- 著者
-
岡本 洋子
- 出版者
- 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.8, pp.617-622, 2004-08-15
- 参考文献数
- 11
味変容物質のひとつであるギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre, R. Br.)抽出物を用いて,甘味物質に対する感受性について,その抽出液を味わった前と後を比べ,どのような相異がみられるのか調べた.その抽出液の濃度は被験者が受け入れ可能な濃度とした.甘味物質として,単糖・二糖類,オリゴ糖,糖アルコール,ペプチド等に分類される27種類を用いて,味感受性検査を行った.同様の味感受性検査を,酸,塩,苦,うま味物質についても行った.味感受性検査は,18~20歳の健康な女子学生28名を被験者として,全口腔法・下降系列極限法によって行われた.全被験者のうち, 50%の人が識別できる濃度をプロビット法によって求めて味感受最小濃度(閾値)とした.甘味物質27種類について,ギムネマ・シルベスタ抽出液を味わった後の甘味感受最小濃度は,抽出液を味わう前に比べ,2~13倍もの高い値であることが示された.従来から使用されている甘味物質だけでなく,近年開発された甘味物質についても,ギムネマ・シルベスタ抽出液を味わった後の甘味感受最小濃度は味わう前に比べ,著しく上昇することが明らかにされた.しかしながら,酸,塩,苦味物質各1種類,うま味物質3種類では,ギムネマ・シルベスタ抽出漁を味わう前後の味感受最小濃度の間には,ほとんど差が認められなかった.ギムネマ・シルベスタ抽出液を味わった後の甘味感受については,ある限度以下の濃度では,これまでの研究者が述べているように,あたかも純水を飲んでいるかのように感じたが,ある限度を超えた濃度では,甘味を感じることを認めた.一方,ギムネマ・シルベスタ抽出液を味わった後,酸,塩,苦,うま味の感受については変化を認めなかった.