著者
高木 秀雄 柴田 賢
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-12, 2000-03-15
参考文献数
101
被引用文献数
11

本論は, 古領家帯構成要素の対比に関連するこの数年の研究成果をまとめる.その対比を明らかにするためには, さらなる年代学的検討を必要とするが, 竜峰山変成岩や水越層は南部北上帯の古生界に, また肥後変成岩や朝地変成岩および随伴する花崗岩類については, 大島変成岩, 寄居変成岩, 阿武隈帯の竹貫変成岩やそれらに随伴する花崗岩類に対比可能である.このことは, 九州の肥後帯そのものが古領家帯であることを示唆している.古領家-黒瀬川地帯を復元するために, 走向移動運動に分配されたプレートの斜め収束ベクトルのデータと, 脆性-延性剪断帯の幅と変位量の関係から, 中央構造線の総変位量の見積もりを実施した.MTLの白亜紀半ば以降の総変位量は, 100〜200kmと見なされる.この見積もりと, 柴田・高木(1989)および大槻・永広(1992)の地体構造形成モデルに基づき, 白亜紀半ばの古領家-黒瀬川地帯の復元モデルを提唱する.
著者
黒田 直
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.13, pp.381-387, 1976-12-30
被引用文献数
1

Nanzaki Volcano (34°36'20"N, 138°50'E), consisting of older scoria cone and younger lava flow, is a very small volcano which erupted on a limited abrasion platform of Pleistocene age. Both the lava and scoria are basanitic, and include a small number of xenoliths of quartz gabbro changed to quartz monzonite and related xenocrysts, e.g. quartz rimmed with augite micrograins and hypersthene enclosed by augite. The basanitic lava contains more augite phenocrysts with hour-glass structure than olivine (Fo 85) phenocrysts with Cr-spinel inclusions, and plagioclase (An 75, 80) laths and a quantity of interstitial natrolitic mineral in the groundmass. Chemically this lava is characterized by the presence of normative nepheline (2-8%), the dominance of normative diopside over normative olivine and high Cr content (about 400 ppm). The chemical composition of this lava is close to basanites and basanitoids of Grenada Island, the Lesser Antilles Arc, except for slightly lower SiO_2 (43-44%) and slightly higher iron oxides (10-11% as FeO). During and after the reaction between quartz gabbro xenoliths and a magrna which formed the basanitic lava, augite and the groundmass plagioclase crystallized dominantly, and then natrolitic mineral occurred in the lava. According to the experimental data on the plagioclase series under high water pressure, the late crystallization of plagioclase in the basanitic lava may indicate high water pressure of a magma which formed the lava.
著者
濡木 輝一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.11, pp.251-281, 1974-09-30
被引用文献数
4

筆者はこの論文で,すでに角閃岩相に達していた領家片麻岩類が,領家変成作用後に貫入した滑花崗岩(新期領家花崗岩類の1つ)によって接触変成岩化された過程を,泥質岩源片麻岩中のアルミニウム珪酸塩の共生関係を中心にして,岩石学的に記載し,接触変成作用の物理・化学的条件を推定した。岩石を記載する際に,針状の珪線石"フィブロライト"と本来の柱状の珪線石"シリマナイト"の産状にいくつかの違いがあることから,これらを区別して取り扱った。(1)フィブロライトは滑花崗岩と接触変成岩にしばしば出現し,常に白雲母や黒雲母の脱色された部分と密接に共生して産する。他方,シリマナイトは,稀な例を除げば,常に紅柱石の一部を交代した形で出現し,雲母類の交代・再結晶によって生じたとは考えられない。フィブロライトは紅柱石,シリマナイトと共生している。珪線石を含む岩石の分布を第12-a図に示した。(2)紅柱石はしばしば黒雲母などの小片を包有している。シリマナイトによって一部を交代された紅柱石には,包有黒雲母の周辺にフィブロライトを生じているが,シリマナイトに交代されていない紅柱石中にはフィブロライトが見いだせない。紅柱石は,フィブロライトが出現する温度下で,水蒸気圧が充分高ければ,容易にシリマナイトに交代されるが,水蒸気圧が低ければシリマナイトに交代されない,と考えられる。(3)接触変成帯中の泥質岩源片麻岩の大部分には二次的生成物と考えられる多量の無色雲母と黒雲母の集合体が出現している。これらの雲母類は紅柱石や望青石を交代して生じている場合もあるが,このように多量の雲母類の出現は滑化歯岩による交代作用を考えないと説明がむずかしい。この種の雲母類を多量に含む岩石の分布を第12-b図に示した。(4)フィブロライトやシリマナイトの出現は接触変成作用の早期の変成条件を,また,多量の無色雲母などの出現は同変成作用の晩期の変成条件を代表している。この接触変成作用は早期に約700℃±,水蒸気圧は3〜4キロバールに達しただろうと推定した(第13図)。しかし,とくに圧力に関しては,明らかな証拠があるわけではない。
著者
岡村 真 島崎 邦彦 中田 高 千田 昇 宮武 隆 前杢 英明 堤 浩之 中村 俊夫 山口 智香 小川 光明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-74, 1992-12-15
被引用文献数
6

別府湾北西部の海底には3 kmから5 kmの長さを持つ5本の正断層が分布する。この分布の様子は, 別府-島原地溝にみられる陸上の活断層分布と類似しているが, 連続する部分は認められない。今回, 長さ2 km以上の断層セグメントを命名した。活動度はいずれもB級 (1-0.1 mm/y) である。地溝状の, 相対する南落ちと北落ちの正断層とは, 東北東-西南西の線により二分される。伊予灘の中央構造線断層系においても地溝状の形態が認められ, 別府湾まで連続するかどうか興味ある問題である。断層の活動度は, 年代が解っている反射層の変位量から求めることができる。しかし, 個々の地震の発生時や変位量を求めるためには, 断層両側のコア試料の対比が必要となる。我々は当初, 豊岡沖断層の両側で海底ポーリングを行い, 海底下20 mまでの試料をえた。しかし, ポーリングによる海底堆積物採取は, 時間と費用がかさみ, 多くの断層に対して, また継続的に行うことがむずかしい。このため以後は, ピストンコアリングにより堆積物の採取を行っている。現在, 海底下20 m以上の連続試料を一日で数本得ることができるようになった。亀川沖西断層では, 過去6000年間に3回の地震発生が認められ, その変位量と時間間隔との間には規則性がある。断層変位の分布は対称で, 断層の両端の近傍で最大となる。
著者
廣野 哲朗 芦 寿一郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.50, pp.33-46, 1998-07-31
被引用文献数
1

一般に石化作用や続成作用が十分に進行していない堆積性の物質を意味する, 未固結堆積物の定量的な定義を試みた。さらに未固結堆積物の変形挙動とその構成則および変形の素過程に関する主に工学分野の理論的研究を紹介した。その剪断変形挙動は岩相によって大きく異なり, さらに泥質なものでは先行圧密履歴と排水・非排水条件に, 砂質なものでは初期間隙比と排水・非排水条件に大きく支配される。また, 未固結堆積物を主要構成物質とする現世の付加体前縁部の変形構造に関する研究, および深海底掘削試料や人工試料を用いた実験的な研究を簡単にまとめた。
著者
中江 訓
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.55, pp.1-15, 2000-01-28
被引用文献数
7

付加複合体の内部では地層の累重関係や側方への連続性は破壊され, 異なる岩相・堆積年代を示す岩石が混在している.従って, 付加複合体を岩相層序単元に区分することはできず, 構造層序単元を設定し区分するべきである.本論では, 構造層序単元の設定法と命名法を議論し, その手順を提案した.構造層序単元は, 構成岩類の岩相・堆積年代の違いと, 産状・変形構造・変成度の違いを基準に区分される.そして基本となる単元をコンプレックスとし, その上位階層にテレーンを設定する.この様な構造層序区分は, 付加複合体の形成過程を特徴づける構造運動を解釈するために行なわれ, 岩相・堆積年代の違いは付加直前までの海洋プレート層序の性質の違いを表わし, 産状・変形構造・変成度の違いは付加過程および付加後の事変を示すとみなされる.
著者
風早 康平 篠原 宏志
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.91-104, 1996-09-20
被引用文献数
3

噴火時に放出される揮発性成分は, 噴火時に重要な役割を果たすにもかかわらず, その揮発性の性質ゆえに, 噴火後岩石などに固定されないため, 長い間, その組成や放出量は不明であった。最近10年ほどの間に, 様々な顕微分析法は, メルトインクルージョンの揮発性成分濃度の測定を可能にし, 火山ガスの遠隔観測法(TOMSやCOSPEC)は, 噴火時あるいは非噴火時のSO_2放出量の直接測定を可能にした。観測された火山噴火時のSO_2放出量は, メルトインクルージョンのS濃度とマグマ噴出物量から推定される量よりも一桁から二桁も過剰である(過剰な脱ガス)ことが多いことが明らかとなった。この過剰なSO_2の脱ガスは, anhydriteの分解により生成したSO_2による, あるいは, 噴火前にマグマ溜りに存在していたSO_2を含む気泡によるなどの原因が考えられている。非噴火時の活火山から放出されるマグマ起源ガスは, その存在自体が過剰な脱ガスである。多くの火山で100-4000 t/d規模のSO_2の放出がみられ, 大量のマグマが非噴火時にも脱ガスしていることが示唆される。火山ガス放出量およびマグマの揮発性成分濃度を用い, 伊豆大島, 桜島, 薩摩硫黄島, 有珠, ストロンボリおよびエトナの各火山についてどの程度の量のマグマが脱ガスに関与しているのかを示した。いくつかの火山では, この規模のガス放出が1000年以上にわたり続いており, 大規模なマグマ溜りから継続的にガスが供給されていることを示す。非噴火時の脱ガス機構として, 火道内マグマ対流がマグマ溜りから未脱ガスマグマを火道上部に運搬し, マグマが効率的に脱ガスするというモデルを示し, 伊豆大島を例に検討し, この対流が玄武岩質マグマから流紋岩質マグマまで幅広く生じうろことを示した。長期にわたり生産された大量の脱ガスマグマは, 脱ガスにより結晶化が促進され, ガブロなどとして, 火山体下部に貫入しているものと推定された。
著者
松川 正樹 高橋 修 林 慶一 伊藤 慎 Konovalov V. P. Valentine
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.48, pp.29-42, 1997-06-30
被引用文献数
1

西南日本のジュラ紀から前期白亜紀付加体の重複配列分布は, 付加体の放散虫化石と付加体の堆積物に不整合で覆う非海成ないし浅海成の堆積物に含まれる軟体動物化石の化石層序と時代論に基づき, オーテリビアン期に形成されたと解釈される。一方, 日本を含む東アジアの浅海成堆積物から後期ジュラ紀〜前期白亜紀のアンモナイトが産出し, それらが低緯度地域と高緯度地域の種を含む。これは, この地域が二つの異なる海流の影響を受けたことを示し, 現在の下部白亜系の分布位置と堆積当時の分布位置がほぼ同じであったと解釈できる。特に, 前期白亜紀の手取地域は高緯度地域からの海流の影響を受けたことが示唆される。これらの解釈は, この時期のテクトニクスの考察による日本列島の位置の解釈と化石による解釈の両者がともに整合性のあることを示す。
著者
坂井 卓 岡田 博有
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.48, pp.7-28, 1997-06-30
被引用文献数
2

九州の中軸帯および黒瀬川構造帯には白亜紀堆積盆が広く発達する。その層序学的・堆積学的ならびに構造地質学的諸特徴には東アジアの活動的縁辺域で生じた白亜紀のテクトニクス変化が記録されている。黒瀬川構造帯の下部白亜紀系は断層規制を受けた堆積盆に形成され, 非海成〜浅海相ならびにタービダイト相からなる二つの異なるタイプのシークェンスが識別できる。これらは, 多くの不整合を伴って顕著な岩相変化を示す。このような堆積盆は, 分断された黒瀬川古陸上に形成された横ずれ構造盆にあたり, 白亜紀前期にカリフォルニア型のトランスフォーム縁辺が推定される。このことは黒瀬川構造帯の堆積盆が北北西-南南東の左横ずれ断層を伴うタンル-断層システムに属していたことを示唆する。一方, 中軸帯の後期白亜紀堆積盆は非海成〜浅海性相(御所浦・御船層群)と浅海〜タービダイト相(大野川・姫浦層群)の二つの異なるシークェンスからなる。前者は先白亜紀の構造に対し, オーバーラップの層序関係を示し, ベンチ状あるいは陸棚性前弧海盆に比較できる。後者は軸流運搬のタービダイト相が卓越し, 伸長性堆積盆を示す。堆積作用と変形スタイルの特徴から, 大野川, 姫浦層群はそれぞれ横ずれ構造盆, 断層規制を受けた陸棚盆に相当する。黒瀬川構造帯堆積盆の北方への顕著な堆積盆の移動は, 縫合性島弧地塊と前期白亜紀に隣接していたイザナギ・プレートの間のトランスフォーム過程に関連したと推定される。引き続く中軸帯の堆積盆のタイプの時空的変化は, 後期白亜紀のクラ, 太平洋プレートの収れん運動の変化に対応するだろう。
著者
鈴木 盛久 刑部 哲也
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.21, pp.37-49, 1982-04

飛騨変成帯西部地域の岐阜県吉城郡月ケ瀬地域から含亜鉛スピネルを産する変成岩を見出し,それを記載した。本岩は,カリ長石+珪線石の組合わせで特徴づけられる泥質片麻岩中に10×15m程度のレンズ状岩体として出現する。本岩の鉱物組合わせは,ざくろ石・黒雲母・珪線石・カリ長石・石英・スピネル・石墨・チタン鉄鉱であり(タイプA),それらに斜長石が加わることもある(タイプB)。スピネルは,タイプAの岩石中のものではHe_<39.7-41.O> Ga_<52.3-540> Sp_<6.3-6.7>,タイプB中のものではHe_<60.0-61.7> Ga_<26.6-28.9> Sp_<10.8-11.7>の組成範囲を示す。全岩化学組成,鉱物組合わせ,構成鉱物の化学組成等の検討から,含亜鉛スピネルを産する岩石は,泥質岩或いはそれに関連した原岩から角閃岩相以上の変成条件下で生成されたものと結論づけられた。
著者
新井 健司 石井 久夫 伊藤 孝 内田 克 遠藤輝 岡部孝次 熊井 久雄 小菅 範昭 近藤 洋一 郷原 保真 酒井 潤一 斎藤 義則 塩野 敏昭 島田 安太郎 下野 正博 隅田 耕治 角谷 邦明 関口 尚志 田中 俊廣 趙 哲済 中西 一裕 中島 豊志 中村 由克 林田 守生 松本 俊幸 三谷 豊 柳沢 文孝 山本 裕之 吉野 博厚
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.14, pp.93-102, 1977-02-21
被引用文献数
11

A wide-spread lake assumed to be larger than the recent Matsumoto Basin had existed in Early Pleistocene, and the Enrei Formation and its equivalent formations had been deposited in the lake. An extensively even erosion surface formed on the sediments in the latest Early Pleistocene is called the Ohmine geomorphologic surface. After the formation of the Ohmine surface, the recent mountainous areas such as the Northern Japan Alps, Mt. Hachibuse, Mt. Utsukushigahara and so on had been upheaved, while the Matsumoto Basin area had been depressed and the Nashinoki Gravel Formation, the upper Middle Pleistocene, had been deposited. The base of the Enrei Formation is 1,800 m above sea level in Mt. Hachibuse, while 700 m above sea level in the southern part of the Basin. The amount of upheaval of the mountainous areas can be estimated to be more than 1,000 m. The Matsumoto Basin area had been depressed again in the middle part of the Upper Pleistocene (about 40,000 years B. P.) and the Hata Gravel Formation had been deposited. The amount of depression may be estimated to be about 150 m in the eastern periphery of the middle part of the Basin.
著者
端山 好和 木崎 喜雄 青木 清 小林 摂子 戸谷 啓一郎 山下 昇
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.4, pp.61-82, 1969-01-31
被引用文献数
6

上越地方には, 変成岩および蛇紋岩の小岩体が各地に散在するが,その多くは,もと片状岩類だったものが白亜紀ないし第三紀の花崗岩の接触変成作用によってホルンヘルス化した複変成岩である。いっぽう, 谷川岳頂上のルーフペンダント, およびジュラ系(岩室層)ないし第三系(栗沢層)の礫岩に見出される結晶片岩礫には,藍閃片岩または藍閃片岩相地域に特徴的な変成岩が認められる。これらによって, 上越地方には, 少くもジュラ紀から中新世にかけて, 藍閃石型広域変成帯が実在したと推定され,現在はほとんど失なわれているが,これを上越変成帯と名付けた。さらに次の理由から,上越変成帯を,飛騨高原をとりまく結晶片岩帯の東方の延長と考えた。1)上越変成帯の東縁をなす片品構造帯は種々の点から飛騨外縁構造帯に類似する,2)結晶片岩の変成様式が両地域で共通する,3)変成作用の時期が同じ,4)両変成帯の外側に分布する非変成古生層(丹波帯と足尾帯)は連続している,5)両地域の地史がよく似ている。
著者
大西 郁夫
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.39, pp.33-39, 1993-03-29

中海・宍道湖周辺地域の過去約2400年の最上部完新統はイネ科花粉帯に属する。この花粉帯は次の4亜帯に細分される。スギ亜帯:約2400年前〜西暦約700年。この亜帯は高率のスギ属とイネ科で特徴づけられ, 湖周辺の低地にはスギ林がひろがっていた, 水田の開発はこの亜帯の初めに始まった。カシ・シイ亜帯:西暦約700年〜約1500年。この亜帯の初めにスギ属花粉は低率となる。イネ科とカシ類・ナラ類などの広葉樹の花粉は高率である。開発は更に進み, 水田は低地の大部分を被ったが, 丘陵地では照葉樹林が繁茂していた。マツ亜帯:西暦約1500年〜約1930年。この亜帯は二葉マツ類著しい高率で特徴づけられる。人為的な影響により, 照葉樹林は急速にアカマツの二次林に変わっていった。マツ・スギ亜帯:西暦約1930年以後。この亜帯はスギ属の増加で特徴づけられる。いたるところでスギが植林された。
著者
小坂 共栄 緑 鉄洋 保柳 康一 久保田 正史 宮東 靖浩
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.37, pp.71-83, 1992-03-15
被引用文献数
18

北部フォッサマグナ新第三系の層序について検討をくわえ, それに基づいて古地理の変遷を論じた。関東山地北縁部や諏訪湖北方には中新世初期の海成層が小規模に分布しており, 当時太平洋に大きく開いた海域がフォッサマグナ中央部にまで入り込んでいた可能性がある。中新世初期〜中期初頭には海底火山の活動を伴いながら海域がフォッサマグナ中央部に広がり, 一次的にはこの地域が太平洋側と日本海側の海をつなぐ連絡通路となった時期もあった。中新世中期は水内帯地域で大規模な堆積盆地が形成されたが, 後期になると次第に埋積が進み, 海は一般に浅海化していった。鮮新世〜更新世前期には, 戸隠・荒倉山・聖山・塩嶺などの各地で安山岩質の火山活動が発生した。また大規模な断層に沿う落ち込みの結果, 大峰帯, 小諸陥没盆地などの新たな盆地が形成された。
著者
藤田 至則
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.20, pp.147-158, 1981-03-30

The gist of the present paper is itemized below. 1. The outline of the sedimentary basin of the Kanto plain was determined by the collapse basin of the formative stage of the Late Pliocene Kurotaki unconformity and the collapse basin of the Early Pleistocene Minamitama stage (Fig. 2). 2. Due to the fractures of NE-SW and NW-SE trends that began to develop during the period from the Nagahama stage at the end of Early Pleistocene to the Naganuma stage of the early Middle Pleistocene, the uplands and alluvial plains were taking form macrotopographically in the Kanto plain and they became distinct during the Late Pleistocene as seen today (Fig. 3). 3. Collapse basins of the Kurotaki and Nagahama stages were formed along the fractures that were caused by the upheaval of the area centering around the basins (Fig. 1, B). 4. Collapse or relative subsidence of lowlands in the Nagahama stage and since the Shimosueyoshi stage procceded as the pre-existent fractures were reactivated with the regional upheaval (Fig. 3). 5. The law of the shogi-daoshi structure (sedimentary imbricate structure) is essentially a unidirectional shift of the thickest portion of a group of formations within one basin (Fig, 4). This structure is interpreted as a result of reactivation of fractures which developed when the basin was formed (Fig. 1,B). 6. When plural sedimentary basins whose longer axes run parallel are formed, the formations in each basin may present a shogi-daoshi structure of such a type as mentioned above, and occasionally this structure is found to involve the whole basins (Fig. 5). The occurrence of the shogi-daoshi structure can be classified into two kinds. One is the case where plural basins are formed simultaneously. This kind is noticed in many geosynclines (Fig. 5). The other kind is the case when the shogi-daoshi structure occurring within one basin proceeds into another basin in front of the first basin (Fig. 6). However, this kind is not fully investigated yet and it requires further study. 7. A general direction of the shogi-daoshi structure was from the continental side toward the Pacific side during the Paleozoic〜Middle Mesozoic period, and from the Pacific side toward the continent since the Middle Mesozoic to the present. And, as pointed out by Yano (1980), the direction of the shogi-daoshi structure in the stage of the Green Tuff geosyncline and that in the stage of the Island Arc disturbance are intersecting at right angles, and they intersect the principal axes of the basins at right angles. It is possible, however, that the principal axes of the basins have changed their directions later.
著者
磯崎 行雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.50, pp.89-106, 1998-07-31
被引用文献数
12

日本列島を含む東アジアの顕生代造山帯は, 海洋プレートの沈み込みによって先カンブリア時代の安定大陸の周囲に新しい大陸地殻が成長した場である。日本の起源は6〜7億年前に超大陸Rodiniaから揚子地塊がリフト化して離れた時の大陸縁に求められる。この受動的大陸縁は約5億年前に活動的大陸縁に転化した。新しい海洋プレート沈み込みは大陸縁に弧-海溝系を生じ, 4億年頃にそれが成熟すると, それ以後はほぼ水平な古生代-新生代付加体のナップ群やカルクアルカリ岩系火成岩をつくった。また間欠的な中央海嶺の海溝への沈み込みは, 低温高圧型変成帯の上昇や, 高温低圧型変成帯を伴う花崗岩バソリス帯の形成をもたらした。日本の造山帯は北米西岸のコルディレラ造山帯と鏡対称の構造をもち, それらの歴史は超海洋太平洋がたどったウィルソンサイクルの前半史にあたる。その後半史は2億年後に北米とアジアが衝突して次の超大陸Amasiaができる時に完結する。
著者
加々美 寛雄 飯泉 滋 大和田 正明 濡木 輝一 柚原 雅樹 田結庄 良昭 端山 好和
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.309-320, 1995-11-30
被引用文献数
10

瀬戸内・近畿地方の領家帯地域に分布する火成岩類の活動時期は, ジュラ紀初期-中期, 後期白亜紀, 中新世中期の3回である。最初のジュラ紀初期-中期に活動した火成岩類は領家花崗岩中に捕獲岩体として分布するはんれい岩, 変輝緑岩である。前者は下部地殻条件下 (6-8 kb) におけるソレアイト質マグマからの早期晶出相と考えられる。ノーライト, 角閃石はんれい岩, 変輝緑岩によるSm-Nd全岩アイソクロン年代は192±19 Maである。また, ノーライト, 角閃石はんれい岩中に不規則な形の産状を示す斜長岩質はんれい岩のSm-Nd全岩年代は162±29 Maである。後期白亜紀の火成活動は約110 Ma 前, 安山岩質マグマの活動で始まり, その後, 花崗岩の大規模な深成作用に引き継がれた。この深成作用は100-95 Maと80-75 Maの2つの時期に分けることができる。中新世中期の火成活動はユーラシア大陸から西南日本が分離, 移動したことにより引き起こされたものである。日本海形成(15 Ma)に関係した火成活動は, ユーラシア大陸東縁部の狭い範囲で始新世後期-漸新世初期に始まった。ジュラ紀初期*中期火成岩類の ^<87>Sr/^<86>Sr初生値, εNd初生値は後期白亜紀花崗岩類のこれらの値と似ている。このことは両火成岩類が似た起源物質から形成されたことを暗示している。一方, 中新世中期火成岩類のSr同位体比初生値, εNd初生値は以上の火成岩類の値とは著しく異なっている。中新世中期の日本海形成とともに, 西南日本弧の大陸性リンスフェアがフィリピン海プレート上にのし上げた。この出来事によって, 瀬戸内, 近畿領家帯地域下のリンスフェア・マントルはLILあるいはLREE元素に枯渇した化学組成をもつ様になった。中新世中期に活動した玄武岩はこの様にして形成された新しいマントルから形成された。高マグネシア安山岩は玄武岩を形成したマントルより浅い, 沈み込むプレートに由来する流動体相の影響を受けたマントルから形成された。安山岩, 石英安山岩は上部マントル由来のマグマと下部地殻の部分溶融によって出来たマグマとの混合物から形成された。それらのSr同位体比初生値とεNd初生値は, 下部地殻の部分溶融によって出来たマグマの寄与の程度により変わる。この下部地殻は苦鉄質化学組成をもち, 西南日本弧の後期白亜紀に活動した花崗岩類にとっても重要な起源物質である。
著者
高木 秀雄 曽田 祐介 吉村 浄治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.56, pp.213-220, 2000-03-15
被引用文献数
4

大野川層群霊山層中の花崗岩礫と, 朝地変成岩類分布域中の山中花崗閃緑岩のK-Ar年代を測定した.花崗岩礫4試料から得られたホルンブレンドと黒雲母のK-Ar年代は103〜108Maとよく一致した.一方, 山中花崗閃緑岩1試料について得られたK-Ar年代は, ホルンブレンドが103Ma, 黒雲母が104Ma, カリ長石が75.1Maとなった.霊山層中の花崗岩礫と山中花崗閃緑岩は年代的には一致するものの, 微量元素や帯磁率が異なる.しかしながら, 大野川層群の堆積物は北方から供給されたという報告があることから, 霊山層中の花崗岩礫の供給源が朝地地域周辺の花崗岩類から由来した可能性は高い.大野川層群が領家帯の和泉層群の西方延長に相当するのか, あるいは古領家帯の跡倉層-真穴層に対比されるかを明らかにするためには, 今後朝地変成岩類の帰属問題を解決する必要がある.
著者
吉田 武義 大口 健志 阿部 智彦
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.263-308, 1995-11-30
被引用文献数
22

新生代東北本州弧における火山岩組成の時間的・空間的変遷を検討した結果, それらを供給した島弧下マントルウェッジには3種の起源マントル物質, (1) エンリッチした大陸性マントルリンスフェア, (2) 島弧性最上部マントルリソスフェア, (3) 枯渇した島弧性アセノスフェアが存在していたことが確認された。東北本州弧, 陸弧活動期(〜21 Ma)には, 大陸性マントルリンスフェアが特に背弧側マグマ起源マントルを構成しており, その上部の最上部マントルに地球化学的不均質性の著しい(島弧性)最上部マントルリンスフェアが分布していた。背弧海盆拡大に関連して, 背弧側深部に島弧性の枯渇したアセノスフェアが侵入し, 背弧側のマントル内温度が上昇した結果, 背弧側最上部マントルを構成していた島弧性マントルリソスフェアが溶融して, 火山弧を火山フロント側から背弧側へと横切る広域組成変化傾向が不明瞭となった。その後, 背弧側マントルの温度低下と, 火山フロント側最上部マントルの温度上昇が続き, 背弧側ではより深部に位置していた, 枯渇した島弧性スピネルカンラン岩質アセノスフェアに由来するマグマが分離上昇を始め, 火山フロント側ではよりエンリッチした斜長石を含むカンラン岩からなる, 最上部マントルリンスフェア由来の低アルカリソレアイトが分離上昇して, 第四紀火山活動を特徴づける組成の広域変化が形成された。第四紀における火山フロント側および背弧側マグマ起源マントルはそれぞれ, マントルウェッジ内で地震学的に認められる火山フロント側低速度域と背弧側低速度域に対応している。両者の間には組成不均質性があり, 中期中新世以降, 少なくとも同位体組成的には均質化していない。
著者
藤井 昭二 野 義夫 中川登美雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.37, pp.85-95, 1992-03-15
被引用文献数
17

微古生物層序学と放射年代の進歩により,北陸地域の新第三系の精度の良い対比表ができた。新しい対比表を基に,最初の2時期は岩相分布図,後の7時期は古地理図をつくった。1)楡原期とそれ以前と2)岩稲期と医玉山期(20-17Ma):この2時期には火山活動が盛んで安山岩や流紋岩の火砕岩が広く分布した。3)黒瀬谷期(16.5-16Ma):海進により堆積盆が形成され"八尾一門ノ沢"動物群が支配した。4)東別所期(16-15Ma):海は拡大・深化し黒色泥岩が厚く堆積した。5)下部音川期(15-14Ma):堆積盆は再び浅くなり,暖流が流れていた。6)上部音川期(13.5-8Ma):堆積盆は浅く寒流が流れ,"音川"動物群で特徴づけられる。7)阿尾期(6.5-3.5Ma):能登半島は陸域となり,堆積盆は狭くなった。8)薮田期(3.5-1.5Ma):前期と同様寒流が流れ,石灰質砂岩が堆積した。9)大桑期(1.5-0.8Ma)浅海で寒流系の"大桑・万願寺"動物群で特徴づけられる。