著者
長嶋 比呂志
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.63-64, 2010-02-25 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9

クローン動物および動物クローニング技術は,医学研究や医療技術の開発に革新的な進歩をもたらすことができる.特に近年,大型動物であるブタを用いたトランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)の必要性が認識されるようになったことを背景として,拒絶反応のない臓器・組織移植系(syngeneic移植系)の創出,病態モデル動物の作出,異種移植臓器ドナーブタの開発,さらに動物工場による有用タンパク・細胞・組織の生産など,クローンブタの医学研究・医療への応用が活発に進められている.
著者
鳥居 伸一郎 松井 徹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.131-138, 2011-05-25 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

日本国内の290戸の黒毛和種繁殖農場において妊娠末期の繁殖雌牛に給与されていた飼料の,マンガン・鉄・コバルト・銅・亜鉛・モリブデンの含量を測定した.日本飼養標準で示される要求量の適正値を下回る飼料を与えていた農場の割合は,銅で53.4%,亜鉛で14.1%であり,銅では北海道が九州沖縄に対して,亜鉛では北海道が東北および九州沖縄に対して,有意に割合が高かった.鉄含量が摂取許容限界を超えた飼料が,4.1%の農場でみられた.調査農場の平均分娩間隔と,飼料の元素含量との関連を検討した.北海道は東北と九州沖縄のいずれに対しても有意に分娩間隔が短かった.北海道,東北,九州沖縄の地方別に行った単回帰分析で,有意な回帰が認められたのは,九州沖縄のマンガン・鉄・銅であり,回帰直線の傾きはいずれも負の値であった.すなわち,九州沖縄では,マンガン・鉄・銅のいずれかの含量が高い飼料を与えている農場で分娩間隔が短いことが示された.北海道と東北では,いずれの元素の飼料中含量も平均分娩間隔との間に有意な回帰が認められなかった.
著者
長坂 侑里 中堀 祐香 阿部 隼人 中川 智史 山口 諭 馬場 俊見 川上 純平 山崎 武志 萩谷 功一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.5-13, 2022-02-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
21

本研究はタイストール(TS,126,492頭),フリーストール(FS,88,851頭)および放牧主体(GZ,3,989頭)において,ホルスタイン雌牛の体型形質と在群期間(HL)の関係を調査した.データは1993から2008年の間に初産分娩した雌牛の体型審査記録から初産次の体型6形質(肢蹄得率,胸の幅,鋭角性,乳房の懸垂,乳房の深さ,前乳頭の配置)であった.各飼養形態において,体型形質におけるHLの最小二乗平均値(LSMHL)を比較した.FSとTSの肢蹄得率が高いほどLSMHLは高かったが,GZの肢蹄得率が79以下のとき,LSMHLは一定の値を示した.すべての飼養形態において,乳房が浅いときおよび乳頭が中央に位置するとき,LSMHLは高かった.FSおよびTSにおけるLSMHLは,多くの形質で近似したが,GZにおいて低い肢蹄得率でHLに大きな影響を与えない点が他と異なった.
著者
中村 南美子 冨永 輝 石井 大介 松元 里志 稲留 陽尉 塩谷 克典 赤井 克己 大島 一郎 中西 良孝 髙山 耕二
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.343-349, 2021-08-25 (Released:2021-10-08)
参考文献数
32

3色覚であるヒトの色覚異常(2色覚)のうち,Protanopia(P),Deuteranopia(D)およびTritanopia(T)型の場合にはそれぞれ赤と青緑,赤紫と緑および青と緑の色が識別困難とされる.本研究では生理学的に2色覚とされるニホンジカ(Cervus nippon;以下,シカ)がこれらを識別可能か否かについてオペラント条件付けにより検証した.シカ2頭(推定3歳:オス・メス各1頭)を試験に用いた.1セッションを20試行とし,正刺激として提示した色パネルの選択率80%以上(χ2検定,P<0.01)が3セッション連続でみられた場合,シカは2つの色を識別可能と判定した.オスは18,5および3セッション目,メスは12,14および4セッション目でそれぞれの色の組み合わせを識別できた.以上より,供試したシカはP, DおよびT型のヒトで区別し難い色の組み合わせをすべて識別可能であり,行動学的手法によって導き出されたシカの色識別能力はヒトの2色覚と一致しないことが示された.
著者
宮地 慎 小林 良次 野中 和久
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.161-167, 2010-05-25 (Released:2010-11-25)
参考文献数
19

乳牛の胎盤摂取が泌乳初期の採食量,乳生産量,採食行動に与える影響および胎盤の第一胃内分解特性を明らかにするため,経産牛を10頭供試し,分娩後に胎盤を摂取させる区(PF区)と無摂取区(NF区)に分け,分娩前1週から分娩後4週まで採食量,採食行動,乳生産量,血液性状を測定した.また,胎盤の第一胃内分解率については第一胃カニューレ装着去勢牛を供試しin situ法で測定した.採食量,体重,乳量および乳成分は処理間で差はなかった.分娩後7日間のミール回数はPF区がNF区より多く,分娩後10日間のミールサイズはPF区がNF区より小さく,継続時間は短かった.分娩後2週以降ではミールパラメータに処理間で差はなかった.血中総ケトン体および遊離脂肪酸濃度は分娩後5日間でPF区がNF区より低かった.また胎盤の第一胃内乾物分解率は5日間で70.9%に達するが,それ以降は増加しなかった.以上より,分娩後に胎盤を摂取した乳牛の泌乳初期の採食量,乳生産量は無摂取の乳牛と同様に増加することが示唆された.
著者
山中 麻帆 浅野 桂吾 林 英明 河井 重幸 平山 琢二
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.375-379, 2020-11-25 (Released:2020-12-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

本研究では,ウシに市販海藻飼料を給与した場合の糞中IgA, VFA濃度および糞便性状について調査し,腸管免疫賦活活性に与える影響について検討した.試験には黒毛和種の経産牛4頭を用い,海藻飼料を給与する区(海藻区)および給与しない区(対照区)に2頭ずつ分け,給与I期(10日間),休止期(13日間),給与II期(10日間)の3期からなる2×2のクロスオーバー法で実施した.糞中IgA濃度の変化量は,海藻区が対照区に比べ有意に増加した(P<0.05).一方,糞pH値および糞中VFA濃度は両区ともに正常範囲内で推移し,海藻飼料の給与の有無で差は認められなかった.また,糞中VFA濃度と糞中IgA濃度との間にも相関は認められなかった.以上から,ウシへの市販海藻飼料の添加給与は,腸内微生物叢には影響しないものの,腸管免疫を活性化させることが示唆された.
著者
水間 恵 岡村 俊宏 鈴木 英作 須田 義人 平山 琢二 小川 智子 鈴木 啓一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.51-57, 2013-02-25 (Released:2013-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

海藻と海苔の飼料添加給与がブタの免疫能に及ぼす影響を検討した.試験1では,体重20 kgのランドレース種去勢雄20頭を半数ずつ対照区と試験区に分けて群飼し,試験区には海藻を0.8%添加した飼料を給与した.試験開始時(0日),羊赤血球(SRBC)の一次(21日)と二次接種時(28日),その翌日(29日),さらにその一週間後(35日)に採血と唾液を採取し,免疫能を測定した. SRBC二次接種の翌日,食細胞活性は両区とも低下したが海藻区が有意に高かった(P<0.05).SRBC二次接種後,唾液中IgA濃度は海藻区が対照区と比べ有意に高い値(P<0.01)を示し,SRBC特異的IgG濃度も海藻区の値が高かったが有意差は認められなかった.試験2では肥育後期のブタに海苔を2.0%飼料添加し,各免疫形質について対照区と比較したが,いずれの免疫形質についても海苔添加の有意な効果は認められなかった.
著者
広岡 博之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.503-510, 2021-11-25 (Released:2022-01-06)
参考文献数
21

最近の家畜生産は環境負荷を低減させつつ,経済的に成り立つ経営が求められている.このような問題を検討するには,環境負荷の低減策を実施した場合の経済性についてあらかじめ検討することは重要である.そこで本研究では,①1頭当たりの環境負荷に対する利益の限界削減コストと②畜産物1 kg当たりの限界削減コストおよび③農家レベルでの環境負荷制約下での飼養頭数の減少を考慮した環境負荷低減法に関する経済評価法について先行研究の数値例を用いてその妥当性と意味付けを検討した.本研究は,経済性と環境負荷の両方を考慮する持続可能な家畜生産のための簡単な理論的なフレームワークを構築するものと考えられた.最後に,家畜生産に対する環境負荷低減のための施策について検討した.
著者
長田 隆
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.167-176, 2001-04-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
97
被引用文献数
4 1

Although there are many unknown portions, about 5% of CH., and about 30% of N2O anthropogenic generation sources, are presumed to be of livestock excrement origin, and the curtailment is expected. However, in actual cases in which the amounts generated were in a real porcessing facility, there was a great disparity in the value obtained. The amount of gas generated from actual treatment processing must be measured more exactly, and generating factors must be analyzed.
著者
竹村 勇司 菅野 茂 広瀬 昶 澤崎 坦
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.508-514, 1984-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
14

慢性的な低酸素暴露が,成長期ラットの心肺機能に及ぼす影響を明らかににるために,コントロールチャンバーを用いて実験を行なった.5週令のWistar系雄ラット35匹を7群次分けた.5週令で観察する群をC0,標高2,500m相当の低圧低酸素環境に5週令から暴露し,8および11週令で観察する群をT3,T6,11週令まで暴露したのち海面相当の常圧常酸素環境にもどし,22週令で観察する群をT17とし,それぞれの群に対して海面相当で飼育にる対照群C3,C6,C17,を設けた.温度,湿度,および二酸化炭素濃度はそれぞれ常に25°C,60%,および500~1,500ppmに制御した.各群に対して,形態的,心電図的,血液学的検査を常圧常酸素条件下で実施した.暴露群では対照群と比べて,成長にともなう体重の増加が抑圧され,QT間隔は延長し,心臓重量も大きい傾向にあったが,暴露による副腎重量の増大は,常圧常酸素環境へ戻すことにより回復した.赤血球数,Hb濃度,Hct値,および右心室重量はT3群で大きく増加したが,その後の増加は抑圧された.T6群では,平均電気軸のバラツキが大きくなり,肺重量体重比ならびにMCV,MCHが大きくなった.高地環境下でみられる心肺系の典型的な変化が低酸素暴露のみによって生じたことから,心肺機能にとって酸素分圧の低下が多くの高地環境要因の中で最も重要な作用因子であり,高地環境への適応過程として生理状態の安定に向け段階的な変化が生ずる可能性が示唆された.
著者
梅田 剛利 太田 剛 浅岡 壮平 森 康浩 嶋谷 頼毅 手島 信貴 宮川 創 馬場 武志
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.19-24, 2017-02-25 (Released:2017-04-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1

ブナシメジ廃菌床(以下,廃菌床)が泌乳牛用発酵混合飼料(発酵TMR)の原料として利用可能であるかを検討するため,ホルスタイン種泌乳牛4頭に廃菌床を乾物あたり8%含む発酵TMR(廃菌床区)あるいは含まない発酵TMR(対照区)を給与した1期14日間の試験を行い,2期目には処理を反転した.発酵TMRは発酵品質を調査し,TMRの粗濃比,水分含量,有機物含量,粗タンパク質含量およびNDFom含量は両区でそろえた.廃菌床を添加した発酵TMRの発酵品質は良好であり,廃菌床区の乳成分は乳タンパク質率が対照区と比べて低かった(P<0.01)ものの,乳タンパク質生産量は有意差が認められず,乳脂肪率と乳糖率は対照区と比べて有意差が認められなかった.廃菌床区の乾物摂取量および乳量は対照区と比べて有意差が認められなかった.これらのことから,ブナシメジ廃菌床は発酵TMRの原料としての利用可能性が示された.
著者
黒瀬 陽平 若田 雄吾 坂下 幸 寺島 福秋
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.653-658, 1998-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
16

セロトニンは,脳において神経伝達物質として存在する.中枢セロトニンは,内分泌系に影響することが示唆されている.本研究の目的は,中枢セロトニン神経の活性とグルコースに対する末梢インズリン分泌反応との関係を明らかにすることである.実験動物としてWistar系雄ラット(体重351~400g)を使用した.セロトニン合成阻害薬P-クロロフェニルアラニン(pCPA,1mg)を脳内のセロトニン合成を阻害する目的で側脳室へ投与した、グルコースに対する末梢インスリン分泌反応を,グルコースクランプ法によって,pCPA投与群および生理食塩水投与群において比較検討した、グルコース注入率(GIR)および血糖値は両者間で差がないにもかかわらず,血清インスリン濃度平均増加量(MSII)は,pCPA投与群の方が有意に低かった.グルコース注入に対するインスリン分泌の指標値(MPII/GIR)は,pCPA投与群の方が有意に低かった.本研究は,脳内のセロトニンの合成阻害による欠乏,すなわちセロトーン神経の不活化が,グルコースに対する末梢インスリン分泌反応を抑制することを明確に例証した.
著者
齋藤 邦彦 鈴木 英敏 金田 修一 阿部 剛 齋藤 薫 佐久間 弘典 庄司 則章
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.133-141, 2016-05-25 (Released:2016-06-18)
参考文献数
22

膨潤化処理した飼料米(膨潤玄米)の給与が肥育牛の発育性と産肉性に及ぼす影響を検討した.供試牛は黒毛和種去勢牛を用い,濃厚飼料多給肥育による対照区に4頭を,15ヵ月齢から出荷まで濃厚飼料の30%量を膨潤玄米に代替給与する試験区に4頭をそれぞれ配置した.試験区において稲わら摂取量が有意に多くなった結果,肥育全期間における推定総TDN摂取量も試験区が対照区より多くなったが(P<0.01),試験牛の発育および日増体量は試験区間に差が認められなかった.枝肉格付成績,胸最長筋の水分,粗脂肪,粗タンパク質の各含量および脂肪酸組成については試験区間に差はなかった.以上のことから,黒毛和種去勢牛肥育において配合飼料の30%量を膨潤玄米に代替給与しても,発育性および産肉性への影響はなく,輸入穀物の代替飼料として利用可能であることが示唆された.
著者
吉田 宣夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.489-493, 2010-11-25 (Released:2011-05-26)
参考文献数
48
被引用文献数
6 2

農林水産研究基本計画が2010年に改訂され,飼料用米の品種育成および栽培,ウシ・ブタ・ニワトリなどに供給する飼料用米の調製加工と給与技術の開発が目標になっている.飼料自給率向上と耕種・畜産経営の課題解決に向けた実用的な技術開発が国,独立行政法人,公立研究機関,大学,民間との連携研究で進められている.これまでの研究成果を活用した飼料用米給与によるブランド畜産物が拡大するなど資源循環型の地域社会形成が始まっている.
著者
宿院 享 杉本 実紀 池田 俊太郎 久米 新一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.503-507, 2014-11-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
17

ICR系妊娠マウス18匹を対照区,2%塩化カリウム(KCl)給与区および5%KCl給与区に割り当てて,KCl給与区では交配後6.5日目から分娩14日後まで2%あるいは5%のKClを添加した飼料を給与し,マウスの体重,飼料摂取量,飲水量,腎臓重量,腎組織と血液成分に及ぼすKCl給与水準の影響を調べた.泌乳マウスでは分娩直後から飼料摂取量と飲水量が急増した.妊娠期と泌乳期のマウスの飼料摂取量にはKCl給与の影響は認められなかったが,KCl給与水準の上昇とともに飲水量が増加し,なかでも5%KCl区の泌乳マウスの飲水量が顕著に増加した.泌乳マウスの腎臓重量は5%KCl区で最大であり,血清KとCl濃度はKCl給与区で上昇した.しかし,泌乳マウスの腎組織にはKCl給与の影響は認められなかった.以上の結果から,KCl給与水準が上昇すると泌乳マウスでは飲水量と腎臓重量が増加し,腎臓に多大な負荷を及ぼすことが推察された.
著者
菅原 盛幸 大木 与志雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.400-405, 1982-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
13

ハタネズミにおける給与飼料の違いによる消化管内発酵産物および体内代謝産物への影響,さらに絶食による体内代謝産物への影響について調べた.給与した飼料は(A) ヘイキューブ単独,(B)ヘイキューブおよび草食動物用ペレット,(C) 草食動物用ペレット単独,(D) じゃがいも単独である.絶食は24時間と48時間について検討した.(1) 各飼料給与群の食道のう内容物から,(A) 4.30,(B)4.65,(C) 4.06,(D) 3.31mM/dlの揮発性低級脂肪酸(VFA)が検出され,腺胃•幽門胃内容物では著しく減少していた.VFAの構成は酢酸が主体で,酪酸,プロピオン酸は僅かであった.一方,乳酸はいずれの群においても比較的多く存在し,特に線維質が少なく澱粉質の多い(D) 給与群において高かった.盲腸内VFA濃度は,10mM/dlと各群とも高く,その比率は,(A)~(C)群において,ほぼ一定であり,酢酸:プロピオン酸:酪酸=10:1:2であった.(2) 血糖値は(A)63.8,(B)81.0,(C)91.3,(D)77.4mg/dlであった.肝グリコーゲンは肝1g当り10~20mgであった.血漿遊離脂肪酸(FFA)は0.609~0.732mEq/lであった.(3) 絶食により,血中ケトン体および尿中ケトン体が著しく増加し,24時間絶食で70%,48時間絶食で91%がケトン尿症を呈し,典型的な飢餓性のケトーシズを示した.この時,血糖値は47.2mg/dlとほぼ半減し,肝グリコーゲンは完全に消失していた.血漿FFAは絶食24時間で1.377mEq/lと倍増し,48時間後には1.967mEq/lとさらに増加した.
著者
紅 玉 駒木 望 島津 朋之 鈴木 啓一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.327-332, 2013-08-25
参考文献数
8
被引用文献数
5

酸素消費量(O<SUB>2</SUB>C)について高(H系)低(L系)方向への選抜を行った.第6世代までは代謝体重当酸素消費量(O<SUB>2</SUB>C/MBW)を選抜形質とした.体重(BW),O<SUB>2</SUB>CとO<SUB>2</SUB>C/MBWの遺伝率はH系,L系統とも0.5前後の中程度だった.BWとO<SUB>2</SUB>C/MBWの遺伝相関はH系で-0.177,L系で-0.345だった.そのため,相関反応として,H系のBWはL系より小さくなった.そこで,第7世代から9世代まではO<SUB>2</SUB>Cを選抜形質として選抜を継続した.第9世代ではH系とL系間にBWの有意差は認められず,O<SUB>2</SUB>CとO<SUB>2</SUB>C/MBWの表型値と推定育種価はH系がL系より有意に高かった.選抜第8と9世代の両系統のマウス合計160匹を用い,4から7週齢までの飼料要求率を比較した.L系はH系より飼料要求率は有意に低かった.以上の結果からO<SUB>2</SUB>Cを選抜指標とした高低方向への選抜が飼料利用性の異なるマウス系統の作出に有効であることが明らとなった.
著者
Toshio TANAKA Tamiko WATANABE Yusuke EGUCHI Tadashi YOSHIMOTO
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.300-304, 2000-05-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
6 8

In this study, an experiment was carried out to clarify the color perception in dogs. Two female Shiba breed dogs were trained using an operant conditioning method in which they pressed a switch with their muzzles in order to obtain some food, to discriminate between simultaneously presented colored and gray cards. The left and right positions of the two cards were shifted at random. After the dogs were fully trained, their color perception ability was tested on three primary colors, red, blue and green. The dogs were subjected daily to one or two sessions which consisted of 20 trials each.The criterion of successful discrimination was 3 consecutive sessions with more than 15 correct choices (P<0.05, Chi-square test). In the red vs. gray discrimination test, the dogs respectively took 3 and 12 sessions to reach the criterion. In the blue vs. gray and green vs. gray tests, both dogs were able to attain the criterion by the 13th session. The results of this study suggest that the color vision of dogs is relatively developed and dogs are able to discriminate between all three primary colors and gray.