著者
山本 朱美 石橋 晃
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.735-740, 1997-08-25
被引用文献数
6

リジン要求量は飼料中のアミノ酸の増加に伴って,増加すること,および血漿遊離リジン濃度から推定されたリジン要求量が飼養試験の結果と一致することを明らかにするため,開放鶏舎で大羽数を用いてリジン要求量を求めた.78週齢の産卵鶏を13区にわけて開放鶏舎で単飼し,47日間試験飼料と水を自由摂取させた.試験飼料のアミノ酸充足率はNRC (1994)のアミノ酸要求量の110および125%とし,リジン含量は両区とも6段階とし,残りの1区は市販飼料を給与した.卵重は3日毎,飼料摂取量は6日毎そして生体重は試験開始日と最終日に測定した.採血は,飼養試験の最終日に行い,血漿遊離アミノ酸濃度を測定しし4.NRC (1994)の110%のアミノ酸充足率では最大生産能のためには不足であった.産卵率,飼料効率および血漿リジン濃度から得られたリジン要求量はアミノ酸充足率が110と125%でそれぞれ0.56,0.56と0.57および0.61,0.59と0.61%と推定された.以上の結果から,リジン要求量は飼料中のCPないしはアミノ酸の増加に伴い上昇すること,血漿リジン濃度から求めたリジン要求量は生産能から求めた値と良く一致することが示された.
著者
中井 朋一 村田 暁 Yimamu Aibibula 名倉 泰三 佐藤 忠 佐渡谷 裕朗 大谷 昌之 花田 正明 岡本 明治
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.173-178, 2007-05-25

去勢牛の十二指腸からラフィノースを投与し,糞便のpHおよび<I>Bifidobacterium</I>と<I>Lactobacillus</I>の菌数に及ぼす影響について調査した.供試動物として十二指腸および回腸カニューレを装着したホルスタイン種去勢牛3頭を使用した.基本飼料はチモシー乾草(CP 7.0% DM, TDN 55.0% DM)および配合飼料(CP 20.5% DM, TDN 70.0% DM)とし,等量ずつ6時と15時に給与した.ラフィノースを50g含有した蒸留水200mLを,6時に十二指腸カニューレから4週間投与した.ラフィノース投与開始前日を0週(W0)とし,1(W1),2(W2),3(W3)および4週目(W4)の6時に回腸内容物および糞便を採取した.W0とW4には,ラフィノース投与直前と投与後4,8,12,16および20時間目に回腸内容物および糞便を採取した.採取したサンプルについてpHおよび<I>Bifidobacterium</I>と<I>Lactobacillus</I>の菌数を測定した.その結果,1週ごとの回腸内容物および糞便のpHおよび<I>Bifidobacterium</I>と<I>Lactobacillus</I>菌数に特定の傾向は認められなかった.W0およびW4に4時間ごとに採取した回腸内容物の同項目に特定の傾向はみられなかった.投与後8時間目の糞便においてW4がW0に比べ<I>Bifidobacterium</I>菌数が増加し (<I>P</I><0.05), pHが低下した (<I>P</I><0.05). 投与後12および16時間目の糞便では, W4がW0に比べ<I>Bifidobacterium</I>および<I>Lactobacillus</I>菌数が増加した(<I>P</I><0.05).以上から,去勢牛の十二指腸からラフィノースを投与することにより,糞便の<I>Bifidobacterium</I>および<I>Lactobacillus</I>菌数が増加し,pHが低下することを確認できた.
著者
豊川 好司 山田 和明 高安 一郎 坪松 戒三
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.572-577, 1978

しょ糖10%液浸漬稲わら,またはハスクマシンにより磨砕した稲わらを,それぞれメン羊に自由摂食させ,稲わら乾物摂取量を高めた場合の第一胃内滞留時間と消化管内充満度を測定して,稲わらの低い摂取量の原因が何であるかを明らかにしようとした.供試メン羊は前報1)の2頭に1頭をかえた3頭であるが,基礎飼料も前報1)と同一のふすまを同量与え,飼養条件も同じであった.試験区は,原料稲わらを5cm前後に細切した対照区に対し,処理区は同稲わらをしょ糖10%液浸漬したしょ糖区,および同稲わらを機械的に圧縮磨砕した磨砕区である.その結果,(1) 稲わら乾物摂取量は対照区まりもしょ糖区28%,磨砕区18%高かった.またW0.75当たり全乾物摂取量は,しょ糖区が16%,磨砕区が11%多かった.(2) ふすまを含めた全飼料の消化率は,磨砕区では粗繊維が他2区より,セルロースが対照区よりも有意(P<0.05)に高く,しょ糖はNFEが他2区より,乾物と可消化エネルギーが対照区よりも有意(P<0.05)に高かった.(3) 全飼料の消化量の差は,繊維成分の有意差は認められなかったが,しょ糖区のNFE,可消化エネルギーおよび乾物は前記同様有意差を示した.(4) 稲わらの反芻胃内滞留時間は,対照区と磨砕区とがほとんど同じ程度であったが,しょ糖区がやや長かった.(5) 全消化管内充満度は,対照区よりもしょ糖区16%,磨砕区10%高かったが有意差はなかつた.(6) 以上のように対照区の第一胃内滞留時間が磨砕区と大差ないのに,全消化管内充満度が最も低く差があることは,対照区稲わらの摂食抑制が,稲わらの反芻胃内滞留に起因しないことを示した.
著者
水谷 誠 梅沢 英彦 倉益 茂実
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.463-467, 1977
被引用文献数
1 1

1. ピーナツPHAはPNP系およびF1(PNP系×PNN系)のふ卵7日目からふ化後8週齢までのすべての発育段階のウズラ赤血球を凝集した.PNN系ではふ卵7-9日目までの赤血球は全例陽性であったが,ふ卵10日目より陰性個体が出現しはじめ,ふ化後1週齢において全例陰性となった.2. "Pn"凝集原の"有"形質が"無"形質に対して優性であり,この常染色体上に存在する単一遺伝子の遺伝子記号を"Pn"と定めた.3. ピーナツPHAに対する凝集性をニワトリ,シチメンチョウ,アヒル,ガチョウ,デンショバトの各赤血球について調査した結果,ニワトリ,シチメンチョウ,アヒルにおいては赤血球凝集性に関して陽性個体と陰性個体が存在し,ガチョウ,デンショバトにおいては全例陰性で個体間差はみられなかった.また,ウズラ("Pn"凝集原),ニワトリおよびアヒルのピーナッPHAに対する各凝集原は吸収試験の結果同一であった.
著者
内藤 元男 高橋 弘晏 畠山 章一 武田 裕 一條 幹夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.539-542, 1974-10-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
8

小岩井農場ホルスタイン種牛群の1953年より1968年までに得られた初産より3産までの連続記録をもつ119頭について初産次体重,初産への補正FCM量平均値およびFCM/K[{FCM/2(6W+FCM)}×100]相互間の関係を検討した.主な成績は次のごとくである.1) 初産後5ヵ月時の体重および体高の平均値はそれぞれ558kg,体高139.0cmであり,初産への補正FCM量平均値4,479kg,FCM/K28.5%であった.2) FCM/Kの母娘相関により推定した遺伝率は0.51であった.3) FCMとFCM量との相関は-0.045で,両者の間には関係がなかった.4) FCM量とFCM/Kとの相関は0.895***であった.5) 体重とFCM/Kへの単純相関は-0.466***であったが, FCM量を一定とした偏相関では-0.955***となった.6) 個体によって異なるが,一般に550~630kgの中型の牛はFCM量の多い傾向があり,またFCM量が多くなくてもFCM/Kで優れている場合が多く,比較的に有利であるといえる.
著者
平山 琢二 大城 政一 加藤 和雄 太田 實 Hirayama Takuji Oshiro Seiichi Katoh Kazuo Ohta Minoru
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 = Animal Science Journal (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.J258-J263, 2000-04

雑種雄ヤギ3頭(平均体重:22±3Kg)を用いて,適温環境下(温度20℃,相対湿度80%)および暑熱環境下(温度33℃,相対湿度80%)において,飼料摂取量を等しくした場合における,消化率,第一胃内VFA濃度,第一胃収縮の頻度・振幅,総咀嚼回数および消化管通過速度を測定した.消化率は,暑熱環境で高い傾向にあり,粗タンパク質とNDF消化率で有意差が認められた(P< 0.05).第一胃内VFA濃度は,暑熱環境下で高い傾向を示し,特にn-酪酸濃度で有意差が認められた(P< 0.05).摂取飼料の体内滞留時間は,暑熱環境下で延長される傾向にあった.第一胃収縮の振幅および頻度は,暑熱環境で低い傾向にあり,採食時で有意差が認められた(P< 0.05).これらの結果から,ヤギを暑熱環境下へ暴露することで,第一胃内収縮運動が低下して摂取飼料の体内滞留時間が延長され,第一胃内における摂取飼料片の分解が活発に行われたという一連の生理反応に対する因果関係が示唆された. A study was undertaken to determine the effect of heat exposure (33°C,80%) on the rumen volatile fatty acids (VFA) concentration and passage rate of feeds through the digestive tract of goats. Goats initially housed in thermoneutral environment (20°C,80%) were fed once daily with equal amounts of sudan grass hay (2cm-cut) in both environments. The digestibilities of crude protein and neutral detergent fiber (NDF) were higher in heat exposure (P<0.05). The concentration of VFA, particularly n-butyric acid, in the rumen tended to increase in beat exposure. Also, the passage rate of feeds through the digestive tract of goats tended to decrease. The amplitude and frequency of contract in internal pressur of the rumen were higher in heat exposure (P<0.05).
著者
家入 誠二
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.353-360, 1995-04-25
被引用文献数
5

生物経済モデルによって豚の諸形質の経済価(EV)を推定するとともに,わが国の豚の育種構造での各々の種畜から産肉および繁殖形質に発現した累積割引総量(CDE)をgene flow法から求めた.形質1単位当りの売上収入は,熊本県内の屠畜場で1991年に得られた1,258頭の肉豚の枝肉情報の重回帰分析から推定した.ただし,肉豚1頭当りの収入は,1993年の大阪市場の格付け毎の年平均枝肉単価から算出した.<br>主な豚の選抜諸形質のEV(円•年<sup>-1</sup>•頭<sup>-1</sup>)は,肥育豚の発育率:16(g<sup>-1</sup>),背脂肪の厚さ:-331(mm<sup>-1</sup>),一腹当り正常産子数:764(頭<sup>-1</sup>),離乳時事故率:-88(%<sup>-1</sup>)および肥育豚事故率:-179(%<sup>-1</sup>)であった.また,評価期間20年,割引率6.5%の時の,雌系統A,雌系統Bおよび雄系統Cから後代への遺伝子経路を経て,産肉形質および繁殖形質に発現したCDE(頭•半年•頭<sup>-1</sup>)は,A母からはそれぞれ0.516,0.979,B父からはそれぞれ0.499,0.849またC父からはそれぞれ1.109,0.019であった.<br>重回帰分析と生産モデルを組み合せた本方法は,形質の利益に対する非線形性を考慮でき,さまざまな形質のEVの推定に有効と思われる.また,CDEによって補正されたEVを用いることで,経済的視点に立った豚の改良方向の決定と,将来の育種環境の不確実性を考慮した育種計画が可能となった.
著者
小堤 恭平 安藤 四郎 池田 敏雄 中井 博康 千国 幸一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-6, 1985
被引用文献数
8 2

市場に流通している牛肉の理化学的特性と格付等級との関連を明らかにするために,黒毛和種去勢牛の特選,極上,上,中,並およびホルスタイン種去勢牛の上,中,並に格付けされた部分肉の胸最長筋(6-8胸椎部のリブロース)各6点について,比重,一般的化学組成および脂肪酸を分析した.黒毛和種の特選,極上,上,中および並の試料の脂肪含量の平均値は,それぞれ31.7,23.5,19.8,14.9および10.6%であった.ホルスタイン種の上,中および並での平均値はそれぞれ12.4,7.7および8.5%であった.特選の脂肪含量は他の格付等級のものとは1%以上の水準で有意の差があった.脂肪含量と脂肪交雑評価点との間には両品種ともる高い正の相関が見られた.両品種の脂肪交雑評価点「+2」と「+1」における脂肪含量には統計的に有意の差は認められなかった.脂肪交雑評価点の「+2」と「十3」の脂肪含量には有意差は認められなかったが,他の評価点間では5%の水準で有意差が認められた.比重と脂肪含量との間には両品種ともに高い負の相関が認められた.肉の比重から脂肪含量を求める回帰式は,y=-549x+592,r=-0.93であった.同時に比重から脂肪交雑評価点を求める回帰式は,y=-96.6x+103,r=-0.92であった.このことから比重より胸最長筋(ロース芯)の脂肪含量または脂肪交雑評価点が簡単に求められる.脂肪酸組成は両品種の格付等級間でなんらの相違も認められなかったが,品種間ではC18:1,飽和および不飽和脂肪酸量に有意の差が認められた.脂肪含量とC18:1,および不飽和脂肪酸量との間には正の相関が認められた.
著者
羽部 義孝 上坂 章次
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.40-50, 1946

第3産及第4産を分娩せる和牛2頭(鳥取縣入頭郡産豫備登録牛及補助登記牛)に付其の分泌乳の理化學的性状を調査し凡そ次の如き成績を得た。<br>(1) 3産若くは4産の和牛の泌乳期は大約5ヶ月である。<br>(2) 分娩後約5ヶ月間搾乳した結果に依れば總乳量577kg及661kg、最高日量10.3kg及12.3kg、平均日量4.1kg及4.7kgであつた。又平均脂肪率は4.4%及3.9%にしてその最高は7.0%、最低は3.0%である。<br>(3) 和牛常乳の比重は1.033、酸度は0.23%、1c.c.中の細菌數は約85萬である。又1c.c.中の脂肪球數は約26億である。脂肪球の大きさは3.3μにしてホルスタイン種よりは明らかに大きく又シヨートホーン種よりも稍大きく、ジヤージー種よりは稍小さい。<br>(4) 和牛常乳の分析こ依る化學組成は大略水分86.83%、固形物13.17%、脂肪4.42%、蛋白質3.62%、乳糖442%、灰分0.74%である。即ち普通市乳に比し蛋白質及脂肪の含量多く、乳糖及灰分は大差はない固形は從つて多い。<br>(5) 和牛の乳より製したバターの組成は大略水分16.62%、粗脂肪81.81%、無水無脂固形物2.04%、カゼイン0.61%、灰分0.076%であり、其の乳脂の〓化價218.53、沃度價30.67、ライヘルトマイスル價27.7、溶融點33~35°Cである。<br>(6) 之を要するに和牛の乳汁は一般乳用牛の乳汁と比較し特別なる注意を要すべきものでなく、良く飲用に適し利用可能である。但し經濟上搾取販賣には乳用牛の如く有利なるものに非らず、專ら自家消費隣組利用に供すべく即ち各自高温殺菌を行つて飲用すべきである。之れ農用牛の本質上當然のことゝ言ふべきである。<br>(7) 和物泌乳は期間短く且つ分娩10數日後より泌乳は急激減少の一途を辿り、末期に近づくに従つて乳脂率頗る昂上し途には8%に近き高率を示すに至る故、之を乳幼兒等の飲用に供する場合には常に此の點に留意して其の方法宜しきを得る如くしなければならない、即ち知牛の乳の飲用に當つては高率の脂肪を念頭に置き適當稀釋して乳幼兒に給與するが宜しい。
著者
藤田 裕 松岡 栄 高橋 潤一 外山 恵美子
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.734-741, 1990

貯蔵牧草の収穫時期が第一胃内の蛋白質分解性に及ぼす影響を明らかにするため比較試験を実施した.オーチャードグラス主体1番草を穂ばらみ初期(6月6日刈取り:早刈区)および出穂中期(6月16日刈取り:普通刈区)に収穫し,乾草とサイレージを調製した.牧草蛋白質の第一胃内分解率は第一胃フィスチュラ装着の去勢メン羊6頭を用い,ナイロンバッグ法によって3時間から48時間経過時まで計測した.分解率計測値は,非線形回帰モデルにあてはめ,分解率の経時的変化のパターンを解析した.乾草,サイレージともに,早刈区の粗蛋白質(CP)および純蛋白質(TP)分解率は,普通刈区にくらべて全体に高い傾向がみられたが,サイレージの場合,培養初期(3-9時間経過時)におけるCP分解率の収穫時期による違いはわずかであった.非線形回帰分析の結果,供試した貯蔵牧草蛋白質の分解率はLogistic型モデルへの適合度が最も高く,同モデルは分解パターンの数値的解析に有効なことが示された.回帰モデルから求めた速分解性及び遅分解性蛋白質区分の割合は,乾草ではいずれも早刈区が有意に高かった.しかし,サイレージの速分解性区分の割合には,刈取り時期による違いが認められなかった.第一胃内における可消化乾物90%の消失時点における分解率から推計したdg価は,乾草,サイレージいずれも早刈区が有意に高く,収穫時期10日間のおくれによりdg価は乾草では13.5%,サイレージでは5.9%,それぞれ低くなった.
著者
蔡 義民 増田 信義 藤田 泰仁 河本 英憲 安藤 貞
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.J536-J541, 2001-10-25
被引用文献数
23 1

低未利用飼料資源を有効に利用するため,容易に流通できるポリドラムサイロを用い,食品産業廃棄物である茶飲料残渣の飼料調製•貯蔵技術を検討した.茶飲料生産工場から排出された緑茶飲料残渣には乳酸菌は検出されず,好気性細菌および酵母が高い菌数で分布していた.茶飲料残渣に含まれるグルコースなどの可溶性炭水化物(WSC)がきわめて少ないため,飼料作物のようなサイレージ発酵が出来なかった.飼料作物から分離された乳酸菌株<i>Lactobacillus plantarum</i> FG1または市販乳酸菌剤<i>Lactobacillus rhamnosus</i> SN1と<i>Acremonium</i>属菌由来のアクレモニウムセルラーゼを添加して茶飲料残渣サイレージを調製した.乳酸菌とセルラーゼを添加した茶飲料残渣サイレージはpH値が低く,乳酸含量が高い良質なものが調製され,125日間の貯蔵中に変敗しなかった.また,茶飲料残渣サイレージにはタンパク質,機能性成分であるカテキン類,カロチンおよびビタミンEなどが豊富に含まれた.
著者
桑名 貴
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.189-194, 2006-05-25

人間活動の広がりに加えて,環境汚染や生息域の分断による生息域劣化によって絶滅の危機に瀕している野生生物種は益々増加しており,広義の生息域外保全の一環としてこれらの動物細胞や遺伝資源を保存することが重要になってきた.鳥類の卵は大量の卵黄顆粒を含んでいる巨大細胞であることから受精卵や卵を凍結保存することがきわめて困難で,精子凍結以外の方法は現実的ではなかった.また,鳥類細胞は1996年にわれわれが培養方法を開発するまで長期培養ができなかったために,体細胞の培養と凍結保存も一般的ではなかった.われわれは絶滅危惧鳥類種の体細胞の保存を積極的に行うとともに,鳥類の個体発生初期に出現して将来の精子や卵の祖細胞(幹細胞)である生殖幹細胞(始原生殖細胞 ; PGC)に着目して,これを用いた種の保存,個体増殖の手法を開発している.この技術を応用して繁殖効率の悪い熊本県天然記念物の久連子鶏(くれこどり)の子孫を生殖巣キメラ個体から得ることができた.この研究開発と並行して,PGC凍結保存法やPGC単離精製法も格段に進歩した.既にこの移植技術の応用範囲を広げるための基盤研究も行っており,その成果は絶滅危惧鳥類への応用を含めて,鳥類での凍結保存細胞の利用方法を考える上で重要な基盤技術となると考えている.
著者
安井 勉
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.163-167, 1958

筋肉色素中のおもな成分の一つであるミオグロビン(Mb)の加熱変性の問題を研究することは,加熱肉製品中のMbの状態を推定する有意義な方法と思われるので,結晶馬Mbを用いて検討を試みた。その結果次のことが明きらかとなつた。<br>1) Mbはヘモグロビンと異なり,1/10N NaOH溶液中でほとんど変性しない。<br>2) 一酸化窒素Mbを加熱凝固させて,1/10N NaOH溶液中でとかすと,その吸光像は,未変性のもののそれと類似した像を示す。その他の誘導体の光学的性質も同様の傾向を示すことから,Mbの加熱凝固現象には可逆的な部分があると考えられる。<br>3) 加熱凝固メトミオグロビン(met Mb)について,アルカリ処理後中和して,その変性からの回復率を予備的に色々な実験条件で観察した結果,沸騰水中で加熱した場合,蒸留水中では5分間で約80%,30分で約40%,1/15M燐酸緩衝液中では5分間で65%,30分で40%,3%NaCl液中では5分間ぞ約20%,30分以上で約14%が,来変性Mbの光学的特徴をもつたものとして回収された一方,70°で加熱した場合は,いずれの溶液中でもほとんど凝固が起こらず,その90%近くが未変性な形のままで存在していた。<br>4) 加熱凝固met Mbから得られたMbは,未変性のものと同じように,色々なMb誘導体を形成し,その吸光像は,未変性Mbのそれと全く一致した傾向を示した。<br>5) これらの事実から,Mbの加熱変性は2つの段階から成ることが推定された。
著者
石田 光晴 武田 武雄 斎藤 孝夫 鹿野 裕志 松本 忠 高橋 功
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.496-501, 1988
被引用文献数
4 2

黒毛和種去勢牛8頭を用いて,屠殺前1年間の肥育期間中における皮下脂肪をバイオプシーによって採取し,その脂肪酸組成を調査した.供試牛は4頭ずつA,B2群にわけ,A群は主に濃厚飼料を多給,B群では濃厚飼料と稲ホールクロップサイレージを給与し,飼料による差を検討した.さらに屠殺後の皮下脂肪,筋肉間脂肪および腎臓周囲脂肪の脂肪酸組成を比較した.バイオプシーによる皮下脂肪の脂肪酸組成は,肥育期間中徐々に全飽和脂肪酸の割合が増加し,試料採取開始から最終時期までに8-10%程度増加した.季節的には,寒い時期の12月から2月にかけて,飽和脂肪酸のパルミチン酸とステアリン酸の割合が低くなり,不飽和脂肪酸のパルミトオレイン酸とオレイン酸の割合が高くなった.5月から10月の暖かい時期はその逆の傾向がみられた.飼料別では,A群はB群と比較して,全不飽和脂肪酸の割合は肥育期間中約5%高い値を示したが,飼料の差異は脂肪酸組成に有意な差を示さなかった.この傾向は,屠殺後の各蓄積脂肪においても同様であった.部位別では,体表部に近い皮下脂肪から深部の腎臓周囲脂肪にかけて,全不飽和脂肪酸の割合が減少し,部位間で有意差が得られた.また,皮下脂肪の腹側と背中側では,背中側の方が不飽和脂肪酸の割合がやや高かった.
著者
新村 末雄 高橋 英太
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.713-719, 1995-08-25
被引用文献数
9 2

培養マウス胚盤胞の収縮運動をタイムラプスビデオを用いて観察した.ハッチング前の期間において,83.3%(25/30)の胚盤胞が収縮を行なったが,ハッチング中およびハッチング後10時間までの期間では,すべての胚盤胞が収縮を行なった.これら3期間において,弱度(20%未満の体積の減少)および強度(20%以上の体積の減少)の収縮の平均回数および1時間当たりの平均収縮回数は,いずれもハッチング中の期間で有意に多かった.また,ハッチングを完了した胚とハッチングを完了しなかった胚において,胚盤胞形成後32時間までの弱度の収縮回数に差はみられなかったが,強度の収縮回数はハッチングを完了した胚で有意に少なかった.以上の結果から,胚盤胞の収縮運動,特に,弱度の収縮はハッチングに役割を果たしているが,強度の収縮はハッチングとは関係なく,ハッチングを完了できないような胚で多発するものであることが考えられた.
著者
高田 良三 山崎 信 杉浦 俊彦 横沢 正幸 大塚 誠 村上 斉
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.59-65, 2008-02-25
参考文献数
20
被引用文献数
7 7

わが国における肥育豚の飼養成績に及ぼす地球温暖化の影響を各地域の月平均気温の変動予測シナリオから推定した.肥育去勢豚(開始体重42.1±5.5kg)を用いて環境制御室において温度と飼養成績との関係を求めたところ,23℃時の日増体量に対して5%,15%,30%低下する時の気温はそれぞれ24.5℃,27.3℃,30.4℃であることが示された.同様に日飼料摂取量に対してはそれぞれ25.9℃,30.3℃,33.8℃であった.6~9月について,その気温域に該当する区域を日本地図上に図示するプログラムにより,肥育豚の日増体量に及ぼす地球温暖化の影響を解析した.「気候温暖化メッシュデータ(日本)」を将来の気候予測データとして用い,約10×10km単位のメッシュで解析を行った.その結果,2030年,2060年と年代の経過と共に日増体量の低下する地域が拡がり,また低下する程度もより厳しくなることが予測された.8月においては現時点ですでに西日本の沿岸部を中心に日増体量の低下が認められるが,2060年になると北海道の一部および標高の高い山間部を除いた大半の地域で日増体量の低下が予測され,特に関東以西では15~30%の厳しい日増体量低下が予測された.以上の結果から,今後予測される地球温暖化の加速化がわが国の養豚生産に大きく影響を与えることが明らかとなった.
著者
安部 直重 高崎 宏寿 苗川 博史 佐藤 衆介 菅原 和夫
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.449-456, 2002-08-25
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

本研究は150日齢でのマネキンに対する模擬闘争行動を発生した個体の特徴を行動学的および生理学的に明らかにすることを目的とした. 交雑種雄子牛10頭を供試し, ヒトの代替として設置したマネキンに対して模擬闘争を発生した6頭 (発生群) と発生がなかった4頭 (非発生群) を通常飼育下, 新奇環境下およびストレス刺激下での行動的・生理的反応に関して比較した. 通常飼育管理下では, 維持行動および常同行動に関して差はなかったが, 発生群の社会行動は多く, とくに闘争行動の6時間あたりの発生回数では発生群の3.3回に対し非発生群は1.6回, 模擬闘争行動では発生群の7.8回に対し非発生群では4.3回と有意に多かった (P<0.05). 新奇環境としてマネキンを設置したオープンフィールド (OF) 内における行動では, 発生群はOF全体を平均的に通過するのに対し非発生群はマネキン設置付近を有意に避けた (P<0.001). また, OFを囲う壁への探査行動は非発生群で200回に対し, 発生群では101回と非発生群が有意に多発し (P<0.05), マネキンに対する探査時間は発生群で109秒に対し非発生群では8秒と発生群が有意に長かった (P<0.05). 驚愕刺激前後の心拍数の変動率は, 発生群では118%に対し非発生群は115%と発生群が高い傾向にあった (P=0.10). 拘束前後の血清コルチゾール値の変動率では発生群の28%に対し非発生群では192%と非発生群が有意に大きかった (P<0.05). 血清テストステロン値は発生群の8.33ng/m<i>l</i> に対し非発生群は4.11ng/m<i>l</i> と発生群が有意に高かった (P<0.05). これらの結果から模擬闘争行動発生個体および非発生個体は, 積極型行動タイプと消極型行動タイプというストレス研究での類型化と一致する可能性が示唆された.