著者
上村 清
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.25-54, 2004-05-31
被引用文献数
2

蚊は,日本から100種余り記録されているが,衛生上重要な種は限られている.主な媒介蚊であるアカイエカは下水溝よどみ,雨水ますなど,チカイエカは地下の湧水槽など,コガタイエカとシナハマダラカは水田,湿地,ヒトスジシマカは放置タイヤ,花立,竹筒,空缶などから発生する.蚊に刺されて痒いのは即時型のアレルギー反応である.雌成虫は通常1ヶ月ほど生き,一生に3〜4回吸血して産卵するが,再吸血時にマラリア,フィラリア症,西ナイル熱,日本脳炎,デング熱,黄熱などの感染症を媒介する.これら感染症はいずれも日本でも流行することが危惧され,その早急なる対応が望まれる.蚊の感染症対策は,対象種が発生しないように発生源対策をするのが効果的で,また,国外から持ち込まないようにし,蚊に刺されないようにすることである.
著者
大澤 貴寿
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-5, 1991-07-20

都市衛生害虫として衛生面から問題となっているチャバネゴキブリの防除は大きな課題である。その駆除には有機合成薬剤の噴霧やトラップによる方法に頼っており,より安全に効果的に防除するのは難しい現状にある。これに対し,生活環境内に積極的にゴキブリを寄せつけない物質,すなわち忌避物質を用いて駆除する研究も行われてきている。ゴキブリの忌避物質として,Deet (N, N-diethyl-m-toluamide)など多くの合成薬剤が報告されているが,実用性及び安全性の面から問題もある。稲塚はハッカやスペアミントの精油に含まれるテルペン化合物に臭覚的忌避効果のあることを報告している。著者らはインドネシア産の数種植物の精油に忌避活性を見いだし,それらに含まれる忌避成分の精製と単離を試みた。さらにそれらの関連化合物の忌避性についても検定した。
著者
中野 敬一
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.131-138, 1995-12-01
参考文献数
19

1994年12月~1995年2月と1995年5~7月に,東京都内の地下鉄駅構内の排水溝において,昆虫と水生動物の生息の有無を確認した。その際,一部の排水の水温と水質を検査した。排水溝で生息を確認した昆虫は,セスジユスリカ幼虫,オオチョウバエ幼虫,ホシチョウバエ幼虫であり,水生動物は,サカマキガイ,ミズムシ,イトミミズであった。排水溝の周辺ではセスジュスリカ,オオチョウバエ,ホシチョウバエの各成虫とザトウムシが確認できた。水生動物が生息していた排水は,そうでない排水より有機物や窒素成分が多い傾向があった。排水溝で確認した昆虫と水生動物は,生物学的水質階級のα中腐水性から強腐水性に生息する種類であった。その侵入経路については都市河川や下水道が関係すると思われる。
著者
服部,畦作
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, 1994-07-20
著者
田中,和夫
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, 2003-11-29

チャタテムシ(茶柱蟲)の中には障子にとまって音を出すものがあり(コチャタテなど),その音が抹茶をたてるときの茶筅の音に似ているということから,この名がついた.シラミやハジラミ類に近縁の昆虫で,世界に3,000種以上,日本には1996年末現在で20科,47属,92種が知られているが,まだ充分研究されてなく,続々新しい種が追加されている.屋内害虫と言えるものは,今の所17種である.屋内害虫としてのチャタテムシは,往々大発生し,微小なため気付かれずに,注射薬のアンプルやクリーン・ルームに至るまで,色々な場所に紛れ込んで,所謂混入害虫として最も重要な地位を占めている.
著者
秦 和寿
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.22-28, 2000
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
川上 裕司 本堂 朋子 米田 麻子 庄子 健一 清水 一郎 井上 正
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.135-143, 2004-12-15
参考文献数
22
被引用文献数
2

2000年8月~9月に,東京都所在の一般住宅6軒と病院1軒を対象として,フェロモントラップを使ってタバコシバンムシを捕獲した.捕獲した個体から2つの方法で細菌と酵母菌を分離した.一方の個体群は1頭ずつ解剖して消化管を取り出し,滅菌チユーブに移した.もう一方の個体群は1頭ずつ翅を外した腹部のみを滅菌チユーブに移した.検体を入れた滅菌チューブに1mlのリン酸緩衝生理食塩水を加え,タッチミキサーを使って振とうした.この洗浄液を6種類の培地を用いて,好気性または嫌気性培養して細菌と酵母菌を分離した.分離された細菌と酵母菌からDNAを抽出した.そして,SSUrDNAの塩基配列を調べることによって細菌と酵母菌の同定を行った.この結果,14種29株を同定した.この内訳は,グラム陽性菌8種20株,グラム陰性菌4種7株,酵母菌2種2株であった.細菌は7属が分離された.この内訳は,Bacillus cereusを含むBacillus属が4種,Enterobacter agglomeransを含むEnterobacter属が3種で,他の5属は1種ずつだった。病院で採集した個体から抗生物質耐性菌として知られているEnterococcus faecalisが分離されたことは注目すべき結果だった.また,酵母菌はCandida kruseiとRhodotorula rubraであった。
著者
田中 和夫
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.101-106, 2003-11-29
参考文献数
19
被引用文献数
1

トルキスタンゴキブリBlatta lateralisの分類と形態について概略を述べ,近似の屋内害虫種との区別点に就いて記し,日本産ゴキブリ科Blattidaeの4属の識別点を検索表で示す.再移入の可能性に就いて簡単に言及する.
著者
田村 正人
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.149-157, 2004-12-15
参考文献数
21

昆虫の社会とは,「同種の2個体以上の個体間で起こる,種を維持していくうえの協同的相互関係」と定義され,単独生活をするものも含めて,種はすべて社会をなしているとみなされる.したがって「真社会性」とは,(1)両親以外に子育てを手伝う個体がいる(共同育児),(2)2世代以上が同居して一緒に暮している(世代の重なり),(3)子を産む個体と産まない個体(不妊カスト)とがいる(繁殖に関する分業)の3つを完全に備えた「高度に発達した社会」を指す.ハチ(膜翅)目の,このような真社会性に至る道すじには2つのルートが想定される.その1つは,母娘による単一家族ルート(サブソシアル・ルート)で,まず母親が長期間子を世話することで世代の重複が起こり,次に成長した子が妹や弟の世話,巣の掃除や防衛などを分坦するようになり,最終的には自分では繁殖しなくなって繁殖上の分業が成立する.もう1つは,複合家族による共同巣ルート(セミソシアル・ルート)である.まず繁殖メスが複数集まり近接して営巣することから始まって巣や子の防衛に共同で当たるようになり,次に最優位のメスがしだいに独占的に繁殖するようになって,最終的には繁殖の分業が成立するとともに世代の重複によって若いメスが完全にワーカー化するのである.シロアリとミツバチの階級分化には違いがある.シロアリの階級分化は,内因説と外因説があり,前者は遺伝的,あるいは胚の時代に階級分化が決定されているとするもので,後者は卵からふ化した幼虫は,あらゆる階級に分化する能力をもっているが,コロニーの状態によってどの階級に分化されるかが決定される,その決定にはフェロモン,栄養,行動刺激が関係するという説である.一方ミツバチでは,未受精卵(染色体数n=16)からは雄バチが,受精卵(2n=32)からは雌バチが産まれる.さらに女王バチと働きバチの分化は,与えられる餌の質と量の違いにより幼虫期の前期に決定し,階級の維持には起動フェロモン(primer pheromone)が関与する.
著者
井村,治
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 1989-10-25
著者
岩田 隆太郎
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.25-27, 1991-07-20

In an apartment building in Yokohama, Japan, a brood of Stenhomalus taiwanus MATSUSHITA (Coleoptera: Cerambycidae: Cerambycmae) was observed to infest a kitchen pestle made of a stem of Japanese prickly ash, Zanthoxylum piperitum (L.). Adult emergence was observed indoors firstly in late summer to early autumn, and then in next spring.
著者
木村 悟朗 春成 常仁 谷川 力
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.73-76, 2010-12-30
参考文献数
14

実験昆虫飼育室内に発生したケナガコナダニTyrophagus putrescentiaeを防除するために高温による駆除を行った.ケナガコナダニは47.4±1.6℃で1時間または40.3±1.7℃で24時間の室温に暴露することにより,全ての個体が死亡した.これらの結果は,高温処理によって現場に発生するケナガコナダニを防除可能であることを示唆している.特に,恒温恒湿室は温度管理が容易であり,そこに発生する本種のもっとも簡便な防除方法であると考えられる.駆除作業前に室内で観察されたケナガコナダニの分布は,本種が誘虫灯に誘引される可能性も示している.
著者
洗 幸夫 胡 衛軍
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.86-91, 1997-12-01

前回はイエバエ Musca domestica L. 成虫の口器の構造と機能について解説したが,今回はイエバエ成虫の胸部・腹部の構造を取り上げた。構造は前回と同様に走査電子顕微鏡写真を中心に解説する。
著者
小川 賢一 平林 公男 中本 信忠
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.14-22, 2001-07-30

長野県の諏訪湖で大量発生して,周辺住民や地域の観光施設,工場施設に健康被害や経済的被害等をおよぼしているアカムシユスリカ成虫の群飛形成や音響に対する応答特性を紹介するとともに,これまでに調べられたユスリカ類の音響応答とも比較した.アカムシユスリカ成虫は日中,湖岸の植物の葉上で静止しているが,夕刻に雄は巨大な群飛を形成した.その間,雄は音響トラップから発せられる周波数150Hzと180Hzの音響に顕著に応答し,誘引捕獲された.これらの音響周波数はこれまでに明らかになったユスリカ類の音響応答の中で最も低い周波数であった.諏訪湖で発生するアカムシユスリカとオオユスリカ,および神奈川県川崎市内の都市河川で発生するセスジユスリカとミヤコナガレユスリカの3属4種間で,雄を最も多く誘引捕獲できた音響周波数とその時の気温との間に正の相関関係が認められた.本研究のような,音響による物理的方法や他のさまざまな手段や発想を組み合わせた「環境に優しい」対策や防除法の考えが今後のユスリカ類を始めとする害虫防除法にとって重要なものになっていくと考える.
著者
宮ノ下 明大
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-21, 2008-11-28
被引用文献数
1
著者
中野 敬一
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-23, 2002-07-30
被引用文献数
4

都市におけるヒトスジシマカの生息状況を把握するため,2000年5月から11月にかけて東京都港区の4箇所でオビトラップにより調査を行った.産卵はオビトラップに5月から11月まで確認された.産卵数は9月中旬にピークがあった.オビトラップに水道水と雑草浸漬水,エビオス混釈水を使用した場合の産卵数を比較したが,はっきりした結果は得られなかった.また,オビトラップの7日後の水質を検査したが,水質と産卵数との相関係数は低かった.さらに産卵数50個以上と5個以下のトラップの水質を比較したが,有意差はなかった.