著者
佐藤 伸一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.779, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
4

ケミカルプロテオミクスは,共有結合修飾されたタンパク質に焦点を当てたタンパク質・アミノ酸残基の機能解析手法である.タンパク質存在量でなく活性,機能に着目した解析が可能である.例えば,セリン加水分解酵素の活性プロファイリング等では,酵素活性に基づく有益な情報が取得できる.今回Hsuらは,チロシン残基に対して選択的に共有結合を形成できるプローブを開発し,これを用いて3,700種以上のタンパク質,10,000か所以上の修飾サイトを検出,解析したので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Liu Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96, 14694-14699(1999).2) Hahm H. S. et al., Nat. Chem. Biol., 16, 150-159(2020).3) Dong J. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 53, 9430-9448(2014).4) Adibekian A. et al., Nat. Chem. Biol., 7, 469-478(2011).
著者
内井 喜美子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.449, 2014 (Released:2016-06-21)
参考文献数
5

別の動物を介して感染する感染症をベクター媒介感染症という.蚊が媒介するデング熱やマラリアは人間の代表的なベクター媒介感染症だが,有効なワクチンがなく,その制御には,殺虫剤による蚊の駆除と,防虫ネットによる蚊との接触遮断が最も有効な手段となっている.しかし,蚊が薬剤耐性を獲得したり,防除器具の普及・維持が難しい場合があることより,新たな方策が求められている.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) McGraw E. A. et al., Nat. Rev. Microbiol., 11, 181-193 (2013).2) McMeniman C. J. et al., Science, 323, 141-144 (2009).3) Moreira L. A. et al., Cell, 139, 1268-1278 (2009).4) Ye Y. X. H. et al., Plos Neglect. Trop. Dis., 7, e2362 (2013).5) Zhang G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 110, 10276-10278 (2013).
著者
橋本 洋一郎 和田 邦泰
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.715-719, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
18

能動喫煙は脳卒中の危険因子となり、脳卒中発症の相対危険度はその用量に依存して増加し、中年層で最大の相対危険度を示す。脳梗塞(約2倍)とくも膜下出血(約3倍)では、喫煙は明らかな危険因子となっている。脳出血が喫煙で増加するとの報告もあるが、まだ危険因子としては確立されていない。45歳未満の女性では、経口避妊薬使用や前兆のある片頭痛などの危険因子をもつ場合は喫煙による脳卒中の危険性はさらに高くなる。受動喫煙も脳卒中の危険因子(1.25倍)となり、受動喫煙に安全なレベルは存在しない。禁煙により脳卒中の危険度は低下する。
著者
大村 智
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.385-389, 1980
被引用文献数
1
著者
杉山 二郎 山崎 幹夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.463-468, 1979-06-01 (Released:2018-08-26)

世界の文化史の中で, 毒や薬が果して来た役割は大変に大きく, 興味深い, お招きした杉山二郎氏には「鑑真」「大仏建立」「正倉院」「西アジア南北記」などの著書があり, その博学と見識の深さについてはつとに知られるところである。時間が足りなかったため, 今日はその一端をうかがうに止まったが, いわばイントロダクションとも言うべき今日のお話の中だけにも, 我々にとって興味ある問題のヒントがいくつもあったように思われる。
著者
服部 雄太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.242-243, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
5

筆者は6年制薬学課程の2期卒業生にあたる.学部時代は環境毒性学の実験研究をし,卒業後は博士課程に進んだ.その後,国家公務員総合職試験合格を機に,より大きい調査とデータを求めて総務省へ入省した.行政官として働く傍ら,ヘルスケアIoT コンソーシアム(internet of things: IoT)への参画など、統計に軸をおく公衆衛生学者としての活動も続けている.本稿では,大学院での研究生活と総務省での統計の仕事についてつづり,薬学から大学院,そして公衆衛生や行政・社会科学の分野に進むキャリアパスの一例としてご紹介したい.
著者
松本 美佐子 瀬谷 司
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.20-24, 2017 (Released:2017-01-01)
参考文献数
22

がん免疫療法では、免疫チェックポイント阻害剤による腫瘍内CD8+ T細胞の機能抑制解除とともに、リンパ節局所での腫瘍反応性CD8+ T細胞の誘導が重要である。新しく開発したRNAアジュバントARNAXは、プライミング相で抗原提示樹状細胞のTLR3を活性化し、炎症応答を誘導することなく抗原特異的CD8+ T細胞を誘導する。がんワクチンや免疫チェックポイント阻害剤との複合的免疫療法が期待される。
著者
原田 慎一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.65, 2017 (Released:2017-01-01)
参考文献数
3

視床下部は摂食行動を司るとともに,生体内のエネルギー代謝をコントロールする中枢神経系として知られている.そして,それを担う因子の1つとして,レプチンがよく知られている.レプチンは,1994年にアメリカのフリードマンらによって同定され,脂肪細胞によって作り出され,強力な飽食シグナルを伝達し,交感神経活動亢進によるエネルギー消費増大をもたらし,摂食行動の抑制,肥満の抑制や体重増加の制御の役割を担っているタンパク質である.その一方で,視床下部においてレプチンが検知される仕組みは不明のままであった.本稿では,レプチンセンシングの過程と体重増加に関与する部位や因子を同定するために,正中隆起および第4のグリア細胞と呼ばれているNG2-グリア細胞の関与を発見したDjogoらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Djogo T. et al., Cell Metab., 23, 797-810 (2016).2) Levin B. E. et al., Int. Rev. Neurobiol., 51, 219-258 (2002).3) Wilson C. L. et al., Cancer, 121, 2262-2270 (2015).
著者
白鳥 美穂
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.769-773, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
21

アトピー性皮膚炎などに伴う慢性的な痒みは、難治性で患者のQOLを著しく低下させるため、その制御が課題とされているが、メカニズムは未だ不明な点が多い。最近、我々は、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、慢性的な痒みにおける脊髄変化の重要性を初めて見出した。この発見は、皮膚変化を中心に進められてきた慢性的な痒み研究に新たな方向性を与えるとともに、有効な治療薬創出に対する脊髄研究の大きな可能性を提示した。
著者
大垣 隆一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.696, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
3

真核生物における栄養シグナルとしてのアミノ酸は,細胞内代謝を司るセリン/スレオニンキナーゼ複合体mechanistic target of rapamycin complex1(mTORC1)を活性化し,タンパク質・脂質合成,オートファジーなど様々な細胞機能の調節を介して増殖・成長に寄与する.アミノ酸の中でもロイシンは特に高いmTORC1活性化能を有するが,ロイシンを直接認識するロイシンセンサーの分子実体は長らく不明であった.最近,WolfsonおよびChantranupongらによってストレス応答タンパク質のSestrin2がロイシンセンサーであると報告されたので,本稿で紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Wolfson R. L. et al., Science, 351, 43-48 (2016).2) Chantranupong L. et al., Cell Rep., 9, 1-8 (2014).3) Saxton R. et al., Science, 351, 53-58 (2016).