著者
中嶋 聡一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.60, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
4

皮膚における紫外線からの防御機構である色素「メラニン」はメラニン細胞で生成される.近年の美白ブームにより,薬学の分野でも天然物由来のメラニン生成抑制作用物質の探索が盛んに行われている.本稿では,重要な生薬であるオタネニンジン(Panax ginseng)の成分ギンセノシドRb1(Rb1)およびギンセノシドRg1(Rg1)が,ヒトメラニン細胞においてメラニンの生成を刺激するというMaoらの報告を紹介したい.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Mao L. et al., Evid. Based Complement. Alternat. Med., 2014, Article ID892073 (2014).2) Fang F. et al., BBA. Molecular Basis of Disease, 1822, 286-292 (2012).3) Busca R., Ballotti R., Pigment Cell Res., 13, 60-69 (2000).4) Wang L. et al., AAPS Pharm. Sci. Tech., 15, 1252-1262 (2014).
著者
山下 智也 平田 健一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1073-1076, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
20

近年、疾患発症と腸内細菌叢との関連が調査され、代謝疾患・免疫疾患・悪性腫瘍などの分野の報告が相次いでいる。心血管病の分野では、腸内細菌由来代謝物のトリメチルアミンNオキシド(TMAO)が動脈硬化を悪化させ、心血管イベントの増加に関連すると報告され、循環器疾患の治療標的として注目されている。本稿では、動脈硬化をはじめ高血圧や心不全といった心血管病の病態と腸内細菌との関連について、世界的な研究の動向と我々のグループからの報告を紹介して、今後の展望を述べたい。
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.566-567, 2015

あっという間に1年が過ぎ,昨年12月でこの連載も終わったと,ホッとしていたのもつかの間,編集部からあと1年連載を続けて欲しいとのご依頼があった.有難いお話ではあるが,さてどうしたものかと思ったものの何とかネタを絞りだして,あと6回書き続けてみることにした.読者の皆さんももう少しお付き合い願えれば幸甚である.<br>先日,非常勤講師を務めている九州大学に講義に行き,講義終了後に仲良しの統計の准教授と一緒に透き通ってコリコリとした食感が堪らない"呼子の烏賊の活き造り"を肴に一杯やっていたところ,その准教授の講座の教授,助教として最近2名の英国人が赴任してこられたということを伺った.英国人というので,准教授は,気を利かせて,某有名メーカーの紅茶に,ティーポットとカップのセットを買い込み勇んで待ち受けていたところ,何と2人とも紅茶よりもコーヒー党であったというオチであった.ひとしきり笑ったのだが,考えてみれば,英国では,紅茶よりもコーヒーの歴史の方が古いのである.<br>英国に初めてコーヒーハウスなる店が開店し,コーヒーを提供し始めたのが1650年とされている.オックスフォードでは,1654年に開業したクィーンズ・レイン・コーヒーハウスが現在でも営業を続けているらしい.ロンドンでも1652年からコーヒーハウスが開店し,情報収集の重要な役割を果たすようになる.当時から金融センターであったロンドン・シティの取引所近くのコーヒーハウスには,多くの商人が情報を求めて集まった.その中でも特に,ロイズ・コーヒーハウスには,船主たちが多く集まり,店では船舶情報を載せる「ロイズ・ニュース」を発行していた.店で船舶保険業務を取り扱うようになり,これがロイズ保険会社の起源となった.<br>一方,紅茶は1717年に,イギリスで最初のティー・ハウスであるゴールデン・ライアンズが開店した.インドでアッサム茶の原木が発見されたのが1823年なので,この頃は中国茶が原料であったはずである.その後,大英帝国がインドを支配し,徐々にコーヒーに代わる非アルコール飲料として,紅茶が市民生活に定着していくことになった.
著者
友重 秀介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.411, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
2

分子糊はタンパク質に結合することでその高次構造を変化させ,他のタンパク質との相互作用を誘導する化合物の総称である.なかでも,タンパク質分解系に関与する分子糊は相手タンパク質の分解も誘導するため,分子糊型タンパク質分解薬(以下,分子糊型分解薬)として注目されている.タンパク質分解薬としてはproteolysis targeting chimeras(PROTACs)が有名だが,PROTACsは2つの薬剤の連結分子であるため分子量が大きく,体内動態などに懸念がある.一方,分子糊は低分子化合物であり,ドラッグライクネスの観点でより好ましい.しかし分子糊の創製は難しく,過去の分子糊はいずれも偶然見いだされている.そのため,分子糊型分解薬の効率的創製を可能にする手法が求められている.本稿では,Winterらのグループが報告した分子糊型分解薬の探索研究について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Mayor-Ruiz C. et al., Nat. Chem. Biol., 16, 1199-1207(2020).2) Słabicki M. et al., Nature, 585, 293-297(2020).
著者
斎藤 顕宜 山田 光彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.691-695, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
17

モノアミン再取込み部位をターゲットとした抗うつ薬の開発は諸外国においても既に終了しており、欧米では多重作用メカニズム型の薬剤が複数承認されている。一方、最近では、グルタミン酸神経やオピオイド受容体に作用する候補化合物が注目を集めている。なかでも、産学連携プロジェクトとして我が国で開発が進められているオピオイドδ受容体作動薬が、全く新しい作用機序をもつ画期的な抗うつ薬となるものと強く期待している。
著者
長田 裕臣
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.108-111, 2014

薬学出身でありながら他分野で活躍されている方にインタビューするコラム「薬学がくれた私の道」,今回はロックバンドACIDMANを率いるミュージシャンの大木伸夫さんのご登場です.
著者
新薬紹介委員会
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.310, 2021

本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.<br>本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される"新医薬品として承認された医薬品について"等を基に作成しています.今回は,令和3年1月22日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.<br>なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
著者
内原 脩貴
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.312_1, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
2

博士課程在学中は長井記念薬学研究奨励支援事業よりご支援いただき,心より感謝している.私が研究者,なかでもアカデミアを志し,博士課程への進学を決意したのは修士課程の頃だった.当時の私はうつ病に関する研究に従事しており,進学後は少し異なる領域に挑戦したいと考えていた.このような背景から,研究時間を十分に確保することは非常に重要であり,生活費等を稼ぐために時間を使うことを避けたいと考えていた時に出会ったのが貴事業である.幸運なことに採択いただき,慶應義塾大学薬学部の多胡めぐみ准教授(現・同大学教授)指導のもと,がんの発症機序や薬理学的研究に存分に取り組むことができた.博士課程における成果を論文としてまとめることができたのは,ひとえに貴事業のご支援の賜物だと思っている.学位取得後は,がん治療時に細胞で生じる現象を詳細に理解するための研究を行いたいと考えた.現在は,群馬大学未来先端研究機構の柴田淳史准教授のもと,細胞レベルでDNA修復機構やDNA損傷に関連する免疫応答制御についての研究に従事している.これまでの経験から私が重要だと考えることは,時間への配慮と環境変化への適応である.その点を意識しつつ,今後も細胞レベルでの疾患や治療の根源的な理解を通じて,究極の生命システムである人間にとって最適な薬の創生に貢献できるよう精進したい.
著者
上原 幸樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.60-62, 2020

近年,他の放射線治療とは異なる仕組みを利用したホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)という新たながんの放射線治療が注目されつつある.この新たな治療法は,同位体濃縮されたホウ素を用いた薬剤と加速器を用いて発生させる中性子を組み合わせることで細胞選択的な治療となり得る.弊社は、ホウ素薬剤の開発を通してBNCTの早期実用化を目指している.
著者
馬場 嘉信
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.775_1, 2015

シリコン上に,DNAの直径と同程度(2nm)の孔(ナノポア)を形成し,ナノポア中にDNAが通り抜ける間隔で電極を作成したデバイスを用いて,DNAのシークエンシングを行う技術である.ナノポア中の電極間にトンネル電流を流し,1分子の1本鎖DNAを一定速度で通過させると,DNAの各塩基の電子状態の違いにより,トンネル電流値が変化するために,その変化量を解析しDNA配列を解読できる.DNA解読速度は,1秒間に1,000塩基程度であり,1,000個のナノポアを並列化することで,1時間で30億塩基のヒト・ゲノム解析が可能になる.DNAのみならず,RNA,メチル化DNA,タンパク質もシークエンシング可能である.
著者
渡邉 真治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1150_2, 2019

NESIDは,日本における感染症サーベイランスシステムで,国(厚生労働省)が管理している一元的なオンライン中央データベースである.医療関係者の協力のもと,国(厚生労働省および国立感染症研究所)と自治体(保健所および地方衛生研究所:地衛研)との共同でインフルエンザを含む感染症サーベイランスが実施されているが,感染症による患者情報や病原体情報などが保健所や地衛研からNESIDに入力されることで,国内の感染症の発生状況の正確な把握や分析ができる.国や自治体は,国民や医療機関へNESIDに基づく情報公開・提供を迅速に行うことで,当該感染症に対する有効かつ的確な対策を図ることが可能となる.

1 0 0 0 OA ケロリンの桶

著者
東田 道久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1265_1, 2014 (Released:2017-02-10)

ファルマシア誌では,隔号で「家庭薬物語」を掲載しているが,お楽しみいただけているであろうか.家庭薬の普及には,それを宣伝する媒体の力も欠かせないであろう.配置薬における紙風船もその一つである.ところで,日本全国の銭湯で見られる黄色い「ケロリンの桶」.その湯殿に響く桶の厚みを感じる独特の音は,単に宣伝媒体にとどまらず,もはや銭湯自体に溶け込み,日本の文化となったと言えるかもしない.この桶,映画にも出演している.その桶の独占広告主は,富山の内外薬品である.同社は1902年薬種商として創業,1925年からは製薬会社となる.薬剤師でもあった社長の笹山順蔵は,社内に対しては厳しい品質管理を求める一方で,対外的にはユニークな広告手法を展開していた.当時まだ珍しかったスポーツ会場での垂れ幕などがそれである.その営業の遺伝子は娘婿の笹山忠松に引き継がれる.1963年,当時まだ木製の桶が多かった銭湯で,衛生面と強度からそれが合成樹脂に切り替わりつつある時期に,広告代理店・睦和商事の担当者・山浦和明と笹山忠松が出会う.「湯桶に広告を出しませんか?」と持ち掛けられたのがきっかけで二人は意気投合.昼は薬を,夜は温泉街に桶を一緒に売り込んで行った.桶は当初は白色であったが,その後,現在の鮮やかな黄色へと変わり,それが好評で,当時全国に23,000件もある銭湯をはじめとして,温泉,ゴルフ場などの浴室へも瞬く間に波及していく.以来現在まで,延べ250万個以上も納入.睦和商事は残念ながら2013年3月に廃業するが,その後の販売は内外薬品自体により引き継がれ,現在も週1,000個のペースで製造され続けている.銭湯で子供が蹴飛ばしても,腰掛けにされてもビクともしないケロリンの桶は,驚異的な強さから,別名「永久桶」とも呼ばれており,日本文化不滅の象徴となりつつあるのかもしれない.現在は,くすりの富山の「ご当地グッズ」としても,関連商品も含めて空港や駅で販売されている.ただ残念なのは,その桶を担いで銭湯に出かけることが出来ないことかもしれない.
著者
新薬紹介委員会
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1153, 2018

本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.<br>本稿は,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される"新医薬品として承認された医薬品について"等を基に作成しています.今回は,平成30年9月21日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.<br>なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.