著者
川平 和美 下堂薗 恵
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.201-205, 2007 (Released:2009-03-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

脳卒中片麻痺の改善を促進するには再建/強化したい神経路へ興奮を伝えることを重視した治療理論と技術が必要である.促通反復療法(川平法)は個々の指の屈伸を含む新たな促通療法で,片麻痺上肢と下肢の麻痺の改善を促進している.著しい感覚障害例でも同様に有効である.リハビリテーション治療の向上のため,我々は麻痺肢の意図した運動を反復できる機能的振動刺激法などのコンピュータ化訓練器機の開発を行いつつあり,今後の発展を期待している.

2 0 0 0 OA 筋音図の概要

著者
三田 勝己
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.3-7, 2013 (Released:2016-04-15)
参考文献数
19
被引用文献数
2

筋音図は筋収縮にともなって体表面上に発生する微細振動を記録した信号である.この信号は筋の電気的な活動を示す筋電図と割符の関係にあり,筋の機械的活動を反映する.本稿「筋音図の概要」ではまず本特集の全体の流れを紹介し,次に, Grimaldi による筋音図の発見とその後の研究小史,筋音図に関する用語の歴史的変遷と現在の用語「筋音図,Mechanomyogram (MMG)」,筋音図の発生機序に関する2 説について紹介した.また,筋音図を理解するうえで最も重要な基本特性である運動単位の動員数,タイプ,発火頻度と筋音図との関わりを解説した.
著者
倉林 準 持丸 正明 河内 まき子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-36, 2003 (Released:2004-02-27)
参考文献数
9
被引用文献数
80 35

関節中心位置の推定方法は, 特に検証をされないまま用いられてきた. 本研究では, 日本人健常成人男性43名の骨盤部MR画像を用いて, 臨床歩行分析研究会, Davis, Vaughanによる股関節中心位置の推定方法について検証を行った. 推定誤差は股関節中心位置のMR画像からの実測値と推定値の距離で定義した. オリジナルの方法の推定誤差平均値は, 上記3手法で, 順に, 17.1mm, 13.4mm, 32.0mmであった. オリジナルの方法論の数式を変えずに, パラメータのみを日本人男性用に最適化し, 実測可能なパラメータのみで実用的に構成した修正版での推定誤差平均値は, 順に9.9mm, 24.8mm, 19.8mmであった.
著者
三宅 美博
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.97-103, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
36
被引用文献数
2

共創システムとは人間のコミュニケーションをその内側から捉えるシステムである.本稿では,主観的時間としての「間( ま)」に注目し,その生成とインターパーソナルな共有の仕組みについて紹介する.具体的には,協調タッピング課題を用いたリズム運動の相互引き込みのモデル化を踏まえ,人間と人工物のインタラクション,特に歩行リズムのリハビリテーション支援への有効性を示す.これはリズム運動とその同調を人間の内側から支援する新しいシステム論に向けての第一歩である.
著者
福田 有紗 丸山 将史 白木 仁
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.158-163, 2021 (Released:2021-09-09)
参考文献数
26

本研究の目的は,立位撮影機能搭載型 MRIを用いて,足関節外反位荷重時に足部・足関節において生じる骨挙動について明らかにすることである.対象は,健常成人男性 13名とした.対象者の右足部を,平面板, 10 deg傾斜板, 20 deg傾斜板の 3条件にて,立位撮影機能搭載型 MRI(G-scan brio 0.25T(E-saote社))を使用して撮像した.得られた MRI画像から,後足部アライメント,距骨・舟状骨の最下点の高さおよび内側点を測定した.本研究の結果,傾斜板における足関節外反位での立位荷重時には,後足部の外反,距骨および舟状骨の内側方向への移動が生じる一方で,傾斜角度の増大により,後足部の外反および距骨,舟状骨の内側方向への移動は制限されることが明らかとなった.
著者
玉城 絵美
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.3-9, 2019 (Released:2020-02-01)
参考文献数
4

VR やAR 環境でコンテンツ提供する際,手の体性感覚に関する情報をユーザに提示する方法を紹介する.また,情報提示の種類別にハードウェアや詳細手法について列挙し,体性感覚のうち深部感覚の提示がVR 内のオブジェクトの存在感やコントロールするバーチャルキャラクタへの身体所有感の発生に重要であることを述べる.さらに,現実世界に本来はない感覚の表現の事例や現実世界に近い感覚が必ずしもユーザの満足度につながるわけではない事例についても紹介する.同時に,ゲームや教育分野への応用について具体的な事例を挙げて,今後の研究開発の糸口となるよう要約する.
著者
工藤 大祐 徳重 あつ子 片山 恵 田丸 朋子 岩﨑 幸恵
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.95-104, 2022 (Released:2023-03-02)
参考文献数
14

本研究の目的は,高齢者の普段の点眼姿勢の実態および,点眼時の椅子の背もたれ使用の有無と点眼成否との関係性を明らかにすることである.研究方法は,高齢者の普段の点眼姿勢の実態調査に加え,高齢女性に背もたれの有無で点眼を行ってもらい,点眼動作の動作解析を行った.動画より,点眼時の頭部後傾角度,肘関節角度,体幹後傾角度,点眼容器角度を測定し,背もたれの有無と点眼の成否,点眼液滴下の位置ずれを比較した.背もたれ無しでは,失敗事例で有意に頭部後傾角度が小さく,背もたれを使用すると点眼時に体幹が後傾し頭部が後傾しやすくなり,点眼時における滴下の位置ずれや点眼容器先端との接触による失敗リスクの軽減が望めた .背もたれを使用した点眼姿勢は安全で実施しやすい方法であり,点眼指導に取り入れることが可能であると言える.
著者
藤井 進也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.217-223, 2020 (Released:2021-11-01)
参考文献数
19

ヒトが音を奏で,聴き,楽しむ行為の中には,ヒトという生物の巧みさを理解するための鍵がたくさん潜んでいる.例えば熟練したプロドラマーは,巧みに身体運動を制御し,独特の時間ゆらぎ構造を持ったリズムを奏でることができる.また音を聴くヒトの脳は,音楽家が生み出した独特の時間ゆらぎ構造を巧みに知覚し,感情の豊かさや好ましさを感じることができる.近年の音楽神経科学研究では,脳の予測的符号化理論の観点から,音を聴いて喜び,身体を動かしたくなる感覚(=グルーヴ感)が生じる脳の計算原理についても理解が進んでいる.本稿では,巧みな音楽家の演奏にみられる時間のゆらぎとグルーヴについて解説し,音を奏で聴き楽しむヒトの脳の不思議さに迫る.
著者
白谷 智子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.225-230, 2018 (Released:2019-11-01)
参考文献数
33

痙縮筋の特徴として,安静時の短潜時伸張反射は亢進する一方で,歩行能力に関与する中・長潜時伸張反射は減弱することがあげられる.本稿では,近年の研究を参照しつつ,痙縮筋に対する筋力強化について概説した.痙縮筋に対して抵抗運動を行う際には,連合反応を抑制する必要性はなく,また,拮抗筋の過緊張ではなく,主動筋の筋力低下に対するアプローチにより機能向上を図ることの重要性を示した.具体的な事例として,脳性麻痺児・脳卒中後片麻痺患者に対する抵抗運動により筋力強化に効果が示され,歩行能力が高まることを解説した.しかし,麻痺側の随意性がない場合には,直接的に上肢や下肢筋群を収縮させることは難しい.その場合は,遠隔の随意性の高い部位からの抵抗運動による間接的アプローチ法により歩行の改善が可能なことを紹介した.また,抵抗運動により,中・長潜時伸張反射の減弱が改善される生理学的なエビデンスについて十分ではないが,H 波と fMRI による研究を紹介した.
著者
金沢 星慶 國吉 康夫
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.63-68, 2022 (Released:2023-05-01)
参考文献数
34

ヒトは遊びという行動を通して世界における様々な物理法則や因果関係を学び,のちの運動発達や認知発達まで影響する経験を積む.特に発達初期の遊びにおいては自発性が最も重要な要素と考えられ,自発的に生成された運動出力は身体特性を反映した運動を生み出すと同時に感覚フィードバックを得る.この運動と感覚の構造は他者を含む環境との相互作用によって動的な特性を示すとともに,神経成熟や身体発育,環境の変化に伴って多種多様に変化する.本稿ではこれらの複雑な発達的変化について,実際のヒト胎児や新生児にみられる行動特性を紹介し,それらを説明付けるいくつかの数理的および計算論的モデルについて解説する.
著者
岩村 吉晃
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.171-177, 2007 (Released:2009-03-02)
参考文献数
37
被引用文献数
7 5

能動的触知覚(アクティヴタッチ)について,研究史,運動感覚の貢献,能動的触知覚成立の大脳メカニズムなどを概観した.
著者
門野 洋介
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.11-16, 2015 (Released:2016-01-26)
参考文献数
6

本稿では,陸上競技800m 走において行われているレースパターン分析を題材に,800m 走のレースパターンの特徴,レース分析結果と現場での経験知をもとに作成した好記録を出すためのモデルレースパターンと,作成の際に工夫した点,作成したモデルを用いたレースパターンの評価,そして評価結果をもとにしたレースパターンの改善による記録の向上を試みた事例について解説する.
著者
道免 和久
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.177-182, 2001-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
10 5

リハビリテーション(以下リハビリ)で重要な運動学習の概念を整理し,脳研究から明らかになった運動学習理論のリハビリ治療への応用を紹介した.古くからリハビリにおける運動学習で重要と言われてきたエングラムの概念は,現代の運動学習理論では,教師あり熟練学習における内部モデルの構築や順序学習の中に見いだすことができる.そのうち,内部モデルの再構築をめざす運動療法をフィードフォワード運動訓練と名付け,大脳錐体路障害の片麻痺患者の患側上肢で実践した.その結果,フィードバック誤差学習の回路が残存する例では,運動課題の繰り返しによって,徐々に運動のなめらかさの指標が向上し,運動学習が成り立つことがわかった.今後,運動学習理論をリハビリ治療の中で再検討することが重要である.
著者
長野 峻也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.129-132, 2005 (Released:2007-10-19)
被引用文献数
1

本論は,基本的に「武術文化に対して全般的に認識している専門家は皆無に等しい」という認識から出発し,更に武術に関して何の予備知識もない読者を対象に論じるに当たり,「武術に対して巷間に広まった誤った情報」を正し,「武術が現代武道へ統合再編される中で失われたもの」を論じ,「日本古武術の失われた理合(交叉法)」を紹介し,「武術の要である歩法」を論じています.本来,武術は身体訓練を通して意味を理解していかなければ本質的な理解は不可能であり,文章のみで身体操作のコツを書き並べても誤解されるのがオチと考え,参考として,全くの素人が身体操作のコツを知れば極意の技も容易に再現できることを実証すべく写真も添えました.
著者
中川 千鶴
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.15-20, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

鉄道の振動乗り心地評価に関する取り組みについて解説する.最初に,乗り心地評価法の国際規格や欧州規格,日本の鉄道分野で古くから使われる「乗り心地レベル」を概説する.次に,国際規格の使用が鉄道現場で普及しにくい理由や,乗り心地レベルの問題点を整理し,これらの問題点を解決するため,我々が行ってきたいくつかの取り組み,振動に対する乗り心地としての感度調査や複合振動の経時的な影響推定,乗り心地分析ツールの開発などを紹介する.
著者
平田 義人 上村 裕樹 堀上 正義 大坪 智範
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.217-222, 2019 (Released:2020-11-11)
参考文献数
10

車を運転する際,ドライバーは腕や脚を巧みに使い,ステアリングやペダルといった機器を操作する.ドライバーが車 両を思い通りに操れるようにするには,自動車設計において,人間特性を考慮したユニット配置,機械特性の設計が必要であ る.本稿では,素早く,正確に運転操作機器を操作するために,ペダル操作に関係する人間の筋特性とその特性の設計への適 用を紹介する.