著者
佐藤 博明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.46, pp.115-125, 1996-09-20
被引用文献数
4

雲仙普賢岳の1991年噴出物の岩石組織の3つの側面(斜長石斑晶の累帯構造, 気泡組織, 石基結晶度)について記述し, ドームを形成するデイサイトマグマの噴火の引き金, 脱ガス過程, 結晶作用についての制約条件について議論した。1つ目の側面は斜長石斑晶の累帯構造であり, それは逆累帯構造を呈するリムでMgO, FeO^*量が増加しており, 噴火直前に珪長質の斑状マグマとより苦鉄質な無斑晶質マグマの混合が生じたことを示している。雲仙普賢岳は南北張力場の地溝帯中にあり, 火山下のマグマポケットは東西方向に伸びた割れ目状の形態をとっていると考えられる。これまでに知られている室内実験によると, マグマで充たされた2つの割れ目が接近すると互いに近づいて合体する傾向があり, いったん合体すると割れ目の上昇速度は急増する。雲仙普賢岳1991年噴火の場合もマグマで充たされた割れ目の合体が, マグマポケットの上昇のきっかけとなり5月20日の溶岩ドーム出現に至ったと考えると, 1989年の地震発生-マグマ混合現象-ドーム噴出のタイミングやマグマ混合現象がうまく説明される。雲仙普賢岳ではドーム噴火が爆発的なプリニー式噴火に伴っておらず, 上部地殻でマグマの上昇速度が小さく, マグマが地表に至る前に揮発性成分の脱ガスが効果的に生じていると考えられる。雲仙普賢岳の1991年噴出物の気泡組織は多様な変形構造を呈しており, 粘性の高い溶岩の流動により気泡の変形が生じている。溶岩の含水量は気泡の変形度と関係があり, 火道中での粘性の高い溶岩の脱ガスが, 溶岩の流動により気泡の連結が促進され見掛けのガス透過率が高まったために生じた可能性が考えられる。1991年噴出物の含水量は全岩で0.2-0.5wt%であり, 1気圧での飽和含水量(0.1wt%)よりも大きい。一方, 火砕流発生を伴わなかった1792年, 1663年溶岩の含水量は0.1wt%以下である。溶岩の石基の結晶度についてみると, 1991年溶岩は20-30Vol%であり, 1792年溶岩1663年溶岩では結晶度が約50%と明瞭な違いが認められた。1991年溶岩は1792年溶岩よりも粘性が高く, 脱ガスが不十分であったために石基ガラス中の高い含水量を生じ, 結晶作用が不十分にしか進行しなかった。粘性の高い溶岩の不完全な脱ガスが溶岩の自爆性, ひいては火砕流発生の条件となっていることが考えられる。
著者
大藤 茂 佐々木 みぎわ
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.50, pp.159-176, 1998-07-31
被引用文献数
12

岩質, 古生物地理および剪断帯の分布と運動像から, 東アジアの各地帯とオーストラリアとの中〜古生代の運動史を次の様に考えた。(1)カンブリア-オルドビス紀の各地帯は熱帯〜亜熱帯区に位置し, オルドビス紀には, 筆石の太平洋区と大西洋区とが識別される。(2)各地帯の上部オルドビス〜デボン系は, サンゴ礁の形成可能な熱帯地域にほぼ東西に配列する, 火山弧近辺の堆積物からなる。(3)上記火山弧列は, 後期デボン紀〜ペルム紀に時計回り回転し, オーストラリアは南極域へ, アンガラ剛塊は北半球の温帯域へ移動した。北中国地塊, 南中国地塊および日本は, 熱帯のカタイシア植物区にとどまった。(4)三畳紀には南北中国地塊の東部が衝突し, 朝鮮半島の臨津江ナップが形成された。(5)南中国地塊は北中国地塊と癒合した後, モンゴル-オホーツク海を消滅させつつ北上し, 前期白亜紀までにはアンガラ剛塊と衝突した。上記の運動の中での, 日本の位置づけも議論した。
著者
徳岡 隆夫 大西 郁夫 高安 克已 三梨 昂
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.15-34, 1990-11-30
被引用文献数
22

中海・宍道湖の自然史を, 8葉の古地理図として示した。完新統堆積前には西の大社湾に注ぐ古宍道川と東の美保湾に注ぐ二つの水系が存在した。縄文海進はこれらの二つの水系にそってすすみ, 古宍道湾と古中海湾が形成された。縄文海進高潮期には古宍道湾の中央部が埋め立てられ, 東の水域は古宍道湖となり, やがて西の中海湾へと排水するようになり, 現在の中海・宍道湖の原型ができあがった。宍道湖宅はA.D. 1600年頃を境としてそれまでの汽水環境から淡水環境へと変わった。中海では環境変化が複雑だが, 米子湾でみるとA.D. 1600年頃までは出雲国風土記にも示されている夜見島の南に美保湾に通じる水道が断続的に存在したが, その後は閉鎖的環境が急速に進んだ。これらの環境変化は中国山地の人為的な荒廃による土砂の大量流出によって起こったが, 中世の温暖期をへて, A.D. 1600年頃を中心とする寒冷期にいたる地球規模の環境変化が背景となっているものと考えられる。^<210>Pb, ^<137>Cs年代測定および過去25年間の地形変化からそれぞれ求められた宍道湖での埋積量は約0.1/gr/cm^2程度であり, 中海ではその1/3と見積もられる。
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-195,巻頭2p, 1999-12
著者
原山 智
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.43, pp.87-97, 1994-04-28
被引用文献数
12 16

最も若い露出プルトンの冷却史解明のため, 滝谷花崗閃緑岩 (北アルプス) の熱年代学的な研究を行った。垂直方向に累帯する岩相から4試料について鉱物年代を測定した結果, 黒雲母・カリ長石の鉱物年代 (K-Ar法, Rb-Sr法) は岩相によらず1.2-1.1 Maに集中することが判明した。ホルンブレンドのK-Ar年代は1.93-1.20 Ma であり, 深部相ほど若い傾向がある。これは深部ほど固結開始時期が遅れたためであろう。測定鉱物の閉鎖温度から冷却曲線を求めた結果, 平均冷却率は岩体浅所で350℃/Ma, 深部では550℃/Ma以上を示した。三次元単純熱伝導モデル計算による冷却曲線は指数減衰を示し, 岩体浅所での直線状の熱年代学的冷却曲線と大きく異なるため, 冷却前半 (2.2-1.2 Ma) では深部からの熱流入が, 後半では隆起活動による急速冷却が推定された。深部ほど冷却率が大きいのは, 冷却開始が深部では遅いため熱流入の効果は短期間で弱く, 単純熱伝導冷却に近づいたためと解釈できる。
著者
木村 学 楠 香織
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.295-305, 1997-04-24
参考文献数
39
被引用文献数
7

北海道は千島弧と東北日本弧の会合部にあり, 白亜紀以降の日高造山運動によって形成されてきた。白亜紀はじめから始新世にかけてアジア人陸の北東縁に平行な古海溝に沿って, 沈み込みに伴う付加が起こった。オホーツクプレートの南縁に位置した古千島弧が暁新世にアジア人陸縁と衝突し, サハリンや北海道北部における沈み込みが終了した。その後, サハリンと北海道地域は右横ずれ断層帯(日高剪断帯)へと変化した。北海道の東半分はその右横ずれ断層帯に沿って南へ動き, 断層帯に沿っては中期中新世のプルアパートベーズンが形成された。その右ずれ断層は日本海盆と十島海盆の拡大と, そして日高変成帯の変成・火成作用と同時に起こった。これらの事件はお互い密接に関連していたようである。日本海盆と十島海盆におけるアセノスフェアの上昇は, 右ずれ収束している日高剪断帯の下におよび, それによって同時に火成・変成作用が右ずれ変形とともに起こった。こうした出来事を通して, 北海道では厚い大陸地殻が成長した。中新世後期から太平洋プレートが千島海溝に沿って斜めに沈み込み, 千島前弧スリバーを南西へ移動させた。北海道の島弧会合部で前弧スリバーが衝突し, その結果日高変成岩が上昇・露出したが, これは上述した造構過程を通して形成された下部地殻である。北海道におけるこの大陸形成過程が新しく定義される「日高造山運動」である。日本列島同様, 島弧会合部における衝突は環太平洋造山帯のほとんどの島弧会合部で進行しており, それは沈み込み帯において新しい大陸地殻を急速に造るための重要なプロセスである。
著者
鎌田,浩毅
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.40, 1992-12-15

大分-熊本構造線は, 四国以東の中央構造線の九州への西方延長と考えられ, 鮮-更新統火山岩と中・古生界との分布境界に位置し, 約5-0 Maの間に活動し半地溝状構造を形成した火山構造性陥没地(豊肥火山地域)の南縁の最陥没部にあたる。大分-熊本構造線はまた, 東北東-西南西方向に延びる北落ちの重力急傾斜部にあたり, これに沿って3つの右横ずれ断層(今畑-白家断層, 布田川断層, 日奈久断層)が認められる。重力急傾斜部は2カ所で屈曲し, いずれも長方形の重力負異常域を形成し, 先第三紀基盤岩が右横ずれセンスのプル・アパート運動を受けたことを示唆する。大分-熊本構造線沿いの右横ずれ運動は, 豊肥火山地域がグラーベンを南北に開きながら北東方向へ移動し, 東西方向の雁行状伸張割れ目を発達させる動きと調和的であり, これらの運動はいずれも, 約6 Ma以降の南海トラフにおけるフィリピン海プレートの右斜め沈み込みに起源が求められる。中央構造線沿いの右横ずれ運動の始まりは, 従来の推定より古い, 約5 Ma以前と推定される。
著者
兼平,慶一郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.13, 1976-12-30

In the Mineoka district serpentinite is intruded into the Paleogene Mineoka Group and probable Miocene sediments in three narrow zones extending in the E-W direction. Pillowed basalt is exposed in association with the serpentinite. In the Mineoka hills pillowed basalt occupies the ridges of the hills and is underlain by serpentinite. A part of the pillowed basalt appears to grade downwards to dolerite dike complex. A small amount of picrite basalt showing a remarkable pillow structure is also exposed in the area. It is likely that the serpentinite was intruded into the Paleogene and Neogene sediments along some weak zones and exposed on the sea-floor in a time of Neogene age. Then basaltic magma ascended along the weak zones and extruded on the sea-floor to form pillowed basalt.
著者
平賀 章三 市川 米太
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
vol.29, pp.207-216, 1988-02

The pumice-tuff for the blind test is dated by the quartz inclusion method. The samples were collected in Omachi clty, Nagano Prefecture,and their ages are assumed to be O.3 to O.4 Ma geologically.The assessed TL age is O.29±0.03 Ma(11%error). If the dry condition had been continued over the geological time,the expected age is O.26±0.02 Ma (7%),otherwise for wet condition O.32±0.02 Ma(7%)is expected. In this TL dating,taking account of the propagation of error,the associated error is assessed,based on the experimental error due to the reproducibility of the TL intenslty. The method of error assessment is described in detail on each stage of TL dating. Thus it was revealed that the quartz inclusion method is useful with the sufficient precision for the age of the order of l05 year,though depending on the TL characteristic of the sample.
著者
小松 直幹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.34, pp.149-154, 1990-03-30
被引用文献数
4

新潟油田における新第三系の褶曲は, (1)基盤までを含んだ褶曲と, (2)浅層(椎谷層以上の地層)が著しい褶曲を示すのに比べて, 七谷層以下が緩い構造を示すような褶曲とがある。新津・角田の背斜は, 西山期から基盤が東側に断層を伴いながら傾動する事によって作られた基盤を含む構造である。上昇地塊の下盤側に圧縮の応力場ができて, これによって椎谷層中のCompetent層が挫屈して桑山の背斜ができた。宮川〜東山の断面では, 七谷層はゆるい褶曲を示す. 椎谷層より上位の地層は寺泊層中の泥質岩を滑り面として激しい圧縮性の褶曲を示す。西山層の泥質岩の一部は流動によって背斜を形成している。
著者
岩崎 正夫
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.4, pp.41-50, 1969-01-31
被引用文献数
1

A brief descriptions are given of the metamorphic rocks belonging to the "Mikabu Green Rocks" which are effusive-intrusive complex of ultrabasic and basic composition, and were recrystallized during the Sambagawa metamorphism. The Mikabu Green Rocks occur at the boundary between the Sambagawa Metamorphic Belt and the Chichibu Belt consisting of unmetamorphosed sediments. Most of the original rocks of the Mikabu Green Rocks are considered to be the materials which have been produced by the submarine volcanisms in geosyncline. The survived original structure and the relic minerals as well as textures were used to speculate on the iroriginal rocks. They are divided in to the effusives and intrusives, conveniently. The intrusive varieties are represented by metagabbros, diabases, ultra-basic and ultramafic rocks. The metagabbros are relatively coarse-grained and always contain pumpellyite, whereas diabases are usually considerably finer-grained rocks and always contain epidote. The effusives are represented by lavas and pyroclastics of basaltic composition. In the regions of Sanagochi and Osugi, metamorphosed pillow breccias which indicate the submarine lava eruptions, crop out over wide area in a eastwesterly trending block, overlain on the south by unmetamorphosed Paleozoic sediments of the Chichibu Series (Fig. 1). The following criteria assist recognition of the Mikabu Green Rocks. (1) They occur at the boundary between Sambagawa Metamorphic Belt and the unmetamorphosed Paleozoic Sediments. An anticlinal structure lies at this boundary and is thought to be a geanticline (oceanic ridge ?) in geosyncline belt, and the topography of the rises is thought to be of volcanic origin. (2) They were recrystallized weakly and have frequently distinct relic structure and relic minerals. (3) The rocks of basaltic composition are predominant. The composition of original rocks would have been characterized by a high MgO and FeO contents and a low K_2O content.
著者
前田 仁一郎 斎藤 清克
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.75-85, 1997-04-24
参考文献数
55
被引用文献数
4

日高火成活動帯では古第三紀の苦鉄質深成岩体が白亜紀後期から古第三紀初期の付加体の中に貫入している。日高山脈には苦鉄質深成岩類・高温型の変成岩類・アナテクサイトからなる日高火成活動帯の地殻断面が露出している。この地殻断面から2つの性質の異なったマントル由来未分化マグマ, Nタイプ中央海嶺玄武岩(N-MORB)質と高Mg安山岩(HMA)質, が見いだされた。N-MORBとHMAの組み合わせは海嶺と海溝の衝突モデルによって説明することができる。すなわちNMORBはクラー太平洋拡大軸にそって上昇するアセノスフェア(レルゾライト質, ε_<Sr>-27. 79, ε_<Nd>-+10. 71)に由来し, HMAは海嶺沈み込みによってもたらされた熱異常によって上盤プレートのくさび状マントル(ハルツバーガイト質, ε_<Sr>=+2.17, ε_<Nd>=+2.84)から発生した。マントル由来未分化マグマの付加体底部への透入によってグラニュライト相に達する高温型変成作用とアナテクシスが発生し, 珪長質の変成岩類とカルタアルカリ質のマグマが形成された。マントル由来未分化マグマの地殻内での分化作用は付加体構成物の同化作用を伴った。マントル由来マグマとアナテクシスによる地殻由来メルトとの混合もまたカルクアルカナ質の火成岩類をもたらした。すなわち, 以上のようなプロセスの複合によって未成熟大陸地殻が前弧域で形成される。付加体と衝突する海洋底拡大軸の火成作用と変成作用は, 玄武岩組成の海洋地殻が形成される通常の中央海嶺でのそれらとは著しく異なる。これら2つのセッティングの比較から, 大陸地殻の形成にとって厚い堆積岩類が本質的に重要な役割を果たしていることが示される。海嶺の沈み込みは始生代の大陸地殻の成長にとって重要な事件であったであろう。日高火成活動帯で観察されたマントル由来マグマの迸入によって誘発される地殻内マグマプロセスは火成弧深部のそれのアナログである。
著者
今井 登 下川 浩一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.29, pp.59-72, 1988

In electron spin resonance (ESR) dating the total amount of radiation-induced centers which have been accumulated in the past by natural U, Th, K are measured, and ESR age is obtained by deviding the total dose by annual dose. A variety of materials, stalactite, fossil shell, bone, volcanic ash and fault have been dated. In this paper, the basic principle of ESR dating, apparatus, sample treatment, the determination of total dose and annual dose and errors of ESR age are described.
著者
堀 利栄 藤木 徹 樋口 靖
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.43-59, 2000-01-21
参考文献数
74
被引用文献数
3

付加体中に頻繁に含有される層状チャートの化学組成や同位体比は, チャートが堆積した場の環境や続成過程, また過去の大陸表面の化学組成や付加後のテクトニックなイベントを反映している.本論では層状チャートの化学組成や同位体比の解析例を示し, その問題点や将来性について議論した.REEやいくつかの主成分元素組成は, 層状チャートの珪質部と泥質部が濃度の差こそあれ同起源物質を含有していることを示しており, 珪質部は泥質部がSiO_2で希釈された部分とみなされる.さらに珪質部は, Sr同位体比による解析の結果, より初生的な情報を保持し易いことが示唆された.特に堆積場の酸化・還元状態は, 珪質部における一部の元素組成やS同位体比を用いることで解析可能であり, その一例としてFe^<2+>, Fe^<3+>の量比, AlやTi濃度で規格したMn, U, V比やS含有量をあげた.このような付加体堆積岩の環境解析において欠けてならない点は, 地球科学的な制約条件との整合性であり, 地球化学だけでなく他分野との総合的な議論が必要である.
著者
吉村 尚久 藤田 至則 山岸 いくま
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.9, pp.195-201, 1973
被引用文献数
2

Alteration of the Green tuff formation took place in regional scale and is characterized by green colored pyroclastic rocks. Relation between tectonic movement and alteration in the developing process of basin is summarized as the following table. [Table]
著者
堀川 晴央
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.9-19, 1999-03-24
参考文献数
32
被引用文献数
1

地震学的に見た兵庫県南部地震の本震, および, 前震や余震の特徴を概観した。本震は東西方向に圧縮軸を持ち, これは西南日本内帯で発生する内陸型地震の典型である。起震断層は神戸側と淡路島側との2つに大きく分けられると考えられている。そして, 神戸側の断層は, 更に2つの部分に分かれる。淡路島側の断層では浅部ですべりが大きいのに対し, 神戸側の断層では深部で大きく, また, すべりの大きな部分は2箇所ある。破壊はまず神戸側の断層で始まり, 約3秒後に淡路島側の断層へ伝播した。また, その際に多量の高周波が発生した。本震の破壊完了までに要した時間は約12秒と推測されている。前震は本震の破壊開始点近く, 断層の幾何が複雑なところで発生している。余震の発震機構から推定された応力テンソルは本震の断層面に対して高角で最大主圧縮応力を持つと推測される。このような応力状態は, 余震活動の特徴である余震の発震機構がばらつくことを説明できる。
著者
公文 富士夫 紙谷 敏夫 須藤 浩一 井内 美郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.39, pp.p53-60, 1993-03
被引用文献数
4

2km間隔の164地点で採取した5~10cmの深さおよび10~15cmの深さの堆積物について改良した比重計法で粒度分析をおこなった。琵琶湖全域にわたる系統的な粒度分析はこれが最初である。中央粒径値をもとにした粒径分布図には, 内側ほど細粒になり, 最中心部で少し粗粒になるという特異な環状の粒径分布が安曇川河口の沖合いに認められた。その位置は最近実測された第1環流の位置に対応しており, その粒径分布は, 垂直循環を伴なった収束する環流による運搬と選別の作用として説明ができる。北湖の沿岸域では, 水深10m前後まで砂質堆積物が分布している, 姉川河口域の沖合いでは, 北西と南東に伸びた砂質泥の分布が認められ, 温度成層期と非成層期の河川流入水の流れに対応したものと考えられる。堆積物の粒径分布は湖水の平均的な運動を反映したものと考えられる。
著者
堤 浩之 岡田 篤正 中田 高 安藤 雅孝
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.p113-127, 1992-12
被引用文献数
1

四国中央部における中央構造線の活動的なセグメントのひとつ岡村断層のトレンチ発掘調査を1988年3月愛媛県西条市で行なった。断層と地層の変形構造を水平方向に明らかにすることにより断層運動に伴う水平変位量の解明を試みた。壁面で観察される断層の構造は横ずれ断層に共通する特徴を備えている。断層を挟んでの地層の食い違いは右ずれを示し, 断層変位地形から推定される岡村断層の変位のセンスと一致する。地層の変形と^<14>C年代測定結果に基づいて最近2回のイベントを解読した。最新イベントは断層がすべての自然堆積の地層を切断するためその時期を確定することはできないが, それに伴う変位量が右ずれ約5.7 mと求められる。それより1回前のイベントはB.C. 1405~925年にあったと推定される。特定の谷がら供給される地層の年代と供給源との位置関係から過去1万数千年の岡村断層の右ずれ変位速度が6.8 mm/yr以下と推定される。
著者
長谷川,功
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.31, 1988-06-25

Structure of the upper crust, espccially the pre-Tertialy basement bcneath the Kanto Plain is discussed mainly based on the geophysical data-seismic, gravity and airborne magnetic data and the following conclusions are obtained (1) Five velocity layers are identified by seismic survey, (2) The fourth and fifth layers correspond to the pre-Tertialy basement Belt: geologically, the former to the Shimato Belt, the latter to the Chichibu, Sanbagawa Beft or the Inner Zone (3) The boundaries of the Sanbagawa belt is determined by the range of the high and low anomalies round commonly in the gravity and magnetic map. (4) Gap of the succession of the high and low anomalies is found in the central part of the Kanto Plain and suggests that the tectonic line named the Kashiwazaki-Tokyo Bay Tectonic Line runs through the central part of the plain and Tokyo Bay from the north to the south. (5) It is infered that the southern extension of the Tanakura Tectonic Line runs to the sea off Kashima. (6) The Kashiwazaki-Tokyo Bay tectonic line, the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line and the Tanakura Tectonic Lineare parallel each other and this is thought to relate to collision of the Izu-Ogasawara Arc. (7) The Kashiwazaki-Tokyo Bay Tectonic Line may be related to large earthquakes which have occured near Tokyo Bay and caused major damage in Tokyo.
著者
野,義夫
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.36, 1990-11-30

ボーリング・コアの解析結果と, 砂丘に関する従来の研究とによれば, 河北潟地区における完新世の地史は次のように要約される: (1)約8,000〜4,000年前の海湾環境と, それにともなう砂洲と旧砂丘の急速な成長, (2)シルト質粘土の平均堆積速度は3.5 mm/年, (3)4,000年前から2,000年前の間の, 海水準の下降に対応した淡水湖条件, (4) 2,000年前以降の現海水準によって生じた汽水湖と新砂丘。土質工学的諸性質によれば, 河北潟の地下の完新世シルト質粘土は, 上層, 中層, 下層にわけられ, それぞれ, 汽水環境・淡水湖・海湾条件にほぼ対応している。干拓後の残存水域は淡水化に向いつつあり, 汚染水の流入による富栄養化が進行しつつある。