著者
松本 圭一 和田 康弘 松浦 元 千田 道雄
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1116-1122, 2004-08-20
参考文献数
19
被引用文献数
4

検出器における不感時間,偶発同時計数および散乱同時計数は,陽電子放出断層撮影装置(PET装置)の定量性に大きく影響する.これらは,検出器の素材や形状,PET装置の体軸方向視野,さらには投与する放射能量や被写体の大きさなどに大さく依存する.このため近年のPET装置は,小型結晶を用い偶発同時計数と散乱同時計数を低減させ,さらに一つの検出器で一定時間内に処理すべき信号数を減少させることで計数率特性を向上させている.この結果,空間分解能の向上も図られ,さらには数万個の小型結晶を用いることで高分解能と体軸方向視野の拡大もされている.一方,放射性同位元素の時間当たりの崩壊数はポアソン分布に従い,総計数(N)の事象の統計誤差すなわち標準偏差(standard deviation ; SD)は√Nとなる.したがって信号雑音(signal/noise ; S/N)比を(平均/SD)で仮定すると,N/√N=√Nとなる.PET装置にて収集された計数の統計ノイズもこれと同様に考えることができるが,投影データから再構成された画像のS/N比は,各画素が互いに独立でないためより複雑になり,線源分布や被写体の大きさ,および空間分解能などに依存する.ここで,PET装置のS/N比の評価に,雑音等価計数(noise eauivalent count ; NEC)がある.National Electrical Manufacturers Association (NEMA) NU2-2001ではNECをPET装置の性能評価項目として定義し,広く用いられているS/N比の指標である.NECは,ファントム実験から簡便に得られる計算上の真の同時計数であり,画像再構成を行わずに画質を予測することのできる真の同時計数であると考えることができる.しかしながら, NECはPET装置視野全体の計数値であり,異なるPET装置すなわちスライス数や空間分解能が異なる装置では,再構成画像のS/N比をNECにて比較評価することができないと考えられる.なぜなら,検出器最大リング差(maximum ring difference)や体軸方向のline of response (LOR)の束ね(span),そして収集方法などが異なるためである.言い換えるならば,被写体(ファントム)が視野内(sinogram)に占める割合が同じであっても,そこに含まれる検出器の数または検出器の大きさが異なると再構成画像のS/N比は異なると考えられる.そこで今回,新しい指標として"Specific NEC(sNEC)"を考案した.これは,LORを考慮したNECという概念であり,視野全体のNEC(真の同時計数)が各LORに分配される割合を考慮した指標である.本研究では,その妥当性を再構成画像の画素値の変動計数(coefficient of variation ; COV)と比較することにより評価したのでここに報告する.
著者
寺下 貴美 中場 貴紀 布施 善弘 小笠原 克彦
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.811-817, 2004-06-20

診療用放射線の防護に関して,医療法施行規則の一部を改正する省令が関係告示とともに公布され,平成13年4月1日から施行された.さらに,国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の取り入れにより空気中,排気中,排水中の放射性同位元素の濃度限度が改められ,新濃度限度に対応した算定法が通知された.これらにより医療現場における放射性同位元素の使用実態に則したものとなったが,新法令への移行には煩雑で実務的な処理を伴っているのが現状である.当院では平成12年6月より医療情報システムの開発会社(ベンダー)に依らずに単独でWorld Wide Web(以下,WWW)を用いたシステム(以下, Webシステム)による患者情報システム,入院患者台帳システム,DICOM Imagingシステム,検査オーダ・エントリ・システムを開発し運用している.特に,検査オーダ・エントリ・システムではモダリティごとの検査依頼,照射録等の作成・管理などを運用している.法改正に伴い当院でも新濃度評価の下で記録簿様式の変更が必要となった.そこでわれわれは業務の簡素化を図るため,放射性医薬品の入荷・使用・在庫・調剤・廃棄・帳票等の管理を一括して行うことを目的としたシステムの開発を行った.今回,当院で運用しているWebシステムを拡張し,患者情報と検査内容のデータが共有できる放射性医薬品管理システムを構築したので報告する.
著者
井澤 一雄
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.2056-2061, 1991-12-01

全身照射の線量をモニターした結果.1) 4MVX線を用いた全身照射では, 空間線量分布を良くするためには, 前後左右対向4門照射が必要である.2) 線量測定に使用するファントムは, 躯幹部の大きさが必要である.3) 基準点での実測線量は, 目的線量に対して5%の誤差範囲で照射できている.4) 半導体検出器を用いた線量の測定は, フィルタを使用する場合, 材質別のデータが必要である.稿を終えるに当たり, 本報告の機会を与えて下さいました山田会長, 野原大会会長, 秦座長を始め役員の皆様に深く感謝致します.また本研究にご協力下さいました放射線治療科の皆様にお礼申し上げます.
著者
熊谷 孝三 天内 廣 太田原 美郎 西村 健司 森田 立美
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.927-938, 2004-07-20
被引用文献数
3

日本の医療をとりまく環境が大きく変わりつつあるなか,医療の高度化・専門化などに伴い医療事故の発生要因そのものが増えている.またそうした事故がこれまでになく紛争,訴訟につながっていくという事実を認識しておく必要が出てきた.医療現場にはさまざまな事故発生につながる要因が潜んでいる.しかし,ニアミスなど「ヒヤリ」としたり「ハット」することは比較的よくあっても,通常は事故には至らないものである.たとえエラーをおかしても,誰かが見つけてくれたとか,寸前で気がついたとか,幸運にもなんらかの防御のメカニズムが働いてくれたからである.つまりニアミスやたいしたことでないと見過ごすような些細な出来事を通して,潜在的な危険因子に気づいて対応しておくことや,防御の機能を確実にすることが重要である.つまり,その事例自体が事故防止の方策を教えてくれるということを知るべきなのである.これらのことを受け,本報ではアンケート調査を実施し,放射線業務において発生しているリスク事例について,CT検査,MRI検査,核医学検査,および放射線治療のモダリティについて,その内容と発生原因を事例集としてまとめたので報告する.
著者
倉西 誠 小西 稔 大山 永昭 松井 美楯 伊藤 一 中村 衛 嘉戸 祥介 吉田 寿
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1830-1838, 1994-11-01
被引用文献数
1

SDF法を使ったフィルム上のID自動認識技術を開発し臨床現場に展開させるためにAPR-SYSTEMの提案を行ったが, この成果を臨床技術として完成させるには次のような課題も残されている.(1)傾斜したり裏返しになっているネームプリント部にある数字を認識する時の対策(2)診療現場で許容される処理時間の検討と, ネームプリント部を検出する時の処理時間の高速化(3)提案したAPR-SYSTEMの開発と実用化(4) PUCK等のように特殊な形となっているネームプリント部への対応紙数の関係から割愛したが, (1)に関しては解決手段をほぼ確立しており, 評価結果を含めて別の機会に紹介したい.今後は(2)と(3)を重点に研究を進める予定でいるが, これらの技術やシステムは放射線診療の発展には不可欠な要素であり, 特許等により排他的, 独占的に一部のメーカーや施設で限られて使われるのではなく, 広く検討され, 多くの人々に普及することを強く期待するものである.最後に, 本研究に対し多大のご協力を賜った東京工業大学像情報工学研究施設・山口雅浩先生, コニカ(株)医用販売事業部・山中康司氏, ご支援を賜った富山医科薬科大学附属病院放射線部長・柿下正雄教授並びに放射線技師各位, さらにRIS(TOSRIM)の開発をお願いした(株)東芝医用機器事業部と東芝メディカル(株)の関係各位に深く感謝申し上げます.なお, 本研究は平成5年度文部省科学研究費補助金奨励研究(B)の補助による成果であり, 報告の要旨は第20回日本放射線技術学会秋季学術大会(山形市, 1992年10月), SPIE's Medical Imaging 1994 (Newport Beach, California U.S.A., 1994年2月)において発表した.
著者
歸山 智治 児玉 直樹 島田 哲雄 福本 一朗
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1502-1508, 2002-11-20
被引用文献数
8

To examine the possibility of diagnosing Alzheimer-type dementia, we studied this condition using the run length matrix, on head MR images of 29 Alzheimer-type dementia patients (8 men, 21 women 78.7±6.7 years) and healthy elderly controls (10 men, 19 women 72.3±8.7 years). The results showed that differences in GLN (gray level nonuniformity) and RLN (run length nonuniformity) were statistically significant. Furthermore, discriminant analysis based on GLN and RLN showed a rate of sensitivity of 69.0%, specificity 86.2%, and correct classification 77.6%. Although this rate of correct classification is inferior to the planimetric and volumetric methods, run length matrix is only one method of texture analysis. The results of this study indicate the possibility of MR imaging-based diagnosis of Alzheimer-type dementia with texture analysis including a run length matrix.
著者
小倉 明夫 東田 満治 山崎 勝 井上 博志
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.778-783, 1998-06-20
被引用文献数
10

To calculate the contrast-to-noise ratio (CNR) on magnetic resonance images, an equation selected to match each study is commonly used. The CNR values calculated using these equations may have their own characteristics. Therefore, the characteristics of four commonly calculated CNRs were evaluated in comparison with signal detectability. For the calculation of CNR, a phantom with five different solutions of CuSO_4 was imaged using various scan sequences with different TR and NEX. These images, which had different levels of noise and contrast, were measured for averaged signal intensity and standard deviation of noise in the same ROIs (regions of interest). To define signal detectability, Burger's phantom soaked in the CuSO_4 solution was imaged with the same pulse sequences used to evaluate CNR. Burger's phantom images were evaluated by five observers with a 50% confidence level. The characteristics of each CNR valuewere evaluated by correlating them with signal detectability. The results showed that some calculated CNRs indicated the noise element, but contrast element. From the point of view of signal detectability, the equation using the average of local variance and global variance with respect to coarse pixels was superior to others.