著者
滝沢 正仁 大島 創 山本 浩司 高橋 秀喜 北 真吾
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.2_29-2_38, 2017-09-30 (Released:2017-12-22)
参考文献数
29

高速道路の可変式道路情報板には,危険回避やルート選択に役立つ情報が表示される.近年,グローバル化や高齢化社会への対応策として,シンボル活用の機運が高まっているが,情報板シンボルには,わかりにくいものが存在する.また,媒体特性や環境特性を考慮したデザイン指針や評価手法も定められておらず,改良への手がかりが乏しい.そこで本稿では,情報板シンボルのわかりやすさに関する,「造形の基本的取決め」,「評価手法」,「改良の手がかりとなるデザイン指針」の導出を目的に検討した.まず,情報板の特性を道路標識や一般シンボルとの比較から整理し,取決めと評価手法を導いた.次に,提案した評価手法を用いて,取決めに基く代替案と現行シンボルの理解度調査を実施した.以上の結果から,取決めの妥当性を確認し,デザイン指針として,「車の造形を高評価のもので統一」,「熟知性の高い図材を用い,図材間の因果関係や,主体と客体を明確化」,「熟知性が低いまたは高速道路の文脈と関連付けが困難なシンボルは意味内容の見直しも検討」を導いた.
著者
菅 靖子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.11-20, 2004-09-30

本稿は19世紀から20世紀にかけて日本の「美術製造品」のイギリスヘの輸出に関わっていた商社の相互関係や本国での活動に着目し,後期ヴィクトリア朝からエドワード朝にかけて同国における日本趣味を支えたインフラストラクチャの一端を解明することを目的とする。そのためにイギリス・日本の両国に活動拠点をもっていた3つの人脈,マリアンズ,ストロームとロットマン,そしてホームとセールを中心に築かれた諸商会の経営体制を検証する。彼らが縁戚関係あるいはパートナーシップを通して経営していた諸商会は,名称変更こそあったが,しばしば数年で消えてゆく当時の外国商会の高い破産率を乗り越えて比較的継続した活動を展開した。その要因のひとつには,これらの同業者達のあいだに代理店制度など直接の相互関係があったことがあげられる。雇用主や従業員の繋がりや店舗や在庫の引き継ぎからなるこうした横のネットワークは、イギリスの日本趣味の流通を支えた一要素であった。
著者
井磧 伸介 宮崎 紀郎 玉垣 庸一 李 震鎬
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.71-78, 1996-05-31
参考文献数
11

近年の雑誌広告ではカラー表現が一般的であるが,モノクロ写真を取り入れた広告も少なくない。本研究は,カラー全盛とも言える現在の広告表現において,モノクロ写真を使用した雑誌広告がどのようなイメージで受け取られるのか調査を行ない,モノクロ写真を使用する効果を検討するものである。まず,収集した雑誌広告を配色や構図などで分類し,代表的な広告サンプルを選び出した。次に,これらのサンプルについてのイメージ調査を20代前半の男女70名に対してSD法によって実施した。その結果,整然性,鮮明感,重厚感の3つの因子が抽出された。このうち,「まとまった」,「静かな」等の形容詞のみならず,「好きな」,「美しい」といった形容詞とも相関の高い整然性因子では,モノクロ写真を使用した広告がカラー写真を使用した広告より高く評価され,文字や製品写真にカラーを重点的に使用すれば,さらに評価を高めることが判明した。これは,モノクロ写真とから部分との対比が,それぞれをより際立たせた結果であると推測される。
著者
庄山 茂子 浦川 理加 江田 雅美
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.87-94, 2004-03-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は、女子学生のリクルートスーツにおいて、シャツの色彩の違いが、服装メッセージにどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。調査に用いた試料は、ベーシックなdark Grayのスーツにオープンカラーのシャツである。12色のシャツの色について調査した(ペールトーン10色と無彩色2色)。調査対象者は、就職活動中の女子学生166名と採用者側の銀行員157名とした。女子学生が着たい色、採用者側が好感を持つ色について回答を求めた。それぞれの色について、25対の形容詞を用いてSD法によるイメージ評価をしてもらった。その結果、女子学生が着たい色および採用者側が好感を持つ色の上位は、White、Blueであった。因子分析の結果、女子学生は、着たい色に「洗練」や「知性」を求め、採用者側は交換を持つ色に「誠実さ」を感じている事が明らかとなった。シャツの色彩の違いにより異なる服装メッセージが認められた。
著者
町田 俊一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.41-46, 2003-09-30 (Released:2017-07-19)

浄法寺漆器の復興にあたっては、実質的な技術課題は下地加工と塗漆技術である。漆器生産技術の中でも、下地加工は漆器の強度を左右する重要な工程で、技術修得にも長い時間がかかると言われている。また、下地加工の意味は、素地の凹凸を埋めて、軟らかい木部の上に硬い塗膜層を形成し、強度を確保すること、断熱性を向上させることであると言われている。製造技術を新たに再修得しなければならなかった浄法寺漆器にとって、高度な技術は、時間とコストの増加を招く。そこで、日常品に適した下地法を採用するため、現在我国の主要な漆器に用いられている8種類の下地について手間と、強度の比較検討を行った。その結果、蒔地法、塗重ね法が高い強度を発揮する事が判明し、更にこれらの下地は技術修得が容易に行えることが判明した。
著者
藤田 良治 山口 由衣 椎名 健
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1-8, 2007-09-30 (Released:2017-07-11)
参考文献数
8

本研究では撮影技法によって作られる映像の動きに着目し,映像素材におけるカメラムーブメントの違いが視聴者に与える心理的影響を明らかにする実験を行った.6種類のカメラムーブメント(ズームアップとズームバック,左パンと右パン,ティルトアップとティルトダウン)と4種類の情景カテゴリー(図形,自然,人工,人間)を組み合わせて24映像を製作した(6カメラムーブメント×4カテゴリー).この映像を,48名の被験者に呈示し印象評価を求めた.各項目の回答から5因子解(「好感度」「規則度」「活動度」「親和度」「インパクト度」)を得た.各因子の標準因子得点を用い.カメラムーブメント(6)×カテゴリー(4)の2要因分散分析を行った.その結果,それぞれのカメラムーブメントは視聴者に異なる心理的影響を与えることが明らかになり,視聴者に好感度やインパクトのある映像を製作するためには,撮影技法としてのカメラムーブメントを適切に選択することの重要性を示した.
著者
庄山 茂子 浦川 理加 江田 雅美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.87-94, 2004-03-31
被引用文献数
1

本研究は、女子学生のリクルートスーツにおいて、シャツの色彩の違いが、服装メッセージにどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。調査に用いた試料は、ベーシックなdark Grayのスーツにオープンカラーのシャツである。12色のシャツの色について調査した(ペールトーン10色と無彩色2色)。調査対象者は、就職活動中の女子学生166名と採用者側の銀行員157名とした。女子学生が着たい色、採用者側が好感を持つ色について回答を求めた。それぞれの色について、25対の形容詞を用いてSD法によるイメージ評価をしてもらった。その結果、女子学生が着たい色および採用者側が好感を持つ色の上位は、White、Blueであった。因子分析の結果、女子学生は、着たい色に「洗練」や「知性」を求め、採用者側は交換を持つ色に「誠実さ」を感じている事が明らかとなった。シャツの色彩の違いにより異なる服装メッセージが認められた。
著者
吉岡 聖美
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.3_31-3_38, 2012 (Released:2012-11-30)
参考文献数
22

本論文では,病院に展示されたホスピタルアートに対する患者の鑑賞行動および印象の評価を調査することによって,ホスピタルアートの有効性を確認することを目的とする。方法は,病院の外来待合および連絡通路のホスピタルアートについて,患者の鑑賞行動と快・不快の印象についての評価,および,通院期間,通院頻度,当日の経過時間,平均的な病院滞在時間について外来患者から回答を求めて分析を行った。外来待合では,待ち時間が長い患者ほど,通院に対するホスピタルアートの鑑賞頻度が大きく,意識的に見て,快さが大きいことが示された。また,連絡通路では,通院期間が長い患者ほど,通院に対するホスピタルアートの観賞頻度が大きく,意識的に見て,快さが大きいことが示された。これにより,病院に展示するために制作されたホスピタルアートについての有効性が示された。
著者
斎藤 共永
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.55-62, 2002-05-31

本稿では、多様な可能性を秘めたデジタル機器のデザインにおいて、イノベィティブなデザイン生成のための方法としてのプロトタイピングについて検討する。プロトタイピングのもつ意味は、次の諸点にまとめられた。1)プロトタイピングの文化はイノベーションの質を決定づける。2)デジタルの価値創造においては、非線形的なプロトタイピングの役割が大きい。3)それは、デジタルの価値が、主に非モノ特性からなることによる。4)プロトタイプからスペックを導くプロトタイピング主導型のプロセスが必要である。5)プロトタイプは、開発過程における共通言語となる。これらを検証するために、企業のデザイン組織において、プロトタイピングがどのように行われているか調査を行った。その結果、技術や社会の変化を考慮に入れて、製品のあるべき姿を描くというプロトタイピングが、企業の開発プロセスや、組織構造などの中に組み込まれており、プロトタイピングが、これからのデザインプロセスとして、有効であるとの認識が定着しつつあることが分かった。
著者
樋口 孝之 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1-10, 2004-01-31
被引用文献数
2

「意匠」の語としての由来は、3世紀後半に、文章の構成の進めかたを説いた陸機『文賦』という漢籍にあり、8世紀に、杜甫が詩のなかで画の構想を苦心して構想する描写に用いた用例が広<知られる。それらの解釈は、作文や絵画の制作における「構想」「旨趣」として理解される。日本では、漢籍からの解釈が学ばれる一方で、字義の訓から、「こころだくみ」「こころのたくみ」としての解釈がなされる。このときの「たくみ」は、「匠」の字義からではなく、ヤマトコトバの語義で理解されたものとみられる。明治初期に、作文や絵画の制作に関する表現以外に、普遍的な思考・思想の上での「考案」や「工夫」といった意味で用いられたことが確認された。「意匠」は、明治の初期には多用されることばではなかったが、明治中頃になって、一般的に用いられるようになっている。Designの対訳語として用いられる以前に、日本語語彙のなかで使用された漢語としての語義の構造があきらかになった。
著者
小野 英志
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-10, 1998-05-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
58

スタンリ・モリスンは, ゴランツ書店の斬新なブック・ジャケットによって知られるデザイナーあるいはアート・ディレクターであると同時に, 印刷・出版の歴史に関する深い学殖を備えた研究者でもある。1932年に発表され, 現在では最もポピュラーなローマン書体とも見做すことのできるタイムズ・ニュー・ローマンの開発経緯を例として, 彼の書体開発態度を, その著作を通じて検討した。その結果, 書体開発における彼の態度は, ブック・ジャケットのデザインのような場合とは異なり, たいへん慎重かつ保守的であり, そのことがまた彼の書体観ないし書体史観の反映であることが了解された。モリスンにおいてこうした態度を支えているものは, 文字の歴史に関する該博な知識と, それが差し示す書体の正統的形態を尊重する姿勢である。
著者
侯 茉莉 小野 健太 渡邉 誠
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.17-24, 2010-11-30 (Released:2017-06-24)
参考文献数
14

台湾では戦後早期のデザイン発展およびデザイン教育において、日本からの影響と、米国およびヨーロッパの専門家や学者から多くの協力が得られた。日本の影響のもとに築かれた台湾のデザイン教育が、商工業の発展につれて次第に独自のスタイルを持つようになった。一方、日本でも、ものを作るだけの時代から、更にマーケティング等の視点を取り入れ発展してきた。本論では、100年以上の歴史を経た現在の日本および台湾における高等デザイン教育の状況、また、日本と台湾のデザイン教育の相違を抽出することが目的である。日本の35のデザイン学科および台湾の32のデザイン学科に対し、カリキュラムの調査を行った。具体的には、それぞれのカリキュラムについて、重視されている、あるいは欠けている課程を調べ、数量化理論III類を用いて分析することにより、9つのタイプに分類を行った。それらのタイプと日本、台湾との関係を見ることにより、日本のデザイン教育は多様な要素を含んだ総合的な学問として、台湾のデザイン教育は「ものづくり」ための技術教育を中心に発展してきたことが分かった。
著者
中辻 七朗 伊藤 浩史 伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.3_21-3_30, 2017-11-30 (Released:2018-02-01)
参考文献数
21

本研究は,タイプフェイスについて,専門家と非専門家の類似性判断の差異を実験的に検証した。刺激として用いたのは,セリフ書体およびサンセリフ書体である。実験手法としては,各書体が記載されているカードを各書体の形態の類似度に応じて2次元空間に配置するカード配置法を用いて,空間上の刺激間の距離から各書体の形態の類似度を計測した。専門家と非専門家の空間配置について,配置図間の類似性を評価する跡相関係数を算出したところ,5%水準で有意差が認められ,専門家と非専門家の類似性判断に差異があった。次に,取得された類似度と各書体の文字の太さの相関関係を調べた。サンセリフ書体については,専門家の判断は中程度の相関を示したのに対して,非専門家の判断は強い相関を示したことから,非専門家によるサンセリフ書体の類似性判断は,字体の太さに大きく影響されることがわかった。
著者
森 優子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.139-146, 2001-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
9

文を書くには, 文字以外に句読点をはじめとするさまざまな記号や符号が使用される。文をより正確に, 読みやすく表現するためには, これらの記号類は重要な要素となる。日本語の横組の文で用いられている句読点には, 現在3通りの組み合わせが存在する。本稿では, 句読点の不統一性に着目することでその現状について把握し, 問題点の所在を明確にすることを目的とする。まず, これらの句読点がどのような規則に基づいて決められ, 使用されるに至ったのかを把握するため, 句読の指針を示す記述がある文献について調査した。次に, 句読点の使用の現状を知るために, 現在発行されている定期刊行物がどの方式を採用しているのか調査し, それらの分野ごとの傾向について比較した。最後に, アンケートを通して個人の句読点に関する意識調査を行った。句読点の不統一性に着目した3調査の結果, 句読点に関する一般の規則と, 印刷物における使用の実態, さらに個人が持つ意識の間には差異があることが明らかになった。
著者
林 孝一 馬場 亮太 御園 秀一 小野 健太 小原 康裕 渡邉 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.6_39-6_48, 2014-03-31 (Released:2014-06-10)
参考文献数
25

60年近い歴史をもつ東京モーターショーに出展されたショーカーはそれぞれの時代の社会変化を鋭く反映してきた。本研究は各ショーカーの訴求ポイントをグループ化し、そのコンセプトを、「性能」、「社会対応」、「サイズ」、「付加価値」の4カテゴリーに分類し考察を加えた。その結果、日本の自動車産業とデザインの変遷は7つの時代に分類して精査していくことが適切であるとわかった。さらにその時代ごとのデザインへの期待や役割の変化が以下の4つに区分される事も判明した。1954~70年:欧米のライフスタイルに追従するドリームデザイン、1971~84年:機能とデザインの融合により意味と独自性があるデザインの創生、1985~2008年:製品多様化と市場の飽和を背景とした新規性コンセプトの探求とデザイン領域の拡大、2009年~現在: 環境問題や高齢化を反映した車の次世代モビリティーとしての再構築である。この様に社会情勢の変化に応じたデザインへの期待、役割の変化を明らかにした。
著者
小野 英志
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-10, 1998
参考文献数
58

スタンリ・モリスンは, ゴランツ書店の斬新なブック・ジャケットによって知られるデザイナーあるいはアート・ディレクターであると同時に, 印刷・出版の歴史に関する深い学殖を備えた研究者でもある。1932年に発表され, 現在では最もポピュラーなローマン書体とも見做すことのできるタイムズ・ニュー・ローマンの開発経緯を例として, 彼の書体開発態度を, その著作を通じて検討した。その結果, 書体開発における彼の態度は, ブック・ジャケットのデザインのような場合とは異なり, たいへん慎重かつ保守的であり, そのことがまた彼の書体観ないし書体史観の反映であることが了解された。モリスンにおいてこうした態度を支えているものは, 文字の歴史に関する該博な知識と, それが差し示す書体の正統的形態を尊重する姿勢である。
著者
村山 久美子 山下 利之
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.92, pp.13-20, 1992-07-01

本研究では美術大学生のキャリアの成功を援助するという目的を持った創造性開発訓練コースにアートセラピーの技法を応用している。「美的表現訓練」と名づけたコースは9週間のセッションから構成された。プログラムの中心は成功のためのイメージトレーニングの考え方を応用して,過去の成功イメージに相当する過去の絵の再現,現在の問題に対処するためのフォーカシング技法を用いた表現を2回,未来の成功イメージに関連する将来作りたい作品のスケッチ,というテーマを用いた。さらに代表的なアートセラピー技法として風景構成法を加え,またコースの前後には訓練効果を測定する意味でK-H-T-P描画テスト(Kinetic-House-Tree-Person Drawings)と美的関心度テストと自己評価尺度を繰り返した。美的関心度テストにはコースの効果が明らかに見られた。また自己評価の改善にも若干の改善をもたらした。