著者
吉岡 伸也
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.86-95, 2008 (Released:2008-10-16)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1

青いモルフォチョウを代表例とする構造色, その輝きは古くから科学者達の注目を集めてきた。光学顕微鏡で詳しい観察がされた時代の後, 20世紀中頃に電子顕微鏡が開発されると構造色研究は大きく進展した。輝きの背後にある緻密な微細構造が次々と明らかにされたのである。その構造には波長サイズの周期性が見られたため, 光の波としての性質である“干渉”が, 波長選択的な反射に寄与していることが確かになった。しかし, 自然界の構造色は, 微細構造だけで語ることはできない。もっと大きなサイズの形状や色素の併用など, 総合的な発色の工夫を生物は持っているのである。蝶や蛾の鮮やかな翅の発色の仕組みを紹介しながら, 構造色研究の現状と今後の方向性について考えてみたい。
著者
小泉 修
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.278-287, 1999-12-31 (Released:2011-03-14)
参考文献数
33
被引用文献数
1
著者
吉田 将之
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.317-325, 2011 (Released:2012-01-11)
参考文献数
60

恐怖や不安は,動物の生命存続のためになくてはならない情動であり,様々な情動のうちでも比較的研究が進んでいる。魚類における恐怖や不安の神経機構を調べる上で,それらの情動を再現し,定量的に計測するための有効な方法が不可欠である。最近,従来の動物心理学的な手法に,エソロジカルな考え方も取り入れた魚類の不安の定量化法が導入されつつある。代表的な例のひとつが「新奇環境テスト」であり,これは不安を惹起するような新しい環境(水槽)に魚が遭遇したとき,どのように対処するかを定量的に観察する方法である。もう一つが明暗(白黒背景)選好性テストであり,背景が暗いほうが安心するという魚の習性を利用した不安の定量法である。一方,恐怖については,古典的恐怖条件付けや回避条件付けなどの手法で定量化できるほか,警報物質や捕食者に対する生得的な恐怖反応を利用する方法も開発されている。これらの恐怖・不安定量化法を利用して,情動のメカニズムに関する行動神経科学的,生物医学的研究が進められている。 魚類は多様な環境に適応放散しているが,そのごく一部が研究対象となっているにすぎない。今後,興味深い不安・恐怖行動を示す魚種が発見され,情動メカニズムの進化の解明に寄与することを期待する。
著者
朝野 維起
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.106-114, 2013-09-20 (Released:2013-10-24)
参考文献数
54
被引用文献数
1

黒〜茶系色素であるメラニンは,地球上の生物に極めてありふれた存在である。髪の毛や鱗・皮膚など,我々脊椎動物の体色形成に関わるほか,植物や原生動物でも黒色色素の合成が観察される。また,本総説で説明する昆虫について見てみると,アリやクロアゲハ・カブトムシなどの色からも明らかなように,メラニンの合成は特に珍しいものではない。しかし,種々の生物がつくるメラニンは,一見すると同じ物体であるかの様に見えつつも,個々の生物に特有の合成経路・合成酵素が存在する。つまり,進化の過程に於いてそれぞれの生き物が独自にメラニン合成能を発達・進化させてきたと考えられる。この総説では昆虫のメラニン合成系について論ずるが,特に我々が直接目にする「昆虫の体そのもの」である外骨格内の酵素群について説明する。ドーパやドーパミンなどのフェノール性基質の酸化反応を触媒する含銅酵素を中心に,それらの基質合成系などにも触れる。また,ヒトなどとの違いについて説明するとともに,その進化学的な意義について議論したい。
著者
河村 正二
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.110-116, 2009 (Released:2009-11-06)
参考文献数
31
被引用文献数
1

近年様々な動物において色覚を担う光センサー(錐体オプシン)の解明が進み,動物によりその数や種類や発現パターンが異なることがわかってきた。明度が絶え間なく変動する浅瀬の水環境と森林環境は色覚進化の揺籃地であり,脊椎動物では特に魚類と霊長類が顕著な色覚多様性を示すことと符合する。例えば,魚類のゼブラフィッシュは8種類もの錐体視物質をもち,網膜の領域により発現する錐体オプシンの構成を違えることで,視線の方向によって色覚を違えていると考えられる。これを実現するためのオプシン遺伝子の制御メカニズムもわかってきた。また,中南米に生息する新世界ザルには1つの種内に6種類の異なる色覚型が存在するものが知られており,生息環境と色覚との密接な関連もわかってきている。本稿では魚類と霊長類の錐体オプシンの多様性とその生態学的意味についての最近の知見を紹介する。
著者
菅原 道夫
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.68-75, 2013-05-10 (Released:2013-07-10)
参考文献数
25

ニホンミツバチが,捕食者であるスズメバチを蜂球に閉じ込め殺す仕組みを明らかにした。スズメバチが蜂球に捕捉されると,蜂球内では温度だけでなく湿度も急速に上昇する。5分後には温度は46℃に,湿度は90%以上になる。この時,蜂球内の炭酸ガス濃度は4%に達する。多くのスズメバチは,蜂球内では10分で死ぬ。スズメバチの死をもたらす要因を,蜂球内の湿度とCO2濃度を変え致死温度を測定することで考察した。実験に使用した4種のスズメバチのいずれにおいても,CO2濃度3.7%(ヒトの呼気環境)では,2℃以上も致死温度が低下した。相対湿度が90%以上になると,さらに致死温度が低下した。ヒトの呼気環境中では,大気中に比べCO2は増加し酸素は減少するが,酸素を補っても致死温度は変わらなかった。ニホンミツバチは,蜂球中のスズメバチを酸素欠乏によって窒息死させるのでなく,高温,高湿,高濃度のCO2,の環境中でスズメバチの致死温度を下げることで殺していると考えられた。
著者
定本 久世 高橋 宏暢
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.131-134, 2012-09-20 (Released:2012-10-17)
参考文献数
11

本技術ノートでは,次世代シーケンサーを用いた非モデル動物の全トランスクリプトーム解析について説明する。これまで,非モデル動物のように参照となるゲノムDNA情報がない場合,次世代シーケンサーの配列データを貼り合わせて長い配列情報を得ることが難しかった。また,代表機種であるIllumina社シーケンサーでは,他社機種に比べて安価で大量の配列データが得られるものの,シーケンスデータの配列長が短い。これら技術,費用の両問題により,次世代シーケンサーによる非モデル動物のトランスクリプトーム解析はなかなか進んでこなかった。最近になり,トランスクリプトームデータ解析に特化した,参照配列を必要としない配列貼り合わせ(de novo assembly)プログラムが複数発表されている。我々は,Illumina社シーケンサーとこれらのプログラムを用いて非モデル動物組織のde novoシーケンス,トランスクリプトーム解析を行い,良好な結果を得た。これらの結果を含めて一連のde novoトランスクリプトーム解析手法を紹介したい。
著者
安東 宏徳
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-53, 2018-04-13 (Released:2018-04-27)
参考文献数
27

潮間帯や浅海域に生息する海産生物の多くは,月齢に同調して産卵する。これらの動物は,月周期もしくは半月周期で生殖を繰り返すが,そのリズムの調節機構は現在のところほとんどわかっていない。我々はこれまで,日本各地の海岸で潮汐サイクルに依存しながら新月と満月の日に産卵するクサフグを用いて,その半月周性の産卵リズムの調節機構について研究してきた。フィールドの産卵回遊行動調査や水槽内行動実験,視床下部-下垂体系のホルモンの遺伝子発現解析,メラトニンの分泌やメラトニン受容体遺伝子の発現解析,概日時計遺伝子の解析など,さまざまな分子生理生態学的なアプローチを行ってきた結果,クサフグが生息環境の違いに応じて異なる産卵リズムを持つことや産卵期には内因性の半月周リズムを持つこと,また,半月周リズムを作る時計機構や生殖関連神経ホルモンの周期的発現調節には,クリプトクロームとメラトニンが関与していることがわかってきた。また,クサフグの松果体や間脳では,メラトニン受容体遺伝子が約15時間周期のウルトラディアン発現をすることが明らかになり,クサフグは概日時計と共に,概潮汐時計に関連する新規の時計を持つ可能性がある。概日時計と概潮汐時計があれば,半月周リズムを発振することができる。
著者
酒井 正樹
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.135-150, 2012-09-20 (Released:2012-10-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

今回はニューロンにおける活動電位の伝導をとりあげる。ここでいう伝導とは,軸索起始部で発生した活動電位が,減衰することなく高速で軸索を伝わって行くことである。伝導のしくみについては,活動電位のしくみがわかっておれば,それなりに理解できる。ただし,十分納得しようとすると実はそれほど簡単ではない。それは,伝導には静止電位や活動電位であまり問題にならなかった空間という要素があるからだ。活動電位の発生では,電位変化は球形の細胞膜全域で同時均等に起こっているものとして扱えた。だから,電位の時間的変化だけに注目しておればそれでよかった。また,イオンの電気的作用についてみても,細胞膜を挟んだ近接領域おそらくナノメータ(10–9m)オーダーの範囲でよかった。これに対し,伝導では活動電位の空間的ひろがりを考えねばならない。そのひろがりは,細い軸索の長軸方向に沿ってミリメートルからセンチメートルオーダーにもなる。そして,そのひろがりにおける電位の時間的変化が問題となるのである。このように時間と空間という2つのパラメーターが同居していると,一方のことを考えていると他方のことを無視してしまいやすい。また,伝導においては,電位の変化速度も問題になってくる。さらに,電流の速度と,電流を運ぶ荷電体の速度は別物であるという“電気の常識”も知っておく必要がある。ここでは,前2回の講義を受けているとの前提で話をすすめていくが,一般解説書にあるような事実の紹介はなるべく避けてイメージによる直感的理解をめざす。今回も,コラムについては読みとばしていただいて結構である。
著者
岩田 勝哉
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.184-192, 1998-09-30 (Released:2011-03-14)
参考文献数
57
被引用文献数
2
著者
下澤 楯夫
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.153-164, 2006-08-20 (Released:2007-10-05)
参考文献数
19

Part 6. Entropy cost of information in living neuron is estimated to be very close to the thermodynamic limit at 0.7kB per bit of information. Parallel transmission and principle of summation average with stochastic sampling is explained as the essential way of adaptation under the inevitable thermal noise. Theoretical arguments on Maxwell's demon and the negative entropy principle of information or the irreversibility of measurement are explained. Origin of life and the evolution of life are discussed from the information theoretic standpoint, in reference to the actual values of rate of information and the energy threshold of living cell.
著者
齋藤 茂
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.259-266, 2011 (Released:2011-11-08)
参考文献数
43

動物は環境温度を正確に感知して行動や生理的な応答により順応している。そのため温度感覚は適応進化においても重要な役割を担ってきたと考えられる。温度受容体はtransient receptor potential(TRP)遺伝子ファミリーに含まれる温度感受性チャネルである。進化過程で温度感受性TRPチャネルに生じた変化は温度感覚に直接的な影響を与えるため,これらの遺伝子の進化過程を調べることは適応的な役割を解明する上で欠かせない。筆者らは,温度感受性TRPチャネル遺伝子を複数の脊椎動物種のゲノム配列データから収集し,分子系統解析を行い遺伝子レパートリーの多様性およびその進化過程を明らかにしてきた。また,機能の進化過程を推定するために,哺乳類から系統的に離れた両生類であるニシツメガエルからTRPV3をクローニングし電気生理学的な手法による機能解析を行った。ニシツメガエルTRPV3は温度感受性が哺乳類のものと大きく異なり,進化過程でその機能を柔軟に変化させてきたことを明らかにした。本稿では,脊椎動物の温度感受性TRPチャネルの遺伝子と機能の進化について最近の知見を紹介する。
著者
松野 あきら
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.54-61, 2010 (Released:2011-04-27)
参考文献数
39

ある種の平滑筋は1度収縮すると,その後ほとんどエネルギー消費をしないで収縮したままの状態を保つことができる特殊な筋収縮をする。このような収縮はキャッチ収縮と呼ばれ,キャッチ収縮を引き起こす機構をキャッチ機構と呼ぶ。キャッチ機構の研究には色々なアプローチが試みられており,現在では,生化学的および分子生物学的手法でキャッチ状態を解除する機構までもが明らかにされている。少し過去にさかのぼると,キャッチ筋の太いフィラメントに含まれるパラミオシンとキャッチ機構との関係が注目されたが,細胞内での構造的な証拠が得られなかった。しかしながら,多種多様の閉殻筋平滑筋のキャッチ筋には,直径が50-60nm以上の太いフィラメントが含まれているのが観察される。これらのフィラメントが直接キャッチ機構に関与していることはなさそうだが,今後の生化学や分子生物学の研究で,このフィラメントの重要性が再確認される日が来るだろうと思われる。
著者
保 智己 川野 絵美
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.185-194, 2004-12-31 (Released:2011-03-14)
参考文献数
45
被引用文献数
1 1
著者
服部 淳彦
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-11, 2017-03-29 (Released:2017-04-11)
参考文献数
30

エイジングに伴って,様々な器官に衰えが生じることは避けられない。特に,睡眠障害や記憶力の低下,骨粗鬆症による骨折などは,高齢者のQOL(Quality of Life)低下につながり,その予防や改善策は喫緊の課題である。メラトニンは松果体から夜間にのみ分泌される「夜の時刻情報の伝達物質」であるが,その分泌量は加齢とともに激減する。近年,メラトニンは松果体以外の様々な器官においても合成されること,フリーラジカルや活性酸素を消去する抗酸化物質としての性質を併せ持つことが明らかとなった。そこで,この加齢に伴って減少するメラトニンを補充するという長期投与実験がなされ,マウスやラットでは寿命を延ばすことが報告されている。ヒトでも,閉経後骨粗鬆症の進行を抑制し,アルツハイマー病に対しても通常の治療薬との併用ではあるが,進行を抑制することが報告され,一段とアンチ(ウェル)エイジング効果に期待が集まりつつある。最近我々は,メラトニンの学習・記憶増強作用が,メラトニンの脳内代産物であるN-acetyl-5-methoxykynuramine (AMK)の長期記憶誘導作用に起因していることを見出し(特願2016-42875),老化によって長期記憶形成力が低下したマウスやコオロギにおいて,AMKの単回投与が記憶力の有意な改善をもたらすことを明らかにした。また,我々が見つけたメラトニンの破骨細胞(骨溶解)抑制作用を期待して,国際宇宙ステーション「きぼう」実験棟において実験を行い,宇宙でもメラトニンが破骨細胞を抑制することを確認した。
著者
橘木 修志 河村 悟
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.70-79, 2017-09-21 (Released:2017-10-06)
参考文献数
48

脊椎動物の網膜には桿体と錐体の2種類の視細胞が存在する。いずれも光を検出して神経情報に変換する働きをしている細胞であり,互いによく似ている細胞である。その一方,光に対する応答の仕方には2つの点で大きな違いがある。一つめの違いは光に対する感度の違いである。光に対する感度は錐体よりも桿体のほうが著しく高い。このため,我々は暗いところで桿体を使って物を見ることが出来る。もう一つの違いは応答の持続時間の違いである。同じ光刺激に対して,錐体は桿体より短く応答する。このため,錐体が働く明るい光環境下では,より高い時間分解能で光刺激の変化を見ることが出来る。応答の異なる2種類の視細胞を使い分けることにより,我々は様々な光環境で物を見ている。ところが,桿体と錐体の応答の違いがどのような分子メカニズムで決まっているのかについては長らく不明であった。著者らは魚類のコイの網膜から精製した桿体と錐体を材料として,その違いの生じる分子メカニズムを研究している。本稿では著者らの成果を中心に,これまでにわかってきたことを紹介したい。
著者
河村 正二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR COMPARATIVE PHYSIOLOGY AND BIOCHEMISTRY
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.110-116, 2009-08-20
被引用文献数
1

近年様々な動物において色覚を担う光センサー(錐体オプシン)の解明が進み,動物によりその数や種類や発現パターンが異なることがわかってきた。明度が絶え間なく変動する浅瀬の水環境と森林環境は色覚進化の揺籃地であり,脊椎動物では特に魚類と霊長類が顕著な色覚多様性を示すことと符合する。例えば,魚類のゼブラフィッシュは8種類もの錐体視物質をもち,網膜の領域により発現する錐体オプシンの構成を違えることで,視線の方向によって色覚を違えていると考えられる。これを実現するためのオプシン遺伝子の制御メカニズムもわかってきた。また,中南米に生息する新世界ザルには1つの種内に6種類の異なる色覚型が存在するものが知られており,生息環境と色覚との密接な関連もわかってきている。本稿では魚類と霊長類の錐体オプシンの多様性とその生態学的意味についての最近の知見を紹介する。