著者
平井 美佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.462-472, 2000-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
53
被引用文献数
2 1

本研究は, 人が“自己”と“他者”の両者の利益にともに配慮しながら, 状況に応じた自他の調整を行うプロセスを実験的に明らかにすることを目的とした。状況の規定要因として, 問題になる他者の種類と問題の深刻度の2要因を扱った。自己と他者の要求が葛藤する3種類の他者 (家族友人, その他の集団) と3水準の問題の深刻度 (レベル1; 低, レベル2; 中, レベル3; 高) に属す9つ [=3 (他者)×3 (水準)] のジレンマ課題を作成した。大学生63名 (男子29名, 女子34名, 18-23歳) を対象として, 各場面について「もし私だったらどうするか」について推論するプロセスを発話思考法によって検討した。その結果, 主に次の3点が明らかとなった。第1に, 推論のプロセスにおいて自己と他者の両者がともに配慮されること, 第2に, ジレンマに関わる他者別に見ると, 家族とのジレンマにおいては自己を優先させる傾向が強く, 友人およびその他の集団との葛藤においては相手を優先させる傾向があること, 第3に, 問題が深刻になるほど自己を優先させ, 問題が深刻でないほど他者を優先させる傾向があることであった。これらの結果から, 状況に応じた自己と他者の調整プロセスについて論じ, さらに, 研究方法と文化差についての理論の問題についても言及した。
著者
宇佐美 慧
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.163-175, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
51
被引用文献数
5 7

小論文試験や面接試験, パフォーマンステストなどに基づく能力評価には, 採点者ごとの評価点の甘さ辛さやその散らばりの程度, 日間変動といった採点者側のバイアス, および受験者への期待効果, 採点の順序効果, 文字の美醜効果などの受験者側のバイアス要因の双方が影響することが知られている。本論文ではMuraki(1992)の一般化部分採点モデルを応用して, 能力評価データにおけるこれら2種類のバイアス要因の影響を同時に評価するための多値型項目反応モデルを提案した。また, 母数の推定については, MCMC法(Markov Chain Monte Carlo method)に基づくアルゴリズムを利用し, その導出も行った。シミュレーション実験における母数の推定値の収束結果から推定方法の妥当性を確認し, さらに高校生が回答した実際の小論文評価データ(受験者303名, 採点者4名)を用いて, 本論文で提案した多値型項目反応モデルの適用例を示した。
著者
池田 琴恵 池田 満
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.162-180, 2018-06-30 (Released:2018-08-10)
参考文献数
34
被引用文献数
5

本研究では,学校評価は管理職が行うものと考えていた校長の意識が,学校全体で実施しようという意識へと変容する過程,および意識変容を促進する専門家の支援のあり方について検討した。本研究の実践では,協働的で自律的な実践活動を支えるエンパワーメント評価アプローチのツールであるGetting To OutcomesTM (GTOTM)1に基づき,日本の学校評価用に開発された学校評価GTOの導入を試みた。複線径路等至性モデルを用いた分析の結果,学校評価GTOを実施することで,(a)目標設定,実践計画,評価実施までを事前に準備することができ,学校評価の改善が可能であるという気づき,(b)学校全体での取り組みを試みる中で校長自身の学校運営に対する統制感の獲得といった意識変容の過程を経て,学校全体での実施という意識に至ることが示された。さらに校長の意識変容を促すために,校長の問題意識がない場合には導入の必要性を検討し,年度途中での運用上の修正が可能な提案,校長自身が学校教育計画や学校評価報告書に統制感を持つための支援,全校実施をイメージできるような実践ツールの提供,学校の特色に応じて実効性のあるツールへと改良するといった,専門家による支援の重要性が示された。
著者
久原 恵子 波多野 誼余夫
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.65-71,121, 1968

1次元上の値により定義される概念の学習過程において, 子どもの知的発達の程度により, 不適切次元の数, 適切次元の直観性がどのような影響をもつかを調べるために2実験を行なった。<BR>主な結果は次のとおりである。<BR>1) 不適切次元数の効果不適切次元数が増えると課題は困難になる, という結果が得られた。この抑制的効果は, この実験で扱った被験者の範囲では, 知的発達の程度 (MA) と関係なく認められた。すなわち, Oslerらの仮説は否定された。<BR>この効果が小さいのは, 適切次元の直観性が高く, かつ学習者が直観的印象の集積にもとついて適切手がかりを発見する場合であろうという予想も支持されていない。しかし, この点については, あらかじめ全変化次元を教えない事態であらためて検討する必要があろう。<BR>2) 適切次元の直観性の効果適切次元を直観的にとらえられやすいものにした場合には課題は容易になる。この効果は, 学習前に変化次元のすべてに気づかせる手続きをとった場合にも生ずる。この効果が小さいのは, 体系的に仮説を吟味していく学習者 (形式的操作期の子どもであればこの条件を十分充たすであろう) すなわち, 知的発達の程度 (MA) が相対的に高い場合であると思われる。これは実験I, II で, ともに支持された。<BR>Brunerほか (1956) のいうような方略は, すべて仮説が等価なものであるときにのみ適用可能であることを考えれば, この結果のもつインプリケーションはあきらかであろう。形式的操作期の子どもにとっては, 刺激のそれぞれの手がかりは, 一種の命題的性格を与えられる結果, 等価とみてなされており一おとなの実験者にとっもそうなのであるが一, したがっていったん適切でないとわかった手がかりに固執することはない。しかし, 知的発達の低い段階においては, 仮説の選択を順次行なっていく能力が欠けているばかりでなく, 各次元が等価でないため, 検証一棄却の論理的手続きも不能となるのである6<BR>3) 不適切次元数と適切次元の直観性の交互作用<BR>不適切次元数がふえるほど, 適切次元の直観性の寄与が大となる, という予想は, 今回の実験からは, 実験II の小4を除いて統計的には確かめられなかった。<BR>なおさらに, これと, 知能との交互作用すなわち, 適切次元の直観性が高いときには, 不適切次元数の増加がもつ抑制的効果は知能の高いものにおいて大きいが, 直観性が低いときには知能の低いものにおいて大きい, という傾向が実験IIにおいてみられたことは注目してよかろう。
著者
帆足 喜与子
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.65-74,126, 1961

要求水準とパーソナリティとの間に関係ありと認められた事柄は次のとおりである。<BR>(1) 安定感のあるものは, 成功すれば水準を上げ, 失敗すれば下げるというふうに適応的反応をする。<BR>(2) 失敗をまともにうけ入れるものも適応的反応をする。<BR>(3) 自分の地位に満足するものも適応的反応をする。<BR>(4) 妥協的, 協調的のものは場面によって設定態度を変化させる。<BR>(5) 競争心の強いものは目標を固執する傾向にある。<BR>(6) 本実験においては, 常にパーソナリティ評点のよいものの方がGDSが大きかった。<BR>個人について設定態度が比較的固定しているところから見ても, また特定のパーソナリティと特定の設定態度との関連性の存在から見ても, 要求水準には個性が相当にあらわれるといいうる。
著者
下山 晴彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.350-363, 1996-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
153
被引用文献数
2 2

The term “Student Apathy” was originally proposed in US to describe the male university students who continued to avoid confronting their conflicts. However, it has been studied and conceptualized only in Japan. The primary purpose of this paper was to review the studies on the disorder of Student Apathy and make clear the points of controversy. At first, the trends in conceptualizations were considered from an historical point of view. It was found that the concepts suggested thus far, were so various that it was difficult to categorize the disorder as a clinical entity. Next, the studies were examined from a psychopathological and developmental point of view. It was suggested that the disorder level should be shifted from neurotic to personality disorder and the integrated concept should be formed to distinguish it from generally apathetic tendency found in adolescence in Japan, which should be searched as a background of Student Apathy.
著者
宇佐美 慧 名越 斉子 肥田野 直 菊池 けい子 服部 由起子 松田 祥子 斉藤 佐和子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.278-294, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
27

発達障害・知的障害のある子どもたちに対して適切な支援を行う上で, 社会適応上必要なスキルを安定的かつ多面的に測定する検査の開発が求められている。そこで, 本研究では, 社会適応スキル検査の作成を試みた。まず予備調査では, 項目内容や採点法の適否等に関する検討を行い, また定型発達群(N=959)の標本をもとに各項目の困難度, 内的整合性の検討を行った。その結果を踏まえて, 本調査では, 特別な教育的ニーズのある群(N=560)と定型発達群(N=2,027)の標本をもとに, 各項目の内的整合性の再評価や因子分析モデルに基づく妥当性検証を行った。その結果, 検査の下位スキルとして設定した「言語スキル」, 「日常生活スキル」, 「社会生活スキル」, 「対人関係スキル」において実用上十分な内的整合性が認められ, また一因子性の観点から下位項目の因子的妥当性も確認された。また, 実用上の観点から, パーセンタイルに基づく社会適応スキル指数の算出や, 水平線表示を利用した個人内評価の方法についても検討を行った。最後に, 本検査を適用したADHDの子どもの一事例を通して本検査の臨床的有用性を考察した。
著者
鹿毛 雅治
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.p345-359, 1994-09
被引用文献数
2

Most of us would agree that intrinsic motivation is one of the most important concepts in educational practice. Unfortunately, however, as some researchers have suggested, the concept of intrinsic motivation is so ambiguous that it is very difficult to distinguish it from similar motivational concepts such as the Origin-Pawn and Locus of Control conceptualizations. The purpose of this paper is to make the concept clear by considering trends in conceptualizations of and studies on intrinsic motivation from historical point of view. It is found that the main issue of the studies shifted from "cognitive motivation" (what makes tasks interesting) to "undermining and enhancing effects" of interpersonal and evaluative variables. It is concluded that intrinsic motivation is defined as a motivational state in which learning is undertaken for its own sake and that the mastery orientation and autonomy are its essential components.
著者
浦上 昌則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.195-203, 1996-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32
被引用文献数
4 4

The purpose of this study was to examine the relationships among career decision-making self-efficacy, vocational exploration activities and self-concept crystallization in career exploration processes. Subjects were women's junior college students majoring in infant education (79 students) and liberal arts (107 students). Data were collected on two occasions in the process. At the beginning of job-searching, the career decision-making self-efficacy expectations were measured. After seven months, the questionnaire consisted of two parts, the activity of exploration and the change in crystallization of global/vocational self-concept in their exploration process, was administered to the students. In the case of the students majoring in liberal arts, the career decision-making self-efficacy had a significantly direct effect on exploration activity, and the crystallization of global/vocational self-concept was predicted through exploration activity. On the other hand, the students majoring in infant education did not show that their global/vocational self-concept depended on a vocational exploration activity. Based on these findings, reasons why the two groups of students had different job-searching process were discussed.
著者
木村 真人 梅垣 佑介 水野 治久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.173-186, 2014 (Released:2015-03-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 5

本研究では, 大学生の抑うつおよび自殺念慮の問題に関する学生相談機関への援助要請行動のプロセスに焦点をあて, その特徴を明らかにするとともに, 援助要請行動のプロセスにおける各段階の意思決定に関連する要因を検討した。大学生を対象に, 場面想定法を用いて抑うつおよび自殺念慮の問題を抱えた際の援助要請行動, 問題の深刻度の評価, 援助要請に対する態度, 自尊感情, 精神的健康度, ソーシャル・サポート, デモグラフィック変数について尋ねる質問紙調査を実施し, 758名からの有効回答を得た。ロジスティック回帰分析を実施した結果, 援助要請を検討する段階では性別(女性), ソーシャル・サポート, 問題の深刻度の評価が関連を示した。学生相談機関への援助要請行動の段階では, 問題の深刻度の評価, 援助要請に対する態度が関連を示し, さらに自殺念慮の問題では, 性別(男性)が関連を示した。得られた結果より, 援助要請行動のプロセスの観点からの, 大学生の精神的健康を目指した学生相談機関による介入方法について考察された。
著者
松尾,直博
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, 2002-12-25

学校における暴力・いじめの問題は,非常に深刻な問題である。被害者だけでなく,加害者,周囲でみている子どもにも悪影響が考えられる。これからのスクールカウンセラーや学校心理士には,暴力・いじめが起こった後のアフターケアだけでなく,そうした問題を予防するためのプログラムの立案と実行に関わることが期待される。本論文では,学校における暴力・いじめ防止プログラムに関する研究を概観し,その成果と問題点を考察することを目的とした。最近になって,世界各国で数多くの暴力・いじめ防止プログラムが開発されており,様々な結果が報告されている。それらのプログラムは心理学の基礎理論,実証的研究の結果を基に開発されており,問題意識を高める取り組み,社会的スキルトレーニング,社会的問題解決,感情のコントロール,仲間の力を使った援助などのプログラムが開発されている。最後に関係性攻撃,能動的攻撃についての対策,暴力・いじめ防止において学校が果たすべき役割と可能性について考察を行った。
著者
村上 安則
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.30-37, 1981

この実験の目的は, 生徒の話す力, 書く力, 要約する力を高めるための条件を調査することであった。そこで次のような実験が行われた。50分間平常の授業で英語を教えられた統制群(C群)を, 40分の平常の授業の後, 最後の10分間で英問英答によって教えられた第1実験群(EI群), および最後の10分間に暗唱して正しく書けるように指導された第2実験群(EII群)と比較した。これらの3群の学習効果を知るために, 次の測度が用いられた。<BR>英文和訳問題と和文英訳問題においては, 通常の主観的採点法が用いられた。要約においては, 小町谷 (1974) にならって次の測度が用いられた。すなわち, 10人の英語教師によるテスト材料の評定に基づいて決められたところの,i) 有効伝達単位点, ii) 非有効伝達単位点, さらに有効及び非有効伝達単位点の相互関係に基づいたiii) 要約評定点, および iv) 伝達単位数である。各群33名の高校1年生からなるマッチングされた3群の被験者は, 次のように訓練をうけ, テストされた。<BR>pre-testではすべての被験者は, O. Henryの短編小説の前半を, post-testでは後半を与えられ, 50分以内に読んで, かつ, 次の3っの質問に答えるように求められた。3つの質問とは,(1)英文和訳問題,(2)和文英訳問題,(3) 英語での要約問題であった。<BR>訓練期間中は, すべての被験者に, 教材を理解するため次のような授業が行われた。すなわち,(1) 外人吹込みのテープを聞く。(2) 教材を読む。(3) 新出単語と新しい重要な文について学び, テキストの英文和訳を行う。C群はこの手順で授業を最後まで行う。EI群では最後の10分間, 教材全体にわたる重要な文について, 教授者が被験者に英問英答を行う。EII群では最後の10分間EI群の被験者が英問英答を行ったのと同じ文を暗唱し, 誤りなく書けるように指導する。この訓練が4回にわたってくり返された。<BR>英文和訳と和文英訳のpost-testの成績とpre-testの成績との差は, 3群の間ではほとんど見られなかった。しかし, 要約問題においてはEI群が全般的にもっともすぐれ, 次にEII群, C群の順であった。英間英答は, 被験者が教材をよりよく理解し, 要約するのに, より効果的であるといえよう。しかしながら, 学習時間を本実験の場合よりも長くすれば, これとは異なる結果の生じることも予想される。<BR>なお, 本研究を行った結果, 今後の問題点と思われるものには次のようなものがある。<BR>(1) 要約問題は, 教材全体の理解度を測るのに最適の問題形式と思われるが, 問題文の伝達単位の有効・非有効等の判定について, 少なくとも数名の英語の専門教師の協力が得られなければならず, 教材毎にこの規準を作成することは困難である。<BR>(2) 実験に関しては,(イ) training教材そのものだけに関する問題と, post-testだけに関する問題を作成すること。<BR>(ロ)英文和訳問題と和文英訳問題は, 客観テストとすること。(ハ) pre-testの問題とpost-testの問題の難易度を同じようにすることなどが望まれ, さらに,(ニ)学習内容に見合った学習時間が与えられることが望ましいと推測される。<BR>(3) これまでの実験的研究は, 平常の授業の多くの側面の中の1つをとり出して, 平常の授業とは異なる状況で扱ってきたために, その結果の平常の授業への一般化や適用が困難であった。それゆえ, 本研究では, 折衷法により, 全く平常の授業に実験をとり入れたのである。本研究には, まだ, 条件統制の上で, いくつかの問題点もあるが, 今後は, 授業の目標にあわせて, 他の実験が追加されたり, 不要な実験が省かれたりして, より一層の考慮が払われるならば, 本研究のような実験授業による英語教育法の研究は成果をあげることができるものと思われる。
著者
山岸 明子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.97-106, 1976-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
6 3

The purpose of this study is to investigate moral judgement in children and youth based on the theory and the method of Kohlberg, L., and to examine the availability of his method and the validity of stage sequences in Japan whose culture is different from the U. S. A..In this study, moral judgement was analysed from how children and youth understood various moral norms which were imposed on them by adults or society, and what their standards of right-wrong were.Four of the Kohlberg's stories involving moral dilemmas, translated and slightly modified, were given to 19 5 th-, 20 8 th-, 20 11 th-graders and 16 college students. They were asked to answer in writing what one of the characters of each story should do and why, and later, to respond in an interview to additional clarifying questions. Their responses were analysed in detail by issue scoring method which examined what their basic orientation to moral issues was, and classified into one of 5 stages,(stage 5 and 6 were not distinguished). Two scorers' rating 40 Ss independently were in close agreement.The results were as follows;1) Distributions of stages among the subjects were as shown in TABLE 5. It showed age-dependent development of moral judgement and supported the Kohlberg's theory.2) As to sex differences, such tendency was found. that in girls there were more who had stage 3 orien tation (but not statistically sighificant).3) In Japan there were more who belonged to stage 3 than in U. S. A., overall age except among college students.
著者
佐藤 純
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.367-376, 1998-12
被引用文献数
7

本研究は, 学習方略に対する有効性の認知, コストの認知, 好みが, 学習方略の使用に及ぼす影響について調べた。426名の小・中学生が, 学習方略の認知及び使用を評定する質問紙に回答した。その結果, 学習方略の有効性を認知し, 好んでいる学習者ほど使用が多く, コストを高く認知するほど使用が少ないことが明らかとなった。また, メタ認知的方略は, 他の方略よりもコストを高く認知され, 使用が少ないことが示された。さらに, メタ認知的方略を多く使用する学習者は, 学習方略のコストの認知が使用に与える影響が少ないことも明らかとなった。
著者
馬場園 陽一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.27-36, 1979-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15

本研究の目的は, いくつかのカテゴリーを含むリストの単一試行再生学習において, リハーサルが直後再生と最終一括再生でいかなる効果をおよぼすかを発達的に検討することであった。直後自由再生 (IFR) では再生量と群化量が測定され, 最終一括制限再生 (FCR) ではカテゴリーごとの制限再生が用いられ, 再生量が測定された。被験者は小学3年生 (実験I) と大学生 (実験II) で, Overtリハーサル (O) 群, Covertリハーサル (C) 群およびMinimalリハーサル (M) 群の3条件に割りあてられた。記銘材料は8カテゴリーから選定された事物線画であり, 1リスト20項目に4カテゴリーが含まれた。なお, 実験Iでは2リスト, 実験IIでは4リストが用いられた。主な結果は以下の通りであつた。IFR: 再生量に関してはどの年齢でもO群とC群がM群よりも優れ, O群とC群の間に有意な差はなかつた。しかし, 系列位置でO群とC群を比較すると, 新近位置と初頭位置で発達差がみられた。すなわち, 小学3年生は新近位置でO群がC群より優れ, 初頭位置でその逆の結果を示したが, 大学生のO群とC群はどの位置でも非常に類似した曲線を示した。群化量に関しては, 大学生ではO群とC群がM群より優れていたが, 小学3年生では 3群間に差はみられなかった。また大学生は小学3年生より優れた群化量を示した。FCR: 全ての群の系列位置曲線は初頭位置で最も高く, 新近位置で最も低かった。どの年齢でもO群とC群はM群よりも優れ, O群とC群の間に差はみられなかった。IFRとFCRの再生量を系列位置ごとに比較すると, 小学3年生でIFRよりFCR の中央位置の成績が優れたが, 逆に新近位置ではどの年齢でもIFRの成績が優れ, FCRで負の新近性効果がみられた。これらの結果から以下のことが示唆された。(1) リハーサル活動によってIFRとFCRに初頭性効果がみられた。これはLTSの成分を表している。(2) 大学生はカテゴリー情報を有効に利用する精緻化リハーサルを行うが, 小学3年生は単なる項目の反復にすぎない維持的リハーサルを行う。(3) これまでの無関連語リストで負の新近性効果がみられたのと同様に, カテゴリーを含んだリストの制限再生でもそれが見出された。
著者
宮下 一博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.455-460, 1991-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
2

The purposes of the present paper were to examine the relations of narcissistic personality to Ss' present recollections concerning their parents' earlier attitudes and home environment. The Narcissistic Personality Inventory (NPI) revised by Miyashita and Kamiji (1985), and three other questionnaires measuring mother's and father's attitudes together with the home environment were administered to 270 college students. Correlations were performed between NPI scores and the other three measures. The results showed that in case of females, a significant negative correlation was found between narcissism and the emotional acceptance of the mother: such result supported the theory of narcissism. In the case of male subjects a significant positive correlation was found between narcissism and the father's dominating attitude. With such a result, it was suggested that the father could not be neglected in the theory of narcissism.
著者
尾崎 康子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.96-104, 2003-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32

週1回開催される親子教室に参加している101名の2, 3歳児が母親から離れて仲間集団に参加する経過を1年間観察し, 母子分離の状況を過分離型, 徐々分離型, 一定分離型, 不分離型の4つのパターンに分類した。これらの各母子分離型における子どもの愛着安定性と気質の特徴を調べ, この時期の母子分離に関わる要因を検討した。母子分離の様相が相反する過分離型と不分離型に分類された子どもは, 共に愛着安定性は低かったが, 過分離型の子どもは新奇場面にしり込みしないのに対して, 不分離型の子どもは新奇場面にしり込みし, 順応性も低かった。このように, 愛着の安定性が低い子どもでも, 子どもの気質により母子分離の状況が異なることが示された。一方, 新奇場面にしり込みをしても, 愛着が安定していた徐々分離型の子どもは, 次第に母子分離しており, 2, 3歳児が仲間集団に参加する際の母子分離は, 愛着安定性と気質が相互に関係して特徴づけられることが示唆された。
著者
森永 康子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.166-172, 1997-06

Work values among women college graduates (N=399) in their sixth to eighth year after college graduation were investigated. Approximately 70% of the study sample were found to be currently employed outside the home. Many working women were single without children, while married women with children did not have jobs outside the home. Although employment, marital status, and parental status were predicted to relate to women's work values, only marital status turned out to be significant. Married women placed a higher value on gender equality and family concerns than did single women. The relationship between individual job turnover and work values was also explored ; women who changed jobs were found to place more importance on intellectual stimulation than those who did not. In the analysis of future work plans, it was found that those who planned to pursue their jobs for a long period or to reenter the work force showed work value patterns significantly different from those of their counterparts.