著者
網田 英敏 彦坂 興秀
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.158-167, 2018-12-25 (Released:2019-01-21)
参考文献数
33

たくさんのものの中から自分の欲しい餌をすばやく見つけることは動物にとって重要なスキルである。餌の探索に時間をかけると,他個体に奪われたり,自分が捕食されるリスクが高まるからである。そのため,動物は採餌経験をもとに好ましい餌をすばやく見つける能力を備えている。アカゲザルはヒトと同様に視覚を用いて採餌をしているため,視覚手がかり刺激と報酬との関係性(連合)をすみやかに学習することができる。連合学習を繰り返し経験させると,サルは報酬と結びついた刺激に対してすばやく眼球運動(サッケード)を行い,複数の刺激のなかから報酬と結びついた刺激を見つけ出せるようになる。私たちの研究グループは,大脳基底核回路がこの探索スキルに重要であることを見つけた。大脳基底核にあるニューロン群は,報酬と連合した刺激をそうでない刺激と区別して表現していた。さらに,大脳基底核にある直接路と間接路を光遺伝学や薬理学的手法で操作することによって,サルの眼球運動を変えることができた。一連の研究から,直接路は「良いもの」に目を向けるために,間接路は「悪いもの」を見ないようにするためにそれぞれ協調して働いていることがわかった。
著者
下澤 楯夫
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.38-43, 2006-04-20 (Released:2007-10-05)
参考文献数
14

Part 5. Actual measurement of the rate of information transmitted along cricket wind sensory neurons is shown. Input-output coherence is measured for the practical calculation of neuronal information, instead of signal-to-noise ratio. The measurement reveals that the sensory neuron can transmit information at the rate of 400 bit per second at its maximum. Energy threshold of the sensory neuron is determined to be at the order of kBT. Based on these measurements, entropy cost of information in living neuron is also estimated to be very close to the thermo dynamic limit of 0.7kB per bit of information.
著者
永田 晋治 清家 瞳
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.31-37, 2021-04-01 (Released:2021-04-22)
参考文献数
66

昆虫の摂食行動も,他の生物と同様に内分泌系により支配されている。ペプチド性因子はその中心的役割を担い,エネルギー恒常性を維持している。栄養分依存的なメカニズムとしては,他の生物と同様,インスリン様ペプチド (ILP)と脂質動員ホルモンAKH(グルカゴンの昆虫におけ る機能的アナログ)により血糖値や体液中の脂質レベルを調節する。その上流や下流では,他のペプチド性因子が機能し,ホルモンリレーを作り,様々な栄養条件に対応できるようになっている。また,摂食行動に重要とされている各組織には,内分泌細胞が存在し,ペプチド性因子と摂食行動との強い関わり合いが予想できる。これらのペプチド性因子は,腸管の蠕動運動を調節することが知られているので,腸管の蠕動運動や口の動きなど摂食行動にかかわる運動はペプチド性因子が直接制御していると考えられる。 つまり,ホルモンによる統合的な調節メカニズムが摂食行動を制御しているのであろう。
著者
武内 伸夫
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.92-102, 1993-06-30 (Released:2011-03-14)
参考文献数
44
著者
服部 淳彦
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-11, 2017
被引用文献数
1

<p>エイジングに伴って,様々な器官に衰えが生じることは避けられない。特に,睡眠障害や記憶力の低下,骨粗鬆症による骨折などは,高齢者のQOL(Quality of Life)低下につながり,その予防や改善策は喫緊の課題である。メラトニンは松果体から夜間にのみ分泌される「夜の時刻情報の伝達物質」であるが,その分泌量は加齢とともに激減する。近年,メラトニンは松果体以外の様々な器官においても合成されること,フリーラジカルや活性酸素を消去する抗酸化物質としての性質を併せ持つことが明らかとなった。そこで,この加齢に伴って減少するメラトニンを補充するという長期投与実験がなされ,マウスやラットでは寿命を延ばすことが報告されている。ヒトでも,閉経後骨粗鬆症の進行を抑制し,アルツハイマー病に対しても通常の治療薬との併用ではあるが,進行を抑制することが報告され,一段とアンチ(ウェル)エイジング効果に期待が集まりつつある。最近我々は,メラトニンの学習・記憶増強作用が,メラトニンの脳内代産物であるN-acetyl-5-methoxykynuramine (AMK)の長期記憶誘導作用に起因していることを見出し(特願2016-42875),老化によって長期記憶形成力が低下したマウスやコオロギにおいて,AMKの単回投与が記憶力の有意な改善をもたらすことを明らかにした。また,我々が見つけたメラトニンの破骨細胞(骨溶解)抑制作用を期待して,国際宇宙ステーション「きぼう」実験棟において実験を行い,宇宙でもメラトニンが破骨細胞を抑制することを確認した。</p>
著者
渡邉 英博
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.89-105, 2013-09-20 (Released:2013-10-24)
参考文献数
120
被引用文献数
1

夜行性で雑食性の不完全変態昆虫であるワモンゴキブリ(Periplaneta americana)は高い匂い識別能力と匂い学習能力を備えた昆虫である。また,その実験学的な扱いやすさから過去四半世紀の間,嗅覚の神経機構を探る電気生理学研究や解剖学研究,行動実験に広く用いられてきた。ワモンゴキブリは二本の鞭状の長い触角の表面に存在する,三種類の形態学的に異なる嗅感覚子によって,外界の匂い分子を取得する。これらの嗅覚情報は一次嗅覚中枢である触角葉を構成する205個の糸球体の時空間的な応答パターンに符号化され,高次嗅覚中枢であるキノコ体や前大脳側葉で異種感覚情報や記憶情報と統合される。本稿ではワモンゴキブリの嗅覚情報処理機構について触角嗅感覚系での嗅覚受容から,触角葉での一般臭の匂い情報処理機構について報告する。続いて,高次嗅覚中枢であるキノコ体や前大脳側葉で,これらの匂い情報がどのように処理されているのかを,最近の解剖学研究を中心に紹介する。現在,昆虫を用いた嗅覚情報処理機構の研究は遺伝学を中心にモデル生物であるショウジョウバエを中心にミツバチ,カイコガなどで目覚ましい発展を遂げている。これら完全変態昆虫の嗅覚系とワモンゴキブリのような不完全変態昆虫の嗅覚系を比較し,相同点,相違点を見出すことにより,昆虫の脳進化を理解する一助になるだろう。
著者
渡辺 愛子 坂口 博信
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.20-31, 2006-01-30
参考文献数
93

スズメ目の鳴禽類, オウム目, ハチドリ目に属する鳥は, 音声学習によってさえずり (歌) を発達させ, 種内のコミュニケーションに用いている。鳴禽類の雄の幼鳥は, 成長期に手本となる鳥の歌を聞いて記憶し練習することで歌を完成させる。この練習時には, 自分のさえずる歌が学習目標となる歌の手本にどれだけ近づいたかを常にモニターするために, 聴覚フィードバックが必要であることが明らかにされている。さらに, 成鳥が完成後の歌を維持するためにも, 同じ理由で聴覚フィードバックが必要であることが, 筆者等の研究も含めた近年の報告により明らかになってきた。成鳥での聴覚フィードバックの重要性については, 鳴禽類の種で異なる結果が報告され, いまだに不明な点が多い。そこで本稿では, 筆者等の研究結果を交え, まず行動レベルで聴覚剥奪後の歌の特徴を比較して, 成鳥の歌の維持における聴覚フィードバックの必要性について検討した。次に, 聴覚剥奪によって成鳥の歌が変化する時に起こる脳内の変化を調べ, 聴覚フィードバックによって制御される成鳥の歌維持の脳内機構についても考察した。
著者
小池 卓二
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.122-125, 2007-08-20
参考文献数
16

空気の疎密波である音は,鼓膜で機械的振動に変換され,耳小骨を経て,蝸牛内リンパ液へと伝達される。蝸牛内ではリンパ液を介して感覚細胞が刺激され,そこで機械振動は電気信号へと変換され,聴神経を介して脳に伝達される。この様な振動の伝達・変換プロセスを経てヒトは音を認識している。これまで,聴覚機能の解明のために,鼓膜や耳小骨,蝸牛内基底板等の振動挙動の直接観察が試みられてきた。しかし,聴覚器は側頭骨と呼ばれる硬い骨に覆われた観測し難い位置に存在し,振幅も微細であるため,その振動挙動を生理的状態で計測することが極めて困難であり,測定可能部位も限定されるため,未だに不明な点が多い。そこで本稿では,中耳および蝸牛の三次元有限要素モデルを作成し,空気中を伝播してきた音波が体内の振動に変換される過程を解析した。その結果,中耳は振動モード変化を伴いながら1kHzを中心とした穏やかなバンドパスフィルタ特性を示し,蝸牛はその内部構造により,周波数解析を行っている事が確認された。
著者
北條 賢
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.60-67, 2016

生物はなぜ他個体に協力的な振る舞いを示すのか?この疑問は生物学の大きな命題の一つとして長年議論されている。相利共生は個体が互いに利益を与え合う生物種間の協力的な関係であり,関係を持つ個体同士が栄養や防衛,繁殖といった商品やサービスを交換し合う。しかしながら,相利共生には潜在的な利害対立が存在し,理論的には対価を支払わずに相手のサービスを搾取する「裏切り」が個体にとっての最大の利益をもたらす。そのため各個体は,パートナーの潜在能力・相手から受け取った直接的な利益・相手の過去の振る舞い・自らの社会的状況といった様々な要因に応じて,協力行動をとるか否かの意思決定を柔軟に下す必要がある。近年,送粉共生・防衛共生・掃除共生において,協力行動の生理的メカニズムに着目した研究が進み,神経修飾物質・神経ホルモンを介した協力行動の可塑性や連動性の一端が明らかにされつつある。今後,生態学的に妥当な条件下で協力行動が制御される生理学的メカニズムを明らかにしていくことで,相利共生を始めとする生物の協力行動の総合的な理解が深まることが期待される。
著者
向井 秀仁
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.189-196, 2020-12-01 (Released:2020-12-24)
参考文献数
65

マイトクリプタイドは,自然免疫系において重要な役割を担っている好中球を活性化する一群の新規生理活性ペプチドです。そしてこれらマイトクリプタイドは,ミトコンドリアタンパク質の生合成ならびに分解・代謝にともなって同時に生成されるペプチド群であることも明らかとなっています。すでに最初のマイトクリプタイドの発見から20 年以上の月日が流れましたが,最近の研究で,ようやくこのマイトクリプタイドが果たす生理的ならびに病態生理学的機能の実像が,おぼろげながら見えてきました。すなわちマイトクリプタイドは,当初,想像もつかなかったほど多様な生体防御反応において重要な役割を担っている可能性が明らかになりつつあります。本稿では,我々が世界に先駆けて発見した,タンパク質構造に隠された生理活性ペプチドであるマイトクリプタイドについて,それらの発見と発見に至る経緯,それらによる好中球活性化機序,さらにはそれらが形づくる新しい生体防御機構について概説します。
著者
荒木 亮
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.94-102, 2020-07-31 (Released:2020-08-20)
参考文献数
64

鳴鳥である鳴禽類はそれぞれの種で特異的な特徴を備えた個体独自の歌をさえずり,求愛や縄張りの主張,個体の識別に用いている。ヒトの幼児が親の話すことばを聴き真似ることで次第に言語の発声を獲得してゆくように,鳴禽類のヒナは成鳥のさえずりを記憶し,記憶を頼りに未熟な発声から次第に成鳥と同様のさえずりへと発達させることで,種特異的な特徴を備えた歌を身につける。このためヒトの発声学習の理解につながるモデルとして,歌学習の神経メカニズムが盛んに研究されてきた。しかし,同種へ向けた情報伝達に重要となる歌い手の種を表す歌の形質を,個体識別可能なまでに歌が多様化する中でどのようにして維持するのか,その神経基盤については多くが不明のままである。鳴禽類の一種であるキンカチョウは集団で繁殖し,ヒナは複数個体のさえずりを聴きながら個体独自の歌を発達させる。本稿では,キンカチョウの種特異的かつ個体独自な歌の発達過程と,その獲得を発達初期で支える聴覚野神経の神経活動について著者の研究も含めながら紹介し,今後の課題について論ずる。
著者
勝又 綾子 尾崎 まみこ
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.3-17, 2007-01-20
参考文献数
77

私達が野外や屋内で何気なく見かけるアリは,分布域の広さとバイオマスの大きさによって,生態系において圧倒的な優位性を示す。高度に組織化されたアリの社会は,それぞれの種が進化過程で培った高度なケミカルコミュニケーションの多様性,すなわちコロニーメンバーが分業し活動を協調させるための,通信コードとしての情報化学物質の豊富さに支えられている。<BR> それではアリ達は具体的に,どのような情報化学物質を,どのように処理して,統制のとれた複雑な行動を示すのだろうか?<BR> 本稿では,アリの社会における代表的なケミカルコミュニケーションを紹介し,そこで用いられる重要なフェロモン,化学受容器,一次感覚中枢(触角葉など),高次中枢における情報処理系の最近の研究について触れる。
著者
村田 健 武内 ゆかり
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.83-88, 2015-06-10 (Released:2015-06-22)
参考文献数
40

フェロモンはある個体が発し,同種の他個体に受容されることで特定の行動や生理的変化を誘起する化合物である。特定の行動を生じさせるフェロモンはリリーサーフェロモン,生理的変化を誘起するフェロモンはプライマーフェロモンと呼ばれている。これまでに同定されたフェロモンのほとんどはリリーサーフェロモンであり,プライマーフェロモンは昆虫類を含めても数えるほどしか同定されていない。これは,プライマーフェロモンのバイオアッセイが非常に困難であることに起因すると考えられる。我々の研究グループは,シバヤギをモデル動物として,生殖制御中枢の活動を電気生理学的にリアルタイムで測定する独自のバイオアッセイシステムを用いることで,プライマーフェロモンの探索を行い,雄ヤギが発する4-ethyloctanalという化合物に活性を見いだした。このように中枢作用機構をとらえたバイオアッセイシステムを用いることで,畜産学的に重要な動物種のプライマーフェロモンの同定や作用機構の理解が進み,将来的にはフェロモンを用いた繁殖制御技術に応用されることが期待される。
著者
藤岡 慧明 飛龍 志津子
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.91-99, 2019-08-06 (Released:2019-08-26)
参考文献数
52

コウモリは,自身が放射した超音波の反響音を聴取・分析することによって周囲環境を把握する。これをエコーロケーション(反響定位)と言う。コウモリは,高度なエコーロケーションを実現する聴覚神経機構を研究するためのモデル動物として,盛んに人工環境下における実験が行われてきた。一方で,コウモリは野外において微小な飛翔昆虫を次々と捕食するという高度なパフォーマンスを実現しているにも関わらず,自然環境下における超音波利用については,計測が難しいことから検討があまり進められてこなかった。2000年代に入った頃からは,計測技術の向上により,獲物探索および定位のための指向性制御などのソナー運用に関する報告が多く成されるようになってきた。 さらには,複数の獲物を次々と連続的に捕らえる際のコウモリの合理的な戦略についても近年明らかとなった。本稿では,まずコウモリのエコーロケーションについて概観した上で,野外研究を中心にコウモリの採餌飛行時におけるエコーロケーションの運用方法について概説する。そして,採餌飛行を,獲物探索時・捕食飛行時・複数標的捕食時の三つに分けて,彼らの採餌のためのエコーロケーション戦略について考察する。
著者
浅岡 洋一
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.59-67, 2013-05-10 (Released:2013-06-21)
参考文献数
43

c-Jun N-terminal kinase(JNK)シグナル伝達経路は,細胞外からの様々なストレス刺激や発生プログラムなどの内因性シグナルを細胞核へ的確に伝達するための主要なシステムの1つである。JNKはMAPキナーゼファミリーに属するタンパク質リン酸化酵素であり,線虫から哺乳類に至る動物門で幅広く保存されている。JNKは上流の2種類の活性化因子であるMAPキナーゼキナーゼ(MKK)4とMKK7によってリン酸化を受けて活性化し,遺伝子発現を調節することにより多彩な細胞応答を誘導する。近年,MKK4とMKK7のそれぞれのノックアウトマウスを用いた解析から,これらが発生期の肝臓形成や脳形成に重要な役割を果たすことが明らかとなった。一方,JNKシグナルは器官形成期より早い時期の形態形成運動にも関与することが最近になって示され,初期胚のボディプラン形成におけるJNKの役割が注目を集めている。本稿では,MKK4とMKK7の生化学的特性について概説するとともに,各動物種の初期胚形成期における両キナーゼの生理機能を比較し,最後にJNKシグナルが形態形成運動を統御する分子機構の一端についてゼブラフィッシュの知見を中心に紹介する。
著者
古川 直裕
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.171-179, 1999-09-30 (Released:2011-03-14)
参考文献数
37
被引用文献数
1
著者
筒井 圭 今井 啓雄
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.24-29, 2015-03-16 (Released:2015-04-03)
参考文献数
32

苦味感覚は主に舌の味蕾に発現するG蛋白質共役型受容体(GPCR)である苦味受容体(TAS2R)によって担われている。ヒトゲノムには26種類のTAS2R遺伝子が存在し,それぞれが多種類かつ異なるセットのリガンドを受容することで多くの苦味物質の認識が実現されている。近年,TAS2Rのレパートリーやリガンド感受性について種間および種内で多様性が存在することが明らかとなってきた。また,舌以外の様々な組織・器官においてもTAS2Rが発現していることが次々と報告されており,TAS2Rが味覚以外の様々な生理機能に関与することが示唆されている。本総説ではそのようなTAS2Rの種間・種内・組織間における遺伝的・機能的多様性について,霊長類に注目して概観する。