著者
大森 英之 守谷 直子 石田 三佳 大塚 舞 小橋 有里 本山 三知代 佐々木 啓介 田島 清 西岡 輝美 蔡 義民 三津本 充 勝俣 昌也 川島 知之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-200, 2007-05-25
被引用文献数
5 6

コンビニエンスストアから排出された消費期限切れ食品(コンビニ残さ)の肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料としての利用について検討した.コンビニ残さを分別し,弁当めし,おにぎり,菓子パンを主体とする発酵リキッド飼料を調製した.4頭を対照区(新豚産肉能力検定用飼料)に,10頭を発酵リキッド区(FL区)に割り当てた.さらにFL区を5頭ずつCa無添加区(FLN区)とCa添加区(FL+Ca区)に分けた.FL区の肥育成績は対照区と遜色なく,胸最長筋内脂肪含量は対照区(2.9%)に比べて有意に高い値を示した(<I>P</I><0.01,FLN区 : 4.9%,FL+Ca区 : 5.2%).またFL区の皮下内層脂肪中のリノール酸比率は対照区に比べて有意に低かった(<I>P</I><0.01).FLN区とFL+Ca区の肥育成績および肉質に大きな差はなかったが,FL+Ca区で血清中総コレステロール濃度は有意に低い値を示した(<I>P</I><0.05).以上の結果から,分別により粗脂肪含量を抑え,タンパク質源,ミネラル,ビタミンを適切に配合することで,コンビニ残さは肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料として利用できることが示された.
著者
額爾敦 巴雅爾 西田 武弘 松山 裕城 細田 謙次 塩谷 繁
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.295-301, 2005-08-25
被引用文献数
8 5

混合飼料(TMR)中の緑茶飲料製造残渣サイレージ(TGS)配合割合の違いが泌乳牛の飼料摂取量,ルーメン発酵および乳生産に及ぼす影響を調べた.ホルスタイン種泌乳牛4頭を用い,TMR中TGSを乾物比で0,5,10および15%配合とするTGS0,TGS5,TGS10およびTGS15の4区を設け,4×4ラテン方格法による飼養試験を実施した.乾物摂取量は,TGS0に比べTGS5で変化がなかったものの,TGS10で減少する傾向にあり,TGS15で有意に減少した(P<0.05).乳量は,TGS0とTGS5に比べTGS15で有意に低下した(P<0.01).乳タンパク質率と乳脂率は,4区間に差はなかったが,乳糖率は,TGS15で有意に低かった(P<0.05).ルーメン内容液のpHおよび総VFA濃度に区間差はなかったが,プロピオン酸のモル比率はTGS15で,アンモニア態窒素濃度はTGS10とTGS15でそれぞれ有意に低かった(P<0.05).以上の結果から,TGSは,乳量30kg程度の泌乳牛用TMRの素材として利用でき,乾物比5%程度の配合であれば乳量,乳成分に影響しないと考えられた.
著者
口田 圭吾 菊地 彩 加藤 浩二 日高 智 鈴木 三義 三好 俊三
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.23-29, 2003-02-25
被引用文献数
9 8

胸最長筋の皮下脂肪側において,筋間脂肪が胸最長筋内に大きく入り込んでくぼみのあるもの(いわゆる'ハート芯')は,枝肉の価値を低下させる一因であるとされる.本研究では,画像解析による新たなハート芯評価方法について提案すること,ならびに黒毛和種のハート芯形成に対する種雄牛の影響を検討することを目的とした.枝肉横断面撮影装置によって撮影された第6~7肋骨間の胸最長筋画像を2値化した.2値画像について胸最長筋の境界線を検出し,膨張処理ならびに細線化処理を行い,なめらかな胸最長筋の輪郭線を得た.胸最長筋の長径より上部(皮下脂肪側)について,凸部を結んだ凸多角形を描き,凸多角形と胸最長筋の輪郭線が作る領域について,その面積,パターン幅等を測定した.得られた画像解析形質のうちから3変数を用い,肉眼で判定したハート芯の程度を分類変数とする線形判別分析を行ったところ,その判別率は,97.0%と極めて高く,画像解析によりハート芯の程度を数値化することを可能とした.237頭(種雄牛32頭)の黒毛和種産肉能力検定間接法の材料牛について,ハート芯の程度を肉眼で調査したところ,38頭においてハート芯が確認された.画像解析により評価したハート芯の程度に対する種雄牛の効果は高度に有意(P<0.01)であり,特定の種雄牛からの後代にハート芯の出現頻度が多い傾向が認められ,ある1頭の種雄牛については,後代6頭すべてがハート芯の形状を呈した.
著者
松石 昌典 久米 淳一 伊藤 友己 高橋 道長 荒井 正純 永富 宏 渡邉 佳奈 早瀬 文孝 沖谷 明紘
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.409-415, 2004-08-25
被引用文献数
11 21

黒毛和牛肉に特有な好ましい香りである和牛香に寄与する香気成分を明らかにするために,和牛肉と輸入牛肉(豪州産)から連続水蒸気蒸留により香気画分を取得し,ガスクロマトグラフィー分析,ガスクロマトグラフィー-マススペクトロメトリー分析,ガスクロマトグラフィー-においかぎ分析を行った.分析の結果,ラクトン類5種,ケトン類5種,アルコール類8種,不飽和アルコール類3種,エステル類2種,脂肪族アルデヒド類9種,脂肪族不飽和アルデヒド類8種,酸類2種,その他6種の計48成分が同定された.このうち,40成分は輸入牛肉より和牛肉に多く検出され,特にラクトン類は和牛肉に著しく多かった.同定された成分についてAEDA(Aroma Extract Dilution Analysis)法により香気寄与率を示すFD factor(flavor dilution factor)を求め,香気特性と合わせて和牛香への寄与を検討した.その結果,和牛香の甘さには,ココナッツ様,桃様の香りを有するラクトン類が寄与し,脂っぽさには脂臭い香りを有する一部のアルコール類やアルデヒド類などと,バター様の香りを有するジアセチルやアセトインなどが寄与していると推定された.
著者
小谷 基 中岡 博史 成田 暁 揖斐 隆之 佐々江 洋太郎 佐々木 義之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.353-361, 2004-08-25
被引用文献数
1 3

全国的な種牛評価の可能性を遺伝的結合度および遺伝率推定値の点から検討し,その結果をふまえて全国的な種牛評価のための最適な数学モデルに関して検討した.1997∼2002年までに全国に分布する(有)安愚楽共済牧場傘下の肥育農家から出荷された黒毛和種肥育牛のフィールド記録を用いた.数学モデルとして,母数効果の取り上げ方が異なる6つのモデルを設定し,産肉性形質に関する遺伝率を推定し,育種価を予測した.肥育農家を単位とする分集団間の遺伝的結合度が確認できたことおよび遺伝率の推定値が中程度であったことから,全国規模での種牛評価が可能であると推察される.また,予測育種価の予測誤差分散(PEV),赤池の情報量規準(AIC)および自由度調整済寄与率を指標としてモデルの選択を行った結果,全ての母数効果を組み合わせ効果として取り上げたモデルもしくは性の効果のみを組み合わせ効果から外したモデルが最適なモデルであると推察される.種牛評価を全国規模に拡大することで,より効率的な育種改良を行うことができると考えられる.
著者
布仁特古斯 宮本 拓 中村 昇二 野坂 能寛 青石 晃宏
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.441-448, 2002-08-25
被引用文献数
6 9

中国内蒙古自治区の中部に位置するシリンゴル盟アバハ・ノール旗 (シリンホト市の所在旗) の草原地域に住む遊牧民の家庭で製造されている馬乳酒の10試料から乳酸球菌 (153株) と乳酸桿菌 (105株) を合わせて258株分離した. 各試料には, 乳酸球菌の優勢な試料と乳酸桿菌の優勢な試料が見られた. これら乳酸菌株の分類学的性状を調べたところ, 乳酸球菌では<i>Enterococcus faecium</i> (23.3%) と<i>Leuconostoc mesenteroides</i> subsp. <i>dextranicum</i> (20.9%) の出現率が高く, <i>Streptococcus thermophilus</i> (6.9%), <i>Lactococcus lactis</i> subsp. <i>lactis</i> (3.9%) および<i>Pediococcus dextrinicus</i> (0.8%) も分離された. 一方, 乳酸桿菌では<i>Lactobacillus plantarum</i> (21.3%) がおもに分離され, <i>Lactobacillus casei</i> (9.3%) や<i>Lactobacillus paracasei</i> (4.7%) の中温性乳酸桿菌も多く分離された. また, ホモ型乳酸発酵を示す<i>Lactobacillus helveticus</i> (1.6%) および<i>Lactobacillus kefiranofaciens</i> (1.2%) の乳酸菌種も含まれていた. その他に, 今回実施した性状試験では菌種の同定ができなかった<i>Enterococcus</i> sp. (3.4%) と<i>Lactobacillus</i> sp. (2.7%) が分離された.
著者
前田 恵助 山本 里美 小林 千洋 石井 浩子 上田 雅彦 築野 卓夫 入江 正和
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.179-187, 2007-05-25
被引用文献数
2

未利用資源の有効利用のため,米ヌカからの米油精製過程で産出される副産物から調製された植物性油脂製品であるライストリエノール<SUP>TM</SUP>(築野食品工業,和歌山)を飼料に添加し,白色レグホン種系採卵鶏の生産性と卵黄中のビタミンE,コレステロールなどの脂質成分に及ぼす影響を検討した.飼料にライストリエノールを0.5%添加した鶏群をライストリエノール区とし,無添加のものを対照区とした.各区50羽とし,151日齢から517日齢まで不断給餌した.適宜,採卵と採血を行い,試験終了時にニワトリの肝臓を採取した.鶏卵は卵黄中のコレステロール,チオバルビツール酸反応生成物(TBARS),トコフェロール,トコトリエノールを測定し,血清および肝臓中のコレステロール,トリグリセライドを測定した.ライストリエノール区では対照区に比べ,血清中のコレステロールおよびトリグリセライド濃度は変化しなかったが,卵黄中のコレステロール濃度が平均約14%低下した(<I>P</I><0.05).また,卵黄中のトコフェロール,トコトリエノール濃度はライストリエノール添加により420日齢では約2.8倍に増加し,卵黄中のTBARSは52%減少した(<I>P</I><0.05).とくに,それらの効果は日齢を経た鶏卵で顕著であった.産卵率,産卵日量,飼料要求率,卵白高,ハウユニット,卵殻厚にはライストリエノール飼料添加による有意な影響はみられず,ライストリエノール給与で卵重がやや増加し,卵黄色の明度ではL*がわずかに増加し,色度ではa*がやや減少した(<I>P</I><0.05).以上のことからライストリエノールの飼料添加により,卵黄中のコレステロール濃度がやや低く,ビタミンE濃度が高く過酸化脂質の少ない鶏卵を生産性に悪影響なく得られることが示された.
著者
青山 真人 駒崎 孝高 杉田 昭栄 楠瀬 良
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.241-250, 2003-05-25

ウマ同士の社会行動にともない顔や体に現れる特徴の意味の把握は,ウマがヒトに対しても同じ行動を取ることから,現場でのウマの取り扱いにおいて重要な情報になると考えられる.そこでわれわれは,日常的にウマに接している者(ウマ取扱者)およびウマに接する機会が少ない者(非取扱者)を対象に,互いに社会行動をしている2頭のウマの写真からその社会的関係を推察し,さらに判断の手がかりとして注目した部位を回答させるアンケート調査を行なった.ウマ取扱者189名の正解問題数の平均は6.01問(全11問 ; 正解率54.6%),非取扱者53名のそれは5.26問(正解率47.9%)であった.両群とも,無作為に回答した場合よりも有意に高い正解率であったが,ウマ取扱者のそれは非取扱者のそれよりも有意に高かった.ウマ取扱者が回答の際に注目した部位については,耳が38.0%でその頻度がもっとも高く,次いで体全体33.5%,顔全体 23.9%の順であった.非取扱者による注目部位は,高い順に耳29.6%,顔全体20.6%,目15.6%であった.一方,回答者を7問以上正解者(7以上群)と6問以下正解者(6以下群)に分けて比較すると,ウマ取扱者については耳(ただしP=0.091)および顔全体において,非取扱者では首の向き・角度および体全体において,7以上群の方が有意に高い頻度でこれを注目した.各問題の回答を解析すると,一方のウマがその耳や首をもう一方のウマに向けている状態(社会的に劣位のウマが耳を上位のウマに向けて気にしている様子など)が正解の手がかりとなった状況については,ウマ取扱者と非取扱者の正解率や観察の仕方は類似した.しかし,ウマの耳や首がもう一方のウマの位置と関係なく特異的な状態になる場合(耳を後方へ倒す威嚇の表情など)は,ウマ取扱者と非取扱者の観察の仕方は異なり,ウマ取扱者の正解率が高かった.ウマに接して来た経験をもとにウマの耳および首の向き・角度に注目することは,ウマの社会的な状況を推察するのに有効であると示された.
著者
相馬 幸作 増子 孝義 清水 千尋 山田 和典 蔡 義民
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.495-500, 2006-11-25
被引用文献数
4 3

北海道の基幹草種であるチモシーを対象に,地域,生育ステージ,刈取り時刻および品種などの要因を設定し,可溶性炭水化物(WSC)含量および糖組成に及ぼす影響を調べた.地域において,1番草のWSC含量は最大2.67%(乾物中),2番草では2.37%の差があった.生育ステージでは,6月30日(出穂期)にWSC含量がピークに達した.しかし,グルコース,フルクトースおよびスクロース含量は増加しなかった.刈取り時刻では,7時からWSC含量が増加し始め,17時に最大値に達し,その差は3.00%(乾物中)になった.グルコースおよびフルクトース含量は13時に最大値に達した.品種では,1番草はクンプウ(極早生)とノサップ(早生),2番草はノサップがそれぞれWSC,グルコースおよびフルクトース含量が高かった.ただし,グルコースおよびフルクトース含量の増加はわずかであった.以上の結果から,チモシーのWSC含量と糖組成は,地域,生育ステージ,刈取り時刻および品種などの要因により著しく変動することが明らかになった.