著者
小荒井 衛 宇根 寛 西村 卓也 矢来 博司 飛田 幹男 佐藤 浩
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.602-614, 2010 (Released:2011-03-02)
参考文献数
49
被引用文献数
2 5

2007年7月16日に発生した「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(マグニチュード6.8)」について,陸域観測衛星「だいち(ALOS)」に搭載されている合成開口レーダ(PALSAR)による干渉SAR解析を行った.SAR干渉画像は,震源域近くの断層運動による地殻変動のみならず,震源から15 km東に離れた西山丘陵において,活褶曲の向斜軸に沿って幅1.5 km長さ15 kmの帯状隆起域が検出された.筆者らは,これは地震に伴って発生した間欠的な活褶曲の成長を示す直接的な証拠であると考えた.加えてSAR干渉画像は,柏崎市の中心街において,砂丘地盤の液状化や側方流動などの非地震性の地表変動についても検出することが出来た.
著者
君波 和雄 今岡 照喜
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.107-121, 2006 (Released:2006-06-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

四国西部,幡多半島東岸地域の後期漸新世~前期中新世の清水層・在岬層の混在相は,火山礫岩や火山性砂岩,含火山岩礫泥岩などの火砕岩を含む.火砕岩は,中期始新世の石灰岩を伴うことがある.火砕岩の多くは,土石流や乱泥流などの堆積物重力流に由来する.火砕岩中の火山岩は,アルカリ岩系の火山岩であり,アルカリ玄武岩,粗面安山岩,粗面岩およびコメンダイトからなる.アルカリ玄武岩や粗面安山岩には緑泥石や方解石で充填された発泡痕を有する.アルカリ玄武岩にはカンラン石仮像が含まれる.火山岩類はかなりの程度の変質作用を被っており,ほとんどの苦鉄質鉱物は,緑泥石などの粘土鉱物やFe-Ti酸化鉱物で置換されている.変質過程での移動が少ないと考えられる元素を使ったいくつかの判別図から,火山岩は海洋島起源のプレート内アルカリ岩と推定される.後期漸新世~前期中新世のある時期に四国西部の収束域で海山の衝突があったと考えられる.
著者
安川 和孝 加藤 泰浩
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.4, pp.217-237, 2011-04-15 (Released:2011-08-12)
参考文献数
113
被引用文献数
1

約55Maに発生した暁新世/始新世境界温暖化極大イベント(PETM)を引き起こした温室効果ガスの起源について,温度と大気中CO2濃度に依存性をもつ陸上岩石の風化フラックスを考慮した大気-海洋2-Boxモデルを用いて定量的検討を行った.その結果,同時期に北大西洋で生じた大規模火成活動により生成した熱分解起源メタンと,海底メタンハイドレートの分解による微生物起源メタンの放出を仮定すれば,PETMにおける-3‰の炭素同位体比負異常(CIE)を説明できることが示された.しかしながら,一般的な気候感度の範囲内において,-3‰のCIEに制約される炭素放出量では地質記録から推定される4℃以上の温暖化を再現できなかった.PETMのCIEと温暖化を同時に説明するには,従来の推定より著しく高い気候感度か,CO2による温暖化に加えてCO2以外の気候因子/フィードバックの寄与を考慮する必要がある.
著者
鈴木 桂子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.9, pp.484-495, 2010 (Released:2010-12-22)
参考文献数
49
被引用文献数
1

大規模火砕流は様々な岩相の火砕流堆積物を形成し,ラグブレッチャーはバイエス型より漏斗型に多い.クレーターレイクカルデラでは,ラグブレッチャーのコンポーネント分析により大規模火砕流がリング割れ目系に沿った複数火口から噴出したと解釈される.ワイングラス溶結凝灰岩中に認められる絞り出しとウーズはカルデラ壁形成時に生じた構造であり,冷却速度計算によりカルデラ崩壊がワイングラス火砕流堆積から9日~11ヵ月以内に発生したと推定される.漏斗型カルデラでは,降下火砕物噴火で始まり,小規模火砕流または火砕サージの発生の後に大規模火砕流噴火に至るが,カルデラ陥没のタイミングで火砕流が噴出しているので,それぞれの体積の大小はカルデラ形成には関係ない.大規模火砕流の場合,フローユニットの数が少ないほど,噴出率が大きくなり,噴出率が大きいほど,マグマ溜まりの減圧速度が大きくなるので,カルデラ陥没が進行し易い.
著者
竹内 誠 河合 政岐 野田 篤 杉本 憲彦 横田 秀晴 小嶋 智 大野 研也 丹羽 正和 大場 穂高
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.715-730, 2004 (Released:2005-02-18)
参考文献数
44
被引用文献数
3 3

飛騨外縁帯北東部の白馬岳地域にはペルム系白馬岳層が分布する. 白馬岳層は従来から言われていたようなメランジュやオリストストロームからなる付加体ではなく, 火山弧周辺の浅海で堆積した珪長質火砕岩類を主とする整然層である. 白馬岳層下部層形成時では珪長質火砕岩の堆積を主とするが, 下部層の上部形成時には玄武岩の水中噴火が生じ, バイモーダルな火山活動がみられる. 中部層形成時では, 火山活動が沈静化し頁岩や砂岩が堆積した. 上部層形成時では再びバイモーダルな火山活動が始まり, かつスランピング又は斜面崩壊によって石灰岩角礫や岩塊が珪長質凝灰角礫岩とともに堆積した.白馬岳層は角閃岩岩塊を含む蛇紋岩に衝上断層で覆われ, 蛇紋岩の構造的下位に位置する. その後NW-SE方向とNE-SW方向の高角度断層の形成に伴って, 古生界岩塊を含む蛇紋岩メランジュが形成された.
著者
柵山 雅則
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.265-274, 1980
被引用文献数
2 4
著者
関口 智寛
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.3, pp.141-147, 2011 (Released:2011-07-07)
参考文献数
22
被引用文献数
3 1 1

ウェーブリップルは,与えられた振動流条件と堆積物特性の下で,安定的に持続する特定の形状,サイズ,波峰線オリエンテーションを有する.振動流条件が変わるとウェーブリップルはその条件下での定常状態の獲得をめざして遷移する.新たな振動流方向が初期リップルの波峰線と直交する場合,遷移過程は(1)初期リップルと定常リップルの波長の大小関係,(2)振動流の非対称性,(3)堆積物粒径に依存する.とくに,初期リップルの波長が定常リップルのそれよりも大きいと,初期リップルの形状の一部をとどめる遷移リップルが一時的に現れる.地層に見られる遷移リップルは,地層形成時の振動流条件を推測する重要な手がかりとなりうる.
著者
南須原 美恵 鹿島 雄介 中村 隆志 山内 常生 大槻 憲四郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.63-78, 2011 (Released:2011-06-02)
参考文献数
72
被引用文献数
3 1

宮城県沖大地震に関連した前兆的地下水変動を検出するため,逆断層性活断層の上盤側にある深層孔井を選び,自動リアルタイムデータ受信システムを備えた観測網を構築した.孔井2本の水理学的条件,気圧,地球潮汐,降水の影響,水温観測の解像度を検討した後,観測期間2004年4月6日 から2007年末までに起こった地震の中から地震に関連した可能性のある3つの水温変動を同定した.それらは2005年12月2日の宮城県沖地震(MJ 6.6)の本震の2.7時間前から始まる0.003℃の低下,2007年4月12日に仙台湾で起こった浅発地震(MJ 4.5)の2時間前から始まった0.0012℃の上昇,および2007年5月29日に宮城県北部で起こった浅発地震(MJ 4)と同時の0.02℃に達する低下である.もし,将来の宮城県沖大地震がMJ 6.5以上の地震に相当する先駆すべりを伴うなら,我々の観測システムはそれを前兆的温度変化として捉え得る可能性がある.
著者
藤井 正博 早坂 康隆 堀江 憲路
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.3, pp.127-140, 2008-03-15 (Released:2009-02-24)
参考文献数
48
被引用文献数
5 9

九州東部野津原地域の基盤岩類は,高温低圧型変成岩からなる朝海ユニットの上位に,蛇紋岩からなる超苦鉄質岩ユニットを介し,非変成砕屑岩類からなる日方ユニットが重なるナップ構造で特徴づけられる.朝海ユニットの変成分帯,および黒雲母とザクロ石の化学組成から,朝海ユニットの変成作用は,荷尾杵花崗岩の貫入による接触変成作用であることが明らかとなった.その変成条件は荷尾杵花崗岩近傍で約610℃,2 kbarと見積もられる.また,荷尾杵花崗岩のジルコンのSHRIMP U-Pb年代は134.7±2.8 Ma(2σ)を示す.日方ユニットは朝海ユニットにおける荷尾杵花崗岩の接触変成作用による熱構造を切っていること,また,上部白亜系大野川層群に不整合に覆われることから,ナップ運動は荷尾杵花崗岩の貫入(約135 Ma)以降,大野川層群の堆積開始前(セノマニアン: 約100 Ma)の期間に生じたと考えられる.
著者
長友 晃夫 吉田 英一
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.512-527, 2009
被引用文献数
7

岐阜県東部に分布する阿寺断層の地質的履歴解析のために断層帯中に発達する小断層群と割れ目系解析および充填鉱物の鉱物学的・地球化学的分析を行った.その結果,小断層群は(1)充填鉱物を伴わないカタクレーサイト,(2)高温性の充填鉱物を伴う断層,(3)低温性の充填鉱物を伴う断層の3タイプに分けられた.小断層群周辺の割れ目にも,石英やプレーナイト等の熱水循環に伴う充填鉱物と,後の天水浸透に伴う鉄水酸化物の沈殿が認められた.これらから阿寺断層は,地下の高封圧下でカタクレーサイトを形成(ステージ I)した後,熱水変質を伴いつつ未固結の断層ガウジを形成し(ステージ II),そして隆起と断続的断層活動に伴う断層ガウジの発達と天水循環による変質拡大(ステージ III),という形成史を経たと考えられる.このような断層および割れ目系とその充填鉱物を用いた多角的応用解析は,断層形成史や断層運動に伴う割れ目発達解析に有効であると考えられる.
著者
横山 俊治 村井 政徳 中屋 志郎 西山 賢一 大岡 和俊 中野 浩
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.S137-S151, 2006
被引用文献数
3 1

小出(1955)の定義による破砕帯地すべりは今日の知識からすれば付加体分布地域で多発している.破砕帯地すべりは地すべり性崩壊であると小出(1955)が記述しているように,崩壊時に破壊された地すべり移動体は山津波となって谷を流下し,しばしば末端では河川を堰き止める.見学地である阿津江の事例には,このような破砕帯地すべりの特徴がくまなく現れている.<br>見学は末端部から発生域へと進めていこう.末端部では,坂州木頭川渡った山津波が対岸の斜面を50 mほどの高さまで乗り上げている.ここでは,山津波の流れを記録する樹木に刻まれた流下痕跡を観察し,一旦は斜面に乗り上げた土砂や構造物の大部分を洗い流した強い引きの流れの存在,山津波の一部が坂州木頭川を跳び越えている状況を確認する.発生域では,崩壊頭部のクラック群・緊張した樹根,崩壊壁の地質を,発生源の谷底では新旧の土石流堆積物,破砕帯,断層を観察する.<br>