著者
内田 萌菜 金 学正 前田 真吾 佐野 孝志 米澤 智洋
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.101-106, 2019-10-10 (Released:2019-10-31)
参考文献数
19

伐採した竹林の有効活用法として、孟宗竹に存在する乳酸菌と竹表面の多孔性による消臭効果が注目されている。本研究では竹粉末を添加した飼料がイヌの糞の臭気に影響を及ぼすか、さらにそれに乳酸菌が関与しているかを検討した。臨床上健康なビーグル犬6頭を実験に供した。洗浄した竹材を平均粒度300 µmで粉砕して密封し、嫌気発酵により乳酸菌を豊富に宿した竹粉末(湿竹粉)、もしくは竹粉末を加熱し、真空吸引法にて乾燥させ、生きた乳酸菌のいない竹粉末(乾竹粉)を餌重量に対し重量比で3%混和した餌を実験犬に投与した。糞便の臭気強度は北川式ガス検知器によるアンモニア、硫化水素そしてメルカプタン濃度の測定および10人のパネラーによる官能試験にて評価した。その結果、湿竹粉、乾竹粉投与群のいずれにおいても、投与7日後には糞臭気中メルカプタン濃度の低下とともに、官能試験による臭気強度、快不快度の有意な改善が認められた。湿竹粉と乾竹粉の投与群間に有意な差は認められなかった。以上の結果より、竹粉にはイヌの糞便の臭気を改善する作用があること、その作用は竹粉中の生きた乳酸菌が主要因とは考えにくいことが示された。
著者
藤井 立哉
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.86-92, 2014-10-10 (Released:2015-04-15)
参考文献数
15
著者
菅野 大 清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹 友永 省三
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.Suppl, pp.suppl_33-suppl_34, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
2

市販されている維持期のネコ用総合栄養食(各10種のドライ製品とウェット製品)および5種の一般食(ウェット製品)におけるタウリンおよびメチオニンの充足・過剰を検証した。充足・過剰の判定はAAFCO養分基準(2016)に基づいて行った。総合栄養食では、すべてのフードにおいてタウリンとメチオニンは充足していたが、1つのウェット製品においてメチオニンが過剰であった。一般食では、タウリン不足のフードが認められ、メチオニンはほとんどのフードで過剰であった。メチオニン含量および表示されている(粗)タンパク質含量は正の相関を示したことから、メチオニンのアンバランスは生じないため、その過剰の問題はない可能性がある。総合栄養食であるドライ製品の一部を一般食に置きかえることを想定しても、タウリンは不足しないことが示唆された。
著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013-10-10 (Released:2014-03-20)
参考文献数
17

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。
著者
渡辺 隆之
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.121-125, 2015-10-10 (Released:2016-04-11)
参考文献数
11
著者
寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.18-22, 2011

30種類の市販ネコ用ウェットフードの重金属〔ヒ素 (As)、カドミウム (Cd)、水銀 (Hg) ならびに鉛 (Pb)〕濃度を測定し、5 種類の市販ヒト用ツナ缶詰中のそれと比較した。Cd濃度はネコ用ウェットフードの方がヒト用ツナ缶詰よりも有意に高い値を示したが、それ以外の重金属濃度に違いはなかった。EUが定めた重金属濃度に対する基準値と比較したところ、13例の総合栄養食の内、As、Hgに関してそれぞれ9 例、1 例が基準値を上回った。一方、17例の栄養補完食では、13例がAsの基準値を上回り、Pbの基準値を上回ったフードも 1 例あった。また、日本国内における家畜配合飼料の基準値を上回ったフードは、As、Pbに関してそれぞれ5 例、1 例あった。ネコの体重を4 kg、フードのラベルに記載通りの給餌方法による摂食量を仮定し、ヒトにおける重金属の暫定耐容一週間摂取量(PTWI) と比較したところ、Asでは全てのフード、Cdでは 17例、Hgでは 25例およびPbでは 7 例が上回った。本研究結果は、ペットフードの重金属に関する基準値を設定する基礎データとなり得る。
著者
西浦 誠 寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Suppl, pp.Suppl_52-Suppl_53, 2012-07-01 (Released:2013-03-21)
参考文献数
2

ICP-MS の半定量測定モードを用いて、ペットフードのトキシコメタローム解析を試みた。ペットフード中金属の半定量測定では、極めて濃度の低い元素を除き繰り返し再現性が比較的高かった。Li・Al・V・Mn・Co・Cu・As・Rb・Sr・Mo・Cd・Hg・Pb の 13 元素に関しては、添加回収率が 70%~120% であった。これら 13 元素で定量分析値に対する強い回帰が認められた。したがって、同時にこれら多数の金属測定が可能であることが示された。よって、ICP-MS の半定量分析は、金属によるペットフード汚染を防止する上で有効なスクリーニング手法となりうる可能性が示された。
著者
湯川 尚一郎 湯浅 美那 江塚 楓奈 湯川 元美 山崎 勝利 仲 克己
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.22-26, 2021-04-10 (Released:2021-04-15)
参考文献数
23

海外では、イヌ用ペットフードへのサルモネラ属菌混入が原因であるヒトサルモネラ症の発生事例が報告されている。このことから、本邦においてイヌ用ウェットフードへのサルモネラ属菌混入の有無を明らかにするために日本国内で販売されているイヌ用ウェットフードからサルモネラ属菌の検出の有無を調査した。イヌ用ウェットフードは国内23社の国内産20製品と中国産24製品、オーストラリア産14製品、タイ産と米国産が各4製品そしてニュージーランド産2製品を供試した。サルモネラ属菌の検出方法は「愛玩動物用飼料等の検査法 (27消技第1051号) 」に従った培養法により行った。その結果、サルモネラ属菌は、すべての製品から検出されなかった。このことから、日本におけるイヌ用ウェットフードのサルモネラ属菌混入に関するヒト及びイヌの健康被害のリスクは低いと考えられた。
著者
大島 義之 和田 沙依子 田村 充宏 後藤 健 金子 政弘 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.64-73, 2003-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
34

ネコにおけるシスチンの尿酸性化効果と有害作用の有無について検討した。健康な成ネコ6頭(平均3.3kg)を2頭ずつ3群に分け,1期8日間の3×3ラテン方格法により,L-シスチンを0,2.4,4.8%添加した3種類の実験食を各群に割り当てた。実験期間を通して実験食と飲水は不断給与し,各期最終5日間に増体量,摂食量,飲水量,尿量,糞量を測定した。また,毎朝新鮮尿を採取し,直ちにpHとストルバイト結晶数を測定した.残りの尿はMg,P,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,遊離アミノ酸濃度の測定に用い,[Mg2+]×[NH4+]×[PO43-]によりストルバイト活性積を求めた。一方,各期最終日には頚静脈より採血し,ヘマトクリットと血漿中の総蛋白質,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,および遊離アミノ酸濃度を測定した。尿および血漿のクレアチニン濃度を指標として糸球体濾過量も求めた。その結果,L - シスチンには等S量のDL-Metに匹敵する尿酸性化効果がある一方,DL-Metのような強い毒性はないことが明らかとなった。しかし体重の有意な減少なしに摂食量が減少したことから,インバランスは生じ得ることが示唆された。L-シスチンの適正投与水準はドライフード当たり2.4%以下と考えられたが,この問題に関しては今後さらに検討の余地がある。L-シスチンの投与がシスチン尿症または同尿石症を増加させるとの証拠はなかったものの,二塩基性アミノ酸- 特にシスチン, リジン,アルギニンーの尿中排泄に関するネコの特異性が示唆された。
著者
藤井 立哉
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.93-98, 2022-10-10 (Released:2022-10-31)
参考文献数
31
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.12-21, 2017-04-10 (Released:2017-05-02)
参考文献数
31

イヌや飼い主の都合により市販のフードが使用できない場合は、手作りによる食餌の調製が必要になるが、入手しやすい食材のみで手作り食を調製する場合、AAFCO養分基準(2015)における特に微量栄養素量の最小値を満たすためには、サプリメントの使用が不可避であった。しかしこの度、AAFCO養分基準(2016)が公表され、多くの微量栄養素量の最小値が減少したため、この新基準に即したレシピ設計を試みた。食材の栄養素量は日本食品標準成分表を主に用いた。通常の食材のみではカルシウムの最小値の充足には限界があるので、カルシウム源として期待できる鶏卵殻のミネラル分析を行った。糖質源とタンパク質源からなる食餌を基本食とし、とうもろこし油、豚レバー、煮干し、小麦胚芽、ひじき、鶏卵殻を補助食とした。糖質源とタンパク質源を湿重量で等量用い、基本食と補助食を代謝エネルギーで等量用いることで、AAFCO養分基準(2016)を満たすことができた。
著者
佐野 智恵 山賀 あゆみ 松本 力 櫻井 英敏 宮原 晃義
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.8-14, 2007-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
7

市販ドッグフードのドライタイプ5 種類( 粗脂肪6%2種, 10%, 15%, 18%) を用いて開封直後にビタミンE(α-トコフェロール) を添加して4週間保管し, 脂質変化( 酸価, 過酸化物価, ヨウ素価)と総ビタミンEの定量を行った.1.開封直後の酸価の値は4.7~7.3を示し,イヌに対して有害な含有量ではなかった.また,5種類のドッグフードの酸価の経時変化からみて,α-トコフェロールの添加量はイヌの栄養要求量とその倍量を加えて比較した結果による抗酸化効果はほとんど差がなく,保存期間中の酸価の値ではイヌの健康には安全の範囲であった。2.過酸化物価の経時変化からみて,本実験のα-トコフェロールの添加量は,フードの過酸化物価の経時変化に影響を及ぼさなかった。3.5種類のドッグフードは時間の経過に伴ってヨウ素価が低下する傾向にあり,その値が90以下であることから, 今回のドッグフード中の脂質は不乾性油であった。 ヨウ素価はα-トコフェロールの添加量による経時変化の差はほとんどなかった。4.HPLCによる総ビタミンEの分析において,抽出時間の短縮と試薬節約のため,試料をけん化した後の水層を石油エーテルで1 回抽出洗浄で調製した試験溶液と, 水層の2 回目の抽出洗浄液のみの試験溶液を比較した。2回目抽出洗浄試験液中にはビタミンEが1回抽出試験液の約10%残留することが確認され,抽出時間の短縮と試薬の節約はできなく,2回洗浄抽出法で測定を行った。ドッグフード中の総トコフェロールに占めるα-トコフェロールの割合は対照区で約97%,添加区では約99%となり,β,γ-トコフェロールは0.8~1.9%であった。対照区および添加区ともにβ,γ- トコフェロールの検出量がわずかで経時変化量が小さいので抗酸化効果はなかったと考えられる。