著者
町田 俊一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.69-78, 2003-11-30

浄法寺漆器は、古くから、青森県との県境に位置する岩手県浄法寺町を中心とする地域でつくられてきた漆器である。かつては、東北地方のなかでは有数の規模の漆器産地にまで発展した。しかし、浄法寺漆器は世界大戦後に衰退し、昭和30年代には消滅してしまった。この産地の壊滅状態は約20年間統いたが、昭和50年代に、浄法寺漆器再興の運動が起こされた。筆者は、浄法寺漆器の復興計画へ参画し、この漆器を現代生活で使用できる日用品として開発を行ってきた。以前につくられていた製品の復活のみならず、現代の日用品として生活様式へ適合させることが大きな課題であった。この課題に対しては、問題を解決するための手法としてのデザインが大きく貢献できると考えられ、漆器製造の技術だけでなく、新たなデザインの作業が総合的な観点から展開された。本稿では、浄法寺漆器のデザイン開発を通して得られた伝統的工芸品とデザインの関係に関する知見について報告する。
著者
翁 群儀 植田 憲 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.35-44, 2006-01-31

本稿は、台湾漆器「蓬莱塗」の意匠特質を調査・研究したものである。「蓬莱塗」は、日本領有時代の台湾において、日本人の漆器制作者であった山中公が、台湾で体験した異国情緒をモチーフとして日本人向けに制作を始めたことを起源とする漆器である。本研究では、台湾漆器の発展史とともに、「蓬莱塗」の位置づけ、ならびに、制作工程、モチーフの調査・分析などを通して、「蓬莱塗」の特徴を明らかにした。「蓬莱塗」の特徴は以下の通りである。(1)地域の実風景をモチーフとした地域性の溢れる絵柄が施されている。(2)原色の多用によって、台湾の活力が表現されている。(3)力強い彫刻によって、台湾の素朴な民風が表現されている。「蓬莱塗」は、今後においても、台湾社会を映し出す漆器デザインとして発展していくことが期待される。また、漆器のみならず、伝統的工芸品産業の発展に向けてデザインにおけるアイデンティティを確立していくことは、今後、台湾のさまざまな分野で検討されるべき重要課題である。
著者
HU Hui-Jiun YEN Jen
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.55-64, 2010
参考文献数
35
被引用文献数
1

As the Internet has already been integrated into human life in 21st century, how to design an easy-to-use Human-Computer Interaction (HCI) has become an important issue. The designer will follow the conceptualization in one's own mind to design system image. What is the mental model of designer toward website construction? We use the Interactive Qualitative Analysis (IQA) approach to conduct a qualitative data-gathering, analysis and examination made by expert participants. The findings show that first, design models among web design team members are in high accord and BD, EC, TP, SA, WP, VD, PM and OM are key influence factors on website construction to be considered. Second, the web design team are analysis-orientated and self actualization-orientated in their mindmap. Third, VD is influenced by WP, TS and PM on website construction.
著者
池町 優太 氏家 良樹 松岡 由幸
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.53, pp.264-265, 2006-06-20

In curve design, the construction of a quantitative representation method of macroscopic shape feature is important. The main reason for this appears to be that human beings tend to perceive the overall shape feature macroscopically. So, in the past study, curvature integration was proposed as the quantitative representation method of macroscopic shape feature "complexity" which is important in curve design. This paper describes that curvature integration can represent macroscopic shape feature "complexity", the application of curvature integration to the design problem of analysis of automobile side views and the application of the shape generation method proposed in the past study to the styling of new vehicle.
著者
椎名 輝世
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.45, pp.228-229, 1998-10-30

Peter Behrens (1868-1940) heading the school of arts and crafts in Dusseldorf (March 1903-September 1907) was Germany's first Academy of Application Architecture, featuring material design, interior space, and general architectural topics with artistic and innovative approaches. The preliminary education with BAUHAUS, thorough workshop and practicum were appraised for its results leading to vital educational reform supported through exhibitions, however, Dusseldorf remained unconvinced of the efforts of Behrens et al. Whv did Behrens resign, and the organization dissolved? Details of these 4-1/2 years will be thoroughly discussed, as part (4), conclusions, followig the previous presentations (1)-(3).
著者
伊藤 教子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.207-214, 2001-11-30

本研究は, 駅の評価に大きな影響を与えると考えられる「混みあい感」が, どのような要因に影響を受け, 評価にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としたものである。このため, 学生を被験者とし, 4つの都心の駅を対象としたイメージ調査, 及びこのうちの2駅について画像呈示による空間評価実験を行い、分析を行った。その結果, 1)駅のイメージは「人が多い, 混んでいる, 疲れる, 騒々しい」というものであった。また日常的なイメージであるほど良いイメージを持たれており, 親しみやすいイメージであるほど, 総合的な評価が良いことがわかった。2)因子分析により, 「誘引性」「親近性」と考えられる駅のイメージが抽出された。3)数量化1類により, 男女共物理的要因が「混みあい感」に大きな影響を与えており, 参加意向には, 男女共に「混みあい感」とイメージが影響を与えていることが確認された。
著者
崔 〓碩 鄭 載旭
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.56, pp.12-13, 2009-06-20

3Dキャラクターアニメーションは実写映画、アニメーション、ゲーム、広告など大多数の映像物に使われている。リアルなキャラクターの動きはモーションキャプチャ(Motion Capture)のような高価の装備を利用し、熟練されたアニメータ達によって作られる。しかし、場合によってはアニメータの個人の感性的基準で作られたキャラクターの動きが観客の普遍的な期待値と違うときもある。これは作られたキャラクタの行動が観客の感性反応に対した客観的な関係式が定められていないからである。そこで本研究は、3Dキャラクタの足つきを対象とし、上記の関係式の抽出と定立のための実験道具として3D Studio MAXscriptを利用した3Dキャラクターアニメーション合成ツールを提案した。このツールをによって足つきと感性反応の間の定量的関係式を求めるための指針を得ることができた。
著者
近藤 祐一郎 長瀬 公秀 青木 弘行 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.45-52, 1998-09-30
被引用文献数
1

青森県稲垣村をケーススタディとして, 籾殻燻炭を用いた生活排水路の水質浄化実験を行った。実験は中期測定(朝8時と夕4時の1日2回, 10日間連続して測定)と, 短期測定(朝6時から夜10時まで2時間毎に測定)を行った。そして, 籾殻燻炭を設置した上流と下流の水質に対して, 水素イオン指数, 導電率, 濁度, 溶存酸素, 水温, 水深, 流速を測定した。実験の結果, 以下の知見を得た。1)籾殻燻炭を通過した排水は, 魚類が繁殖可能な値まで水素イオン指数が上昇し, 稲が生長可能な値まで溶存酸素が増加することを確認した。 2)籾殻燻炭を設置した区間内で, 従来まで確認することのできなかった水棲生物を確認した。これは, 指標生物学的に排水路の水質が浄化されたと判断することができる。 3)水質浄化活動を住民が目に見える形で行うことによって, 環境美化に発展することを確認した。
著者
野呂田 純一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.17-22, 2009-07-31

幕末、幕府への報告書において、現代とほぼ同じ意味で単語「芸術」を使用したのは南画家渡辺崋山であったが、この報告書は陽の目を見ることはなかった。ペリーの浦賀来航後、幕府は外交文書の翻訳機関として蕃書調所を設立したが、その頭取古賀謹一郎は西洋の言語学、天文、地理、数学、物産学、精錬学、器械学、画学、活字術等を総称して芸術とした。その一方で物産学から活字術までを百工技芸とする者もおり、芸術と技芸は一部重複した概念であった。その後、幕府はフランス万博(1867年)の出品分類等を入手したが、その和訳においてartを絵画、彫刻、建築、版画を意味する芸術と訳す一方で、arts usuelsを日用品の製作技術だけでなく、見世物をも意味する技芸と訳しており、芸術と技芸が重複しないよう訳し分けられていることが判明した。また、Beaux-Artsは「精工」、「細工」と和訳されており、その具体的内容は精密な図柄を持つ工芸品であることが判明した。
著者
広川 美津雄 井上 勝雄 高橋 克実
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.21-28, 2002-11-30
被引用文献数
1

近年、製品デザインの現場やデザインマネジメントの立場から、デザインコンセプト策定の重要性が増大している。本研究は、橋梁という特殊な領域におけるデザインコンセプト策定についての先行研究の考察を基礎に、工業デザインの分野において曖昧に使われてきたデザインコンセプトの内容を明らかにし、工業製品のデザインコンセプト策定の方法に関する提案を行った。策定方法は、まずデザイナーが、製品開発の時系列的視点で製品価値を再構成することによってデザインコンセプトを設定する。次に、現在デザインしようとしている製品に求められる要件のうち、評価を定めたり、合意したりすることが困難な要件に対して、デザインコンセプトによって方向性を示す。このような製品価値主導のデザインコンセプト策定により、製品全体の新しい価値を明確にすることができ、以後に続く設計をリードし、製品開発の全体をコントロールできる。
著者
安井 皓一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.45-50, 2000-01-31

自動車デザインの現場において, CADプロセスが導入されて以来約20年となる。それ以来デザイン創作活動におけるデザイナーのあり方, モデラーのデザイン支援のあり方が大きく変化してきた。本論では, まず自動車デザインにおけるモデラーの歴史を振り返り, CAD導入以降のデザインプロセスから現在のCADデザインプロセスヘの移行を解説する。そして現在の自動車デザインが直面しているCADデザインプロセスにおけるモデラーにかかわる諸問題(時間と工数の問題, 品質の問題, コスト面の問題, マネージメント上の問題, CADモデラーの資質の問題)を論じ, それらの諸問題の対処法を考察し, さらに今後の提案として, CADデザインプロセス活用における自動車モデラーの課題と役割を論説する。
著者
見明 暢 萩原 祐志
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.15-20, 2006-01-31

移動しながら複数の店舗で買い物を楽しむ場合,渋滞や駐車場不足に悩まされることが多い。この問題を解決するために,カーバイシクルと呼ばれるシステムもあるが,最近の若者が好む店舗は繁華街から少し離れた地区の狭い道路に面していることが多く,また,それぞれの店舗は少しずつ離れているため,カーバイシクルも便利な方法とは言えない。本研究は,こうした問題の解決と若者のニーズに応えることを目的として,新しい移動用機器の提案・制作・評価を実施したものである。提案のために,ユーザーの意識調査・類似製品調査を行い,その結果を踏まえ,デザイン・制作を行った。その後,利用該当地区における走行実験・聞き取り調査・商品性の分析を行い,妥当性について考察した。その結果,提案物を用いた移動システムは,製品(システム)として成立する可能性を有することが示された。
著者
長田 純一 ぜんじろう 藤田 善弘
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.54, pp.224-225, 2007-06-20
被引用文献数
1

This paper presents development process of the comedy robot "PaPe-Jiro". As for the partner-typed robot like PaPeRo we developed, the comfortable interaction are requested. Out idea has been approaching to the comedy, to apply humors into the interaction design. we called "Humorous Interaction". Definition of the first goal is to play "Two-Man Stand-Up Comedy (Manzai)" with a robot, and we developed ten topics for Manzai, and held the show. To search for "humors by the robot" and "specific to robot" are goal in this step. As the result, three issues has been considered ; a) The Robot can be success to use comedy techniques, b) The robot-specific comedy techniques has been developed, c) Use of "robot image" by human beings has been successful.
著者
佐伯 謙吾 森田 昌嗣 岡 泰雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.54, pp.240-241, 2007-06-20

The multifamily housing, which is the subject of this plan in this research, has a criterion of being large-scale and occupying more than 200 households. It is a large-scale housing development compared to its surroundings. In the formulation of this plan, emphasis is placed on the realization of the development theme of "universal design for wellbeing." The emphasis is not just on functional universal design, but also on providing value from a universal perspective by contributing to the wellbeing of the many people who will live together in the housing. The plan calls for sales to begin in 2007 and the completion of construction in the winter of 2008. Through investigations of the original plan after completion, the goal is to reflect its lessons in future multifamily housing development plans.
著者
石川 友理 工藤 芳彰
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.56, pp.336-337, 2009-06-20

We can confirm many festivals of Dashi, means festival car, in Saitama. This study produced board game as the teaching materials to convey this various Dashi culture to the next era. In addition, We wrestled with the investigation of Dashi Festival and the table game made in Germany on producing it. On the basis of analysis of the investigation, We produced board game. The contents are common denominators of the Dashi Festival; the person who pulls it, and dedication liquor, a cruise, a turn. As a result of inspection, this game got a favorable reception from elementary school upper grades child to an adult. Therefore, we think even the present conditions to be can expect a constant education effect.
著者
馬場 哲晃 富松 潔
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.52, pp.96-97, 2005-05-30

There are various interfaces of musical instruments, such as keyboards, strings, percussions. Considering interfaces as a relation of "person and person", we made the electronic musical instruments "Freqtric Drums" so that the persons relate each other. "Freqtric Drums" is a electronic musical instrument with MIDI out. We can make sounds of drums (snare, symbal, tom, , etc) by touching other persons. Through production and the demonstration of "Freqtric Drums", we argue the values of the interface of "Freqtric Drums" which enable the players and audience relate or communicate each other.
著者
磯貝 恵三
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.166-167, 1999-10-15

Thinking of hand making process, designers make up whole plan concidering good balance in its constituents such as material, construction and arrangement. The essencial pleasure of designing can be found in this procedure. Art and Design course of Tsukuba University reopened wood and metal craft class as fundamental study in 1998. This class aims to introduce an easy way to the students who hesitate to handle actual articles. Making a desk for iMac is an example. To touch and feel the real parts and material will be a big help to improve design mind of students.
著者
平野 聖 石村 眞一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.29-38, 2008-07-31
被引用文献数
2

明治時代に先進国からもたらされた扇風機は,大正時代には欧米の企業との技術提携が進み,我が国主要企業による大量生産が開始された。米国では天井扇に加えフロア扇の需要も多かったが,我が国では相変わらず卓上扇の独壇場であった。関東大震災により,直接裸火を使用しない電気製品の安全性が注目されるようになり,震災の復興期に数多く建てられた和洋折衷の文化住宅では,電化が大きなテーマとなった。企業間競争の激化による価格の下落と,新中間層の急増や大正デモクラシーの影響から女性の社会進出も果たされるようになると,大衆の購買力が向上し.家電ブームが起こった。人々のあこがれの対象であった扇風機は,その牽引役を果たした。扇風機の基本的形態の四要素,「黒色,四枚羽根,密なガード,首振機能」は踏襲されたが,エトラ扇の発明により,三枚羽根のものも加わった。この時代には,ガードが独立してデザインされるようになり,他社との差別化やモデルチェンジを明示する役割を担った。
著者
面矢 慎介
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.11-20, 2005-05-31

19世紀から20世紀中期にかけてのイギリスの鍋を事例として、近代家庭機器の成立・発展過程およびそのデザイン変遷をめぐる諸要因について考察した。19世紀末から1930年代にかけて、大容量の鍋が徐々に減少する一方、鍋タイプの細分化が進んだ。1910年代までの英国において、鍋の形態は非常に保守的・固定的であった。特に胴の中央部が膨らんだ「ベリード・タイプ」の鍋は、長年にわたって鍋形態の定型となり、家庭の台所のシンボルとなっていた。19世紀から1910年代までのベリード・タイプに代表される鋳物鍋から、1920年代以降のアルミ鍋への転換(主たる鍋材質および鍋形態の典型の交代)は、各素材に特化した鍋メー力ーの盛衰、ひいては金属加工工業の構造的変革と深く関わっていた。この時代における鍋のデザイン変化(典型の交代)を促したのは、調理器の熱源の変化に加えて、日常の料理法の変化、調理器の外観の変化、家庭生活における台所の位置づけと台所空間のデザイン変化であり、これらが、互いに関連しつつ鍋のデザインに影響していた。