著者
大森 不二雄 杉本 和弘 立石 慎治
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.インターネット調査の実施準備を完了した。現在の職場や職務内容、現職の任期、現職の雇用条件、在籍した博士後期課程等、キャリア・経験等を調査項目とし、項目ごとに詳細に設問した調査票を完成した。大学と他組織(企業等)との間の差異や同等性をも把握するため、博士課程出身の非正規労働者全体を調査対象とすることとし、調査対象は「博士課程出身者(博士号取得者、ならびに、単位取得後退学した満期退学者)かつ非正規労働者(大学・短期大学、公的研究機関等、民間企業、非営利団体、官公庁、その他の組織に任期付で雇用されている者。職務内容を問わない。)」と定義した。所属部局の研究倫理委員会による承認を得た。同承認が3月となり、年度内の発注・納品というスケジュールでは十分な回収数が得られない可能性もあったため、次年度の早期に調査を実施することにした。2.シンポジウム「エビデンスに基づく科学教育」(4月)に参加し、ポスドクが科学教育専門家としてのトレーニングを受けて活躍する北米の知見を得るとともに、講師のカール・ワイマン氏(ノーベル物理学賞受賞者、科学教育研究者)等と協力関係を構築した。また、シンポジウム「博士の選択2017~これからの博士・ポスドクのキャリアを考える~」(10月)に参加し、大学における博士人材のキャリア等に関する情報を収集した。さらに、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)主催「第10回政策研究レビューセミナー」(12月)に参加し、「博士人材のキャリアパス把握と分析」を含む諸発表を聴き、情報収集を行った。3.上記2のワイマン氏等が大きな役割を果たしたDBER(discipline-based education research)の発展及び博士のDBER人材としての育成・活用等に関する論考を刊行するとともに、学会シンポジウムにて日本固有の課題の一つとして博士の活用を論じた。
著者
村澤 昌崇 立石 慎治
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.135-156, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
59

本稿では,高等教育関連の学会誌・機関誌に過去10年間に掲載された計量分析を用いた論文をレビューした.我々が分析の際に行ってしまう傾向がある各種の課題,すなわち必要最低限の情報の不記載や,分析の前提から外れた手法の適用,過剰な解釈等を確認しつつ,これらの課題を乗り越え望ましい分析結果を得るための,いくつかの対応策や新手法の有効性を分析事例とともに提案した.関連する議論として,筆者らの限界により詳細には取りあげなかった先進的手法への期待,論文の紙幅制限によって記載できない情報を共有する仕組みの重要性も併せて指摘した.最後に,高等教育研究における計量分析の質の向上と卓越性について,学会全体で取り組むべきことであることを述べた.
著者
立石 慎治 小方 直幸
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.123-143, 2016-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
16
被引用文献数
6

本稿の目的は,高等教育の大衆化がもたらす大学生の多様化のうち,特に退学と留年に着目し,その実態と発生のメカニズムを,学部を単位として実証的に検討し,抑制の可能性も視野に入れて考察することであり,その結果明らかになったのは以下の3点である.その結果,以下の3点を明らかにした.第1に,退学と留年を統合的に考察し,4類型に基づく学生の動態の規定要因を析出した.第2に,退学率と留年率の分岐点を探索し,学部がおかれた様々な文脈を考慮しつつ,退学と留年問題に取り組む必要性を,具体的に提示した.第3に,退学と留年に対する教育・学習支援の介入効果を分析する過程で,大学教育の効果研究に用いられる横断的調査の可能性と限界を批判的に検討した.
著者
山下 英明 立石 慎治 大森 不二雄 永井 正洋 林 祐司 椿本 弥生 松河 秀哉 渡辺 雄貴 松田 岳士 高森 智嗣 柳浦 猛
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,高等教育機関の教学データを一元的に管理・分析し,教職員によって学生指導に活用されることを目的としたIRシステムを開発,評価した.具体的には,学生の留年可能性を早期に発見し,指導に役立てるための留年判定モデルを運用するシステムを開発した.留年判定モデルでは,ソフトマージン・サポートベクターマシンを採用し,機械学習ライブラリを用いてスタンドアロンのPC上に実装した.過去の学生データを用いて留年を判定し,予測精度の確認と教員による評価を受けた結果,留年予測の精度は93%であり,判定結果の理解度も高かった.一方で,表示されるデータの解釈やインタフェースについては課題が残された.
著者
山下 英明 立石 慎治 近藤 伸彦 林 祐司 椿本 弥生 松河 秀哉 渡辺 雄貴 松田 岳士
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、学生の学業上の成功(AS; Academic Success)を達成するための修学支援を高度化するために、教学データを用いて大学や学位プログラムごとに重要となるAS指標群を自動生成すると同時に、重要指標を自動選択して、各大学や学位プログラムにおいて「望まれる学生像」とその達成度合いの予測値を示すASモデルを形成し提示するシステムを開発することをめざしている。本研究では、研究内容を以下3つのテーマに分け、順に取り組むことで計画的に研究を遂行するものとしている。《テーマ1》理想的な学生像の解明を通じたASモデルの確立、包括的なデータセットの定義、《テーマ2》重要指標の選定によるASモデルの生成、AS(Academic Success)モデルの表示方法、《テーマ3》開発されたシステムを効果的に用いる学生指導方法のアクションリサーチ。平成29年度は、このうちテーマ1について取り組み、考えうる「理想的な学生像」と、使用可能なデータセットの調査を行い、ASモデル構築のための基本情報を整理した。さらに、具体的な予備調査として、卒業時のAS度合いについて特定の学位プログラムの学生に対するアンケート調査を実施した。また、学習者モデルの分析手法についての研究、教学IRやFDに係る基礎研究、機械学習による修学状態の予測モデルに関する研究などをそれぞれ分担して遂行した。次年度は、これらの研究で得られた知見を活かし、テーマ2におけるASモデル生成に取りかかる予定である。
著者
村澤 昌崇 羽田 貴史 阿曽沼 明裕 白川 優治 藤墳 智一 立石 慎治 安部 保海 堀田 泰司 大場 淳 渡邉 聡
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は以下の研究を進展させた。①大学組織に関する基礎研究の一環として、昨年度に引き続き、Bess&DeeのUnderstanding College and University Organizationの翻訳勉強会を進めた。②所属組織保有の過去の調査データをマージして二次分析に生かすための検討を行った。併せて東洋経済新報社刊『大学四季報』のデータを購入し、東洋経済新報社とのコラボレーションにより、大学の外形特性と生産性・競争的資金獲得との関係に関する計量分析を行い、2018年2月2日RIHE公開セミナーにおいてその成果を報告した。③方法論の見直し・新手法の適用可能性を検討し、その成果を分担研究者との連名で高等教育学会編『高等教育研究』の依頼論文(2017年6月刊行)、研究協力者との連名でディスカッションペーパーシリーズ(広島大学高等教育研究開発センター刊)として刊行した。④研究分担者により、大学の機能最適化に関する数学モデルで用いられる機能分化指数を用い,カリフォルニア及びニューヨークの大学群の機能の経年変化の分析を行い,UC Berkeley 公共政策大学院高等教育研究センターのリサーチペーパーとして発表した。⑤研究分担者により、大学組織の基本単位である学部に着目し,特に改組を行った人文社会系学部を取りあげ,当該学部の教員構成を分析した。その成果は、2017年度の日本高等教育学会にて報告された。⑥研究分担者により、シンガポールの高等教育の将来像を示す「SkillsFuture」政策およびシンガポール工科大学(SIM)の過去10年の発展の経緯と今後の戦略についての情報収集を行った。さらに、フランスにおける大学組織の在り方や統合・連携等についての調査研究を行い、大学の統合・連携の進展が進行しつつあり、全ての大学が統合又は地域毎に連携しなければならないことが明らかになった。
著者
杉本 和弘 鳥居 朋子 高野 篤子 佐藤 万知 立石 慎治 猪股 歳之 福留 東土
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

大学におけるミドルマネジメント人材の状況について、2012年実施の「大学の組織運営とマネジメント人材育成調査」のデータを用いて、学科長として必要な能力構造を析出し、また学科長の遂行能力が多様な経験や教職協働に支えられていることを明らかにした。他方、アングロサクソン諸国を中心に大学や大学コンソーシアムで展開されているアカデミック・リーダー育成プログラムの内容・構成・受講者等について現地調査を行うとともに、東北大学で実際に提供している同種プログラムの実装・改善に活かした。また、国内大学や大学団体が提供するマネジメント人材育成の取組や研修についても調査を行い、その特徴について学会発表を行った。
著者
立石 慎治 丸山 和昭 猪股 歳之
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.263-282, 2013-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
28

本稿の目的は,日本の大学教員のキャリア形成と能力開発上の課題について,東北地域23機関の専任教員を対象とした質問紙調査の分析から明らかにすることである.具体的には,教員キャリアと能力観,及び諸経験との関連を概観した上で,総合的能力の自己評価を規定する要因を解明すべく,ロジスティック回帰分析を行った.その結果,総合的能力の自己評価における第一の基盤となるのは研究能力であること,また教育能力が研究能力に次ぐ影響を有していることが明らかとなった.次に,教科書の執筆,学内FDへの参加,学内研究経費の獲得が,総合的能力の自己評価に正の影響を及ぼす経験として抽出された.最後に,これらの諸要因の影響を統制した上でも,総合的能力の自己評価には,専任教員経験年数がプラスに,また任期付き雇用がマイナスに作用することが明らかとなった.
著者
丸山 和昭 佐藤 万知 杉原 真晃 立石 慎治 MARUYAMA Kazuaki SATO Machi SUGIHARA Masaaki TATEISHI Shinji
出版者
名古屋大学高等教育研究センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
no.20, pp.91-110, 2020-03

大学教員における教育と研究の分業が、高等教育政策をめぐる議論のなかで取り上げられている。教育と研究の両立、分業については、大学教員を対象とする調査研究の蓄積があるが、大学外の人々の認識は十分に検討されてこなかった。そこで本研究では、大卒者へのウェブ調査の結果をもとに、教育、研究を行わないタイプの働き方が「大学教員にふさわしい」と判断されるか否かについての分析を行った。分析からは、教育と研究を両立する働き方が「大学教員にふさわしい」と判断される傾向が強いことが明らかとなった。他方、分業を認める立場も一定割合を占めており、特に私大出身者に分業を許容する傾向が見られた。ただし、分業を認める立場にあっても、"教育と研究を両立しつつ、社会貢献や管理運営にも関わる"という従来型の教員像への評価が、分業型の教員像に対する評価を上回る傾向にあった。教育と研究の分業化が先行する英語圏の動向を踏まえても、細分化された役割を担う教員は、不安定な身分に置かれやすい。分業の導入を巡る議論においては、新しいタイプの教員が相対的に評価の低い地位に固定化されることがないよう、格別の配慮が求められる。The division of education and research among university faculty is an issue arising upstream of the debate on higher education policy. Regarding the balance between education and research, and the division of labor, previous studies have been accumulating, which target university teachers, but its recognition by people outside the university has not been fully examined. Therefore, in this study, based on the results of an internet survey of university graduates, we analyzed whether or not the type of work that does not involve education or research was judged to be "suitable for university teachers." Analysis revealed that work styles that balance education and research tend to be judged as "suitable for university teachers." Conversely, the position of allowing a division of labor also occupies a certain percentage, and there was a tendency to allow a division of labor especially for those from private universities. However, even if they are in a position to recognize the division of labor, the evaluation of the traditional teacher image of "being involved in social contribution and management while balancing education and research" tends to exceed the evaluation of the image of research-only professors and teaching-only professors.本研究はJSPS科研費17K04691の助成による。
著者
滝 充 宮古 紀宏 立石 慎治
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

21年間(1998~2018年)の実績と蓄積のある「いじめ追跡調査」について,これからの10年、20年の社会状況の変化に対応できるように見直しと充実を図った上で,従来のデータとの比較可能性を担保できるように配慮して3年間の追跡調査を実施し,調査票の最終版を開発する。これにより,文部科学省の「問題行動等調査」との完全な対応をとるとともに,学術的ないじめ質問紙調査の基準となる調査票と,併せて,海外のbullying researchのstandardとなる調査票(日本語版・英語版・スウェーデン語版)を完成させる。
著者
丸山 和昭 佐藤 万知 杉原 真晃 立石 慎治 MARUYAMA Kazuaki SATO Machi SUGIHARA Masaaki TATEISHI Shinji
出版者
名古屋大学高等教育研究センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.91-110, 2020-03

大学教員における教育と研究の分業が、高等教育政策をめぐる議論のなかで取り上げられている。教育と研究の両立、分業については、大学教員を対象とする調査研究の蓄積があるが、大学外の人々の認識は十分に検討されてこなかった。そこで本研究では、大卒者へのウェブ調査の結果をもとに、教育、研究を行わないタイプの働き方が「大学教員にふさわしい」と判断されるか否かについての分析を行った。分析からは、教育と研究を両立する働き方が「大学教員にふさわしい」と判断される傾向が強いことが明らかとなった。他方、分業を認める立場も一定割合を占めており、特に私大出身者に分業を許容する傾向が見られた。ただし、分業を認める立場にあっても、“教育と研究を両立しつつ、社会貢献や管理運営にも関わる”という従来型の教員像への評価が、分業型の教員像に対する評価を上回る傾向にあった。教育と研究の分業化が先行する英語圏の動向を踏まえても、細分化された役割を担う教員は、不安定な身分に置かれやすい。分業の導入を巡る議論においては、新しいタイプの教員が相対的に評価の低い地位に固定化されることがないよう、格別の配慮が求められる。The division of education and research among university faculty is an issue arising upstream of the debate on higher education policy. Regarding the balance between education and research, and the division of labor, previous studies have been accumulating, which target university teachers, but its recognition by people outside the university has not been fully examined. Therefore, in this study, based on the results of an internet survey of university graduates, we analyzed whether or not the type of work that does not involve education or research was judged to be “suitable for university teachers.” Analysis revealed that work styles that balance education and research tend to be judged as “suitable for university teachers.” Conversely, the position of allowing a division of labor also occupies a certain percentage, and there was a tendency to allow a division of labor especially for those from private universities. However, even if they are in a position to recognize the division of labor, the evaluation of the traditional teacher image of “being involved in social contribution and management while balancing education and research” tends to exceed the evaluation of the image of research-only professors and teaching-only professors.