著者
石川 康暢 西尾 妙織 千葉 尚市 佐藤 亜樹子 耒海 美穂 池之上 辰義 中垣 祐 中沢 大悟 伊藤 政典 柴崎 跡也 森田 研 野々村 克也 小池 隆夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.173-179, 2011-02-28 (Released:2011-03-31)
参考文献数
16

症例は35歳,男性.1998年にGoodpasture症候群にて血液透析を導入されたが,ブラッドアクセストラブルのため2000年より腹膜透析に変更された.2003年12月より高P血症が原因でCa・P積が90(mg/dL)2を超え,右肩に手拳大,左臀部に小児頭大の異所性石灰化を認めるようになった.2004年10月より血液透析へ移行されたが異所性石灰化は改善しなかった.2005年2月24日に母をドナーとした生体腎移植を希望し,当院を初診.石灰化部はGaシンチで集積を認め,排膿よりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出されたことから感染を伴う石灰化と診断され,腎移植は見送られた.以後血液透析の継続,抗生剤治療を行ったが,異所性石灰化は増悪し続けたため,週22時間の長時間透析が施行された.長時間透析開始後,Ca・P積は是正され,異所性石灰化は改善し,2009年1月14日に腎移植が施行された.高度に進展した異所性石灰化は治療困難であるが,その治療として長時間透析は有用であることが示唆された.巨大な異所性石灰化が長時間透析により改善し腎移植を施行できた報告はこれまでになく,貴重な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
鈴木 尚紀 竹田 優希 小西 昂弘 人見 泰正 佐藤 暢 西村 眞人
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.327-333, 2022 (Released:2022-06-04)
参考文献数
20

脳血流の指標とされる前頭葉混合血酸素飽和度(FL‒rSO2)を,透析中に測定した血圧低下症例を3例報告する.症例1は76歳男性,オンライン血液透析濾過を施行した患者であり,開始2時間後より2度の急激な血圧低下とともにFL‒rSO2の低下が認められた.症例2は65歳女性,15分毎に50 mLの補液を行う間歇補充型血液透析濾過(少量頻回補液IHDF)を施行した患者であった.透析開始時より血圧とブラッドボリューム(BV)は低値で推移したが,FL‒rSO2は安定して推移した.症例3は68歳女性,少量頻回補液IHDFを施行した患者であり,BV低下はわずかであったが,開始3時間後より血圧低下を認め,FL‒rSO2はIHDFの補液に反応して変化した.脳血流の調節メカニズムは複雑であり,血圧やBVで管理することは難しいが,透析中のFL‒rSO2モニタリングは脳循環管理の指標として有用である可能性がある.
著者
安田 日出夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.129-133, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
19

AKIの次世代バイオマーカーのうち, L-FABPとNGALが本邦で保険収載されているが, 臨床現場での利用が限られているのが現状である. AKI治療ガイドとしてのバイオマーカーが確立していないことが最も大きな要因と思われる. 近年, AKIに対する腎代替療法 (RRT) の適切なタイミングでの開始が生命予後を改善することが示されており, RRT導入予測バイオマーカーが確立できれば, 臨床応用が進む可能性がある. 本稿では, 次世代バイオマーカーの概略を解説し, 治療ガイドとしてのバイオマーカーの可能性を検討する.
著者
山本 裕也 中村 順一 中山 祐治 日野 紘子 角城 靖子 宗 紗千子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1159-1162, 2013 (Released:2013-12-26)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

【背景・目的】スチール症候群の診断は自覚症状と他覚所見を統合して行うとされている. 重度の虚血症状は潰瘍や壊死または不可逆的な神経麻痺などを伴うため, 高い診断能力を有する客観的評価法が求められる. 下肢のperipheral arterial diseaseにおいて, 皮膚灌流圧 (SPP) の測定が有用であると報告されており, 治療方針の決定や予後の治癒能力の判断として臨床的に用いられている. 今回, 上肢におけるバスキュラーアクセス (VA) 関連スチール症候群に対して, SPPの診断能力を検討した. 【対象と方法】当院にて内シャントを有する患者106例を対象とした. VAの診察時にスチール症状の有無を問診し, Fontainの重症度分類によりStage I∼IVの4群に分類し, 症状なし群を加えて5群に分類した. SPPは第3指または最も症状の強い指にて測定した. 5群のSPPの平均値を算出した. また, 対象症例をスチール症状の有無により分類し, 累積相対度数によりカットオフ値を算出した. 【結果】対象症例の内訳は, スチール症状なし43例 (AVF : 24例, AVG : 19例), スチール症状あり63例 (AVF : 16例, AVG : 47例) であった. 各群の平均SPP値は, 症状なし群85.8±25.0mmHg (44例), Stage I群48.4±11.7mmHg (28例), Stage II群35.8±13.5mmHg (17例), Stage III群24.7±10.0mmHg (16例), Stage IV群17.3±2.4mmHg (3例) であった. 類積相対度数によるスチール症候群発生のカットオフ値は, 57.5mmHg (感度 : 87.1%, 特異度 : 95.3%, 陽性尤度比 : 18.2) であった. 【結語】SPPはスチール症候群の診断能力が高く, 同病態の客観的検査法として有用である.
著者
伊藤 恭子 高橋 愛里 斎藤 たか子 宮 政明 溜井 紀子 武藤 重明 安藤 哲郎 筒井 貴朗 小川 哲也 永野 伸郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.585-592, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】シナカルセトをエボカルセトへ切り替え, 血清値, 併用薬剤, 上部消化管 (GI) 症状に対する影響を実臨床下で検討した. 【方法】シナカルセト処方中の血液透析患者147人を, エボカルセトの1mgに一斉に切り替え, 8か月後まで観察した. また, GI症状および服薬アドヒアランスに関するアンケートを実施した. 【結果】切り替えにより, 血清PTHの上昇が認められたが, 血清補正Caの上昇は一過性であり, 速やかに投与前値に復した. 直前のシナカルセト投与量と1か月後のPTHおよびCaの変化量との間に正相関が認められた. また, PTH変化量はCa変化量と正相関し, Caの上昇は骨由来であることが示唆された. 併用薬剤の有意な変化は認められなかったが, 消化管運動改善薬を中止できる症例が散見された. アンケートの結果, GI症状のある患者は切り替え後で減少し, 服薬遵守率は上昇した. 【結語】エボカルセトは, シナカルセトに替わる有用なカルシミメティクスである.
著者
山本 裕也 大川 博永 西川 博幸 森尾 誠人 大川 弘美 増田 尚毅 住友 敬子 赤木 有希 髙本 かおり 辻 純子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.243-247, 2022 (Released:2022-04-28)
参考文献数
11

【背景・目的】エコーによるシャント狭窄の評価は狭窄径による評価が一般的だが,欧米では収縮期最高血流速度(PSV)による評価が用いられている.今回,シャント狭窄に対するPSVの定量評価の有用性を検討した.【方法】自己血管内シャントを有する患者179名を対象とした.長軸断面にて狭窄径およびPSV,短軸断面にて断面積を計測した.各測定項目の脱血不良に対する診断能力をROC分析にて比較し,PSVの相関分析を行った.【結果】ROC分析において,狭窄径と断面積は脱血不良に対する診断能力は高く,両者に差はなかったが,PSVの診断能力は有意に低かった.また,PSVは断面積や狭窄径との相関は弱かった.【結語】エコーによるシャント狭窄の定量評価においてPSVの有用性は見出せなかった.
著者
齋藤 友季子 向井 賢司 貴志 直哉 齋藤 真一 齋藤 純一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.329-332, 2020 (Released:2020-06-28)
参考文献数
9

水中毒の既往がある統合失調症患者3症例に血液透析を行った. 3例は溢水と低ナトリウム血症の悪化をきたし, 透析導入から1年以内に死亡した. 導入中も多飲を認め, 透析前体重はドライウエイトの10〜30%増加し, 透析前血清Na値は128mEq/L未満となった. 体液量増加による低ナトリウム血症が, 転帰に影響を及ぼしたと考えられた. 水中毒の既往がある統合失調症患者に透析を導入する場合, 多飲に対する有効な抗精神病薬はないうえで水分制限を課す必要があり, 水分制限ができない場合は予後不良になるだろう旨の, 十分な説明と同意を得る必要があると思われた. 体液量増加と低ナトリウム血症の増悪は, 腎機能廃絶による自尿の減少が関与したと思われた. そのため, 透析導入前後に, 自尿保持を目的としたトルバプタンの介入の試みが必要だったかもしれない. また, 低ナトリウム血症に対する透析液補正も考慮する必要があったと思われた.
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.340-343, 2013 (Released:2013-04-09)
参考文献数
14
著者
横尾 隆 久保 仁 石川 匡洋 加藤 尚彦 木村 弘章 大井 景子 我那覇 文清 川口 良人 細谷 龍男
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1115-1119, 2000-07-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

症例は54歳男性, 肝硬変を合併する維持透析患者. 1989年に腹膜透析導入, 1996年よリ血液透析に変更となった. 血液透析中に一過性意識障害をくり返すため精査加療目的に入院. 頭部CTにおいて有意所見みられず, また脳血流シンチでも透析前後で明らかな差異は認められなかった. しかし血液透析後にアンモニア濃度が上昇するため, 門脈ドップラー検査を施行したところ門脈血流は肝内, 本幹とも遠肝性で脾静脈の一部から始まる側副血管を介して下大静脈に流入していた. さらに透析中に本幹での門脈血流の低下が指摘された. このため短絡血流の増加が意識障害を説明するものと考え, 透析中にアミノレバン®を投与することにより認められなくなった. これまでに透析中の門脈血流中の変化に対する報告はみられず, 今回の門脈ドップラーによる血流の結果は肝硬変合併血液透析患者の特殊性を示し, 意識障害が生じた場合の精査に重要であるものと考えられた.
著者
人見 泰正 鈴木 尚紀 辻 義弘 高田 博弥 山田 将寛 北村 悠樹 佐藤 暢
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.167-173, 2022 (Released:2022-03-28)
参考文献数
15

【目的】シャント狭窄部に駆血を行うことで血管拡張が得られる症例とそうでない症例で,治療成績や検査基準に違いがあるかどうかを検討した.【対象】対象は,非駆血時での狭窄部血管断面積が3.14 mm2(径で2.0×2.0 mm)以下で,エコー下VAIVTを実施した96例である.【方法】対象を,駆血で狭窄部血管径が拡張する血管拡張良好群と拡張しない血管拡張不良群に分類し,両群のVAIVT前での非駆血時狭窄部断面積,FV,RI,および治療での最高拡張圧,過去3年間のVAIVT回数などを統計学的に比較した.【結果・考察】血管拡張良好群の治療効果は血管拡張不良群よりも低い可能性が高く,血管拡張良好群の非駆血時の狭窄径は見かけ上の有意狭窄である可能性が示唆された.非駆血状態で狭窄部の径計測を行い,それのみをVAIVT介入の基準とした場合,過剰な治療介入が存在する可能性がある.治療適応を考査する際には,駆血したうえで狭窄部の径計測を行う必要がある.
著者
古橋 三義 中島 光好
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-42, 2002-01-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

透析患者の消化性潰瘍に対して, H2受容体拮抗剤は有効な治療薬である. 新規H2受容体拮抗剤であるlafutidineは他剤と比較して尿中排泄率が低く, 腎機能の低下した高齢者〔Ccr: 20-60 (平均45.2) mL/min〕でも, 腎機能の正常な高齢者 (Ccr: 61mL/min以上) および健常成人と同様な未変化体の血漿中濃度推移を示すことが報告されている. そこで今回, 透析患者におけるlafutidineの体内動態について検討した. 透析患者6名 (年齢49-72歳, 透析歴11か月-14年) の非透析時および透析時にそれぞれ, lafutidine 10mg錠を1回1錠投与し, 血漿中未変化体濃度を測定し, ファーマコキネティックパラメータを算出した. また, 透析による除去率についても測定した. 非透析時にはTmaxが0.8±0.1hr, Cmaxが336±40ng/mL, t1/2が6.71±0.30hrを示し, AUC(0-24hr)は2278±306ng・hr/mLであった. 透析時はTmaxが2.6±0.5hr, Cmaxが226±36ng/mL, t1/2が4.57±0.24hrを示し, AUC(0-6hr)は853±128ng・hr/mLであった. 使用した透析膜におけるlafutidineの除去率は7-18%であった. 透析患者においてもlafutidineのt1/2の延長は大きくなかった. Lafutidineの透析患者におけるt1/2 (6.7hr) はlafutidineの投与間隔 (12hr) よりも短く, 他のH2受容体拮抗剤と異なり, 透析患者においても用法を変更する必要はないと考えられた. しかし, 透析患者ではCmaxが健常成人の約2倍に上昇したことから, 用量は低用量から投与開始することが望ましい.
著者
田村 雅仁 久間 昭寛 宮本 哲
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.655-660, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
30

腹膜透析を長期にわたり安全に行うためには, 透析液中の非生理的成分を減少させ, 生体適合性を向上させる必要がある. 近年, この問題を改善させた乳酸中性透析液とイコデキストリン透析液が透析液の主流となったが, 高濃度の乳酸が含まれており生体適合性の問題が懸念されていた. 2014年に生理的濃度の重炭酸と低濃度の乳酸を緩衝剤として使用した新しい透析液 (重炭酸中性透析液) が本邦で発売された. 海外では重炭酸中性透析液の生体適合性がよいことが報告されているが, 乳酸酸性透析液との比較であり重炭酸や乳酸による影響のみかどうか不明であった. しかし, 培養腹膜中皮細胞を使った乳酸中性透析液と重炭酸中性透析液との比較実験により, 重炭酸中性透析液では乳酸中性透析液よりも細胞障害が抑制されていることが明らかになり, 乳酸の問題があらためて浮上した. 今後, 重炭酸中性透析液の使用により, 臨床での有用性を確認する必要がある.
著者
中村 伸也 山田 勝己 加藤 克己 富田 明夫 丹羽 滋郎 三井 忠夫 小池 明彦 成瀬 隆吉 恒川 晋
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.185-189, 1994

2° HPTを有する透析患者7名にPTXを施行し, DEXA法を用いて, 腰椎 (L<sub>2</sub>-L<sub>4</sub>), 大腿骨近位端 (頸部, 大転子部, 転子間部, ワードの三角) および橈骨 (橈骨遠位端より1/3近位端) のBMDを測定し, 測定部位の骨組成やMD法の結果を考慮に入れながら, PTX後のBMDの経時的な変動と部位による改善状態の相異に検討を加えた. L<sub>2-4</sub>平均BMDは術前BMDに対して3か月後8.4%の増加 (p<0.05), 6か月後10.9%上昇した (p<0.01). 大腿骨近位端右側では3か月後各部位とも有意な上昇はなく, 6か月後頸部以外の部位で上昇を認めた (p<0.05). 左側では3か月後ワードの三角で16.7% (p<0.01), 転子間部で9.1%と上昇した (p<0.05). 6か月後頸部で18.1%の上昇をみた (p<0.01) が, 他の部位では増加幅の鈍化傾向を認めた. 一方橈骨では術後の改善はみられなかった. MD法の主たる指標はPTX前後で変動がなかったが, 中節骨, 末節骨における骨膜下吸収像は不確実なものを含めると6例で認められ, 1例で改善, 4例で改善傾向を認めた. BMDの有意な改善は腰椎で, 次に大腿骨近位端で明らかであった. また大腿骨では左右間で, また測定部位により改善率が異なっていた. これらの理由として測定各部位に占める海面骨と皮質骨の構成比率などのほか加齢, VD<sub>3</sub>, PTHの同化作用などが関与するものと想定された.
著者
藤方 史朗 満生 浩司 原田 篤実
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.269-273, 2006

当院で外来血液透析を施行中の非感染患者72名を対象とし, 同意書をとって透析前後で血清1-3-β-D-glucan値を測定した. 透析膜は, 再生セルロース膜 (CL-EE12Nテルモ社製) 33例, セルローストリアセテート膜 (FB-70ニプロ社製) 14例, 合成高分子膜では, ポリスルホン膜 (BS-1.3東レメディカル社製) 20例, EVAL膜 (KF-15Cクラレ社製) 5例であった.<br>透析前の1-3-β-D-glucan値は, 再生セルロース膜群が649±435pg/mLで, セルローストリアセテート膜群の13±9pg/mL, 合成高分子膜群の26±18pg/mLとくらべて著明に高値であった (p<0.0001). 透析前後の1-3-β-D-glucan値の比較では, 再生セルロース膜群で649±435pg/mLから1,091±833pg/mLと透析前よりさらに上昇した (p<0.001) が, 合成高分子膜群やセルローストリアセテート膜群では, 透析前後で変化しなかった. 再生セルロース膜群では透析前1-3-β-D-glucan値と透析期間との間に有意な正の相関がみられた. 再生セルロース膜使用症例では, 非感染時でも1-3-β-D-glucan値は著明高値を示し, 真菌感染症の診断に適さないと考えられた. また, 合成高分子膜群でも軽度高値を示し診断に留意が必要である.
著者
水野 章子 泉 朋子 後藤 健 奥田 日実子 栗山 廉二郎 神谷 康司 有村 義宏 後藤 淳郎 荒井 香代子 清水 阿里 下村 有希子 高野 真理 鈴木 日和 木村 里緒 幸地 優子
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.219-228, 2021

<p>【目的】血液透析(HD)患者の赤血球容積分布幅(RDW),平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)と腎性貧血治療との関連性を明らかにする.【対象】赤血球造血刺激因子製剤(ESA)投与中のHD患者926例.【方法】①RDWの中央値で分け比較.RDWを目的変数とした重回帰分析を施行.②赤血球数(RBC),MCHで分けESA量などを比較.③フェリチン,トランスフェリン飽和度で鉄欠乏・充足群に分けESA量などを比較.④鉄剤投与経路の差を比較.【結果】RDW高値群はMCH低値でESA量が多かった.RDWの規定因子はESA量,MCHなどであった.MCH 30 pg未満群はRDWが高くESA量が多かった.経口鉄剤群はRDWが低くESA量が少なかった.【結語】RDW高値,MCH低値のHD患者は赤血球の鉄利用低下が併存しESA量が多かった.MCHを指標に鉄剤を投与すればESAを減量できる可能性がある.</p>
著者
塩田 孝夫 川村 和子 本橋 和子 若杉 和倫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1775-1780, 2005

今回, われわれは電解質分析装置STAX-3の日常の管理方法およびその問題点を, 標準血清およびコントロール血清を用いて検討した. STAX-3におけるNa<sup>+</sup>, K<sup>+</sup>およびCl<sup>-</sup>測定の日差再現性は, 変動係数が標準血清では0.8%以内, コントロール血清では1.1%以内であり, 良好な結果であったが, コントロール血清は標準血清と比較し, やや安定性が低かった. これらの結果より, 日常の管理には標準血清より価格の安いコントロール血清を用い, 装置の保守点検後およびコントロール血清を用いた日常管理で異常を示した場合, その確認のために, 理論値が表示されており, より安定である標準血清を用いることが適切と思われた. また, データ保証のためにはコントロール血清の選択と取扱い, および装置の設置環境に留意し, 管理を行うことが必要である.
著者
松下 啓 杉本 徳一郎 岩本 彩雄 大池 裕美子 多川 斉 福内 敦
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.1259-1262, 1997

症例: 40歳, 男性. 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全にて1980年5月血液透析に導入. 1995年8月, 発熱, 悪寒, 関節痛にて入院した. 両肩・臀部等に著明な異所性石灰化を認め, アスペルギルス性膿胸と二次性副甲状腺機能亢進症の合併と診断した. 胸腔の排膿洗浄および抗真菌薬投与を開始したが, 臨床症状・炎症反応の改善はみられなかった. 副甲状腺摘除術を契機に炎症反応が改善し, 関節痛が軽減した. 深在性真菌症の発症頻度は低いが, 長期透析患者の合併症として注意すべきである. アスペルギルス性膿胸の発症経過に二次性副甲状腺機能亢進症が深く関わった可能性があると考えられた.
著者
重原 理宏 村上 円人 荒木 崇志 小口 英世 神戸 香織 小池 鈴華
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.691-696, 2014 (Released:2014-11-28)
参考文献数
23

症例は77歳, 女性. 心腎不全の増悪, 高カリウム血症, 完全房室ブロックで入院した. 以前から, 虚血性心筋症による慢性心不全, 腎硬化症, 慢性膿胸があり, 心不全の増悪を繰り返していた. 腎硬化症は進行し, 心腎不全の増悪, 高カリウム血症に対して緊急血液透析を施行. その後, フロセミド, インダパミドにより水分管理を行ったが, 腎機能は増悪し, 週2回の慢性血液透析に移行した. 導入1年後に尿量は300mL/日以下となり, トルバプタン15mg内服を開始. その後, 尿量は著増しおよそ1L/日となった. 透析間の体重増加1kg以下に安定し, 週2回透析にて水分管理が可能となり, QOLも改善した. トルバプタンの水利尿効果は2年以上継続している. トルバプタンを含む利尿薬の併用療法は, CKDG5A3を伴う慢性心不全患者においても尿量増加をもたらし, 週2回透析の維持に有効な場合がある.