著者
吉田 美穗子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.6_101-6_106, 2012 (Released:2012-05-30)
参考文献数
20

写真から喚起される時間印象が,境界拡張の生起に及ぼす影響を検討した。実験1では,写真から喚起される時間印象を調査するために,30枚の写真について 20個の形容語による評定が行われた。この結果,無時間・持続・変化の3種類の時間印象が写真によって喚起されることが示唆された。実験2では,実験1の結果に基づいて統制された刺激を 15枚用いて,3つの時間印象を喚起させる写真における境界拡張の程度を評定課題により測定した。その結果,時間印象が境界拡張関連することが示され,無時間の時間印象を喚起させる写真では,持続・変化の時間印象を喚起させる写真よりも境界拡張の程度が少ないという関係性が示唆された。これは,時間的な拡がりの豊富さと大きな空間的拡がりが相関すると解釈された。これらの結果から,写真の喚起する空間的拡がりと時間的拡がりの関係性の一端が実験的に明らかにされた。
著者
小原 康裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.47-56, 2000-03-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
38

A.M.カッサンドルはポスター・デザイナーとして, 主に1920年代後半から1930年代後半に, フランスを中心に活躍した。彼の作品の画面には, この時代に特徴的なスタイルである幾何学的な構成が顕著にうかがえる。本稿の目的は, 彼のポスター制作における技法と造形理論を考察し, 数学的な視点から分析して、体系づけることである。また本稿は、彼の画面構成が, 単に装飾のための技法によるものではなく, 理論を伴った機能的なデザインによるものであることを証明することを試みた。特に, 技法の再現と分析には, コンピュータを利用した。結論として本稿は, 彼の技法が, 「機能主義に基づく幾何学の利用」を意図していることを指摘した。また, この技法の成立と展開が, ポスターの印刷される紙面と, 印刷技術へのアプローチから導き出されたものであったことを明らかにした。
著者
中村 卓 鵜沢 隆
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.4_99-4_106, 2012 (Released:2013-01-17)
参考文献数
25

レッド・ブルーチェアはG.Th.リートフェルト(1888-1964)によってデザインされた家具作品として現在も広く知られており、そのデザインは1918年頃に初めて制作されてから、形状・彩色等の異なる様々な作例が作られた。筆者は制作年代とデザインの異なる3つの作例(1918, 1921, 1935)の実測調査を行い、既に指摘されている架構の構成の特徴を問い直した。その結果、1:2の比率の矩形が架構全体を通して角材の架構の配置の基準として立体的に展開していることを指摘した。また実測調査した3作例を比較した結果、部材の寸法値はそれぞれで異なるが、角材の配置基準は一貫していた。そのため架構の構成は部材の形状差に柔軟に対応し得るシステムをその特徴としていることが明らかとなった。さらにこの特徴を考慮し、リートフェルトの他の代表的作品とレッド・ブルーチェアを比較した。その結果、レッド・ブルーチェアの特徴的な構成は後の作品の展開の上で、中核的な役割を果たしていたことが確認され、リートフェルトの家具作品の中でのレッド・ブルーチェアの重要性を指摘した。
著者
岡田 詩門
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.74, pp.11-18, 1989-08-05 (Released:2017-07-25)

商品企画書は,商品の全てを記述する為のものであり,共同主観性に基づくストーリー性が必要である。その為にストーリー性がわかると言う人間の認知プロセスをモデル化すると,視座と時間性が重要であると言う仮設が成り立つ。この仮設を検証する為に,新規開発する情報機器を対象に,ストーリー性ある商品企画書を作成し,商品化した。その結果,取扱説明書を商品開発の開発初期の段階で作成することが,<わかりやすい>商品の実現にとって必要であることが検証できた。つまり開発初期の段階で取扱説明書を作成することによって<わかりやすい>操作手順と画面表示が可能になり,企画者と使用者は,共同主観的インターフェイスに基づく対話を獲得する。
著者
石川 重遠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.1-8, 1997
参考文献数
34

19世紀初頭のロンドンで誕生した書体「ファット・フェイス」の形態の成立について次のように考察し、まとめた。(1)端物印刷媒体の興隆により、ディスプレイ・タイプとしてファット・フェイス・ジョビング・レターの使用が活発化した。これらの活字書体がより大きく、より太く、目立つ書体として形成されたものがファット・フェイスの基本となった。(2)18世紀には書籍用活字鋳造界のモダンな活字書体の継続的開発が活発に行われた。それらの書体の形態構成要素がファット・フェイス・ジョビング・レターに取り入れられたことは、さらに、ファット・フェイスヘと発展するための重要な形成要素となった。(3)ファット・フェイスは、当初、トランジショナル・ローマン系とモダン・ローマン系の書体があったが、モダン・ローマンの形態を強く受け継いだファット・フェイスがその典型として確立された。
著者
山本 佐恵
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.63-72, 2009-07-31 (Released:2017-06-29)
参考文献数
64

1940年のニューヨーク万博の展示館「カヴァード・スペース」に、日本は写真壁画《日本産業》を展示した。それは「造船」、「手工芸」、「紡績」、「機械工」、「航空」というテーマの5面から構成され、写真のモンタージュに加え、写真への着色や、金属、絣綿布、木綿紐、ガラス、加工ベニヤ板等を写真に組み合わせて構成するなど、造形的処理が施されていた。こうした手法は、欧米の模倣や追従ではない独自の表現方法として、当時、日本の批評家から高く評価された。《日本産業》に使われた写真は、土門拳など当時の新進写真家たちが撮影した「報道写真」だった。5面を連結させて一つのテーマを構成する方法は、「報道写真」における「組写真」の形式にならったものだった。その背景には、当時ドイツから移入された新即物主義と、そこから生まれた「リアル・フォト」の表現があった。また、報道写真家パウル・ヴォルフの写真から、構図や表現に多くの示唆を受けた可能性が指摘できる。
著者
中西 啓
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.95-102, 2009
参考文献数
31

本研究は、ハミルトン・エリスによる鉄道客車デザインの発展史「NINETEENTH CENTURY RAILWAY CARRIAGES」における叙述を分析対象とする言説分析の試みである。分析対象に比較的多く記される事物の終焉時期を記す解説文に着目し、これらの解説文を記すことが分析対象に何をもたらしているかを考察する。分析では、はじめにこれらの解説文を記すことが発展史として妥当であるか検証する。次にこれらの解説文がデザイン史学において有用であるか考察する。分析には統計学および精神分析学の知見を援用した。統計学の知見を援用する分析からは、事物の終焉時期を記す解説文が分析対象の発展史としての妥当性を損なっていないことが分かった。精神分析学の知見を援用する分析からは、事物の終焉時期を記す解説文の中に、因果関係の説明に客観性をもたらそうとする有用な解説文があることが分かった。これらの分析結果は、事物の終焉時期を記すことの有用性が、デザイン史学の領野において展開できる可能性を示している。
著者
伊藤 久美子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.61-70, 2011-01-31
被引用文献数
2

若い女性における無彩色を含む2色配色の感情効果を追究した.無彩色と有彩色,無彩色同士の2色配色合計246配色を,マンセル色相環の10色相から系統的に選んだ.これらの配色について,ファッション関係で使われる6尺度を用いて,OsgoodのSD法により,50名の女子短大生に配色効果を評価させた.6尺度とは,派手な-地味な,スポーティ-エレガント,緊張した-ゆるんだ,ゴージャス-シンプル,好きな-嫌いな,調和-不調和である.その結果は,無彩色の明度の違いにより,それを含む配色の色彩感情が異なる事を示した.黒は,配色をより緊張させ,よりゴージャスとし,白は,それを含む配色をより好きに,より調和させる.一般に,高明度の無彩色と低明度の有彩色との配色は調和する.白と黒との配色は,全配色中で最も調和する.
著者
蘆澤 雄亮 佐久間 彩記
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.6_27-6_32, 2016-03-31 (Released:2016-05-30)
参考文献数
4

2010年6月に公開した「産業デザイン分野スキルスタンダード」策定にあたり,その指標導出を目的に「デザイナーに期待する能力」および「デザイナーの職務実態」に関して3つの調査研究を行った。デザイナーに期待する能力に関する調査からは,「新たな発想」に関して期待が高く,またアイデア導出から実現までをトータルに考えることができるディレクター的役割のニーズが強いことが分かった。デザイナーの業務実態に関する2つの調査からは,アイデアやコンセプトなどを「考える」業務と,それらを「実現化」する設計業務の2種類に関する関与が最も多く,一方でそれらに付随した業務に関しても関与度が高いことが分かった。
著者
佐賀 一郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.53-62, 2009-07-31 (Released:2017-06-29)
参考文献数
31

明治初期に登場した近代的新聞は,1869(明治2)年から1870(明治3)年にかけてに上海美華書館からもたらされた活版印刷技術の技術的発達を牽引した。本稿では,近代的日刊新聞としてはじめて鉛活字を全面的に使用した『東京日日新聞』(1872〔明治5〕年2月21日創刊)を対象にその内容と意義を検討する。『東京日日新聞』の創業者らは,近代的新聞の発行の条件のひとつに活版印刷を数え,上海美華書館から輸入した五号相当の鉛活字を使用したが,必要字種の不足,活字の形状の問題等によって,ごく短期間で頓挫した。本稿では同紙の印刷面を確認し,その内容と,この経験が後にどのような影響を与えたのかを検討する。上海美華書館の印刷技師からもたらされた外来技術である活版印刷技術は,特に草創期においては,これをいかにして実地に利用するかが問題とされていた。短期間に終わったとはいえ,『東京日日新聞』において行われた鉛活字の使用は,競合紙と同様の自家印刷環境の整備を促しただけでなく,後に多くの新聞が追随して使用した五号活字を基準とした紙面体裁の整備を促した。
著者
石川 重遠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.17-24, 1995-09-29 (Released:2017-07-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

世界最初の近代的広告用活字書体とされるファット・フェイス出現の要因をそれに直接関わる活字鋳造,印刷,印刷媒体などに探り,下記のように明確化した。(1)イギリスにおいて19世紀初頭には掲示伝達媒体が定着し,ノウティス,ビルが多数使用された。この見出しに訴求力のある大形の書体が求められた。(2)19世紀初頭には世俗的読み物や雑多な端物印刷物の量が増え,見出しやタイトルなどに目立つ,新しい書体が求められた。(3)18世紀後半からフランスを中心としたモダンな新書体活字開発ラッシュと産業革命の革新的環境は,イギリスの端物印刷用活字鋳造家に大きな刺激を与えた。(4)モダン・フェースの特徴を大型活字に取り込み,ファット・フェイスに結晶させたロバート・ソーンの産業革命時代の活字鋳造家にふさわしい創造性と先見性も重用である。
著者
田中 正明
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1970, no.11, pp.27-44, 1970-03-30 (Released:2017-07-25)

After making the appearance of Modern-face Roman by Didots and Bodoni, there were produced various type faces, Fat-face, Egyptians, San Serifs etc., as type face for commerce and advertising. The subject of this essey is a study concerning Type Derign in practical use, through the material of the playbills of London (mainly) in mid-nineteenth century. The material are as follows. Fig. 1 May 21, 1822 Fig. 7 June 17, 1854 (Philadelphia) Fig. 2 Aug. 8, 1831 Fig. 8 Feb. 13, 1860 Fig. 3 May 3, 1839 Fig. 9 Mar. 30, 1860 Fig. 4 May 25, 1840 Fig. 10 Mar. 30, 1860 (detail) Fig. 5 July 1, 1840 Fig. 11 Mar. 31, 1860 Fig. 6 Dec. 16, 1847 (Birmingham)
著者
田村 良一 都甲 康至 石川 奉矛 北川 央樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.6_95-6_104, 2016-03-31 (Released:2016-05-30)
参考文献数
22

本論文は,デザインプロジェクトの戦略的な遂行に向けて,経営戦略の考え方を参考として,デザインプロジェクトの特徴,成功要因やリスクヘッジ要因を見出すための考え方や方法を構築,提案したものである。 前者では,研究開発を対象とした既往研究をもとに評価項目を収集,整理し,強みと弱みに関する17種類,機会と脅威に関する13種類の合計30種類の評価項目を作成した。後者では,強みと弱みに関する17種類の評価項目をもとに,それらが達成することを成果とする成果項目を作成し,DEMATEL法により項目間の影響関係を把握するとともに,各項目の重要度,さらに実現可能性を加味することで,成功要因やリスクヘッジ要因を導出する考え方を構築した。そして,事例検証を通して,項目や分析の考え方の適用可能性を確認した。
著者
齋藤 美絵子 高野 裕子 嘉数 彰彦
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.56, pp.80-81, 2009-06-20

I will lead the way to attract passers' attention to movie billboards to improve the situation of them in Okayama as a model case in a regional city. As a result of examination of movie billboards in Okayama,it developed that passers saw movie billboards a moment but didn't remember about the contents of televised programs. So,I aimed at "focal attention". I formed the hypothesis that the effective way to prompt focal attention is televising using short movies between programs. To inspect the effect, I did the experiment to compare the cases when subject watched interesting short movies or not. As a result of it,I confirmed interesting short movies made subjects watch consciously.
著者
林 品章
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1-10, 2000-01-31
被引用文献数
1

「台湾戦後視覚伝達デザイン運動」の研究は, 時期により二部に分けられる。前編は1945年から1970年まで, 後編は1970年以降である。本論文は台湾における第二次大戦後の「デザイン運動」と呼ばれる出来事を整理した上で, 関係する文献の探求や当事者のインタビューを通し, 台湾の視覚伝達デザイン史の基礎を作り出そうとするものである。内容としては, 「東方, 国華, 台湾広告会社」, 「中国美術設計協会」, 「黒白展」, 「デザイン人材養成計画」, 「デザイマン(設計人)とデザイナー(設計家)雑誌」などのデザイン事件が含まれている。研究の結果, これらデザインの出来事は工業デザインに関連する「デザイン人材養成計画」を除き, 全て視覚伝達デザインを主体としていることが明らかになった。また, 台湾戦後の早期のデザイン発展, あるいはデザイン教育において, 日本からの影響と日本, 米国の専門家からの協力が多くあったことが分った。
著者
澤田 浩二 松村 飛志 上野 直樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.54, pp.116-117, 2007-06-20

Minor musicians have utilized various technologies and spaces such as web and a livehouse in order to distribute their music and in order to make a network among musicians and audiences. However, since these technologies and spaces were independently used, these musicians' activities were not visible enough to audiences. Thus, I arranged and implemented GoogleMaps and Blog sites that make minor musicians activities visible. I conducted interview with some minor musicians along with utilizing these GoogleMaps and Blog sites. The result of interview shows that these sites has possibilities of making minor musicians activities visible and of constituting a network among musicians and audiences.
著者
真行寺 由郎 上野 直樹 小池 星多
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.54, pp.112-113, 2007-06-20

Traditionally, in the domain of interface design, design of scheduler has focused only on functional aspects of the artifact itself without analyzing everyday collaborative activities where scheduler and the other resources are utilized for identifying time and schedule. However, historically, design of scheduler has been not separable from design of activities, institutional organizations, and of modern division of labor. Thus, in this research, I attempt to design a scheduler as part of redesign of collaborative activities.
著者
榊原 瑞穂 蓮見 孝
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.74-75, 1999-10-15

This research is a part of collaborating project for introducing a town-mobility system to put a strong personality to down town in Mito Shimoichi in Ibaraki prefecture. People living in the region have their own images for the area, and these images must be important to make town planning. We developed some research method to draw out regional peoples subconsciousness for that future image. This paper is for reporting the method and process of research of studies that have been done by the University of Tsukuba in 1998.
著者
蓮見 孝 榊原 瑞穂
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.72-73, 1999-10-15

This study is for introducing a town-mobility system to put a strong personality to down town in Mito Shimoichi in Ibaraki prefecture. Town-mobility system was originally introduced in England and now has been spread all over the country. This study project is not only for seeking the way of introducing a system, but also for trying to develop a methodology of collaborating for town planning. This paper is for reporting contents and process of studies that have been done by the University of Tsukuba in 1998〜1999.
著者
樋口 孝之 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.35-44, 2008-01-31
被引用文献数
1

本稿では,明治中期において,「意匠」が重要な概念として用いられた各種の文化に関わる言説の語用を確認し,当時に「意匠」が示した意味内容について考察を行った。明治思想において重要な言説でありその影響が極めて大きかった『美術真説』のなかで,フェノロサが説く'power of subject'が大森惟中によって「意匠ノカ」と訳出された。『美術真説』に啓発された近代文学論において,西洋概念アイデア(idea)に対置される日本語として「意」あるいは「意匠」が用いられた。また,修辞学におけるinventionに「意匠」の語を用いて説明した例がみられる。さらに,目的論の論旨におけるdesign(adaptation of means to ends)を説くために「意匠」が用いられた。「意匠」は,各種の制作活動等において主体が客体をどのようなものとするか案出する思考行為を示しており,また,主体が案出した意図として客体に内在し他者が感受する概念として認知されるものを示すこともあることが確認された。「意匠」は、制作した主体の存在をよく認識させることばとして選択され使用されていたと推測される。