著者
齊藤 壽彦
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.51-75, 2007-01

赤川元章教授退任記念号債券の発行による資金調達・債券への投資という資金運用は,支払約束を信頼した取引である。したがってそれは信用という取引の一形態であるということができる。とはいえ,債券発行・債券投資の信用的性格は,銀行信用,すなわち銀行の預金業務・貸出業務とは形態的差異がある。債券発行・債券投資は売買取引を通じて行われ,価格変動リスクを伴う。このような点においてそれは信用と異なる性格を有するのであり,償還期日前の債券の売買取引が貸付・返済取引に見せかけられるという点において,それは株式投資と同じく擬制信用的性格を有するのである。本論文はこれらのことについて詳しく論述している。
著者
辻村 和佑
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.103-113, 1998-10-25

第2次世界大戦後の我が国の長期金融制度を担ったのは,長期信用銀行と信託銀行の民間2業態と,これを補完する公的金融の計3業態であった。これらの各業態には短期金融機関との棲み分けを明確にするために,それぞれ金融債,貸付信託,定額貯金という独特の資金調達手段が割り振られた。これらの調達手段はいずれもキャピタルロスの危険を除去することにより,国民の大多数を占める零細投資家からの資金調達に成功した。さらに民間2業態の資金調達手段は付利方式を異にすることにより,資金運用者の多様なニーズに応える一方,景気変動のフェーズの如何に関わりなく安定的な投資資金の確保を可能にした。また公的金融の資金調達手段である定額貯金は,長期の確定利付商品であるがゆえに金利低下期に資金調達が増大し,景気下降の初期に大量の財政投融資資金を散布することによる景気の安全弁としての役割を果たした。
著者
内山 秀夫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.22-36, 1986-06-25

1 0 0 0 OA 資金運用表

著者
高橋 吉之助
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.20-48, 1960-04-25

It is generally considered that two balance sheets, one at the beginning and one at the end of the period, and an income statements, together with its related retained earnings reconciliation statement, are raw materials for preparing the funds flow statement. The author has developed a new practice of preparing the statement directly from the accounts record, without balance sheets and other financial statements, for the purpose of presenting a method of reporting the flow of funds over any shorter period than a fiscal year A trial balance is prepared over a period on which the fund flow statement is intended to be made that consists of only entries of increase and decrease in every account based upon transactions taken place over the period. This trial balance may be called a " Funds Flow Trial Balance," which is defferent from the trial balance prepared under the usual accounting practice in that the former does not involve the figure of the beginning balance in each account The funds flow trial balance is the basic data with which the funds flow statement is provided, because this trial balance involves the same figures as the comparative balance sheet figures with which the funds flow statement is prepared under the traditional method. The funds flow trial balance can be prepared at any time, even in the middle of the fiscal year wherever the accounts record is available, without making financial statements, while it is only after the financial statements have been made that the comparative balance sheet figures can be provided. This method can be applied to the preparation of the fiscal fund flow statement, and it opens the way of determining the net income for the year from the fiscal funds flow statement. The author illustrates this process on a work sheet through which the reader may understand in more real feature the relationship between the flow of funds and of the income in a certain business entity. If the flow of funds could be presented with the revenue and expense on the financial statements, the latter would more clearly disclose the process of coming out the net income than they do at present and the more real extent of distributable amount of income would be measured. The author illustrates a form of combining the funds statement with the income statement and the retained earnings reconciliation statement, and combining the "Changes of Working1 Capital" with the balance sheet.
著者
星野 高徳
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.179-201, 2009-02

吉田正樹教授退任記念号論文本稿では,大正・昭和初期の東京において,資源回収業が民間事業として存続した要因について考察する。元来,再生資源の回収と塵芥の処理はほぼ同様の事業主体,業務内容で行われていたが,明治33年に汚物掃除法が施行されると,塵芥処理が市の責任で行われるようになったのに対して,資源回収業は依然として民間業者によって担われた。これまで資源回収業に関しては,主にスラム研究,貧民調査との関係から考察されることが多く,資源回収業の収益環境については1970年代の物価変動期や1990年代の行政回収に関するものに集約される。本稿では,これまで戦後の一時点を対象として行われてきた資源回収業者の収益環境に関する分析を戦前期にまで拡大することによって,業界全体の変容を明らかにするとともに,静脈産業の成立・存続要因に関して再生資源価格の上昇・低下以外の要因にも言及する。まず,資源回収業と塵芥処理業の関係の変化について,明治33年に施行された汚物掃除法の影響を中心に見ていき,資源回収業と塵芥処理業の役割が分離していく過程を明らかにする。続いて,明治後期から大正期にかけての衛生関係の法規制の影響と第1 次大戦前後の好不況期における資源回収業者の収益環境の変化に言及する。最後に,第1 次大戦後に再生資源価格が暴落した後も資源回収業者は屑鉄,アルミニウム,硝子,セルロイドなどの回収を重視しながら,民間事業として存続していたことを明らかにする。本稿では,資源回収業の収益環境や法令について,東京市の公文書や『都新聞』,『読売新聞』,『鉄と鋼』などの新聞・雑誌記事を主要資料として論じる。
著者
今口 忠政 上野 哲郎 申 美花
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.37-59, 2010-06

論文企業の事業再構築戦略とは,肥大化した事業分野を選択して競争力のある事業に経営資源を集中させる戦略であるが,そのためには人材,IT を高度に活用して知識集約化を推し進め,組織能力を高めたシステムへと転換することが求められる。また,環境変化に合わせて組織能力をダイナミックに組み替える能力も必要である。 本研究では,事業構造,組織構造を組み替える戦略行動を「組織能力の再構築プロセス」と捉え,組織能力の形成,変換のプロセスを日本企業,中国企業,韓国企業のケース研究によって解明しようとするものである。そのために,組織能力の概念を理論的に検討し,それらの組織能力がどのように構築されたかについて日本企業のコマツ,中国企業の中国博奇,韓国企業のサムスンを事例として研究した。コマツの本社や主力工場,中国博奇の日本法人,サムスンの日本法人を訪問してインタビュー調査を行った。その結果,持続的な競争優位を確立するためには,環境の変化を迅速に認識する能力,組織学習によって変換する能力,再構築したものを制度化し,構造化する能力の3段階のプロセスを経ることが必要であるといえる。
著者
小野 晃典
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.11-33, 2010-10

論文本論は, ホビー製品の2つの特性を定義した上で, 消費者関与研究の知見を活かしてホビー消費者の個人特性を論じると共に, 新製品普及研究の知見を活かしてホビー消費者の社会的相互作用を論じる。集中的消費やこだわり, あるいは, 創作活動といった特性は, ホビー消費者に特有とは言えない高関与消費者の特性である一方, ホビー消費者間の関係, および, ホビー消費者と一般市民の間に特有の関係のモデル化が重要であるということが見いだされる。
著者
保坂 哲哉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.37-49, 1996-08-25

本論はアメリカ,イギリスにおける正義論の最近の発展と論点,福祉国家とその政策への含意を論ずる。取り上げだのはJ.ロールズ,B.アッカーマン,R. ノージック,D. D.ラファエル,A.ブラウン,A.マッキンタイアの正義論である。とくに注目に値すると筆者が考えたのは,アリストテレスが『ニコマコス倫理学』で展開した徳論,善理論および正義論を基礎とするブラウンとマッキンタイアの正義論である。道徳的自然主義に立ち,人間の本性とその社会性の特質から出発して正義論を導出する内在主義的アプローチは,ブラウンによって実践的合理性によって整序された基礎財リストの提案を導く。しかしこれらの正義論討議から引き出せる実践的指針は,概して一般的性質のものであり,福祉国家正統化の根拠についての一般的合意形成には直接役立たない。その点にかんしてのマッキンタイアの言明,アリストテレス的道徳性の伝統は近代の組織的政治を拒絶すべきである,はきわめて厳しい批判と言わなければならない。
著者
鈴木 諒一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.27-32, 1996-06-25

1995年春の神戸の大地震と,円高不景気以来,海外に工場を移す会社が増えた。従って生産が増えても,国内の失業者の数は増えた。又,生鮮食料品の輸入が増えて物価は下ったが,農家所得は減った。GDPが世界一を誇った日本経済も,今や順位は下降し,世界第4位となり,産業別,地域別の賃金格差は増大して行くであろう。一方に於て,世界経済も不況に悩まされている。アメリカの財政赤字削減政策は,なかなか成功しないし,ドイツは,東西合併の余波が未だ続いて,低成長が続くであろう。これが,わが国の国際収支にまで影響してくるであろう。これにより,わが国GDPの予測は出来るが,その裏付けとなる地価の絶対額と,その昭和62-平成6年の変動率を,都道府県別に観察していこう。最も水準が低いのは,そして上昇率も低いのは,山陰地方であり,反対に上昇率が高いのは,大都市周辺の県である。これは人口疎開の面から云って,重要な参考資料となるであろう。もっとも,産業構造の変化との組合せ,との関係を追求していかなければならないわけであるが,以上,低成長下のわが国経済の問題点を指摘したまでである。
著者
笠井 昭次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.49-70, 1993-12-25

会計(学)と簿記(学)との関係と言えば,一見,過去のテーマのように思われるが,しかし,けっしてそうではない。簿記教育の側面および理論研究の側面のいずれにおいても,今日なお,重要な意義を帯びているのである。まず前者の簿記教育面であるが,今日にもなお,資本等式が生きていると主張されることがある。財産計算の体系である資本等式は,とうてい,損益計算にかかわる今日の複式簿記実践の説明理論たり得ない。それにもかかわらず,そうした主張がなされるというのは,損益計算体系性の説明ということより,むしろ貸借複記に基づく複式簿記の自己完結的な機構そのものの説明が主題になっていると考えざるを得ない。つまり,簿記学という感覚での教育がなされているのである。ここに,会計(学)と簿記(学)との関係が問題になるのである。次に理論研究面であるが,今日,複式簿記が軽視されているにもかかわらず,現実に取り上げられているのは,損益計算書・貸借対照表等の複式簿記により産出される情報だけなのである。そうであれば,複式簿記機構の特質を理解しないかぎり,損益計算書・貸借対照表等の特質も明らかにならないはずである。したがって,この複式簿記の意義を今日の会計学のなかに適切に位置づけることが,どうしても必要になる。本稿は,複式簿記をもって会計の構造とみる立場から,会計(学)と簿記(学)との関係を論じている。
著者
佐藤 和
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.1-21, 1993-10-25

本論文では組織文化を「あるグループのメンバーに共有された基本的価値観と,そこから生じる行動パターンのことである」と定義し,企業におけるその外部適応機能,内部統合機能の検討を通じて,組織文化がその組織の広義の情報処理特性を特徴付けていることを示した。そして情報システムを企業におけるコミュニケーション・メディアの一つであるとし,組織文化に応じて異なった特性や異なった発展度を持つ情報システムが必要とされると考えた。そこで組織文化の直接的,間接的な分類項目によって企業の分類を行ない,これと組織の情報処理特性や情報システムの発展度との関係について実証分析を行なった。3つの組織文化の分類軸が抽出され,これを用いて企業を6つのグループに分類した。また情報システムを含む広義の情報処理特性の発展度を表す5つの評価軸を抽出し,組織文化による企業分類との関係を分析した。こうした結果から,組織文化は組織の広義の情報処理特性と強い関連を持つと同時に情報システムの発展度に影響を与えていることがわかった。有効な情報システムの構築を通じて企業全体の総合的な情報処理特性を向上させてゆく為には,組織の個性としての組織文化に応じた対応策が必要なのである。
著者
李 悳薫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.39-67, 1993-08-25

戦後日本の自動車産業の発展と産業政策の関係は保護者から育成者そして後見者とかわったことがわかる。しかし,論者によっては通産省と業界とはそれほど二人三脚ではなかったし,アウトサイダーとして成長したという論説もあるが,やはり後発国日本としては通産省が産業政策という名で業界の利益のため働いたことは否定できない。小論では産業政策を自動車産業の発展と結び付けてその流れと企業側の対応を占領期・復興期・高度成長期・石油危機以後・80年代以後にわけて考察することにする。
著者
西川 俊作
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-16, 1981-04-28
著者
鈴木 俊夫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.129-144, 2001-02-25

日本政府は,第一次世界大戦の勃発により膨大な貿易黒字を手にすることができた。当時の日本経済には,1913年以前のように貿易赤字を決済するために正貨を確保する必要性が,もはや存在しなかった。だが1923年に至ると,日本政府は関東大震災からの復興資金の調達のために,ロンドンやニューヨークにおいて外債発行活動を再開せざるをえない状況に追い込まれた。戦間期のロンドン金融市場は第一次世界大戦前の「自由な」市場とは著しく様相を異にしていた。本稿は,国際金融に君臨した第一次世界大戦前の時期と比較することにより,戦間期である1924年および1930年に発行された日本政府外債のバックグラウンドとなるロンドン金融市場-外債発行市場の特質を把握しようと意図するものである。
著者
清水 龍瑩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.1-20, 1995-06-25

情報化,グローバル化,不況の長期化が進むなかで,中間管理者の余剰感は増大してきた。しかし情報処理,国際業務処理などの中間管理者の能力は,益々重視されるようになり,またその能力発揮プロセスよりも,結果である業績が重視されるようになった。人事評価基準は,外界の状態と企業の状態との関数であって,万古不易のものはない。急成長企業では,自ら企業家精神を発揮し,新しい提案をし,実行する中間管理者が高く評価され,停滞している企業は,沈滞している部下に意識革命をおこさせるネアカな人間が,高く評価される。中間管理者の評価基準としての部下の育成は,日本の企業にのみ通用する基準であって,外国企業では通用しない。評価の公平性,公正性は,評価者,被評価者および,周囲の者によって納得されるとき,はじめて認められる。しかし,人間による人間の評価には,必ず個人的な偏りがあるから,複数上司の評価,敗者復活の制度が必要である。時系列的にみると,従来の成長期には,上司,その上の上司と,横からの人事評価が一般的なシステムであったが,現在は,人事部の評価が少くなってきた。何らかの理由で,会社の主流からはずれた専門能力のある中間管理者を,グループ大企業間を移動させ,その能力を最大限発揮させたり,あるいは,その専門能力の開発教育と同時に,ボラソティア活動を奨励し,人生観を変え,「人生再設計」を実行できるようにすることが,これからの中間管理者の新しい方向である。
著者
清水 龍瑩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.110-162, 1992-10-25

今回のサーベイでは,個性的な問題把握・対処策・経営管理を遂行している企業が高業績をあげていることが解った。他社にまねられない強み,それをベースにした競争優位の戦略をたて遂行しているからである。若い人は自分の興味のある問題には驚異的なエネルギーを出すからこれを組織化する(ピア),人間の尊厳と企業の価値観との共通部分を大きくするためにpeace of mind事業に特化する(セコム),テナントを入れると,同時にing情報を入手して不安定なファッション性と財務の安定性を統合する(パルコ),コンピュータに回線をつなげるのではなく,回線にコンピュータをぶらさげるのだという,不連続的飛躍が必要である(インテック),social communication gift businessという友情ビジネスを原点にし他社にまねられない著作権の強みを発揮する(サンリオ),若いクラフトマンの養成と年とったクラフトマンの技能のデジタル技術化とによって競争力を強化する(佐々木硝子),日本で急増した鉄屑を原料にして大型電気炉による薄板生産に注力し,NIESにまけない価格で薄板を供給する(東京製鉄),社長が調理場をまわり,管理職のファイルをつくって顔を憶えファミリー感覚を浸透させる(帝国ホテル)。以上の企業は巨大企業ではない。社長の個性が企業文化の中に深く浸透し,企業に強い個性ができ,これが他社にまねられない強みになっている。一方規模の大きい歴史の旧い装置産業は生産技術の改善に力を入れ競争力をつけようとする。従来のノウハウを生かしたセンサーを用いて光ファイバーの自動連続生産に力を入れる(古河電工),同じ生産設備を効率よく稼働させるために新しい触媒の開発に力を入れる(三井東圧)。さらに人事評価に独自性を見出す企業もふえてきた。業績考課と能力考課に分け,前者では上司と部下との意見をフィードバックさせるが後者ではフィードバックさせない(栗田工業),成果,役割行動,能力の3つで絶対評価するが,役割評価はグループ内で一生懸命やって成果が上らない場合の補償措置とする(横浜ゴム)。さらに素材産業はいわゆる盛田論文に反論し,旧来からの経営の常識を強調する。短納期,低価格,高性能が競争力の源泉である(三井ハイテック),よい製品を安く社会提供するのが製造業の使命(住友軽金属)という。
著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.25-41, 2008-10

樫原正勝教授退官記念号論文生物の進化から,制度や科学的知識の進化に至るまで,高次から低次にいたるまで,すべての進化は,何らかの定向性の性格を持ちうるといえる。この場合,一見ラマルク的に見える進化も,広い意味でのダーウィニズムの枠組みの中で,説明可能であり,生物学における進化も社会制度の進化も,基本的には,同じ方法で説明できる(方法の一元性)。また,ダーウィニズムの,遺伝―変異―淘汰,の過程は,状況の論理の応用によって,次の問題解決の図式,問題(P1)→暫定的解決(TT)→誤り排除(EE)→問題(P2)によって説明できる。更に,制度や科学的知識のような,ポパーのいう世界3 (人間精神の産物)における進化は,生物体のような世界1 (物的世界)における進化と比べて,合理的な推測と批判が大きな要素となり,そのため,あたかも定向進化や獲得形質の遺伝と言えるような状況も,進化過程の中に見出しやすくなる。