのメカニズムについては不明であったが, 最近この閉鎖に骨端軟骨細胞のアポトーシスが関与することが明らかにされた.本研究では骨端軟骨細胞のアポトーシスに対するエストロゲンとテストステロンの影響について検討した.在来種の白色家兎の成長軟骨板を組織培養し, これら性ホルモンを作用させ, 休止・増殖・肥大軟骨層におけるアポトーシス細胞の発現を組織化学的に検索した.その結果, 肥大・休止層ではエストロゲンおよびテストステロンによってアポトーシス細胞の発現率が増加された.同様にエストロゲンを家兎に腹腔内投与すると, 成長軟骨板におけるアポトーシス細胞の誘導が認められた.また抗ニトロタイロシン抗体を用いてパーオキシナイトライトの発現を免疫組織化学的に検索したところ, エストロゲン刺激で肥大・休止層にパーオキシナイトライトの染色性の増強を認めた.細胞培養系で骨端軟骨板由来の軟骨細胞にエストロゲンを添加し, 一酸化窒素の誘導を検討したところ細胞のアポトーシスと一酸化窒素の誘導を認めた.以上の事象より, 骨端軟骨板閉鎖のアポトーシス死にエストロゲンも関与し, 機序として骨端軟骨板のフリーラジカル産生を誘導し, 間接的にアポトーシスに関与していることが考えられる.
著者
奥野 洋子 萬羽 郁子 青野 明子 東 賢一 奥村 二郎
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.115-124, 2013-12

[抄録] 対人援助職は, 職務におけるストレッサーが大きい一方, 対人援助職としての成長もあることが明らかになっている. しかしこれらの研究は, 一時点における横断的調査であり, ストレス体験が対人援助職の自己成長感につながっているのかについての縦断的研究は行われていない. 本研究では, 105人の看護師に対して1年間の縦断的調査を行い, 仕事上のストレス体験と1年後の自己成長感との関連を明らかにすることを目的とした. 自己成長感(心的外傷後成長尺度), ストレッサーとソーシャルサポート(職業性ストレス簡易調査票), 個人特性(15項目ハーディネス尺度), 体験ストレスに関する質問紙調査を看護師に対して実施し, 1年後の自己成長感について重回帰分析を行った. その結果, 周囲の状況に対してコントロールできると考える性格傾向であること, 看護職の経験が浅いこと, そして仕事上のストレス体験が多かったこと, 仕事を自分のペースでできていたこと, 働きがいを感じていたこと, 加えて1年後の現在の, 職務上の身体的・環境的なストレッサーが強いこと, 同僚からのサポートがあることと自己成長感との有意な関連性が認められた. 仕事上のストレス体験の多さは, その時点よりも1年後の自己成長感を高め, 個人特性としてのハーディネスのコントロール傾向の高さも自己成長感を高めることが示唆された.