著者
菊池 啓
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.245-249, 2014-12-30 (Released:2015-02-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1
著者
積山 賢
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.285-287, 2009-09-30 (Released:2016-03-31)
参考文献数
6
著者
藤井 隆夫
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.243-250, 2016-12-30 (Released:2017-02-28)
参考文献数
33

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)の中枢神経障害(neuropychiatric SLE, NPSLE)は比較的高頻度に認められる重症病態である.その発症機序には不明な点が多いが,NPSLEでは一部の自己抗体・抗核抗体の陽性頻度が高いことが報告されている.しかし血清中自己抗体の臨床的意義は必ずしも明確でないことが多く,脳脊髄液(cerebrospinal fluid, CSF)中の自己抗体がより重要である.抗NR2抗体の場合,CSF中の抗体陽性と精神症状(認知障害あるいは急性錯乱状態)との関連が明らかであるが,その病原性を発揮するためには血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の透過性亢進が必須である.一方われわれはCSF中の抗U1RNP抗体がNPSLEの診断に有用であることを報告したが,CSF中の抗U1RNP抗体はBBBの透過性亢進に依存せず,特定のNPSLE症状との相関は判明していない.なお抗リン脂質抗体は神経障害(特に脳血管障害),抗リボゾームP抗体はループス精神病や認知障害と関連することが知られ,ともに抗体の病原性が強く示唆されている.今後,これらの自己抗体がNPSLE症状の予測因子としてのみでなく,治療選択にも活用できるようなバイオマーカーになることが期待される.
著者
加藤 保宏
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.23-27, 2018-03-30 (Released:2018-07-31)
参考文献数
18

SLEは出産可能年齢の女性に多い疾患であるが,高齢発症のSLEも決してまれではない.50歳以降の発症を高齢発症SLE (late-onset) と定義する報告が多く,日本の特定疾患受給者をもとにした報告では50歳以降の発症が全体の30%近くを占めている.高齢発症例では若年発症例に比べ,男女比が低く,漿膜炎,神経症状を認める割合が高く,蝶形紅斑,光線過敏症が少ないといった特徴がみられる.また,高齢者ではSLEが鑑別にあがりにくく,典型的な症状が出にくいことや薬剤誘発性ループスをはじめとする鑑別疾患が多岐にわたるため診断までに時間がかかることも特徴とされている.治療については,海外でいくつかのガイドラインが発表されており,ステロイドと免疫抑制剤(ミコフェノール酸モフェチル内服もしくはシクロホスファミド点滴静注)の併用による寛解導入療法が推奨されている.しかしながら高齢者では腎機能や免疫力の低下も多くみられるため,副作用を考慮し,個々に応じた投薬の調整が必要である.
著者
横田 俊平 名古 希実 金田 宜子 土田 博和 森 雅亮
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.98-107, 2020 (Released:2020-07-11)
参考文献数
41

2019年12月中国武漢市から始まった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症(COVID-19)はパンデミックとなり,世界215か国に広がり,多くの感染者,重症者,死亡者を出しつつその勢いを減じる気配はない.臨床的特徴は,発熱,乾性咳嗽,倦怠感を訴える例が多く,また,病態的には無症状から急性呼吸窮迫症候群や多臓器不全まで幅が広い.小児例は罹患数が少なく重症化することが少ないとされるが,一方,こども病院に搬送される例を詳細に検討すると多くの低年齢児が罹患しており,呼吸不全や多臓器不全を呈する例が少なくない.また,アメリカにおいて重篤感染例から逆算したSARS-CoV-2感染例はきわめて多く,早急の対策が求められている.妊娠中の母親がCOVID-19を発症した場合,帝王切開による分娩が勧められ,また,児への垂直感染は稀であることが明らかになった.他方,出生直後から感染が高頻度に起こるため,出生後直ちに母子分離を図り母乳栄養は避けることが推奨されている.小児期の慢性疾患の中でもステロイド薬,免疫抑制薬,生物学的製剤などを使用している小児リウマチ性疾患児は感染症に対して高感受性群と考えられるが,一方で,抗IL-6受容体モノクローナル抗体やhydroxychloroquineなどの抗リウマチ薬がCOVID-19の呼吸窮迫症候群から多臓器不全への移行期におけるcytokine storm interventionに有効であることが報告されている.免疫抑制薬をこのような慢性炎症性疾患の小児に継続投与を維持するかどうかは大きな問題である.最近,欧米においてSARS-CoV-2感染と川崎病発症との関連性が疑われているが,報告も少なく診断の点で問題があり,川崎病ではなく全身性血管炎として推移を見守ればよいと思われる.
著者
田中 榮一 山中 寿
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.251-259, 2014-12-30 (Released:2015-02-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

薬剤の医療経済性評価は高騰する医療費の適正化を考える上で重要であるが,医療経済的研究は臨床データを基に構築されたモデルシミュレーションにより解析するため,我々が慣れ親しんでいる臨床研究とは異なり,日常診療での薬剤の有効性や安全性との関連性が理解しにくい.そこで本総説では日本のリウマチ患者の前向きコホート研究であるIORRAの日常診療データを用いて筆者らが実施したトシリズマブの医療経済的研究結果とこれまで得られているトシリズマブの有効性や安全性の関係から,薬剤の医療経済学的評価に影響を与える代表的因子として薬価,薬剤の投与継続率および有害事象発現リスクが低く効果発現の可能性の高い患者の選択の3点について考察を加えた.その結果,日常診療における有効性および安全性のバランスは医療経済学的評価に強い影響を及ぼす可能性が推察されることが明らかとなった,また,今回はトシリズマブを題材とした考察であったが,他の生物学的製剤でも医療経済学的検討で得られた成績を日常診療での有効性および安全性の成績と照らし合わせて裏づけることは,日常診療において医療経済学的評価に基づいた適正使用の妥当性を理解する上で非常に重要であると思われた.
著者
行岡 正雄 七川 歓次 行岡 千佳子 小松原 良雄 島岡 康則 正富 隆
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.32-36, 2010-03-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
13

目的:関節リウマチ(RA)の尿中カテコールアミンを測定し,自律神経と気圧の変動との関連性を調査した. 対象・方法:入院RA患者9例(男2例,女7例調査時平均年齢67.67±9.87)を対象とし低気圧(990~1000hPa)中間(1001~1010hPa)高気圧(1011~1020hPa)時の尿中アドレナリン(AD),ノルアドレナリン(ND),ドーパミン(DP),バニリルマンデル酸(VMA)を調査した.尿中AD,NAD,DP,VMAの測定方法はHCLP(2―シアノアセトアミド誘導体化)法で行い,午前1時より翌日午前1時までの間に畜尿した尿を24時間尿としてSRL®にて計測した.気圧は気象庁がホームページで公表している調査当日の大阪市の気圧を用いた. 結果:尿中AD,NAD,VMAのいずれもが低気圧に比較して高気圧において尿中濃度が上昇していた.そのうちADで低気圧6.55±5.66μg/l と高気圧10.67±5.88μg/lとの間で統計学的有意差(p=0.0469)を認めた.またNADでは低気圧133.9±83.09μg/lと高気圧198.38±93.67μg/l(p=0.0265)及び中間気圧151.57±80.88μg/lと高気圧198.38±93.67μg/l との間で有意差(p=0.039)を認めた. 結論:RAでは気圧の変動と伴に自律神経が変動している.すなわち,RAでは低気圧では副交感神経優位,高気圧では交感神経優位の状態となっていることが示唆された.
著者
長田 賢一 渡邊 高志 田口 篤 小川 百合子 芳賀 俊明 中野 三穂 藤原 圭亮 柳田 拓洋 貴家 康男
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.12-19, 2012-03-30 (Released:2015-12-30)
参考文献数
23

線維筋痛症は,1990年にアメリカリウマチ学会が診断基準を用いて診断していたが,2010年に米国リウマチ学会が診断呼び基準(2010)が提案され診断の仕方も変化しつつある.さらに,近年新たに疼痛に効果がある薬剤が臨床現場で使用が可能な状況になった.そこで現在まで行われたいた治療と新たな治療を含めてメンタルケアについてまとめて,現時点での線維筋痛症の治療戦略を再度考察検討した. 三環系抗うつ薬,SNRI,SSRIの効果を比較したメタ解析の結果は,三環系抗うつ薬が,疼痛,倦怠感,睡眠障害に対して最も有効であり,次に,SNRIが有効であったが,SSRIは統計的にはすべての項目で有意な差を認められなかった. プレガバリン,ガバペンチンも線維筋痛症の疼痛緩和に有効である.特に,プレガバリンはガバペンチンより副作用は少ないが,主な有害事象はめまい,眠気,浮腫,体重増加であった. プレガバリン,ガバペンチンと抗うつ薬との併用療法についての有効性については,まだ結論はでていないが,三環系抗うつ薬あるいはSNRIのミルナシプランの併用が有効である可能性が報告されている.
著者
井上 誠 岡崎 貴裕 北園 貴子 柴田 朋彦 水島 万智子 山崎 宜興 東 浩平 山前 正臣 尾崎 承一
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.243-249, 2010-06-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
31

34歳男性.30歳時にバセドウ病と診断され,methylmercaptoimidazole(MMI)にアレルギー反応を認めたためpropylthiouracil(PTU)にて加療されていた.6ケ月前にPTUの投与が一旦終了したが,2ケ月後にバセドウ病再燃のためPTUが再投与された.その再投与1ケ月後から,発熱,筋痛,関節痛,消化管出血が出現.その後,尿潜血,MPO-ANCA陽性を指摘され,血管炎症候群が疑われた為,当院へ紹介入院となった.胸部CTおよび腎生検より間質性肺炎と巣状壊死性糸球体腎炎を認め,顕微鏡的多発血管炎(MPA)と診断した.PTU中止後も臨床所見が改善しなかったため,プレドニゾロン(PSL)0.5mg/kg/日を投与し症状は改善傾向を示した.本症例はPTU再投与後から症状を認め,PTUの再投与がMPAを促進した可能性があると推察された.既報79症例も併せて検討した結果,約10%の症例が,PTUの再投与により血管炎が誘発されており,PTUの再投与においても血管炎を誘発する可能性に注意が必要であることが示唆された.
著者
近森 正幸
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.317-321, 2014-12-30 (Released:2015-02-28)

21世紀を迎え,医療の高度化と高齢社会の到来で業務量も膨大になるとともに,診療報酬も出来高払いからDPCによる一日包括払いに変わり,「早く元気になって自宅へ帰ってもらう」という付加価値を提供するようになった.今回,マネジメントの難しいチーム医療のイロハを述べてみたい. 病院全体から見れば,チーム医療を情報共有の仕方でカンファレンスですり合わせする「もたれあい型」と情報交換で情報共有する「レゴ型」に分類できるが,リウマチの診断,治療という業務を行っている現場の視点で分類すると,「人事レバレッジ」と「タスクシフト」の2種類に分かれる. [人事レバレッジ」のレバレッジは梃子であり,梃子をきかせて働かせるように医師が判断し,その指示のもと一緒に業務を行う方法である.スタッフの専門性が低いため,医療の質も労働生産性もあまり向上することがなく,医師,看護師の負担軽減が大きな役割となる. 「タスクシフト」は業務の代替を意味しており,医療専門職がそれぞれの視点で患者を診,判断し,介入する自立,自動が特徴である.専門性が高いことにより医療の質を高め,スタッフの数だけ労働生産性を高めることができる. DPC時代のチーム医療においては,診療報酬の加算の有無にかかわらず必要であればスタッフを雇い,専門性を高め,自立,自動するスタッフに育て上げることが重要で,そうしてこそマネジメントができるようになりサービス業の付加価値を生み出すことが可能となる.
著者
Wibowo Tansri 河本 恵介 山口 勇太 石田 裕 吉峰 由子 真鍋 侑資 原 侑紀 矢賀 元 中原 英子 比嘉 慎二 前田 恵治 緒方 篤
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.114-120, 2017-06-30 (Released:2017-09-06)
参考文献数
11

症例は75歳男性.血球減少・腎機能悪化・発熱・炎症反応高値に加え,抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性,抗二本鎖DNA(抗dsDNA)抗体陽性より膠原病が疑われたが心エコーにて僧帽弁に疣腫形成を認めたため,血液培養陰性であったが感染性心内膜炎(IE)として抗生剤を開始した.抗生剤に対する反応が十分ではなかったが,Bartonella属抗体の有意な上昇を認めたことが適切な抗生剤の選択につながった1例を経験したので報告する.
著者
岩田 康男 立石 博臣 楊 鴻生 厚井 薫 福西 成男 今村 史明
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-41, 2010-03-30 (Released:2016-02-26)
参考文献数
9

目的:外来通院中の関節リウマチ(以下RA)患者の喫煙状況を調査した. 対象・方法:RA患者115名,変形性関節症(膝)(以下OA)患者59名で,調査項目はRA罹患前や罹患時の喫煙歴,現在の喫煙習慣,喫煙量,その期間や検査データ(リウマトイド因子(RF),CRP,ESR,WBC,Hb)などである.喫煙者の定義はSmokers(以下S群)は罹患時に1日に少なくとも1本以上喫煙していた患者,Never smoked(以下NS群)は過去,現在を含めて全く喫煙をしていない患者,Ex-smokers(以下ES群)は罹患時に6ケ月以上喫煙を中止していた患者とした. 結果:RA患者は女性92例,男性23例,OA患者は女性50例,男性9例であった.性別に見てみるとRAではS群は女性で92例中11例,12.0%,ES群は5例,5.4%であり,男性でS群は23例中15例,65.2%,ES群は13.0%であり,男性ではS群とES群を合わせると78.2%を占めていた.リウマトイド因子は男性RA患者のS群で平均210.0U/ml,NS群で21.5U/mlと有意にS群において高値であった. 結論:男性RA患者の65.2%は罹患時に喫煙者であり,国民栄養調査結果と比較して高率であった.男性RA患者では喫煙者で有意にRFが高値を示した.男性喫煙者ではRAに罹患するリスクが高まっている可能性がある.
著者
竹内 靖博
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.198-202, 2013-09-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
6

体内におけるビタミンD作用は,その特異的受容体を活性化することにより発現される.ビタミンD受容体に結合してビタミンD作用をもたらすリガンドは,1α,25水酸化ビタミンD[1,25(OH)₂D]である.天然型ビタミンDは体内において,肝臓および腎で水酸化されることにより,1,25(OH)₂Dとして生理活性を獲得する.1,25(OH)₂Dは主に腸管からのカルシウム・リン吸収を促進することにより,骨・カルシウム代謝調節に重要な役割を果たしている. ビタミンDの作用障害は,骨石灰化障害を生じてくる病・骨軟化症をもたらす重症のビタミンD作用不全と,主に骨吸収の亢進による骨代謝障害をもたらす軽症のビタミンD作用不足とに大別される.また,ビタミンD充足度の低下に関わる問題が臨床的に重要である.従来の見解とは異なり,わが国の成人におけるビタミンD充足度はきわめて不良であることが明らかにされており,骨・カルシウム代謝異常症におけるビタミンDの重要性は増大している.ビタミンD充足度の適切な評価と不足への積極的な対応が望まれる. 骨折の予防を目的とした骨粗鬆症治療においては,活性型ビタミンD₃製剤が広く用いられてきた.新規の活性型ビタミンD₃誘導体であるエルデカルシトールは,既存のアルファカルシドールを上回る骨折抑制効果を有することが明らかにされており,これからの骨粗鬆症治療における主要な活性型ビタミンD₃製剤となることが予想される.
著者
礒田 健太郎 辻 成佳 原田 芳徳 吉田 祐志 吉村 麻衣子 松岡 秀俊 沖田 康孝 村上 輝明 橋本 淳 大島 至郎 佐伯 行彦
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.121-131, 2021 (Released:2021-07-16)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:関節リウマチ(RA)患者において,栄養状態が感染症の発生に与える影響を調査した.対象・方法:入院を要する重症感染症を合併したRA患者(入院患者群)と,感染症入院のない患者(非入院患者群)との患者背景,臨床所見,治療内容,栄養状態を比較した.栄養状態の指標には予後栄養指標prognostic nutritional index(PNI)とcontrolling nutritional status(CONUT)を用いた.結果:PNIとCONUTによる栄養状態は,入院患者群では非入院患者群より有意に不良であり(共にP < 0.001),特にPNI低値は重症感染症発生の予測因子であった(オッズ比:1.749, 95%信頼区間:1.110-2.755, P < 0.001).結論:RAにおいて感染症は重大な合併症である.感染症を合併しないように安全に治療を行うためには栄養状態の評価と管理が不可欠である.
著者
廣畑 俊成
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.288-295, 2015-12-30 (Released:2016-03-31)
参考文献数
11

神経ベーチェット病は急性型と慢性進行型の2つに分類される.急性型は急性ないし亜急性に発症した髄膜脳炎の形をとり,髄液の細胞数が著明に上昇し,時にMRIのフレア画像で高信号域を認める.一方,慢性進行型では,認知症様の精神神経症状や失調性歩行が徐々に進行し,患者はついには廃人同様になってしまう.この病型では,髄液中のIL-6が持続的に異常高値を示すとともにMRIでは脳幹部の萎縮を認める.稀に両者が合併することもあることから(acute on chronic),両者の病態生理が異なることがわかる.慢性進行型の発症に先立って急性型の発作を起こしている場合が少なくないことから,急性型の発作がおさまった段階で,一度髄液IL-6をチェックしておくことが推奨される.シクロスポリンを投与している患者の約20%に急性の炎症性神経病変を生じるが,これは急性型神経ベーチェット病と同一であると考えられる.慢性進行型では,男性,喫煙,HLA-B51の頻度が高い. 急性型の発作急性期の治療の中心はステロイドである.急性型の発作予防には,コルヒチンの有用性が示唆されている.シクロスポリンによって誘発された急性型ではシクロスポチンの中止でほぼ完全に再発は抑制される.一方,慢性進行型ではまずメトトレキサートによる治療を行うべきであり,効果不十分な場合は,なるべく早くインフリキシマブの追加併用を行う必要がある.ステロイドの大量療法やアザチオプリン/シクロフォスファミドは無効である.
著者
芝本 真季 東 直人 谷 名 松井 聖 東 幸太 槙野 秀彦 北野 将康 佐野 統
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.211-216, 2019-09-30 (Released:2019-11-02)
参考文献数
13

68歳,女性.全身性強皮症(SSc)に伴う偽性腸閉塞で入退院を繰り返していた.メトロニダゾールで偽性腸閉塞の症状,X線所見は改善したが,約3ヶ月後,呂律困難や小脳失調症状が出現し,MRI所見などからメトロニダゾール脳症と診断された.SScに伴う偽性腸閉塞に対して抗菌薬による腸内細菌の過剰増殖の制御が有効とされるが,メトロニダゾール使用時は脳症を発症する可能性があることを念頭に置かなければならない.
著者
安田 知弘 小原 周
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.113-117, 2012-06-30 (Released:2015-10-02)
参考文献数
5

目的:MMP-3値は滑膜局所の炎症を直接反映していると考えられる.しかし実際の臨床における活動性の判断の際食い違いが生じることを経験する.今回我々は,MMP-3値の臨床的特徴を調査した. 対象・方法:通院加療中のRA患者46例を対象とし,DAS28-CRP,CRP,疼痛関節数,腫脹関節数,VASを測定しMMP-3値との関係を調査した.調査1としてCRP,疼痛関節数,腫脹関節数,DAS28-CRP,VAS,mHAQの各項目とMMP-3値の相関を,調査2として6ケ月間でのMMP-3値,CRPの変動量を計算後ΔMMP-3,ΔCPRとしその変動量の関係を,調査3としてMMP-3値の低値群と高値群に分けて年齢,Cr,CRP,疼痛関節数,腫脹関節数,DAS28,VAS,MTX(投与量),プレドニゾロン(投与量)の各項目との関係を,調査4として,Steinblocker StageとMMP-3値との関係を調査した. 結果:調査1:相関係数0.4以上は腫脹関節数のみであった.調査2:6カ月間のMMP-3値の変動量とCPR の変動量との間に相関関係を認めなかった.調査3:疼痛関節数,腫脹関節数,DAS-28(CRP),VAS,プレドニゾロン投与量は,高MMP-3群が低MMP-3群より高かった.年齢,Cr,CRP,MTX 投与量は2群間に有意差を認めなかった.調査4:Steinblocker StageとMMP-3値の間に有意差を認めなかった. 結論:MMP-3値とCRP,疼痛関節数,腫脹関節数,DAS28-CRPが相関を認めた.相関係数0.4以上での相関は腫脹関節数のみであった.6か月間のMMP-3値とCRPの変動量は相関を認めなかった.また,DAS28-CRP,VAS,疼痛関節数,腫脹関節数は高MMP-3群が有意に高値であった.CRPとの有意差は認めていなかった.臨床上のMMP-3値とDAS28-CRP,CRPの相関関係は強くなかった.