著者
藤田 広志
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-42, 2019 (Released:2019-01-31)
参考文献数
24

2018年は, 医用画像を対象としたコンピュータ支援検出/診断 (CAD) システムにおいて, 米国における商用化20周年の記念の年であった. 20年が経過し, 特にAI (人工知能) におけるディープラーニング技術の発展とともに, CADがAI-CADとして進化・多様化している. それに伴い, FDAでもCADやその関連領域の審査状況にも変化が起きている. 本稿ではその現状の一端に触れる.
著者
松田 嘉弘
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.99-103, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
8

連続生産とは, 原料または混合物を連続的に製造工程内に供給し, 生産物を継続的に取り出す生産方法である. プロセスを長期間稼働させることで, 望ましい品質を有する生産物を, 必要な量, 必要な時期に製造できる. 連続生産により, 人的エラーの軽減や需要に応じた製造管理の実現など, 多くの利点が期待されているが, 連続生産に関連する規制上の考え方はまだ提示されていない. 連続生産を国内で円滑に導入していくためには, 産官学が一丸となり, 連続生産を導入するうえでの課題に取り組み, 知識を共有していく必要がある.
著者
斎藤 嘉朗 宇山 佳明 佐井 君江 頭金 正博
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.61-69, 2017 (Released:2017-01-31)
参考文献数
14

近年, 本邦における医薬品開発時の臨床試験は, 国内治験, ブリッジングから国際共同治験へと, その戦略は移りつつある. そのため, 複数の国内のガイドラインが整備されてきたが, 2014年よりICHトピック (E17 「国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則」) に採用され, 2016年にパブリックコメント募集のためガイドライン案として公表された. 一方, 国際共同治験の大半を占める日米欧を中心とした多地域国際共同治験に加え, 遺伝的・文化的に類似している東アジア諸国を対象にした国際共同治験も一定程度実施されている. しかし, 医薬品の薬物動態や応答性における民族差は, 東アジア諸国間においても, 存在する可能性が指摘されている. そこで, 日中韓薬事関係局長級会合の活動のひとつとして, 日本が主導する形で民族差に関する科学的検討が継続的になされている. 日中韓および白人を対象に3種の医薬品に関して行った臨床薬物動態試験では, 遺伝子多型による層別化と当該医薬品の薬物動態に重要な外的要因を均一化したプロトコトールにより, みかけの民族差は認められなくなることが明らかとなった. また50種以上の機能変化を有する遺伝子多型に関し, アレル頻度の民族差を調査したところ, 東アジア民族間で, 薬物代謝酵素およびトランスポーターについては概して大きな頻度差は認められないものの, 副作用に関連するHLA型では民族差が認められた. これまでの, そして今後の研究成果が, 東アジア国際共同治験の推進による, 東アジアの人々の医薬品アクセス向上に資することを期待する.
著者
藤坂 朱紀 伊藤 浩介 小比賀 聡
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.113-120, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
32
被引用文献数
1

核酸医薬品は, 低分子医薬品や抗体医薬に次ぐ新たなカテゴリーの医薬品として, 近年大きな注目を集めている. 実際に承認された核酸医薬品はこれまでのところ世界的にも5品目と少ないものの, 国内外における核酸医薬品の臨床試験は現在百数十件にも達しており, その勢いは今後も衰えることはないであろう. しかし, 現在のところ核酸医薬品を主たる対象としたガイドラインは存在していないため, 核酸医薬品開発に関わる品質, 非臨床安全性, 臨床的特徴を整理し検討しておくことは核酸医薬品の研究開発を進めるうえで重要である. 本稿では, 核酸医薬品の開発の現状を概説するとともに, 核酸医薬品に関わるレギュラトリーサイエンス上の課題点について, 特に品質管理の立場から, 合成・精製, および分析上の課題, 化学修飾に基づく課題, 高次構造の管理などのいくつかのポイントについて議論する.
著者
林 邦彦
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.197-203, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2

従来から, 治療法の評価では, ランダム化比較試験 (RCT) が最も適切な研究デザインとして用いられてきた. しかしながら, 難病, 希少疾患, 医療機器, 手術などの領域では, 疾患の重篤性や対象患者数の限界のために, 通常のRCTによる治療法開発が困難なことが多い. また, すでに社会で広く使用されている治療法についてRCTを実施すると, 研究対象集団が偏り, 結果の一般化が困難な外的妥当性に劣る研究となってしまうこともある. そこで, RCTの反対命題として, リアルワールドデータを用いた研究の重要性が再認識されている. 治療法開発においてリアルワールドデータの特徴と利用の注意点とともに, RCTとリアルワールドデータ研究との統合命題的な新たな研究デザインについても述べる.
著者
山口 照英
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.237-247, 2014

再生医療を含む細胞治療薬の開発が急速に進展しており,この先進医療の実用化に伴い治療法のない医療ニーズ(unmet medical need)を含め多くの疾患に対する新しい治療法を提供できる可能性がある.このような先進医療製品の実用化を促進するためにいくつかの指針の発出や改訂がされてきた.さらに,再生医療製品の実用化を図るために再生医療等製品の安全性を確保するための薬事法の改定が国会で議決された.改正法の中では,再生医療製品については安全性を確保した上で,より早期の承認を行えるように期限付き,条件付き承認制度が導入される.本論文では,このような再生医療等製品に関する新たな規制的枠組みについて,安全性や承認条件などを含めて議論をした.
著者
中沢 陽介 佐藤 敬 佐藤 征嗣 相馬 勤 出田 立郎 石井 良典 新山 史朗 坪井 良治 岸本 治郎
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.91-99, 2016 (Released:2016-02-05)
参考文献数
17

再生医療の実用化に向けては, 新たな法律を制定するなど, 国をあげての支援策によりその動きが加速している. 毛髪の再生に関しても, ヒト組織・細胞を利用した基礎研究の成果に基づいた, 脱毛症の自家移植による細胞治療に関する臨床研究が検討されている. 毛球部毛根鞘細胞 (DSCC) は毛包組織のなかで間葉系の細胞であり, 毛包誘導能を有すると考えられている. DSCCを用いた自家培養細胞移植による脱毛治療の臨床研究に関する最新の動向, および臨床応用に向けた, 再生医療関係の法整備や臨床試験に供する細胞を提供する細胞加工施設 (CPC) の要件について概説する.
著者
七戸 秀夫 川堀 真人 寳金 清博
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.115-121, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
14

脳梗塞に対する細胞治療が国内外で臨床試験として開始されつつある. 2012年度に, われわれは 「脳梗塞の再生医療」 に関して厚生労働省から革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業実施機関に選定された. 本事業のもとで, われわれは自家骨髄間質細胞 (bone marrow stromal cells: BMSC) 移植による脳梗塞再生治療の医師主導治験 (第Ⅰ相 : RAINBOW研究) を準備し, 2017年6月に最初の被験者が登録された. 本治験は, ①ウシ胎仔血清 (FBS) などの代替として, 他家ヒト血小板溶解物 (platelet lysate: PL) を添加し, 自家BMSCを培養する, ②脳梗塞周辺部へ脳定位的手術により細胞を直接移植する, ③MRIによる移植細胞の挙動把握を目的とし, 超常磁性酸化鉄 (SPIO) 製剤によりBMSCをラベルする, ④FDG-PETやIomazenil-SPECTを用いて, 細胞移植がホスト脳に及ぼす影響を評価するなど, 過去の臨床試験と異なる新規性のあるプロトコルを採用し, われわれは第2世代の臨床試験と自負している. 本稿ではBMSC移植治療の作用機序と治療戦略, 非臨床試験, 治験プロトコルの観点から, われわれの経験を報告する.
著者
森田 務 井手 眞喜雄 赤羽 優燿 能城 裕希 益山 光一
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.165-174, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
8

医療用医薬品から一般用医薬品への移行について日本の新たな仕組み (スイッチOTC成分の新評価システム) が2015年5月に了承され, 本システムで一般用に転用が適当なものとして公表された成分を製造販売承認申請する際には, 原則として, 添付文書理解度調査の結果を提出することとなった. 本調査の目的は, 2016年1月21日に発出された 「要指導医薬品の添付文書理解度調査ガイダンス案」 を実施するための課題を明確にすることである. 本調査は, ガイダンス案にもとづいてパイロットスタディの位置づけで実施された. 有効成分が実在しない医薬品について添付文書記載要領にもとづき, 模擬添付文書を作成し, 理解度調査をインタビュー方式で実施した. 調査の結果, 合格基準を満たさなかったものの, 本試験において見いだされた注意点をふまえ, 運用上の工夫をすることで, ガイダンス案を遵守した調査実施は可能であると推察された.
著者
小林 江梨子 池下 暁人 孫 尚孝 櫻田 大也 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.141-150, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
9

後発医薬品への 「変更不可処方せん」 について調査を行った. 2018年7〜8月の任意の1週間における, 一般社団法人日本保険薬局協会の会員薬局2,667薬局で受けつけた全処方せん945,668枚のうち, 変更不可処方せんは103,378枚 (10.93%) であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合は, 5%以下の薬局が46.38%と最も多く, つづいて0%の薬局が17.51%であった. 各薬局における変更不可処方せんの割合の平均値は10.22%であるが, 中央値は2.74%であり, 半数以上の薬局で, 変更不可処方せんの割合が2〜3%程度である一方で, 変更不可処方せんの割合の大きい薬局も存在する等, 薬局間でばらつきが大きいことが示された. 九州・沖縄地方では, 中央値が0.70%で最も小さく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局が, 75%以上を占めていた. 北海道地方では, 平均値が12.9%で最も大きく, 変更不可処方せんの割合が5%以下の薬局の割合は, 最も少なく, 61.5%に過ぎなかった. 平均値は地域によって異なっており, 北海道地方, 中部地方, 近畿地方, 四国地方で10%以上となっていた. 後発医薬品へ変更可能な処方せんにおいて, 後発医薬品へ変更しない主な理由は, 94.94%の薬局が指摘した “患者の意向” であった. そのほかの具体的な理由 (記述式) のうち, 最も多かったのは, 処方元からの口頭などによる指示であった. 過半数の薬局において変更不可処方せんの割合が小さい一方で, 変更不可処方せんの割合が大きい薬局も存在することから, このような薬局に焦点を当てた政策も必要である. 今後は, さまざまな特性の薬局を含めた調査が必要である.
著者
高山 茜 成川 衛
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.119-126, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本研究では, わが国の薬価算定における補正加算などの適用状況を提示し, 有用性加算および営業利益率の加算的補正の取得に影響を与え得る要因を検討した. 2004年10月から2014年12月の期間に, 464の新薬が薬価収載され, うち285医薬品 (61.4%) が類似薬効比較方式で, 135医薬品 (29.1%) が原価計算方式で薬価算定された. 類似薬効比較方式で算定された285品目のうち, 89品目 (31.2%) が有用性加算を取得した. 原価計算方式で算定された135品目のうち, 33品目 (24.4%) が営業利益率の加算的補正を受けた. 類似薬効比較方式 (Ⅰ) で算定された品目において, 新規の作用機序を有する品目では, その他の品目と比べ, 有用性加算を取得した品目割合は大きく (p<0.0001), さらに, 実薬を対照として優越性が検証された品目では, 非劣性が示された品目 (p=0.0013), プラセボを対照として有効性が検証された品目 (p=0.0046) と比べ, 有用性加算を取得した品目の割合は大きかった. 同様に, 原価計算方式で算定された品目において, 実薬を対照とし有効性が検証された品目では, 単群試験のみが実施された品目と比べ, 営業利益率の加算的補正を受ける品目の割合は大きかった (p=0.0021). 一方, 適用された加算率および加算的補正率の大きさについては一定の傾向はみられなかった.
著者
藤原 康弘
出版者
Society for Regulatory Science of Medical Products
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.141-149, 2015 (Released:2015-06-11)
参考文献数
40

本稿では,アンメットニーズの高い医薬品への早期アクセスを実現するために,世界中で様々な社会制度,薬事制度が導入されていることを紹介した.余命の限られた重篤な疾患を持つ患者や難病の稀少疾患に長年にわたって苦しむ患者にとって,有効性や安全性に関するエビデンスは少なくとも未承認薬に期待してしまう思いは世界共通の問題である.その気持ちを踏まえつつ,また2025年には団塊の世代が後期高齢者となり国民皆保険制度が危機に瀕することが必至な我が国に適した早期アクセスプログラムを産官学そして患者が一体となって考案していかなければならない.
著者
Yoshiaki MARUYAMA Satoshi TSUNODA Yuka SAIGO Yuka NOZAKA Shinichi OKUDAIRA Takashi KAMEDA Yoshiki HAYASHI Kazuki IZUMI Kazushige MAKI Kaori SHINAGAWA
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.33-40, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
8

induced pluripotent stem cell (iPS細胞) は, 2007年に山中らにより初めて樹立されて以来, 技術の普及と共に様々な研究が進み, 医薬品開発においては, ヒト由来iPS細胞を用いた医薬品の安全性評価や, 患者由来iPS細胞を用いた病態解析や治療薬の探索・開発への応用が期待され, またiPS細胞を利用した再生医療等製品については, 治験がはじめられたものもあるなど, 実用化に向けた取組みが進められている. 一方で, iPS細胞の利用にあたっては, iPS細胞の特徴を背景として, 特別に留意すべきポイントが存在するため, 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構として, iPS細胞の利用の公表情報や医薬品開発へのiPS細胞の利用およびiPS細胞を利用した再生医療等製品の相談における経験も踏まえ, 現時点におけるiPS細胞の創薬および再生医療への利用についての留意点等を取り纏めた. 本稿ではその内容を紹介し, 更なる医薬品開発促進の一助としたい.
著者
築茂 由則 鈴木 孝昌 内藤 幹彦
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.71-80, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
32

近年のゲノムデータの蓄積により, 遺伝情報を利用した個別化医療は現実のものとなりつつある. 特にがん化学療法の分野では, 肺がんにおけるEGFRに代表されるように, 遺伝子変異の有無を判別して治療薬を選択する時代に入っている. 我が国では2013年に, 分子標的治療薬の効果を判定するための体外診断薬 “コンパニオン診断薬” が新たに定義され, すでに複数の品目が承認されている. 本稿では, 主にがん分子標的治療薬との関連からコンパニオン診断薬の現状と課題について概説する.
著者
井本 昌克
出版者
Society for Regulatory Science of Medical Products
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.121-134, 2015 (Released:2015-06-11)
参考文献数
4

未承認薬の問題への取り組みは,平成17年頃より「未承認薬使用問題検討会議」,「小児薬物療法検討会議」,「治験のあり方検討会」,「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」を通じて,多面的に検討がなされてきた.企業へのインセンティブの不足を解消するために,平成21年度の補正予算事業「未承認薬等開発支援事業」,その後の「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の試行導入により,未承認薬等の解消が図られた今,更なる取り組みとして,「未承認薬迅速実用化スキーム」,「人道的観点からの拡大治験」といった枠組みの整備が始まっている.
著者
佐藤 弘之
出版者
Society for Regulatory Science of Medical Products
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.135-140, 2015 (Released:2015-06-11)
参考文献数
9

未承認薬・適応外薬問題への対応は,医療上必要な未承認薬・適応外薬検討会議での検討や製薬企業が自主的に取り組むことにより多くの成果を上げてきた.しかしまだそれらの課題がすべて解決したわけではない.未承認薬・適応外薬に密接に関連するドラッグラグの問題の根本的な解決策は日本での新薬開発・審査のスピードアップである.日本の製薬企業を取り巻く環境はかなり変化してきており,新薬を創生するためにはオープンイノベーションを取り入れるなど,新たな試みが必要となる.厚生労働省は,患者さんの医薬品へのアクセスをさらに改善するために,「人道的見地からの治験への参加」や「患者申出療養」の制度を導入しようとしている.これらの制度を設計する際に留意すべき点や今後の適応外薬についての対応について述べる.
著者
盛岡 一輝 髙山 茜 成川 衛
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.151-162, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
25

本研究では, 我が国で現在もなお臨床現場で活用されている古くからある医薬品に着目し, 臨床上の有用性および利便性の観点からその特性を分析した. 1999年以前に我が国で承認され, 2013年国内売上高100億円以上の医療用医薬品を 「ロングセラー医薬品」 と定義し, 併せて, 各ロングセラー医薬品の競合品を2013年時点で製造販売されていた医薬品から選出した. 2013年国内売上高100億円以上であった154医薬品のうち, 58医薬品 (38%) がロングセラー医薬品であった. ロングセラー医薬品では, その競合品に比べて, 適応症に係る治療ガイドラインで第一選択として推奨される作用機序をもつ医薬品の占める割合が大きかった. また, 作用機序が同一の医薬品群における検討では, ロングセラー医薬品の添付文書には, その競合品の添付文書に比べて豊富な臨床成績が記載されており, さらに, 競合品に比べて適応症に係る治療ガイドラインで引用された市販後臨床成績をもつ医薬品の占める割合が大きかった. また, ロングセラー医薬品の1日投与回数は, その競合品の1日投与回数に比べて少なかった. 豊富な臨床上の有用性に係るエビデンスを有し, 新薬に比べて相対的に安価なロングセラー医薬品の活用は, 質の高い効率的な医療の提供および医療費の適正化の面から重要と考える.
著者
稲垣 治
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.207-214, 2016 (Released:2016-05-31)

クリニカルイノベーションネットワーク (CIN) は, 2015年に厚生労働省により提案された国立高度専門医療研究センター (NC) と企業との協働スキームである. CINでは各NCは患者レジストリを構築し, 疾患関連情報を収集する. CINの目的は, 疾患レジストリ情報の活用による医薬品開発の促進にある. 製薬企業は各NCとコンソーシアムを作り, 疾患レジストリより得られる情報を自社医薬品の開発に活用することができる. 製薬企業は疾患レジストリが被験者リクルートが促進されること, およびレジストリから得られる情報が試験プロトコールの作成に役立つことを期待し, CINの活動に高い関心を寄せている.
著者
内田 毅彦 小林 宏彰 石倉 大樹 虞都 韻 村上 哲朗 中野 壮陛
出版者
Society for Regulatory Science of Medical Products
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.211-217, 2015

世界の医療機器マーケットは拡大し続けているが,日本の医療機器産業はあまり活発ではなく,毎年7000億円もの貿易赤字を作り出している.しかしながら,技術力があり,モノづくりが匠で,医療水準が高い日本は本来であれば世界の医療機器産業を牽引していても不思議ではない.日本の医療機器産業が世界をリードするようになるために,幾つかのポイントが考えられる.米国のオバマケア,費用対効果,リバースイノベーション,国際共同治験,デジタルヘルスといったキーワードを踏まえた上で,日本のベンチャー企業が医療イノベーションを作り出そうとする際に,これからはよりグローバルな視点で事業化を行っていく必要があると考える.