著者
田中 清一 石井 和夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.15-17, 1953-07-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
11

Both germicidal Lamps made in Japan and the United States were effective in killing bacteria in the air and the tin-foil can prepared for the dried milk packaging, but less effective in fluid milk and dried milk except the mold in butter.In case of granular sugar, the thin layer of sugar and long time of irradiation neccesary to destroy bacteria and mold appeared to make this procedure difficult commercialy.American niade apparatus was stronger than Japanese one in its killing power.
著者
圓山 悠子 北 満夫 今井 裕 徳永 智之 角田 幸雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.757-762, 1991-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19

ブタ卵子の核移植を行なうために,体外で成熟させたブタ卵胞卵の単為発生誘起条件,ならびに抜き取った細胞質と除核未受精卵との電気的再融合条件について検討した.卵胞卵は屠場で得た卵巣から回収し,10%ブタ去勢雄血清,FSH,および抗生物質を含むTCM-199液中で44-48時間培養して成熟させ,第1極体の放出が認められた卵子を実験に供した.25-100V⁄mm,25μsecのパルスを2度与えることにより,体外成熟卵の79-100%に単為発生が誘起された.一方,7%濃度のェタノール処理は,卵胞卵の単為発生誘起には効果がなかった,ついで,8細胞期胚割球の融合を想定し,およそ1⁄8細胞質を吸引除去した除核未受精卵への除去細胞質の再融合条件を検討したところ,50-100V⁄mmの電圧下25-50μsecのパルスを2度与えることによって,高率(88-95%)に細胞融合が観察された.ブタ体外成熟卵子を用いた,1⁄8吸引除去細胞質の除核未受精卵への移植においては,50-100V⁄mm,25μsec,2回のパルス条件が適しているものと推察された.
著者
入江 正和 大本 邦介 熊谷 重夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.381-388, 1984
被引用文献数
1 1

豚の妊娠診断を,より簡単に,早期に,かつ的確に行なうために,小型軽量の人体用電子リニアスキャンを用いて超音波断層法(パルス法,Bモード)を実施した.超音波装置の探触子を無保定で起立している豚の下腹部に密着させて検査を行なったが,交配後18~21日で子宮内に胎嚢(Gestationa lSac, GS)の出現を確認することができ,これにより,あるいは,胎芽や胎児エコーの存在によって妊娠の有無を診断した結果,交配後22日以降では検査豚の99%について明確な診断を下すことができ,その適中率は100%であった.交配後25日まで平均GS径(y)は急激な増大を示し(1日約6mm),交配後の日数(x)と高い相関があり(r=0.89), y=6.97x-128.02なる回帰式が得られた.GSの形態は,発現時期では円形~楕円形のものが多かったが,以後不正形を呈するものが多くなった.GSの大きさは個体内でもさまざまであった.交配後25日頃には弱い胎芽エコーが確認できるようになり,妊娠診断も多数の大きなGSが存在するために容易であった.妊娠中期以降では,胎児の頭や体が明確に区別されるようになり,胎児の動きや胎児心臓の鼓動も観察でき,生死鑑別も可能であった.子宮内における胎児の向きや分布はさまざまであった.検査母豚における分娩頭数,妊娠期間等に異常はみられず,本法の安全性に問題はなかった.以上の成績から,超音波断層法は実用的ですぐれた豚の早期妊娠診断法であることがわかった.
著者
佐々木 義之 祝前 博明
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.93-99, 1980
被引用文献数
4

和牛産肉能力検定直接法の成績を用いて増体率(ADG)および飼料の利用能力に関する種雄牛の育種価を推定した.鳥取県種畜場および宮崎県総合農試肉畜支場で昭和46年から51年までの6年間に検定された雄子牛そらそれ135頭および174頭の成績を用いた.育種価を推定した種雄牛はそれぞれ14頭および23頭であった.検定成績は補正係数を用いて,あらかじめ検定期間,季節および開始時日齢につき補正を行った.育種価の推定法としてはRENDERSON (1973)のMixed Model Solution(MMS)による方法(BLUP法)を用いた.その際,相加的血縁行列を用いることにより種雄牛間の血縁を考慮したが,それをしなかった場合,さらに,単に通常の最小自乗分散分析法による最小自乗恒数を育種価推定値と見做す場合についても検討してみた。種雄牛分散に対する誤差分散の比(σε2/σμ2)は全国の検定牛から推定された分散成分を用いて算出した.種雄牛相互間の平均血縁係数は鳥取および宮崎でそれぞれ14.0%および3.0%であった.ADGに関する育種価にもとづき種雄牛に序列をつけると鳥取および宮崎の上位3頭は,それぞれ昭栄1,吉光,吉徳および第18明石,前谷,初栄であった.しかしながら,相加的血縁行列を用いないBLUP法あるいは通常の最小自乗分散分析法による最小自乗恒数では,それらの序列が異なり種雄牛間に濃い血縁関係のある鳥取の場合は,とくにその違いが顕著であった.形質ごとに求めた種雄牛の序列を比較するとADGと終了時体重との間,TDN要求率とDCP要求率との間,さらにADGと飼料要求率との間には高い正の順位相関が認められたが,ADGと粗飼料摂取率との間の相関はむしろ負の傾向を示した.
著者
宮崎 昭 上坂 章次 池田 清隆
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.133-140, 1967

イネ科青刈飼料作物の硝酸塩含量の草種,系統による差異を知るために,春の青刈飼料4種,夏の青刈飼料3種をそれぞれ同一条件下で栽培しその硝酸塩を定量した.また青刈トウモロコシについては10系統を用いて同じくその硝酸塩を定量した.第1試験では春の青刈飼料としてエンバク,ライムギ,オオムギ,コムギを用い1965年4月6日から約10日目ごとに5回刈取り,その硝酸塩を定量した.その含量は全般に少なく乾物中KNO<sub>3</sub>として2%以下であり,生育に伴う変化もそれほど著しくはなかつた.しかし全期間を通して青刈コムギの硝酸塩含量は他の3種のそれより少なく,つねに1/2程度であつた.またコムギを除いて他の3種の作物の硝酸塩含量は刈取期ごとに異なつていたので,いずれが,より硝酸塩を蓄積しやすいということはなかつたが,出穂期にはオオムギにやや多くの硝酸塩が含まれており,乾物中KNO<sub>3</sub>として1.08%であつた.第2試験では夏の青刈飼料としてトウモロコシ,ソルガム,テオシントを用い1965年8月24日から約8日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.本試験では生育の初期に40日余り降雨がなかつたので,最初の2回の刈取期には硝酸塩含量はいくぶん少なかつたが,そののち雨が降ると非常に高くなり,乾物中KNO<sub>3</sub>として5%以上となつていた.しかしその後は生育期が進むにつれて減少し,出穂期ごろには1%前後であつた.つぎに草種による差異をみると,全期間にわたつて硝酸塩含量がつねに高いものはなかつたが,生育の後期にはソルガムにやや硝酸塩が多いようであつた.第3試験では青刈トウモロコシ10系統を用い,1965年6月22日から約7日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.まず青刈トウモロコシの硝酸塩含量は刈取期が早いときには乾物中KNO3として6~10%も含まれていたが,生育期が進むにつれて激減し,ふつう青刈飼料として用いる程度に生育したものではその硝酸塩含量は大低の場合1.5%以下であつた.つぎに系統による差異をみると,各刈取期ごとに硝酸塩を多く含むものとそうでないものと量あつた.そして生育期のはじめごろには系統間の差異は大きいようであつた.これら3つの試験において,青刈飼料作物の硝酸塩含量は環境条件によりかなり影響されるようにみうけられた.したがつて硝酸塩を多く蓄積しない作物をみつけていくには,草種,系統による硝酸塩蓄積の差異を知ることは大切であるが,硝酸塩蓄積に大きな影響を及ぼす環境条件を知ることも大切であろうと推察された.
著者
鎌田 信一 柿市 徳英 本澤 明彦 大塚 宏治 内田 和夫
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.1228-1233, 1992

アクサルアミド(ACR)のメタン発酵に対する影響試験を試みたところ,ACR 3.3mg/l以上で発生ガス量が極度に低下した.このメタン発酵スラッジからACR耐性通性嫌気性菌の分離を試みた結果,ACRに対する最小発育阻止濃度(MIC)が20,000mg/lの<i>E</i>. <i>coli</i> SK-1株が分離された.また,本菌株はACRを炭素源として利用することが明らかにされた.さらに,本菌株をPVA-硼酸法により固定化し,ACRの分解を調べたところ,4日間で52%が分解された.以上より,メタン発酵は微量のACRの存在で阻害されることが明らかとされた.また,ACRにより馴化したメタン発酵スラッジ由来の<i>E</i>. <i>coli</i> SK-1は固定化したバイオリアクターとしての応用の可能性が示唆された.
著者
本間 運隆 神野 雅宏 佐藤 孝二 安藤 昭弘
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.348-352, 1968 (Released:2008-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
3

Imperfect and perfect albino Japanese quail, originating from a commercial breeder in Toyohashi, were subjected to genetical analysis. The imperfect albinism is caused by a simple sex-linked recessive gene (sw) that appears to be homologous to the al gene assigned for albino mutants by LAUBER4) and SITTMANN et al.6)Growth of the imperfect albinos was not inferior to that of the wild-type when the albinos were raised in a box protected from sudden temperature decline. Bilateral eye defects (cheesy cataracts) are common in aged imperfect albinos, but this condition does not seem to affect reproductive performance.The perfect albino sire mated to imperfect albino dams resulted in only dark progeny indicating that perfect albinism is a genetically distinct character from imperfect albinism. The high mortality in the progeny of perfect albino is caused by certain lethal factor associated with the perfect albinism.Unusual retardation of growth was observed in female double mutants carrying Y1) and swgenes. After 2 weeks of age, identification of the genotype of such albino mutants was possible by examination of the pattern and intensity of the ghost barring character.
著者
加藤 清雄 遠藤 広行 国則 文子 峯尾 仁 牛島 純一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.978-984, 1987

めん羊の膵外分泌に及ぼす静脈内ペンタガストリン投与の影響を, CCK-8に対する反応と比較しながら検索した. 無麻酔めん羊において, CCK-8は膵液流量, 蛋白質濃度およびアミラーゼ活性何れも増加させたが, ペンタガストリンは膵液流量を増加させずに蛋白質濃度およびアミラーゼ活性を有意に増加させた. ペンタガストリンは, 麻酔下で幽門部を結紮されためん羊においても膵外分泌増加効果を示した. ペンタガストリンによる蛋白質とアミラーゼの最大放出量は, 無麻酔下においても麻酔下においてもCCK-8の場合より少なかった. これらの結果は, ペンタガストリンは腸相を介することなく膵腺房細胞刺激効果を有するが, この効果はCCK-8よりも小さいことを示している.
著者
浅野 由ミ 舘 鄰 上北 尚正 河西 恭子 遠藤 秀紀 山田 格 佐分 作久良 山内 啓太郎 東條 英昭 名取 正彦
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.351-362, 1999

絶滅種や稀少種の機能遺伝子を解析することは,遺伝子資源の保全や進化学的研究の見地から重要な課題である.本研究は,毛皮あるいは剥製標本の表皮から効率的にゲノムDNAを抽出する方法を開発し,絶滅種や稀少種の機能遺伝子を解析することを最終的な目的として行ったものである.一般に,絶滅種や希少種の剥製&bull;毛皮標本は数も少く,貴重であるので,DNA抽出のような,破壊的解析のための材料を入手することは,困難な場合が多い.従来報告されている古代DNAの抽出法では,いずれも,抽出のために比較的大きな標本片を用いており,少量の標品しか入手できない場合には適用できない.本研究では,特に,原材料となる剥製や毛皮標本の形をできるだけ損傷しないことに留意し,約1mm角の毛皮断片からゲノムDNAを効率よく抽出する方法の確立と,PCR解析を行うための条件の検討を行った.また,本研究で確立した方法を用いて,製作年次の異なる食肉目動物毛皮標本から回収したゲノムDNAをテンプレートとして,歯のエナメル質タンパク質をコードしているアメロゲニン遺伝子断片の回収と塩基配列の解析を試みた.結果の一部として,モンゴルオオカミの毛皮標本から抽出したゲノムDNAのアメロゲニン遺伝子の配列の一部を解読することができたので,イヌ(ゴールデンリトリーバー)の血液から抽出したゲノムDNAのアメロゲニン遺伝子の配列と比較したところ,モンゴルオオカミとイヌの配列は100%一致したが,イヌの品種間,あるいは個体差による配列の多型が存在する可能性もある。イヌ,オオカミのアメロゲニン遺伝子の塩基配列は従来報告が無く,部分的ではあるが配列が決定されたのは本論文が始めてである.イヌとオオカミの種間の違い,および,イヌの品種間の多型については,今後,さらに検討が必要である.
著者
賀来 康一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.618-629, 1995-07-25
被引用文献数
14 2

畜産生産者の,現在設立の準備が進行している国内鶏卵•豚肉先物市場活用に関する検討を実施した.1993年現在,飼養頭羽数について採卵場の約60%,豚の約35%が農家以外の生産者によって飼養され,鶏卵•豚肉に関する生産主体は,農家から企業への移行過程にあり,生産者がヘッジャー(リスク削減の手段を取る人)として先物市場を活用する前提条件を満たしつつある.本稿ではまず,1983年から1993年までのシカゴ•マーカンタイル取引所(CME)上場畜産物先物3商品(Live Hog,Frozen Pork Bellies, Feeder Cattle)および1988年から1993年までの国内先物市場上場10商品(小豆,米国産大豆,トウモロコシ,粗糖,乾繭,生糸,金,銀,白金,ゴム),さらに「農村物価賃金統計」による国内豚肉(肥育豚生体10kg)•鶏卵(M1級,10kg)の値動きデータを使用して,期間1年,6ヵ月,1ヵ月の価格に関する変化率を比較した.その結果,鶏卵•豚肉の価格変化率は他の先物商品と比較して,ヘッジ(リスクを他へ移転すること)を必要とする水準にあることが明らかとなった.国内先物市場上場10商品の,順ザヤ(当限価格よりも期先価格が高い状態)または同ザヤ(当限価格と期先価格が等しい状態)期間の調査期間に占める比率と,発会ごとに売買最低単位である1枚を売り,納会ごとに売り契約を乗り換えるRoll hedge(生産者にとって,長期間にわたる大量の生産物の販売価格を,満期が個々に異なる一連の先物契約を利用してヘッジする方法)による損益の関係はr2=0.6200 (rは相関係数)であり,相関が有意に認められた(p<0.01).同様にCME畜産上場3商品のRoll hedgeとの関係もr2=0.9999となり有意な相関が認あられた(p<0.01).先物商品のうちStrorables(在庫可能商品)は順ザヤまたは同ザヤ期間が逆ザヤ(当限価格が期先価格よりも高い状態)期間よりも長い商品が多く,順ザヤまたは同ザヤ期間が長いほど売り方が有利であることが明らかとなった.また,国内先物市場10商品に関するRoll hedgeによる損益と実施年数から,Storablesに関する長期間のRoll hedgeは有利である傾向が示唆された.いっぽう,Nonstorables(在庫不能商品)は,逆ザヤ期間が長く,長期間のRoll hedgeは不利である傾向が示唆された.現在検討中の畜産物価格指数はNonstorablesと考えられるので,畜産生産者が先物市場を経営の安定化を目的として活用するには,売りヘッジを生産畜産物の範囲内にとどめ,ヘッジャーとして生産物の売却価格の将来的な固定を図るべきであり,オーバーヘッジ(生産者にとって,生産販売予定量以上を先物市場において売り約定すること)はリスクが大きい.いっぽう,畜産物先物市場を収益拡大の場として活用するにはストラドル(1つの先物契約を購入すると同時に,もう1つの先物契約を売却し,その価格の連関の変化から利益を得ようとする取引)等の技術が必要となる.
著者
苗川 博史
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.241-245, 2004-05-25
参考文献数
10

本研究は,モンゴル遊牧体系における二地域の夏営地のヒツジ母子間100組を対象に,音節の組み合わせによる発声タイプと行動型を,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間との関係について検討した.音節の組み合わせによる母子間の相互作用については,子ヒツジがイニシアチブを有した8タイプと母ヒツジがイニシアチブを有した5タイプに分類された.母子ヒツジともに口の開および閉による発声の割合は,約9 : 1と開いた方が多く,また,母ヒツジが双方向(75%),子ヒツジは一方向(46%)と発声なし(31%)を示す特徴があった.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8(母子双方に発声なし)は,母子間距離と母子が遭遇するまでの時間との間に有意な正の相関が,また吸乳時間と母子間距離の間には有意な負の相関があり,母子間距離によって母子が遭遇するまでの時間,吸乳時間に関連性があることを示唆した.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ5(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答なし)は,食草移動時に71.4%,休息行動時に28.6%出現した.この発声タイプ5は,発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/)との間に,母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差があり,母子が遭遇するまでの時間,および母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.子ヒツジの発声タイプ8は,食草移動時に28.6%,休息行動時に71.4%出現し,食草移動時間および休息時間の割合が発声タイプ5と対称的であった.この発声タイプ8は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ1(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnae/),発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/),発声タイプ3(子ヒツジの発声/nee/と母ヒツジの応答/nnae/)との間に母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差が見られ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.母ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプIII(母ヒツジの発声/nnae/と子ヒツジの応答/nee/)は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8との間に,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離において有意差が認められ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声のタイプが異なることを示唆した.今回の結果から,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間は,発声時における音節の組み合わせによるタイプと行動型によってそれぞれ異なることが示唆された.
著者
苗川 博史
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.228-239, 2004-05-25
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

14頭もしくは20頭の小群内において,生後3週齢までのヒツジ母子5組の音声コミュニケーションにおける母子間の反応(以下相互作用)を音声表記と情報量に基づいて検討し,母子間の接近行動の経日的推移について解析した.音声表記については,調音作用の観点から口の開閉によって構成される母ヒツジ/nnn/と/nae/と/nnae/および子ヒツジ/nnn/と/eee/と/nee/を発声タイプとして表した.相互作用については,母子それぞれ3タイプの発声と,これらに対する反応を8タイプに分類した24通りのダイアド(母子いずれかの発声とその後に続く一方または双方の行動を1組の完了行動とする)ならびに,それらの情報量について解析した.また,接近行動については,発声の有無に分けて母子ペア毎に経日的に解析した.その結果,母子間の相互作用は,情報伝達機能上,口を開けた発声が主導を占め,発声後は相手を視認もしくは注視し,その後の行動に移行する反応系で構成されていた.その際には,口の開閉のタイプによって生起する反応のしかたに個体差が見られ,発声のしかたによって応答が異なることが示された.また,いずれの発声においても母子ヒツジ間に共有される情報量は0ビットよりも大きく,母子ヒツジ双方に情報の共有があったことが示された.音声表記の結果については,発声タイプによって周波数と持続時間に違いが認められ,それぞれの発声構造の特徴を示すことができた.すなわち,母ヒツジの場合は,口を開けた/nae//nnae/タイプが,口を閉じた/nnn/タイプよりも周波数が50ヘルツ高く,発声時間も0.1秒長かった.子ヒツジの場合は,口を開けた/eee/と/nee/タイプが,口を閉じた/nnn/タイプよりも周波数が50ヘルツ高いものの,発声時間は0.1&sim;0.2秒短かった.発声に基づく接近のイニシアチブは,生後3週齢までは母ヒツジ主導型であったが,発声によらない接近のイニシアチブの割合については,子ヒツジの方が大きい傾向にあった.
著者
ブンチャサック チャイヤプーン 田中 桂一 大谷 滋 コリアド クリスチーノM.
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.956-966, 1996-11-25
参考文献数
43
被引用文献数
6 2

低タンパク質飼料にメチオニンとシスチン(Met+Cys)を添加することによって雌ブロイラーヒナ(0から21日齢)の成長と脂肪蓄積に及ぼす影響を検討した.17%タンパク質(CP)含量試料(CP;17%,代謝エネルギー(ME);3,017kcal/kg)にMet+Cysを0.64%,0.93%,1.25%あるいは1.50%を添加した.23%CP含量の飼料(CP;23%,ME;3,017kcal/kg)を対照区とした.飼料摂取及び飲水は自由にさせた.増体量は23%CP飼料区の方が17%CP飼料区より大きかった.しかしMet+Cys1.50%添加17%CP飼料区の増体量は23%CP飼料区の値に近づき統計的に有意な差は観察されなかった.飼料要求率は23%CP飼料区の方が良かった.しかしタンパク質効率,飼料及びエネルギー摂取量は17%CP飼料区と23%CP飼料区との間で統計的に有意な差は観察されなかった.腹腔内脂肪量17%CP飼料区の方が高かった.しかし17%CP飼料区間ではMet+Cysの添加量が大きいほど腹腔内脂肪量は減少した.肝臓におけるacetyl-CoA carboxylase活性は処理間で差が観察されなかったが,fatty acid synthetase活性は17%CP飼料区の方が高い値を示した.一般に,低タンパク質飼料を給与すると肝臓,血清及び胸筋中のトリグリセリド含量は高くなるが,Met+Cysを1.5%添加することによって肝臓中のトリグリセリド含量は高タンパク質飼料区の値に近づいた.血清及び胸筋中の遊離型コレステロール含量は飼料中タンパク質含量の影響を受けなかった.肝臓では17%CP飼料区より23%CP飼料区の方がむしろ高かった.肝臓中リン脂質含量は飼料中タンパク質レベルやMet+Cys添加量による影響は観察されなかったが,胸筋中リン脂質含量は17%CP飼料区へのMet+Cys添加量の増加に伴って高くなる傾向を示した.本実験の結果は17%CP飼料でも適切な量のMet+Cysを添加することによって21日齢までの成長中ブロイラーの成長を改善することができることを,また腹腔内脂肪量は,23%CP飼料区の値よりは大きかったが,17%CP飼料にMet+Cysを添加することによって減少させることができることを示唆した.
著者
栗原 光規 久米 新一 高橋 繁男 相井 孝允
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.375-382, 1991
被引用文献数
4 1

高温時における乾乳牛のエネルギー代謝に及ぼす給与粗飼料の影響を検討する目的で,ほぼ維持量のイタリアンライグラス乾草(IH区)あるいはトゥモロコシサイレージ(CS区:大豆粕150g追加)を各2頭のホルスタイン種乾乳牛に給与してエネルギー出納試験を行った.環境条件は,相対湿度を60%に保ち,環境温度を18,26および32°とした.その結果,1) 体温および呼吸数は,環境温度の上昇とともに有意に上昇,増加したが,飼料間に有意な差は認められなかった.2) 総エネルギー摂取量に対する熱発生量の割合は,32°で増加する傾向にあり,その増加量はIH区の方が高い傾向にあった.3) エネルギー蓄積量は,CS区と比べてIH区の方が有意に少なく,また,環境温度の上昇とともに減少する傾向を示した.4) 摂取代謝エネルギー量に対する熱増加量の割合は,IH区では環境温度の上昇にっれて,CS区では32°で増加する傾向を示した.5) 維持に要する代謝エネルギー量は,IH区では18°と比べて26および32°でそれぞれ約6および11%,CS区では18および26°と比べて32°で約10%増加した.
著者
青木 真理 鈴木 修 安藤 貞
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.647-650, 1996-07-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

Milk composition of beef cows with their suckling calves was examined using the average of milk before and after suckling sampled by hand milking within 26 weeks after calving. The concentration of milk fat and total solids before suckling were lower than those after suckling. The concentration of milk protein, lactose and solids-not-fat before suckling were almost equal to them after suckling. The daily milk yield changed following weeks after calving, but the milk composition did not change.
著者
石橋 晃
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-13, 2007-02-25
参考文献数
33
被引用文献数
3 1

日本の配合飼料の生産量はここ数年約24,000万tである.その原料の大部分は外国からの輸入に依存しており,TDN換算で純国内産飼料の自給率は24.7%,濃厚飼料の自給率は9.7%である.そのため,自給率をあげることはわが国の畜産業界の最大の課題である.それを35%にまで引き上げるべく取り組みがなされている.また,BSE発生以来食の安全性に対する関心が高まり,安全性を担保するため色々な方策が講じられている.反芻動物の飼料への動物性タンパク質の混入を防止するためのA飼料,B飼料の製造工程分離,有害物質の混入防止,その他,配合飼料のトレサビリティ,鳥インフルエンザなどの疾病対策,環境問題など取り組むべき課題は山積している.しかし,絶対的な安全性の担保は不可能である.可能な限り,科学的な立場で対処していかなければならない.その中で不安視され,関心が持たれている遺伝子組換え作物と抗生物質の現状について述べた.
著者
古谷 修 梶 雄次 浅野 猛 村山 隆一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.407-413, 1988
被引用文献数
1

フスマ,脱脂米ヌカ,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールの豚小腸末端までのアミノ酸および粗蛋白質(CP)の真の消化率を,小腸末端にカニューレを装着した9頭の子豚(開始時体重約30kg)を用いて測定した.実験1では, トウモロコシとコーンスターチを主体とする基礎飼料(CP3.3%)およびそのコーンスターチをフスマあるいは脱脂米ヌカで代替した飼料の合計3種類の飼料を用い,1試験期間4日間として3期にわたって消化試験を実施した.各期では4頭の豚に3種類の飼料のいずれかを,1日目の午後5時から8時間間隔で1日3回,400g宛給与し,3,4およびつぎの試験期間の1日目にあたる5日目の午後1~3特に小腸内容物を採取して分析に供した.消化率は酸化クロム法によって求めた.実験2では,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールを供試し,基礎飼料およびそのコーンスターチの全部あるいは一部を各飼料原料で代替した4種類の合計5種類の飼料,5頭の豚および5試験期間による5×5のラテン方格法によって実施した.その他の条件は実験1と同様であった.試験の結果はつぎの通りである.小腸末端までの真の全アミノ酸平均消化率は,フスマ,脱脂米ヌカ,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールで,それぞれ,85.6,70.4,81.7,80.4.,73.1および76.6%であった.また,CPの真の消化率は,それぞれ,82.1,65.8,79.8,71.2,73.8および76.2%であった.必須アミノ酸のうちでもっとも制限となり易いリジンの小腸末端までの真の消化率は,それぞれ,85.6,70.9,77.3,82.6,74.0および66.5%であった.必須アミノ酸のうち,アルギニンの消化率が全飼料原料の平均で87.2%となりもっとも高く,トレオニンは72.4%で最低であった.
著者
松田 敦郎 梅津 元昭
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.167-173, 2005-05-25
参考文献数
19

妊娠豚へクロプロステノール(CLO ; PGF<SUB>2&alpha;</SUB>類縁体)およびカルベトシン(CAR ; オキシトシン類縁体)を投与し,分娩および子豚の成長を調べた.実験1では妊娠豚80頭を各群20頭に割付け,妊娠113日目にCLO 0.175mgを投与し,24時間後にCAR 0.05,0.1,0.2mgまたはオキシトシン25IUを筋肉内投与してCARの最適投与量を検討した.その結果,CAR投与から第1子娩出および分娩終了までの平均時間はCAR 0.1mg投与群が最短であった.実験2では妊娠114日目にCLO 0.175mgを投与し,24時間後にCAR 0.1mgまたは生理食塩水を筋肉内投与して分娩および子豚の成長を観察した.CAR 0.1mg投与群(50頭)の第1子娩出までの平均時間は43分で生理食塩水投与群(40頭)の299分に比べて有意に短縮した.CAR 0.1mg投与群では50例すべてが投与日の昼前に分娩を開始したが,生理食塩水投与群は40例中24例の分娩が昼以降になった.また,生後2,5,14日の子豚の平均体重は群間で差がなかった.以上の結果より,妊娠末期のブタへCLO 0.175mg投与後24時間にCAR 0.1mgを投与することは昼間分娩集中化を可能にすると考えられた.
著者
高橋 健一郎 堀 武司 波 通隆 本間 稔規 小高 仁重 口田 圭吾
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.237-244, 2006-05-25
参考文献数
8
被引用文献数
1

高精細牛枝肉横断面撮影装置(以下,新型撮影装置)により得られた牛枝肉画像を複数の画像形式に変換し,BCSナンバーの推定に最適な方法を検討した.材料には新型撮影装置を用いて撮影された黒毛和種肥育牛46頭の第6-7肋骨間の鮮明な画像を用いた.画像はロース芯をその輪郭で抽出したJPEG形式とTIFF形式の画像,ロース芯の一部を矩形で切り取ったJPEG形式とTIFF形式の画像および輝度ムラを補正し,上記と同様の処理をしたJPEG画像(ロース芯,矩形)の計6種類の画像を用意した.その6種類の画像よりロース芯全体,ロース芯の筋肉および脂肪交雑部分のR(赤),G(緑),B(青)各階調値および輝度の平均値など,計108変数を算出した.格付員によるBCSナンバーを従属変数,画像解析で得られた形質を説明変数候補とする重回帰分析を行ったところ,輝度ムラ補正を行い,ロース芯をその輪郭で抽出した画像において決定係数がもっとも高かった(R<SUP>2</SUP>=0.793).推定されたBCSナンバーと格付員によるそれとの差が&plusmn;0であったサンプルの割合は95.7%となった.以上のことから高精細撮影装置による圧縮画像からでも非常に高い精度でBCSナンバーを判定可能であることが示された.