著者
富永 真琴
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.1047-1052, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
25
被引用文献数
1

細胞は,それを取り巻く環境の変化の中で,その環境情報を他のシグナルに変換し,細胞質・核や周囲の細胞に伝達することによって環境変化にダイナミックに対応している.細胞外環境に直接接する膜タンパク質は細胞膜センサーとして細胞感覚に重要な役割を果たしているが,特にTRPチャネルは化学物質刺激・物理刺激のセンサーとして注目を浴びている.TRPチャネルは多くの疾患と関連があることが明らかになっており,創薬標的になると同時に物理療法の標的にも成り得る.
著者
石川 稔
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.620-624, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
15

医薬リード化合物の水溶性と脂溶性は、受動拡散による経口吸収を考える上で重要な物理化学的性質である。著者らは、分子間相互作用を減弱させるリード化合物の構造改変により、水溶性と脂溶性の両方を同時に向上できることを見いだした。
著者
中村 能久
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1255-1256, 2009-12-01
参考文献数
4
著者
樋坂 章博
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.664-668, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
8

予測は科学的知識に基づく最善の合理的な判断ではあるが,残念ながら経験によって十分に検証されたものとはいえない.ヒトの健康を預かる医療は,可能であれば観察された確かな証拠に基づくべきである.これは根拠に基づく医療(EBM)の根幹であり,その考え方が現在広く認められるに至った背景には,最善の知識で論理的に正しいと信じられた治療法であっても,実際には無効,ときには有害でさえあったとの苦い経験がある.遡るなら,古代中国の神農は薬草を選別するために必ず自ら摂取したと伝えられるが,身を賭してエビデンスを確認したからこそ,あれほど広く尊敬の念を人々から集めたに違いない.それほどまでに,医療にとっては実証こそが重要であり,それを予測で補うのは特別な場合に限られるべきである.ここでは薬物相互作用(drug-drug interaction:DDI)の予測を論ずるわけであるが,まず最初に予測には限界があり,適用は利点と欠点,効率性とリスクの判断から許容される場合に限られることを強調したい.それでは,臨床の場においてDDIの予測は,なぜ必要なのだろうか.その理由の第一は,DDIに関係する可能性のある薬剤が非常に多いことである.市場には2,000種を超える薬剤があり,この半数程度の体内動態の制御に代表的な薬物代謝酵素であるCYP3Aが関与するといわれる.一方で,処方機会が多い比較的強いCYP3Aの阻害薬および誘導薬は,数十のオーダーで存在し(私たちの過去の調査によると33剤であった),そうすると,ここで総当たりで数え上げるならば,数万もの相互作用を検証すべき薬剤の組み合せが存在することになる.これまでに実際に相互作用が臨床試験で検証された組み合せは,文献を数えても実は数百しかない.しかもDDIに関係する薬物代謝酵素はもちろんCYP3Aだけではない.EBMを強調するあまり,確認されたDDIのみしか認めないとすると,どうしても重大なリスクを見逃すことになる.DDIに関しては,EBMの基準を緩めないと破綻するのが明らかなのである.少し実例を挙げて見よう.ブロチゾラムとエプレレノンは両方ともCYP3Aで非常によく代謝を受ける薬剤であり,したがってその阻害薬と併用すると血中濃度が数倍に上昇する可能性があるので,十分な注意が必要である.ところが医薬品添付文書で併用に注意すべき薬剤として挙げられているのは,ブロチゾラムはイトラコナゾール,ミコナゾール,シメチジンであるのに対し,エプレレノンはイトラコナゾール,リトナビル,ネルフィナビルが禁忌に指定されているのに加えて,クラリスロマイシン,エリスロマイシン,フルコナゾール,サキナビル,塩酸ベラパミルとの併用に注意すべきとある.よく見ると,ここでは2つの典型的なCYP3Aの基質薬の間で,イトラコナゾールを除くと危ないとされる阻害薬が重複していない.相互作用の機構を論理的に思考すると,これは決してあり得ない.現状では,CYP3Aの阻害薬の統一的な基準がないことから生じた混乱といえる.残念ながら,このような曖昧さは現状の添付文書の注意喚起には随所に存在しており,それは実は日本だけの問題ではない.例えば日本,米国,欧州のラベリングを多くの薬剤で比較すると,相互作用の注意喚起の区分が国の間で異なる例は数割にものぼる.相互作用の注意喚起に関しては,統一的な基準やハーモナイゼーションを図る枠組みがどこにもないことが,このような事態の原因となっている.もちろん,これまでの添付文書の相互作用の注意喚起であっても,分かりやすく臨床的重要性が判断できるように,かなり注意深く作成されてはいる.例えば,1997年4月25日発出された薬安第59号によれば,記載様式は可能な限り表形式等にして分かりやすく,また種類(機序等)毎に相互作用を生じる薬剤名・薬効群名を挙げ,相互作用の内容(臨床症状・措置方法・機序・危険因子等)を簡潔に記載することとしている.エビデンスに基づき,可能な場合には重要な順番から記載するとの配慮がなされており,実際に現在の臨床において危険な相互作用を避けるためにかなり有用であったことは間違いない.しかし,相互作用の程度を科学的に予測することで,一定以上のリスクがあれば漏れなく記載するとの観点は,あまり考慮されなかったのが実情なのである.
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.164-165, 2016

生物学や遺伝学の世界に統計学を持ち込んだのは,進化論で著名なチャールズ・ダーウィンの従弟,フランシス・ゴルトンである.ゴルトンは,気象図の等圧線を考案し,気圧という概念を発見したり,指紋による個人の識別をスコットランドヤードに提唱したりするなど,幅広い知識人でもあった.コナン・ドイルも,いち早くその意義を認め,「ノーウッドの建築業者」(作品集:ホームズの帰還)で,ホームズにも指紋による個人鑑別について語らせていることはよくご承知のことであろう.
著者
(株)フジテレビジョン広報宣伝部
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.703-706, 2020

「アンサング=褒められない」医師のように頼られず、看護師のように親しまれなくても、誰より患者のことを考える薬剤師という存在に光を当てた新・医療ドラマです。普段は脚光を浴びることがありませんが、薬を処方する時は患者にとって『最後の砦』となります。ドラマチックであると共に視聴者に『知識』も提供できる社会的意義の高い作品です。
著者
長谷川 悠子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.742-746, 2019 (Released:2019-08-01)

スポーツは参加する人すべてが同じスタートラインに立つこと、同じルールのもとに「フェア」に競い合うことが土台として成り立っている。その土台が壊れないよう、みんなが同じスタートラインに立っていることを証明することが、ドーピング検査の大切な役割である。本稿では、そのようなアンチ・ドーピング活動の一部である、「ドーピング検査」の流れと、万が一陽性が疑われる分析結果が出た場合のその後の手続きについて概説する。
著者
真野 栄一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.415-419, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
8

QbDにつき製薬企業の薬事の観点から解説した.まず,QbDに関連のICHガイドライン紹介としてQ8およびQカルテットの説明,次いで薬事面を踏まえた品質保証の考え方として開発,製造,薬事要件についての基本解説し,その中でのQbDの位置付けを説明した.その後QbDの従来法との比較,QbDの簡単な手順説明,用語を解説し,QbDで最も重要なポイントはリスク評価の繰り返しであることを示した.今後の進展,最後にまとめとした,
著者
廣部 祥子 岡田 直貴 中川 晋作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1030-1034, 2016

皮膚の表皮や真皮には免疫担当細胞が多数存在しており、これらの細胞にワクチン抗原を送達することができれば、高いワクチン効果が期待できる。近年、痛みを伴うことなく皮膚に貼るだけでワクチンを接種できるマイクロニードルを用いた経皮ワクチン製剤が、従来の注射ワクチン製剤と比較して、有効性だけでなく迅速大規模接種や開発途上国へのワクチン普及において優位性をもつことから注目されている。
著者
尾崎 葵
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.700, 2019

ウメ(<i>Prunus</i> <i>mume</i>)の果実は昔から体に良い食材としてアジア諸国で利用されており,有益な生理活性が数多く知られている.例えば,ジャムや梅肉エキスなどに含まれるムメフラールは,梅を加熱した際に糖とクエン酸が反応して生じる物質であり,血小板凝集抑制作用により血流を改善することから,脳梗塞や心筋梗塞など心血管疾患への予防効果が期待されている.また,梅エキスに含まれるオレアノール酸などのトリテルぺノイドが抗酸化作用や抗炎症作用を持つことも報告されている.本稿では,喫煙によるDNA損傷の修復が期待される梅エキスの新規有用物質の単離とその作用機序解析を行ったAndrewらの研究成果について紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) 忠田吉弘ほか,ヘモレオロジー研究会誌,<b>1</b>, 65-68(1998).<br>2) Kawahara K. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Int</i>. <i>J</i>. <i>Mol</i>. <i>Med</i>., <b>23</b>, 615-620(2009).<br>3) Andrew J. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Sci</i>. <i>Rep</i>., <b>8</b>, 11504(2018).<br>4) Hwang J. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Korean</i> <i>J</i>. <i>Food</i> <i>Sci</i>. <i>Technol</i>., <b>36</b>, 329-332(2004).
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.558-559, 2014

爽やかな春も終わり,梅雨が近づいてきた.6月と言えば,ジューンブライドで結婚式の季節というイメージがあるのではないだろうか? 2012年のぐるなびウエディングのアンケート調査結果を見てみよう.まず既婚者(男性700名,女性432名)に「どの時期に結婚したか」という質問に対して,春~初夏(4~6月)が1番多く28.7%,続いて秋(10~11月)が23.9%と続く.結婚の意思のある未婚者(男性161名,女性178名)に「どの時期に結婚したいか」を尋ねると,秋が1番多く,53.1%,続いて春~初夏の41.0%となる.親族や友人など式への出席者側(男性1029名,女性703名)の意識では,「いつ出席したいか」という質問に対して,こちらも秋が41.0%で,続いて春~初夏の27.0%という回答であった.つまり,6月に結婚式が1番多いというわけではないのである.<br>もっと詳細に示せば,未婚者の結婚希望時期は10月が1位で6月は4位なのである.既婚者の結婚時期でも1位は11月で,6月は6~7位なのである.例外的に6月に挙式が増えた年があったが,それは,1990年と1993年である.それぞれ6月に秋篠宮,皇太子のご成婚があり,それにあやかっての挙式増加であった.現実的な話をすれば,梅雨時期で稼働率の下がるホテルや式場が欧米のロマンチックな言い伝えを利用し,ジューンブライドとぶち上げて6月の集客を回復しようと画策したのが始まりらしい.ヴァレンタイン・デーを利用してチョコレートの売り上げを伸ばそうとした製菓業界とまったく同じ構図なのである.こういうキャンペーンはそのまま鵜呑みにせず,数字の裏付けを確認することが大事である.<br>ところで,この時期になると決まって懐かしくなるのがロンドンの清々しさである.この時期のロンドンは夜も21時過ぎまで明るく,空気もカラッとしていて実に過ごしやすい.著者がロンドンを訪問する際に必ず立ち寄る場所がある.根っからのシャーロキアン(英国ではホーメジアンと呼ばれるらしい)としては,チャリングクロスのパブ・シャーロック・ホームズと言いたいところだが,同じパブでもそれはジョン・スノウ・パブなのである.と言っても読者のなかでそれを知っている人がいれば奇跡に近い話であろう.有名なエロス像のあるピカデリーサーカスからリージェント・ストリートを北に進み,ブルックス・ブラザーズの店舗の角を右手に曲がって5分ほど進み,さらに左に折れて進んだ先のブロードウィック・ストリートの左角に目指すパブは佇んでいる.別に危険な場所ではないが,普通の観光客は絶対にこんな路地裏までには入ってこないだろう.ここが生物統計学の源流の一つである疫学の"聖地"なのである.
著者
郷 すずな
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.471, 2017

アルツハイマー病(AD)は,アミロイドβ(Aβ)を主要成分とした老人斑とよばれる細胞外沈着物の脳内蓄積とリン酸化タウタンパク質を主要成分とした神経原線維変化を特徴とする.ADの発症機序は不明であるが,代表的な発症仮説にアミロイド・カスケード仮説がある.この仮説は,Aβの蓄積が,ADの病態進行に特徴的なシナプス障害とそれにつづく神経変性に関与すると仮定している. これまでに,この仮説に基づいてADの根本治療薬の開発が進められてきたが,有効性が検出されず治験の中止が相次ぎ,アミロイド・カスケード仮説の妥当性についての懸念が生じていた. 本稿では,この現状の中で行われた抗Aβ抗体アデュカヌマブ(aducanumab)の第1b相臨床試験の中間解析結果を報告したSevignyらの論文を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Selkoe D. J., Hardy J., <i>EMBO</i> <i>Mol</i>. <i>Med</i>., <b>8</b>, 595-608(2016).<br>2) Herrup K., <i>Nat</i>. <i>Neurosci</i>., <b>18</b>, 794-799 (2015).<br>3) Sevigny J. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Nature</i>, <b>537</b>, 50-56 (2016).
著者
深瀬 浩一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1091-1095, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
16

自然免疫研究は,細菌由来複合糖質研究から始まった.まず,特定の分子構造が免疫増強作用を示すことが明らかにされ,続いて様々なセンサー受容体群の発見につながった.細菌由来複合糖質の多くは複雑構造の高分子であり,天然物には他の免疫増強物質のきょう雑が避けられない.我々は,活性本体ならびにその受容体を確定するために,1)合成法の確立,2)均一な化合物の十分量の供給,3)合成化合物の生物機能研究への提供,という研究戦略に基づいて,細菌由来複合糖質の自然免疫機能の解析研究を実施した.微生物による免疫増強作用は,細菌感染によってがんが治癒,縮小する現象として300年以上前から報告されていた.19世紀の終わりからこの現象に科学の目が当てられ,1893年にColeyは細菌を用いた世界で最初のがんの免疫療法を実施した.その後様々な細菌による免疫活性化作用が報告され,現在この現象は自然免疫の働きによるものと理解されている.自然免疫は,種々のセンサー受容体(病原体認識受容体,パターン認識受容体)により,細菌,ウイルス,カビなどの病原体由来の複合糖質,グリカン鎖,リポタンパク質,DNA,RNA,鞭毛タンパク質フラジェリンなど,病原体に特徴的な分子を認識して生体防御にあたるシステムで,抗原-抗体反応や腫瘍免疫などの獲得免疫の誘導にも重要な働きをしている.また自然免疫は,アレルギーや自己免疫疾患,慢性炎症やがんとも深くかかわっていることから,大きな注目を集めている.我々は,リポ多糖や細菌細胞壁ペプチドグリカンなどの細菌由来複合糖質を主な対象として,それらの合成研究と合成化合物を用いた機能解析研究を実施したので,以下に紹介する.
著者
阪田 泰子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.682-683, 2016

リポビタンDは、高度経済成長の時代を迎えた1962年、日本にドリンク剤という概念が無かった時代に、"強肝・解毒、疲労回復効果を持つ服用しやすい大型内服薬"を基本構想に、大型の100mLビン入り、冷えて美味しく飲みごたえのあるドリンク剤として生まれた。本品の発売後50余年にわたる営業活動と商品開発により、お客様に対して信頼性を追求し、確保し、進化し続けている。