著者
山口 栄一 西岡 孝
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.p743-751, 1993-07

Elementary processes of nuclear fusion reaction in solids have been studied by providing the sample in a vacuum system. The key factor of this study is heterostructures fabricated by depositing thin film oxides and Au on one and the other surface of deuteron-loaded palladium (Pd-D) plate. Using this method, we have detected ^4He production by the real time observation using high-resolution quadrupole mass (Q-mass) spectroscopy. It has been shown that the peak attributable to ^4He mass (4.0026 amu) appeared chaotically when the sample's temperature increased rapidly. The system of H-loaded (Pd-H) heterostructure, on the other hand, produced no peak at 4.0026 amu. We have also confirmed that the peak at 4.0026 amu in the Q-mass spectra is not due to the existence of contaminated ^4He in the air or in the D_2 cylinder used. This result indicates that a new class of nuclear fusion occurs in condensed matter.
著者
泰地,真弘人
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, 1994-04-25

This paper describes the development of special-purpose computer systems for Ising models, "Ising Machine" m-TIS 1 and 2. The first two sections explain Ising models and their Monte Carlo simulations. In section 3 and 4, I describe my motivation to build a special-purpose computer and the development of m-TIS 1. In section 5 and 6, the use of field-programmable gate arrays in a special-purpose computer is discussed. In the last two sections I discuss the potential abilities and future prospects of both Ising machine and a special-purpose computer in general.
著者
草野,完也
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, 2014-02-25

太陽黒点活動にはSchwabeサイクルと呼ばれる約11年の周期変動と様々な長期変動があることがわかっている.特に,17世紀のマウンダー極小期に代表される大極小期は地球気候にも少なくない影響を与えたことが示唆されている.しかし,太陽黒点の周期活動と長期変動のメカニズムは未だに十分理解されていない.太陽表面の振動から太陽内部の状態を再現する日震学の進展とコンピュータによる数値モデルの発達により,太陽活動の基本的な性質を説明すると共にこれを予測する試みが進みつつある.
著者
西川,和男
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, 2013-03-25

我々は放電を用いて空気中の水分子と酸素分子を電離し,空気中に正極性と負極性のクラスターイオンを放出することにより,浮遊菌を除去する技術を開発した.本章では,本技術によるクラスターイオンの生成メカニズム,菌の抑制効果のメカニズムを紹介するとともに,実空間試験において実証されたクラスターイオンの効果について報告する.
著者
永島,圭介
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, 2008-01-25

金属やプラズマのように自由電荷を持つ物質表面では,表面電荷の集団振動である表面プラズモン(あるいは,プラズマ表面波)が存在できる.この集団振動が外部から与えた電磁波と結合した系は表面プラズモンポラリトンと呼ばれる.この表面波が存在できるのは,磁場が横波であるTMモードの場合だけである.1つの境界面にTMモードの電磁波を入射した場合,振幅反射率の特異点(分母がゼロになる点)が表面プラズモンの共鳴条件に一致し,この条件から表面プラズモンの分散関係が得られる.ここでは,実際の実験系に見られるような複数の境界面がある場合について,多波干渉理論を用いて表面プラズモンの正確な分散関係を求めた.さらに,この分散関係を用いて,表面プラズモン共鳴を応用した高時間分解かつ高空間分解のイメージング測定法について議論した.
著者
渡邉 國彦
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.374-377, 2004 (Released:2004-09-22)

Large-scale simulation research is the most important and effective method to reveal the physical mechanisms in the complex systems such as fusion plasma. The current state of the development and history of the supercomputer system of Theory and Computer Simulation Center of National Institute for Fusion Science are summarized and the concept of the next generation simulator is introduced.
著者
小野 靖
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.921-923, 2004 (Released:2005-07-14)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

High-beta ST research is motivated by its high normalized current Ip/aBT0 achievable at a low aspect ratio and its direct access to second stability for ballooning modes. Key issues for the high-beta ST sustainment are profile control for ballooning/ current-driven kink stabilities and positioning of the conductive wall for mode suppression. ST termination by resistive wall modes (RWM) revealed that velocity shear is a useful tool for the better stability.
著者
陰山 聡 大野 暢亮
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.834-843, 2008-11-25
参考文献数
19
被引用文献数
3

CAVEと呼ばれる方式のバーチャルリアリティ装置を利用した3次元可視化ソフトウェアを開発した.このソフト「VFIVE」はプラズマ・核融合シミュレーション用の可視化ソフトウェアとして出発し,10年近くにわたる開発の結果,複雑な3次元構造を持つ一般的なスカラー・ベクトル場を解析するための汎用ツールとして実用上十分なレベルに達した.CAVE装置の持つ優れた対話性と没入感を可視化に応用するために開発したVFIVE独自の可視化機能を紹介する.また,最近主流になりつつあるPCクラスター型のCAVE装置へのVFIVEの移植についても報告する.
著者
幾世 和将 浜口 智志
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.780-784, 2015-12-25

生きた生体組織に低温大気圧プラズマを照射すると,生体を取り囲む液体(細胞外液)中に,化学的に活性な分子やフリーラジカル等の反応活性種が生成され,それらと生体組織との相互作用により,生体内反応が誘起される.本稿では,液中の反応活性種の生成と輸送を解析するための数値シミュレーション法について解説する.気相中のプラズマにより生成された化学種は,液体に供給された後,各種の液中化学反応を通して,他の化学種へ変化し,輸送される.この過程を,データベース等に存在する液中化学反応式や反応速度等を用いて溶液中の各化学種の濃度の時間・空間分布の変化という形で,巨視的にモデル化することが可能である.こうして作成したモデルに基づく数値シミュレーションでは,プラズマ照射実験と異なり,特定の反応活性種のダイナミクスを詳細に解析することが可能である.本章では,数値シミュレーション例として,電子と水素原子正イオンを純水中に照射する際,溶液中に生成される各種化学種の生成・消滅・輸送を解析する.気相プラズマから供給される極めて反応性の高い活性種は,気液界面近傍の,厚さが100nm程度の「反応境界層」において消費され,液体内部にほとんど浸透しないことが,シミュレーションにより示される.
著者
鳥居 寛之 黒田 直史 檜垣 浩之 船越 亮 大島 永康
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.1012-1021, 2004 (Released:2005-07-14)
参考文献数
46

Antiprotons produced by a proton synchrotron are decelerated and cooled first to 5.3 MeV by stochastic cooling and electron cooling in the Antiproton Decelerator (AD) ring, then to 111 keV by a Radio Frequency Quadrupole Decelerator (RFQD). After the deceleration of the RFQD, antiprotons are degraded by thin PET foils and injected into the Multi-Ring electrode Trap(MRT). Electrons are preloaded in the MRT to cool the antiprotons to subelectron volt energy region. Ramping up the trapping potential slowly allows ultra-slow antiprotons of 10-500eV to be extracted from the strong magnetic field region. Positrons from 22Na are cooled by N2 gas or by electrons to form a cold positron plasma. A rotating electric field is used to radially compress the plasma.
著者
伊藤 孝士
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.149-153, 2015-02-25

惑星や小惑星・彗星といった太陽系天体の運動はケプラー運動でよく近似できる.これらの天体の多くはより重い中心天体を周回し,そこに働く摂動は一般に小さい.また現代に於いては天体同士の衝突も稀であり,力学的には太陽系を保存系と看做すことも妥当である.これらの性質により太陽系力学はシンプレクティク数値積分,特に微小摂動系向けの計算方法と親和性が高い.本節では太陽系力学の様々な局面で利用されるシンプレクティク数値積分法のいくつかを紹介し,その現状と課題・将来の展望について簡潔に述べる.
著者
長島 重夫
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.21-25, 1995-01-25

Japanese supercomputers, which are almost vector processing type, have kept the position of the highest performance since 1983 when the first supercomputer shipped. Vector computers have the capability of easy-to-use for programming, but can not extensively increase the effective performance more than present level due to the limitation of memory throughput. The expected maximum performance of vector type will be up to 100GFLOPS. Therefore, Japanese supercomputer makers will adopt the parallel processing type for next generation supercomputers. 1TFLOPS at the effective level of performance will be realized by the end of this century.
著者
米沢 富美子
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.829-835, 1995-09-25
被引用文献数
1

Science of complexity studied in Santa Fe Institute covers all complex phenomena such as human beings, brains and economics. It aims to search "how does complexity arise from simple laws?" or "what is a paradigm characterising the behavior of complex systems?". Our study of complex liquids also aims to discern the possibility and the limit of the conventional methodology in physics (reductionism) and to find a key to a new paradigm.
著者
武智 学 松永 剛 白石 淳也 徳田 伸二 飛田 健次
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.147-162, 2009-04-25
被引用文献数
1

トカマク型核融合炉の定常化にとって高ベータ化は必須である.この高ベータ化には最終的にはMHD不安定性の一種である"抵抗性壁モード"がボスキャラのごとく立ちはだかる.逆転磁場ピンチに至っては抵抗性壁モードによって寿命が決まってしまう.この十年,閉じ込め改善や加熱装置の進展により高ベータ化の敵,抵抗性壁モードとの実戦が始まった.この敵を駆逐する(安定化する)武器には"プラズマ回転"と"磁場のフィードバック制御"があるが,最近その戦いにちょっとしたどんでん返しがあった.その結構ドラマチックな戦歴を楽しんでもらうために,まずは敵を知ってもらい,これらの武器の説明をしよう.その領域は物理から工学までの広い分野にわたる.現在の戦況は混沌としているが,さらに,問題点や今後の戦い方について考える.さあ,抵抗性壁モードの世界へ,ようこそ.
著者
勝木 淳 高木 浩一 浪平 隆男
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.268-275, 2011-04-25
被引用文献数
12

パルスパワーは,宇宙,慣性核融合,超高エネルギー密度物性研究などの大型科学研究とともに発展してきた.最近では,小型化や高繰り返し化などの電源技術の飛躍的発展によって,光源,環境,医療,食品,農業など,身近なところで利用されつつある.パルスパワー技術入門の最終回となる今回は,パルスパワーの利用形態を述べ,いくつかの特徴的な応用を挙げその概略を述べる.
著者
Sarff John S.
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.800-803, 2008-11-25

RFP核融合炉にとってOscillating Field Current Drive (OFCD)を用いたプラズマ電流の定常維持は魅力的なシナリオである.OFCDは磁力線のストカスティシティを生じ得る磁気的自己組織化に依存する方法なので,核融合炉に要求される高い閉じ込め性能を達成できるかどうかは,閉じ込めスケーリングが磁気乱流(磁場揺動振幅)に対して望ましい依存性をもつかどうかによるが,このスケーリングは現在のところ確実性に欠ける.本稿では,定常電流維持とは異なる,「ほとんど定常的」な核融合炉のシナリオについて述べる.このシナリオではプラズマ電流の駆動にOFCDを用いるが,電流の定常維持ではなく自己相似的な減衰を適用して自己組織化を最低限に抑制し,高い閉じ込め性能への近接性を確保する.核融合出力パワーはパルス的であるが,プラズマ電流が途切れることはない.
著者
北野 勝久 谷口 和成 酒井 道 高木 浩一 浪平 隆男 服部 邦彦
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.19-28, 2008-01-25
被引用文献数
6

近頃の大気圧プラズマ生成技術の進展により,比較的容易,そして安価にプラズマ生成実験が行えるようになってきている.少し前までは,大学の研究室レベルでの研究内容だったが,ハンディー型のプラズマ源が開発され高校の理科教育にまで用いられるなど,大気圧プラズマ研究の裾野は着実に広がりつつある.また,印加電圧波形の制御法に工夫を凝らして,大気圧下で非平衡な低温プラズマを生成する技術も多方面から開発されており,低温プラズマの特徴を生かして熱プラズマでは不可能な高分子表面処理などの研究も精力的に進められている.本章では,簡易に大気圧プラズマを生成できる実施例をいくつか紹介しますが,読者のみなさまに大気圧プラズマに興味を持っていただき,"大気圧プラズマを点けてみよう"と思っていただけると幸いです.
著者
柴田 一成
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.853-856, 2013-12-25

最近,太陽で起きている最大級のフレアの100〜1000倍ものエネルギーを放出するスーパーフレアという現象が,太陽とよく似た星で大量に発見された.現在の太陽の大フレアでも,人工衛星の故障や停電,通信障害など,現代文明に様々な被害を及ぼしているため,もしスーパーフレアが我々の太陽で起きれば,全地球規模の停電や通信障害など現代文明は大惨事になることが予想される.果たしてスーパーフレアは我々の太陽で起きるのか?起きるとすれば頻度はどれくらいか?また,スーパーフレアの発生メカニズムは何か?太陽フレアの磁気リコネクション・モデルに基づき,これらの謎の解明にせまる.
著者
永島 芳彦
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.740-746, 2012-12-25

球状トカマクの改善閉じ込めプラズマにおける乱流輸送研究について,NSTXやMASTにおける最近の研究動向を紹介する.球状トカマクコアプラズマの熱輸送については,イオンの熱輸送は新古典輸送が支配的である一方,電子の熱輸送は異常輸送であり,その原因となる不安定モードの特定が急務である.数値計算による線形不安定モードの推定,温度や密度勾配・速度場などの平衡量とモードの不安定性の比較,乱流密度揺動の実測,と段階を踏んで研究が遂行された結果,異常輸送をもたらす不安定性として,電子温度勾配不安定性やマイクロテアリング不安定性が有力となった.
著者
藤本 正樹
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.872-875, 2013-12-25

太陽周辺の宇宙空間(太陽圏)は,太陽から吹き出すプラズマ流(太陽風)で満たされている.太陽系の惑星の中で固有磁場をもつものは,太陽風との相互作用により,その周辺に「磁気圏」と呼ばれる宇宙空間を形成している.その磁気圏内では様々なプラズマ・ガスのダイナミクスが発展するが,その究極の駆動源は太陽風磁場と惑星磁気圏磁場との磁気リコネクションであると考えられている.その重要性が故に,磁気リコネクションは磁気圏観測を実施する探査機において重要な観測ターゲットとなってきた.ここでは,その流れの中で,(1)比較的大きなリソースを活用することが可能な地球磁気圏観測衛星においては,磁気リコネクションのエンジン部分における電子スケール物理解像が次なる課題となっていること,(2)観測データ性能という意味ではレヴェルは落ちるものの,異なるパラメータ空間における磁気リコネクション物理の観測を可能にする惑星磁気圏観測から多くを学びつつあることを概観する.