著者
濡木 理
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.123-127, 2018 (Released:2018-02-01)
参考文献数
6

2012年,細菌の獲得免疫機構に働くCRISPR-Casタンパク質が,ガイドRNA(crRNA, tracrRNA)を用いて真核細胞や個体のゲノムを配列特異的に切断し,細胞本来の修復機構を利用して,遺伝子のノックアウトやノックインを行うゲノム編集技術が開発された.しかしながら, CRISPR-Casには,1.分子量が大きくウイルスベクターに載せることが困難,2.CRISPR-Casは標的配列の下流にある2~7塩基からなるPAM配列を厳密に認識しており,Casをゲノム編集に用いる適用制限となっている,3.非特異的切断によるOff targetの問題など,現時点では医療応用に用いることは事実上不可能である.我々は,5生物種由来の大小様々なCas9について,ガイドRNA,標的DNAの4者複合体の結晶構造を1.7-2.5Åの高分解能で発表し,ガイドRNA依存的なDNA切断機構やPAM配列の認識機構を明らかにした.また,立体構造に基づいて,PAM配列認識特異性を変えることに成功し,ゲノム編集ツールとしての適用範囲を拡張することに成功した.
著者
渡部 一宏
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.934-936, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
9

ある週末の金曜日18時半,聖路加国際病院薬剤部製剤室の薬剤師である私は仕事も終わり,築地の立ち飲み屋で一杯引っ掛けてから帰ろうと思いながら,製剤業務の後片付けをしていた.そのとき,1本の電話が鳴った.渡部:はい,薬剤部製剤室担当渡部です.中村医師:あっ,渡部くん.中村です.業務時間外で悪いのだけど,先ほど入院してきた新患の乳がんの方,すごい大きな皮膚潰瘍で臭いがかなりすごいよ.いつものメトロニダゾールゲル500gをこれから創って欲しいんだけど,大丈夫?渡部:はい,もちろんです.これから製剤を調製して,病棟に持っていきますね.このようなことが,幾度あっただろうか.中村医師とは,その当時聖路加国際病院ブレストセンター長で現在,昭和大学医学部乳腺外科教授(日本乳癌学会理事長)である我が国を代表とする乳腺外科スーパードクターの中村清吾先生である.聖路加国際病院は,キリスト教精神の下に全人的ケアの実現をポリシーに掲げ,かつ日野原重明名誉院長の明確なビジョンと燃えるようなパッション,そして常に青年を思わせる行動力のもと「チーム医療の実現」を目指してきた病院で,中でも中村先生がリーダーシップをとられたブレストセンターは,多職種によるチーム医療活動が院内でも特に盛んであった.著者は,聖路加国際病院に入職してまもなく,乳がん診療とそのチーム医療活動に感銘と興味を持ち,また患者さんから慕われる中村先生の臨床医の姿に敬服し,当初からこのチームに薬剤師として関わらせていただいた.チームに関わり始めて私は初めて,がん性皮膚潰瘍に苦しむ乳がん患者さんを目の当たりにした.患部は,目を伏せたくなるような耐え難い症状で,また患部からの酷い臭いが外来診察室や病棟全体に広がり,その辛さは言葉では言い表せないものである(図1).「がん性皮膚潰瘍臭に苦しむ乳がん患者さんの悩みを何とかしたい」これこそが,がん性皮膚潰瘍臭のケアに立ち向かう,一人の薬剤師のリサーチクエスチョンの原点であった.
著者
山崎 高應
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, 1982-01-01
著者
下林 貢 下林 悦子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.1132-1134, 2016 (Released:2016-12-01)

研究留学と聞くと「アメリカ」と思う人が多いと思う。しかし、国と人口のサイズを考えると、スイスもアメリカに負けず劣らずの研究大国である。 この記事では私たちの経験を通してスイスで研究することの素晴らしさや注意点を伝えたい。内容: a)スイスの研究室でのポスドク、学生の選考方法 b)スイス 研究設備、給与、休みなどに関して c)スイスでの日常生活 d)家族でスイスに留学する際の留意点
著者
吉澤 一巳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.530-534, 2018 (Released:2018-06-01)
参考文献数
25

モルヒネに代表される医療用麻薬は,緩和医療をはじめとする疼痛治療の主役を担う薬であり,現在ではモルヒネ,フェンタニル,オキシコドンに加えてメサドン,タペンタドール,ヒドロモルフォンなど選択可能な医療用麻薬が増加している.しかし,「麻薬を使うくらいなら痛みを我慢する」と考えるがん患者は少なくない.重要なことは,医療用麻薬の適正使用であり,医療用麻薬に関する誤解や偏見を払拭するような取り組みを推進しつつ,同時にその取り組みが行き過ぎにならないよう,乱用防止の啓発活動も必須であることを強く認識しなければならない.
著者
ファルマシア委員会
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.7-8, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
15

ジャガイモに含まれるステロイド型アルカロイド配糖体の生合成の制御,再生医療等製品の臨床応用を支える技術開発研究,光遺伝学の手法で脳の記憶を書き換える!,新しいタイプの遺伝子組換えジャガイモは日本で受け入れられるのか?,悪性黒色腫治療薬ニボルマブの登場,83%が30年以上前に開発済の環構造?
著者
平田 義正 上村 大輔
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.181-185, 1982-03-01
著者
(株)フジテレビジョン広報宣伝部
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.703-706, 2020 (Released:2020-08-01)

「アンサング=褒められない」医師のように頼られず、看護師のように親しまれなくても、誰より患者のことを考える薬剤師という存在に光を当てた新・医療ドラマです。普段は脚光を浴びることがありませんが、薬を処方する時は患者にとって『最後の砦』となります。ドラマチックであると共に視聴者に『知識』も提供できる社会的意義の高い作品です。
著者
山下 弘高
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.783, 2020

生物は進化の過程において数々の食糧難に直面し,それを克服するために糖や脂肪などのエネルギー源を無駄なく再利用するシステムを獲得してきたが,飢餓状態での生体防御,特に免疫システムの役割については未知の部分が多く残る.本稿では,飢餓状態を模したカロリー制限マウスにおいて,メモリーT細胞が脾臓などの二次リンパ組織から骨髄へ移動し,エネルギーの消費を抑えつつ,病原体への感染に備えた状態になることを明らかにしたCollinsらの論文を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Collins N. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Cell</i>, <b>178</b>, 1088-1101(2019).<br>2) Han S. J. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Immunity</i>, <b>47</b>, 1154-1168(2017).<br>3) Maurya R <i>et</i> <i>al</i>., <i>Front</i>. <i>Immunol</i>., <b>9</b>, 2741(2018).