著者
山下 利之 守山 綾華 簑下 成子
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.243-248, 2010-06-15 (Released:2011-04-28)
参考文献数
15

本研究では,能面の表情認知における動的変化の効果を調べるために,傾きや陰影が動的に変化する能面画像を用いて,その能面が表す感情認知に関する実験を行った.中間感情を表すとされる小面の9つの静止画像および24の動的画像の各々について,特定の感情をどの程度表していると思うかに関する評定を,43名の被験者に行わせた.因子分析の結果,“ポジティブ感情”,“ネガティブ感情”の2因子が抽出された.また,能面の陰影や傾きを動的に変化させた場合,静止画像よりも認知される感情強度が強くなる傾向が示された.特に,ポジティブ感情の表情からネガティブ感情の表情へ変化させた場合と,逆にネガティブ感情の表情からポジティブ感情の表情へ変化させた場合の方が,ポジティブ感情どうし,ネガティブ感情どうしの変化よりも感情強度が強くなることが示された.
著者
瀧澤 純 山下 利之
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.343-352, 2013-09-01 (Released:2014-12-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

When people make inference about other’s mental state, they refer as an anchor to privileged information which they know and other doesn’t know, thereafter they make adjustment from the anchor to shared information which they know and other know. When adjustment are insufficiently, they use more privileged information, and have more egocentric biases. The purpose of the present study is to examine whether or not considering an anchor could affect strength of egocentric biases. Participants read a story about an e-mail sent from a person to another person and then the participants were asked to infer mental state of recipient. In Experiment 1, participants were asked to make a considering privileged information before making an inference. In Experi-ment 2, cognitive load were operated, participants made an inference under a condition prevented conscious cognitive process. These results showed that participants who con-sidered privileged information had more egocentric biases. These results are discussed cognitive processes controlling use of privileged information.
著者
村山 久美子 山下 利之
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.92, pp.13-20, 1992-07-01

本研究では美術大学生のキャリアの成功を援助するという目的を持った創造性開発訓練コースにアートセラピーの技法を応用している。「美的表現訓練」と名づけたコースは9週間のセッションから構成された。プログラムの中心は成功のためのイメージトレーニングの考え方を応用して,過去の成功イメージに相当する過去の絵の再現,現在の問題に対処するためのフォーカシング技法を用いた表現を2回,未来の成功イメージに関連する将来作りたい作品のスケッチ,というテーマを用いた。さらに代表的なアートセラピー技法として風景構成法を加え,またコースの前後には訓練効果を測定する意味でK-H-T-P描画テスト(Kinetic-House-Tree-Person Drawings)と美的関心度テストと自己評価尺度を繰り返した。美的関心度テストにはコースの効果が明らかに見られた。また自己評価の改善にも若干の改善をもたらした。
著者
目良 和也 市村 匠 相沢 輝昭 山下 利之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.186-195, 2002 (Released:2002-04-04)
参考文献数
31
被引用文献数
6 21

There have been some studies about spoken natural language dialog,and most of them have successfully been developed within the speci ed task domains. However,current human-computer interfaces only get the data to process their programs.If the dialog processing has emotion comprehensive faculties, it should lead us to more human-like performance.In this paper,we present a method for constructing an emotion-handling dialog system in order to facilitate more confortable interaction with the users. We describe how to calculate emotions from the utterances,focusing on the similarities between the grammar structures and the semantic structures within the case frame.We made emotion generating calculations(EGC)to generate pleasure/displeasure emotion from an event.We also calculate the degree of the pleasure/displeasure from an opposite angle's length of the rectangular parallelepiped consisting of the all the terms in the EGC.EGC uses 8 type calculations for 12 event classi ed type by Okada. Word impressions about like/dislike are used for their calculations.Furthermore,we apply these calculations to the negatives and the noun phrases.To verify the e ectiveness of the proposed method,we tested some conversations using WWW-based health service system for elderly. We applied our method to 80 event in the conversations and calculated emotions almost corresponded to human-generating emotions.
著者
加藤 真梨子 山下 利之
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.576-582, 2016-04-15 (Released:2016-04-20)
参考文献数
10
被引用文献数
3

CMCにおける絵文字のように,線画による表情には幾つかの特定の色が使用されることが多い.本研究では線画表情からの感情認知が,色によってどのように影響されるかを考察した.実験1では,喜び,悲しみ,怒り,驚きを表していると認知されやすい線画表情,中性表情を表す線画表情,あいまいな線画表情の計6つの線画表情を用いて,顔色の部分を赤,黄,青と変化させ,その表情認知を比較考察した.実験2では,背景色を変化させて,感情認知への影響を考察した.実験1,2ともに,主として眉毛や口の形態を感情認知に用いているが,顔色や背景色も感情認知を促進することを明らかにした.具体的には,実験1では,顔の赤色が喜び感情と怒り感情の認知を促進する一方,青色が喜び感情の認知を抑制した.また,青色が悲しみ感情の認知を促進した.実験2では,赤と黄の背景色が喜び感情の認知を促進し,青の背景色は悲しみ感情を促進した.
著者
山下 利之 清水 孝昭 栗山 裕 橋下 友茂
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.349-355, 2005
被引用文献数
1

高度情報化社会の発展に伴い, 子どもの学習のさまざまな場面でコンピュータによる作業が増えつつある.そのため, CAIなどのコンピュータを用いた学習システムにおいても"楽しさ"や"人間らしさ"を与えるヒューマンコンピュータインタラクションが求められている.そのようなインタラクション設計のための基礎的知見を得るために, 本研究ではコンピュータゲームの"楽しさ"に着目した.質問紙調査1では, コンピュータゲームの構造, 特性の因子分析とそれに基づくクラスター分析による考察から, コンピュータゲームの構造, 特性とコンピュータゲームのタイプ間の関連を明らかにした.質問紙調査2では, コンピュータゲームに対する感情表現の評定に関する分析から, コンピュータゲームのタイプとそのコンピュータゲームがプレイヤーにもたらす"楽しさ", "面白さ"の関連性を明らかにした.これらの結果から, コンピュータゲームのどのような構造, 特性がどのような"面白さ", "楽しさ"をもたらすかに関する基礎的知見を得た.
著者
目良 和也 市村 匠 山下 利之 三木 睦明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.465-474, 2003-08-15

相手が発した文章の内容を,相手の好き嫌いの基準をもとに解析し,そこから相手の情緒を推測する手法として,情緒計算手法が提案されている.しかしこの手法では,連体修飾構造,特に節構造による連体修飾の際の好感度計算について有効であるとは言えず,これらの情緒空間に対して,例外処理となっていた.本研究ではこのような問題点を解決するため,連体修飾節の好感度計算に対して,ファジィ真理値限定を適用することによって,適切な計算と処理の統一を試みた.ファジィ真理値限定における真理値計算のうち,言語真理値による影響を修飾節の内容による影響と見なして計算を行う.その際,"好き"の度合を表す真理値と"嫌い"の度合を表す真理値を別々に用意し,被修飾語の持つ好感度に対して,修飾節の影響が打ち消す方向に大きければ,修飾構造全体の好感度を好きから嫌い,嫌いから好きへと変化させる.さらに,情緒計算手法の処理手順についても,効率化を図った.本手法を童話「かちかち山」に現れた連体修飾節に適用した結果を述べる.
著者
山下 利之 高橋 雅博 酒井 秀昭 武田 利浩 市村 匠
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.105-112, 2000-04-15
被引用文献数
8

高度情報化社会の発展に伴い, コンピュータとのコミュニケーションにより, 長時間の仕事, 作業を進める機会がますます増えつつある.人間同士のコミュニケーションの場合, 自然言語によるverbal情報に, 表情や身振りによるnonverbal情報が加わり, 円滑なコミュニケーションが行われている.そこで, 人間とコンピュータとの円滑なコミュニケーションを促進するインタフェースとして, 本研究では顔に注目した.そして, 特定の状況において生じる感情を表している表情をファジィ推論によって選択するモデルを提唱した.眉と目の傾きに関する3条件と口の形の3条件の組合せによる9種類の顔を用いてファジィ推論モデルを構成した.本モデルを, コンピュータ画面上に入力された文章に表されている感情を表情で表現するシステムへ応用することを試みた.システムに関する質問紙調査の結果, ヒューマンインタフェースとしての顔表示の有効性が示された.
著者
山下 利之 長縄 久生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.827-835, 2012
被引用文献数
1 1

“彼は硬いから,アドバイスを聞いてくれないだろうな”,“発想の転換ができないのは,頭が硬いからだ”,“彼は頭が硬いから,説得するのが難しいよ”,・・・といったように,“硬い”という表現は日常よく使われる.心理学における心の“硬さ(rigidity)”とは,このような,融通がきかない,柔軟性がない,一つの考えや行動パターンに凝り固まっているような心の状態を意味する.硬さはパーソナリティ特性を基本としながらも経験により形成されると考えられている.“心の硬さ”は,自分の中で固定されたイメージに固執して,就職の選択を自ら狭めたり,柔軟に自分の可能性を吟味できないなど,些細な問題が就職活動の妨げになっていることがある.そこで,就職活動の心理的支援として“心の硬さ”を測定し,その“硬さ”の特性に応じてアドバイスをフィードバックする支援ツールを作成した.
著者
瀧澤 純 山下 利之
出版者
Japanese Cognitive Science Society
雑誌
認知科学 = Cognitive studies : bulletin of the Japanese Cognitive Science Society (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.343-352, 2013-09-01

When people make inference about other's mental state, they refer as an anchor to<br> privileged information which they know and other doesn't know, thereafter they make<br> adjustment from the anchor to shared information which they know and other know.<br> When adjustment are insufficiently, they use more privileged information, and have<br> more egocentric biases. The purpose of the present study is to examine whether or not<br> considering an anchor could affect strength of egocentric biases. Participants read a<br> story about an e-mail sent from a person to another person and then the participants<br> were asked to infer mental state of recipient. In Experiment 1, participants were asked<br> to make a considering privileged information before making an inference. In Experi-<br>ment 2, cognitive load were operated, participants made an inference under a condition<br> prevented conscious cognitive process. These results showed that participants who con-<br>sidered privileged information had more egocentric biases. These results are discussed<br> cognitive processes controlling use of privileged information.
著者
池井 寧 山下 利之 茅原 拓朗 上岡 玲子 上岡 玲子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,人間の記憶力強化の新しい手法として,空間情報にかかわる人間の記憶特性を利用した容量拡大の方法論を構築することである.本手法の特徴は,携帯型コンピュータ等を用いて,場所(空間)やモノの画像と記憶掛けくぎ画像の素早い合成操作を行わせることだけで記憶を高めうることである.携帯電話を含む小型コンピュータを用いた複数の実験で,短い制限時間の記憶課題において,本手法を用いない場合に比較して著しい再生率の向上を達成しうることが実証された.