著者
萩野 浩
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.898-904, 2018-11-16 (Released:2018-12-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

わが国の地域在宅高齢者の年間転倒発生率は10~25%で,施設入所者では10~50%程度である.高齢者の転倒による外傷発生頻度は54~70%程度で,骨折に至る症例は6~12%程度である.転倒の危険因子は身体機能の低下に起因する内的因子と,居住環境などに起因する外的因子とに分けられる.地域在宅高齢者の転倒を防止するためには,まず,対象の高齢者に関して転倒の危険因子を明らかにすることが必要である.単一の転倒防止介入は転倒防止に有効ではなく,個別の危険因子の評価と包括的介入が必要となる.施設入所者の転倒対策では,まず転倒事例の調査とその要因分析を実施する.転倒防止のための介入は在宅高齢者と同様に単一の介入は有効ではなく,個別の危険因子の評価と包括的な介入が必要である.
著者
天野 暁
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.774-780, 2020-09-18 (Released:2020-10-22)
参考文献数
32
被引用文献数
1

現在の脳卒中リハビリテーション領域の上肢機能関連研究においては,Fugl-Meyer Assessment(FMA)とAction Research Arm Testが重要な位置を占めている.両ツールともに,本邦における使用環境も整っており,通常の臨床業務での利用も推奨される.仮にFMAの実施時間が負担になるのであれば,短縮版FMAを導入することで,臨床業務とのバランスが取れる可能性がある.臨床研究デザインを評価視点で一段階引き上げたい場合には,適切な信頼性が確認された遠隔評価システムの導入を検討することによって,評価者盲検化を達成できる可能性がある.
著者
福本 貴彦
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.779-784, 2016-10-18 (Released:2016-11-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2

足関節は複雑な構造をしているかと思いきや,いたってシンプルな構造である.しかも,その構造は合目的的であるため,構造の理屈がわかれば理にかなった動きをしていることがわかる.ここで述べる距腿関節・距骨下関節・遠位脛腓関節は,それぞれの形状によりその動きが規定され,画一的な方向への運動が起こる.リハビリテーション場面では,このような関節運動学上の特性を理解し,内容を踏まえ,定義的な単純運動方向(一方向)である底背屈・内外反などといった3次元空間の定義ではなく,足関節が本来有する運動方向への動き(背屈+外反,底屈+内反)によって運動療法を行うべきであろう.
著者
森脇 美早
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.211-216, 2016-03-18 (Released:2016-04-13)

筆者が赴任したケアミックス病院には,療法士は多数在籍していたがリハビリテーション(以下,リハ)科医はおらず,リハ科医を知らない職員がほとんどだった.リハどころではないとの声も聞かれる中,質の高いリハ医療を浸透させるべく他科医師への啓蒙を含めた院内教育を行い,急性期から生活期までリハ科専門医が積極的に関与し,さまざまなチームアプローチを軌道に乗せた.たとえば,摂食嚥下医療,リハ栄養,brace clinic,経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)やボツリヌス療法およびCI療法などのニューロリハ,回復期リハ科回診,リハ科医・療法士の学会発表推進などである.リハ科専門医のロールモデルとして,病院全体の意識を変えた4年間の活動を振り返り,リハ科専門医の存在意義を論じたい.
著者
大塚 圭 向野 雅彦 松田 文浩 才藤 栄一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.143-152, 2021-02-18 (Released:2021-04-14)
参考文献数
13

臨床における歩行分析は,視診による主観的な分析が主流であり,定量的な歩行分析は活用されていない.その理由には,時間・人的コストや計測環境といった現実因子と対象者の制限や治療に対する有用性といった利得因子がある.これらの問題を解決させる1つの方法論として三次元トレッドミル歩行分析がある.筆者らは,従来の分析法に加え,新たに開発したリサジュー図形を用いて歩行を直感的な理解に役立てる歩行概観図 (LOP),運動学的因子で指標化した異常歩行の定量的分析,機能不全と代償動作に分けて遊脚の獲得戦略を分析する足部クリアランス分析を活用している.本稿では,実践例としてこれらの分析法を概説する.
著者
豊倉 穣 菅原 敬 林 智美 西村 葉子 村山 理恵
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.306-311, 2009-05-18 (Released:2009-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

近年考案された注意障害の行動評価尺度 (BAAD,Behavioral Assessment of Attentional Disturbance) は,原則的に作業療法施行中の場面を作業療法士 (OT) が観察してスコア化する.今回,家庭での家族による評価を実施し,注意障害の評価に有用か検討した.脳障害者 (脳卒中,脳外傷など) 53 名を対象とした.OT,家族による評価合計点 (最高18 点) はほぼ一致し,級内相関係数も0.89と高値を示した.項目別に検討すると,6 個中5 項目では64 %以上で両検者のスコアが完全に一致したが,1 項目のみ43 %に留まった.以上より家庭での評価も「注意」障害の検出に有用と考えられた.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.144-170, 2007-03-18 (Released:2009-11-06)
被引用文献数
6 1

加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)発症の分子機構の解明とその治療・予防法の開発…町田 修一 144骨格筋の再生機構とリハビリテーション…上 勝也,岩田 晃,浦井 久子 150廃用性筋萎縮とリハビリテーション…山内 秀樹 158ユビキチンリガーゼCbl-b による運動器の廃用性萎縮…山田 千晴,平坂 勝也,安井 夏生,二川 健 163
著者
渡邉 修 山口 武兼 橋本 圭司 猪口 雄二 菅原 誠
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.118-125, 2009-02-18 (Released:2009-02-24)
参考文献数
26
被引用文献数
11

厚生労働省は,2001 年から2005 年まで高次脳機能障害支援モデル事業を実施した.そのなかで,都道府県の実態調査をもとに全国の高次脳機能障害者数をおよそ30 万人と推定した.しかし,以後,高次脳機能障害者数を推計する報告は極めて少ない.そこで,東京都は,高次脳機能障害者支援施策を展開するうえで対象となる高次脳機能障害総数を把握する必要から,脳損傷者の発生数に関する調査および通院患者に関する調査を行った.方法:(1)年間の高次脳機能障害者発生数の推定:都内全病院(651 病院)に対し調査票を配布し,調査期間(2008 年1 月7 日~20 日)中に退院した都内在住の脳損傷者を調査し,性別年齢別に年間の高次脳機能障害者の発生数を推計した.(2)高次脳機能障害者総数推計:高次脳機能障害有病者数は,性別年齢別に平均余命に当該年齢の発生数を乗じ,これの合計を求めて都内の総数を算出した.結果:回収病院数は419で回収率は64.4 %であった.東京都内の1 年間の高次脳機能障害者の推計発生数は3,010 人,都内の推定高次脳機能障害者総数は49,508 人(男性33,936 人,女性15,572 人)であった.高次脳機能障害を引き起こす主な原因疾患は脳血管障害および頭部外傷であった.これらの疾患による高次脳機能障害の発生頻度を文献的に考察すると,本調査の結果は妥当な数値と考えられた.
著者
沖田 実 本田 祐一郎 田中 なつみ 坂本 淳哉
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1221-1228, 2021-11-18 (Released:2022-01-14)
参考文献数
11

運動器の外傷や外科術後などに生じる痛みが顕著な場合や持続して認められる場合は,患部やその周囲は運動を回避し,不動状態となる.また,傷害部位の治癒促進を目的に行われるキャスト固定などは不動状態を強いることになる.すると,運動器,中でも可塑性に富んだ骨格筋は筋萎縮や筋性拘縮,筋痛など,重複化,重篤化した病態を呈し,これらは慢性疼痛の病態形成にも影響を及ぼす.加えて,不動そのものが痛みの増悪や新たな痛みの発生といった慢性疼痛の病態形成に直接的に影響することも最近明らかになっている.そこで本稿では,筋萎縮,筋性拘縮,筋痛のメカニズムも踏まえ,慢性疼痛の病態形成における不動の影響を概説した.
著者
宮尾 益知
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.455-462, 2019-06-18 (Released:2019-07-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1

発達障害が不登校の要因として重要であることについては,近年注目されるようになり,要因,きっかけ,予後についても研究が行われている.発達障害であるが知的に高い子どもたちについても,不登校の割合が多く認められることは知られていない.2Eすなわちtwice-exceptional(二重に特別な)とは,「知的に高い(ギフテッド)+発達障害」のある子どもたちであり,社会性,認知,学習などにさまざまな困難を伴っている.われわれは,多くの症例からの学びにより,2Eの子どもたちが不登校に至る要因と治療過程について報告した.発達障害から不登校に至る子どもたちには,さまざまな要因が関係しているが,分析的に検討することにより予防的試みが行われるようになることを期待したい.
著者
井上 雄吉
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.542-553, 2007-09-18 (Released:2007-10-09)
参考文献数
40
被引用文献数
5 3

半側空間無視(USN)に対する1 Hz反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果や,局所脳血流量(rCBF)の変化を調べてUSNの回復過程に関わる脳内機構について検討した.対象は,右大脳半球の血管障害22 例(脳梗塞19 例,脳出血3 例)で,発症からrTMS開始までが70~220 日(平均128.3 日)であった.rTMSは,左頭頂後部(P5)を運動閾値の90%の強度で,1 Hz,500発刺激を隔日で計7セッション施行した(2 例で2 クール施行).評価は,Behavioural inattention test(BIT)や視覚的探索課題-反応時間,Xe-CT(cold法)などを用いて行った.結果では,抹消試験や模写試験,視覚探索反応時間は,rTMS施行1 週~2 週後から改善を認め,その効果は終了2 週後も持続していた.rCBFでは,rTMS施行後に右小脳半球で有意の増加を認めた.以上より,健側半球への低頻度rTMSはUSNに対して有効と思われ,USNの回復には小脳を含む脳内機構の改善が重要と考えられた.
著者
金谷 文則
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.52-60, 2014 (Released:2014-02-04)
参考文献数
16
被引用文献数
4

Peripheral nerve injuries are usually caused by trauma and are different from peripheral neuropathy. Clinical signs include flaccid paralysis, sensory loss and rapid muscle atrophy. Peripheral nerve lacerations are best treated by early microsurgical repair. There are several defining characteristics of peripheral nerve laceration and regeneration, namely, the degeneration of distal axons (Wallerian degeneration), the misdirection of regenerating axons, slow axonal regeneration and rapid muscle atrophy. Following nerve laceration, distal axons fall into axonal degeneration and leave empty Schwann tubes. Afterwards, several regenerating axons sprout from each proximal axon and they then regenerate into distal Schwann tubes in an almost random fashion. When sprouting axons migrate into different Schwann tubes other than their original tubes, misdirection occurs and functional recovery will not occur. The speed of axonal regeneration is usually from 1 to 2 mm a day. Denervated muscle atrophy progresses rapidly and becomes irreversible after one year. Therefore, muscles more than 36 cm distal to the nerve laceration site, for example, the hand muscles after a brachial plexus injury or the foot muscles after a sciatic nerve injury will not recover even after perfect nerve repair is accomplished. So far, neither Wallerian degeneration nor axonal misdirection can be prevented via pharmacological means. At present, the best functional recovery can be obtained by microsurgical nerve repair with correct funicular matching in order to prevent joint contracture and muscle atrophy, which can be prevented to a certain degree with stretching and electro-stimulation of the affected muscles. Additionally, sensory re-education can be used to improve object recognition.
著者
銅冶 英雄 村田 淳 浅野 由美 守屋 秀繁 吉永 勝訓
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.286-292, 2007-05-18 (Released:2007-06-27)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The purpose of this study was to resolve the confusion existing in the terminology for describing foot motion, particularly the definitions of inversion and eversion. First, the definitions of foot motion used by the Japanese Association of Rehabilitation Medicine and the Japanese Orthopedic Association were compared with those used by the American Orthopaedic Foot and Ankle Society (AOFAS) and with those used by the International Society of Biomechanics (ISB), to identify agreements and differences. Next, the terminology utilized in the literature was explored by examining several major textbooks and related academic papers retrieved through a search of the PubMed medical literature database. In the definitions of AOFAS and ISB, inversion and eversion, which correspond to triplane motions in the definition used in Japan, were regarded as motions in the coronal plane. Terminology in the textbooks was very diverse. Of the 141 academic papers explored, 92 papers (66%) regarded inversion/eversion as coronal plane motion, and 4 papers (3%) regarded it as a triplane motion. In the remaining 43 papers (31%), the definition was unspecified. In academic articles addressing foot motions, to avoid confusion in terminology, the definitions of inversion and eversion need to be specified.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.763-773, 2010-11-18 (Released:2010-11-29)

リハビリテーション医学・医療の社会的発展と公認への道…米本 恭三 763リハビリテーション医学教育・研究の歴史—Dr. Frank Krusen からのメッセージ—…千野 直一 768
著者
名倉 武雄
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.752-755, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
8

骨格筋の柔軟性は,肉離れや筋損傷の予防に重要であると考えられる.静的筋ストレッチは,骨格筋に対しさまざまな作用があるといわれているが一定の見解は得られていない.健常者14名を対象とし,超音波診断装置を用いて静的ストレッチの効果を検討した.ハムストリングに対する1分間の静的ストレッチ前後の中心腱移動距離,筋硬度変化を計測した.また,筋加温の変化についても検討した.その結果,男女ともストレッチ後30分間は中心腱移動距離が増加する傾向を認めた.筋硬度はストレッチ後男性のみ増加する傾向を認めた.筋加温による影響は明らかでなかった.超音波診断装置により,骨格筋に対するストレッチ効果を判定可能と考えられた.