著者
池内 桃子 山口 貴大 堀口 吾朗 塚谷 裕一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.181, 2008

シロイヌナズナの優性変異体<I>rotundifolia4-1D</I>では、細胞数が長さ方向特異的に減少して葉が短くなる。この仕組みを明らかにするために、我々は原因遺伝子である<I>ROT4</I>遺伝子の機能を調べている。<I>ROT4</I>は、6.2kDaの低分子タンパク質をコードしている。その機能領域が、C末端側のROTUNDIFOLIA4-LIKE/DEVILファミリーに共通の領域付近にあることは既に判明していたが、詳細な機能領域は同定されていなかった。また、その領域が切り出されているのか否かを示す知見は、今までに得られていなかった。今回我々は、まず<I>ROT4</I>のコード領域をN末端側およびC末端側から削り込んだものを過剰発現させ、その表現型を調べることにより、機能に必要十分な領域の絞り込みを行った。また、生体内における分子内プロセシングの有無を調べるために、まずROT4:GFPおよびGFP:ROT4融合タンパク質を過剰発現させ、表現型からその機能を評価した。その上で、免疫ブロッティング法を用いて、発現したタンパク質のサイズを調べている。上記の解析およびタグを用いた他の解析に基づき、ROT4の分子機能について議論する。
著者
池内 桃子 山口 貴大 堀口 吾朗 塚谷 裕一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.108, 2009

<I>ROT4 (ROTUNDIFOLIA4)</I>は、陸上植物に広く保存された、機能未知の低分子タンパク質をコードする遺伝子である。シロイヌナズナにおいては、<I>ROT4</I>単一の機能欠損変異体は表現型を示さないが、その過剰発現体では、側生器官を構成する細胞が長さ方向特異的に減少するほか、背丈の矮小化、花柄基部やトライコーム基部の組織が突出するといった多面的な表現型を示す。また,根の短小化が今回新たに見出された。このように、<I>ROT4</I>は植物の発生において重要な機能を担っていると示唆されるが、その分子機能はほとんど明らかになっていない。<br> そこで我々は、まず<I>ROT4</I>の各種deletionシリーズの過剰発現体を作出し、その表現型を調べた結果、 32残基からなる領域が機能に必要かつ十分であることを同定した。この領域は、分子内プロセシングを受けて切り出されることなく機能しているということが、GFPとの融合タンパク質を用いたこれまでの実験から示唆されており、現在その確認を進めている。また、HSP-Cre/Lox系を用いてGFP:ROT4をキメラ状に発現する形質転換体を作成したところ、GFP:ROT4が発現しているセクターにおいて自律的な表現型が観察された。さらに、葉柄-葉身境界の位置がずれる興味深い表現型も見出された。これらの解析の結果を総合し、ROT4の植物の形態形成における機能について議論したい。
著者
田中 将大 幸田 泰則
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.704, 2011

頂芽優勢はIAAが側芽の休眠を誘導することにより生じ、CKはそれを打破する。IAAそのものは側芽の休眠を直接誘導できないことなどから、IAAは根で何らかのシグナル物質を生産させ、それが直接的に側芽の休眠を誘導している可能性が示され、その候補物質としてストリゴラクトンが単離された。我々はバレイショ根の抽出物中に種子発芽や側芽の生長を強く阻害する活性が存在することを見出した。しかし、純化過程での活性本体の挙動はストリゴラクトンとは異なるものであった。そこで、根で生成される側芽休眠誘導物質の単離を試みた。<br>[方法・結果] IAAは側根形成を促進し根量を増加させる。そこでIAA含む液体培地でバレイショ根を大量に単独培養し、抽出材料として用いた。一節を含むバレイショ茎断片を培地に移植すると頂芽優勢が打破され側芽が生長を開始する。この培養系を側芽休眠誘導活性の検定法として用いた。根の抽出物を溶媒分画法により分け、側芽休眠誘導活性を調べた結果、水溶性分画に強い活性が認められた。活性を指標として単離・精製を進めた結果、分子量434の物質が単離された。フラグメントパターンからこの物質は未知のものであると思われた。現在、この物質の頂芽優勢への関与を調べるため、IAAがこの物質の含量に及ぼす影響について検討中である。また構造決定を試みている。
著者
佐々木 直文 佐藤 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.279, 2010

特定の種における複数の環境型を同時に解析することにより、これらのゲノムで共通な仮想的なゲノムの構造を知ることができる。これらのゲノムは、「ゲノムコア」と呼ばれるゲノム間で共通に保存されているシンテニー・ブロックと、HGTによる遺伝子の出入りが確認される、「ゲノムアイランド」領域のモザイク構造になっていることが知られているが、従来の遺伝子の隣接関係に基づく組み合わせ探索の方法では、非常に近縁であるこれらのゲノム間において、ゲノムアイランド領域とゲノムコアのゲノム上での再構成単位を同時に可視化することは難しかった。我々はこれらを可視化することが可能な「位置プロファイル法」を開発した。前回の報告では我々の開発した位置プロファイル法による、シアノバクテリア16種間の解析結果を報告した。本発表では、本手法の近縁ゲノム間の解析への活用事例として、拡張したデータセットによる手法の評価と既存法との比較、およびシアノバクテリア36種での解析と根粒形成菌の近縁種間の解析によって明らかになった、近縁ゲノム間のゲノムの構造的進化とその働きについて報告する。
著者
酒井 達也 A. Jones Mark Smirnoff Nicholas 岡田 清孝 O. Wasteneys Geoffrey van der Honing Hannie 西岡 美樹 上原 由紀子 高橋 美穂子 藤澤 紀子 佐治 健介 関 原明 篠崎 一雄
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.716, 2008

キネシンモータータンパク質は様々な生物において細胞の先端成長及び細胞の形の決定に関与していることが知られている。シロイヌナズナゲノム中には 61 遺伝子のキネシン関連遺伝子が存在することが明らかになっているが、その多くは機能が明らかになっていない。我々はアルマジロリピートドメインを持つ植物特異的キネシン関連タンパク質 ARK1 がシロイヌナズナ根毛の先端成長に関与することを明らかにした。ark1 突然変異体根毛は波状、時に枝分かれの表現型を示し、内側の微小管はより重合して量及び長さが促進されていた。すなわちARK1は根毛内部の微小管量を限定する働きを持ち、これが根毛の先端成長を制御することが示唆された。ARK1 はARK2 及び ARK3 の二つのパラログ含む遺伝子ファミリーをシロイヌナズナゲノム中で形成しており、ARK2 が根の表皮細胞の形態形成に関与することを明らかにした。さらにARK タンパク質と結合する因子として NEK6 タンパク質リン酸化酵素を同定した。nek6 突然変異もまた、シロイヌナズナ表皮細胞の形態形成に多面的な影響を与えており、NEK6 が ARK キネシンに関連した微小管機能を介して細胞の形態形成に関与することが示唆された。
著者
佐々木 直文 佐藤 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.59, 2009

近縁種ゲノムを比較するとゲノムが構造的に安定的な領域(core domain)と流動的な領域(flexible domain)が見いだされる。このうち流動的な領域はゲノムの安定的な構造の間にパッチ状に存在しており、遺伝子の水平移動(HGT)に関連した遺伝子が存在していることが知られている。一方、安定的な領域は遺伝子の並びが比較的保存され、機能的、構造的にゲノムのコアになっていることから、ゲノム再編成の解析に有効であると考えられる。本研究では、進化的に近縁である海洋性シアノバクテリア14種についてゲノム比較を行い、ゲノムの安定的な領域における遺伝子間の距離関係の情報を解析した。その結果、これらの安定的な領域が7つの仮想的な連鎖グループ(VLG)から構成されていることが明らかになった。さらに、これらのVLG間の位置関係を解析した結果、それぞれのVLGが複製開始領域(ori)を基準として決まった位置関係を持っていることが分かった。これらの結果は、ゲノムコア領域がゲノム再編成の情報を持っていることを示唆している。
著者
大坪 由佳 松井 弘善 多賀 有里 日比野 孝紀 金田 隆志 磯貝 彰 蔡 晃植
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.187, 2010

過敏感細胞死は、植物が非病原性菌株を認識したときに誘導される免疫反応の一つであり、核DNAの断片化や膜の透過性喪失などを伴うプログラム細胞死である。我々はこれまでに、イネの過敏感細胞死はOsNAC4によって誘導されることを明らかにした。そこで、OsNAC4による過敏感細胞死誘導の機構を明らかにすることを目的とし、過敏感細胞死誘導時のOsNAC4の局在について調べた。その結果、過敏感細胞死誘導時にOsNAC4はリン酸化されることで核に移行することが示された。また、このOsNAC4の核移行には、分子内のNACドメインのN末端とC末端の領域で制御されることが示された。次に、<I>OsNAC4</I>のRNAi形質転換体を用いたマイクロアレイ解析によって、OsNAC4が139個の遺伝子の発現を制御することが明らかになったので、OsNAC4による転写制御機構について調べた。まず、酵母two-hybrid法を用いてOsNAC4と相互作用するタンパク質の探索を試みたところ、同じサブファミリーに属するOsNAC3と相互作用することが確認された。そこで、OsNAC3が過敏感細胞死誘導に関与するかを一過的発現によって調べたところ、OsNAC3も過敏感細胞死を誘導することが明らかになった。以上の結果から、OsNAC4がOsNAC3と二量体を形成し、過敏感細胞死誘導に関与する遺伝子の発現を制御している可能性が示された。
著者
高橋 宏二 与儀 幸代 木藤 伸夫 加藤 潔
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.277, 2008

細胞壁の伸展特性(張力-伸展速度曲線)は、ロックハート方程式に基づく直線近似によって数値化した二つのパラメータ(壁展性および臨界降伏張力)で簡便に記述されてきた。これら二つのパラメータは伸長生長に伴う細胞壁伸展でpH依存的に調節されるが、私たちはキュウリ(<I>Cucumis sativus</I> L.)胚軸の細胞壁でいずれのパラメータもエクスパンシン(CsEXPA1)によって制御されうることを示した(2006)。ササゲ(<I>Vigna unguiculata</I> L.)の細胞壁において臨界降伏張力のみを制御するタンパク質としてイールディンが示されているが、同時にエクスパンシンも存在すると考えられている。しかし、壁伸展パラメータ制御におけるエクスパンシンとイールディンの役割分担については知見が乏しい。そこで今回、両タンパク質をササゲ細胞壁から抽出・精製し、それらの機能を同一の細胞壁試料で比較検討することにした。測定装置として自動微小応力計(PCM)を使用し、解析法として張力スイープ法を用いた。<br> 現在までのところ、ササゲ胚軸の細胞壁から抽出したエクスパンシンは、壁展性だけでなく臨界降伏張力をも調節しうることが明らかになっている。講演では、細胞壁試料の調整法、熱処理条件およびイールディン機能と比較検討した結果についても合わせて報告する。
著者
片平 理子 松井 亜友 芦原 坦
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.303, 2007

ピリジンヌクレオチドであるNAD(P)は単に酸化・還元反応のみならず、転写やシグナル伝達に関与することが明らかになってきた。ピリジンヌクレオチドのターンオーバー(分解と再合成)は、ピリジンヌクレオチドサイクル(PDC)によりなされるが、生物種によりサイクルの構成酵素は異なる。植物では、PDCは、動物よりも多くの構成酵素からなり、さらにサイクルから派生してトリゴネリンやニコチン酸グルコシドが生産されるなど特有な代謝経路があることが推定されるが、その詳細は明らかにされていない。本研究では、植物におけるPDCの特徴を、ジャガイモ、ミヤコグサ、モヤシマメなどの植物を用い、標識化合物の代謝と関連酵素活性についての実験データと、遺伝子データベースから調べ、動物のPNCと比較した。各植物で、NAD→ニコチンアミドモノヌクレオチド→ニコチンアミドリボシド→ニコチンアミド→ニコチン酸→ニコチン酸モノヌクレオチド→ニコチン酸アデニンジヌクレオチド→NADの7酵素が関与するPNCVIIが機能しうることが示された。これ以外にも、ニコチン酸リボシドを経由するサイクルの存在も示唆された。このサイクルの中間産物であるニコチン酸の一部は、トリゴネリンやニコチン酸グルコシドに変換されるが、どちらに変換されるかは、植物種や器官により異なった。植物におけるこれらのニコチン酸抱合体の役割について考察する。
著者
吉玉 國二郎
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.S0011, 2010

多様な色調を発現しているアントシアニンについての研究は、本邦では20世紀の初頭に始まり、すでに一世紀を越えて受け継がれてきた。その中でも、花弁の多様な色調発現機構に関してはWillstatter等によって提唱されたpH説、柴田桂太による金属錯体説、それにRobinson夫妻によるco-pigment説が広く知られている。金属錯体に関しては、ツユクサから最初に単離されたコンメリニンについて林孝三を中心とした詳細な研究がなされ、近年その立体構造が解明された。その後、Co-pigmentに関しては、異分子間ではなく、同一分子内で自己会合を生じ、安定な色調を呈する色素が、1970年代キキョウやサイネリアの青紫花弁から相次いで単離された。これらの色素は、ほとんどすべてが2分子以上の芳香族有機酸によってポリアシル化されたアントシアニンであった。以後、この色素の構造と安定化機構に関してはNMRやMassで詳細に研究されている。PH説に関しては、以前は花弁搾汁を用いた研究が主であったが、今では単一細胞レベルでの測定が可能となり、花弁のpH変化がミクロのレベルで解明されている。最近、サントリーが最新のバイオ技術を駆使して作出した青バラが市場に出た。この成果は、アントシアニン研究者に将来への夢を与えてくれた。本講演では、研究の歴史を振返り、研究最前線を鳥瞰しつつ今後の研究方向について言及したい。
著者
市川 尚斉 武藤 周 篠崎 一雄 松井 南 中澤 美紀 近藤 陽一 石川 明苗 川島 美香 飯泉 治子 長谷川 由果子 関 原明 藤田 美紀
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.428, 2007

優性突然変異を引き起こすミューテーションは、遺伝子ファミリーを形成する遺伝子群のゲノム的機能解析など、遺伝子破壊型のタギング法では表現型が現れない遺伝子の機能解析に欠かせないテクニックである。我々は総合的な遺伝子の機能付加を目指して、約1万種の独立シロイヌナズナ完全長cDNAからなる標準化cDNAライブラリーをアグロバクテリアのバイナリーベクター上で作成した後、このバクテリアライブラリーをシロイヌナズナに花感染させることでシステマティックに形質付与を起こさせる方法として、Fox Hunting Systemを開発した。T1世代の植物を15,000ライン以上観察したところ、可視変異の起きた1,487ラインを単離した。そのうち本葉でうす緑色の変異を起こした115ラインに関して次世代植物の観察を行ったところ、59ライン(51%)が優性もしくは半優性にT1表現系を再現した。cDNAの再導入によって表現型が再現したラインの1つは、ペールグリーンの性質の他に花芽形成が早まり、徒長成長も示すことが判明した。遺伝子配列を解析したところ、このcDNAは未知の遺伝子で分泌たんぱく質様の構造を持つ95アミノ酸配列の小型のたんぱく質をコードしていることがわかった。この新規機能遺伝子を例にしてFOX-hunting systemの有効性を議論する。
著者
湯淺 高志 石田 さらみ 高橋 陽介
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.95, 2004

RSGはジベレリン(GA)内生量調節に関与しているbZIP型転写因子である。RSGと相互作用するタンパク質の一つは14-3-3タンパク質であり、14-3-3タンパク質はRSGの細胞内局在を制御していた。14-3-3タンパク質は主にリン酸化されたセリン残基を認識して結合し、標的タンパク質の機能を制御している。RSGの114番目のセリン残基が14-3-3タンパク質との相互作用に必須であり、そのセリン残基のリン酸化にCa<SUP>2+</SUP>依存性プロテインキナーゼ(CDPK)が関与していることを前回の学会で報告した(2003年度日本植物生理学会年会)。<br> 本大会ではRSGとCDPKの<I>in vivo</I>における相互作用に関する解析を報告する。我々は <I>in vivo</I> 相互作用解析のためアグロインフィルタレーション法により <I>Nicotiana benthamiana</I> 葉身に発現プラスミドを導入する一過的発現系を用いた。GST融合RSGを一過的に発現させ抗GST抗体で免疫沈降を行い、沈降物中のCDPK活性を組み換えGST-RSGを基質にした<I>in-gel </I>キナーゼアッセイにより調べた。その結果GST-RSGと共沈した画分にRSGのSer114残基をリン酸化するCDPK活性が検出され、RSGとCDPKの <I>in vivo</I> における結合が示された。またリン酸化RSGと同様にCDPK自身も14-3-3タンパク質と結合することを見出した。
著者
大島 良美 四方 雅仁 大坪 憲弘 光田 展隆 高木 優
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.416, 2010

地上部の表皮細胞表面を覆っているクチクラ層は、主に脂質性のクチンポリマーとワックスからなり、水分の損失を防ぐとともに、病原菌や昆虫に対する防御の役割を果す。ワックスは長鎖脂肪酸、アルコール、ケトンなどの混合物で、成長段階や環境変化によって多くの生合成遺伝子が制御されている。これまでに、シロイヌナズナのAP2/ERFファミリー転写因子WAX INDUCER1(WIN1)がクチン及びワックス合成を正に制御することが知られているが、その他の制御因子は明らかになっていない。本研究では、CRES-T法の適用によりワックスが減少して器官が接着する表現型を示す転写因子を探索し、MYB転写因子を同定した。この転写因子をWAX REGULATOR1(WAR1)と名付けた。WAR1キメラリプレッサー(WAR1-SRDX)発現植物の茎表面をSEMで観察したところ、エピクチクラワックスの結晶が減少していた。さらに、マイクロアレイ実験によるWIN1-SRDX発現植物とのトランスクリプトーム比較において、高い相関がみられた。以上の結果より、WAR1はWIN1同様にワックス生合成を制御していることが示唆された。現在、WAR1、WIN1と機能重複している転写因子についても解析を進めている。
著者
中西 華代 堀 菜七子 山篠 貴史 水野 猛
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.425, 2011

避陰反応は植物の光応答系において最も特徴的な現象の一つであり、近接する植物の陰に入った植物は著しく背丈が徒長する。こうした避陰反応は遠赤色光が重要な光シグナルとなりフィトクロム(主にphyB)を介した光情報伝達系により制御されていることが明らかになっている。我々はミヤコグサの光シグナル伝達系の解析をする過程でミヤコグサに特に顕著な避陰反応を見いだしたので報告する。避陰反応には背丈の徒長に加え、早咲き、腋芽からの分岐の抑制などがある。シロイヌナズナでは腋芽からの分岐抑制現象はあまり顕著ではなくほとんど解析されていない。我々はミヤコグサを遠赤色光に富んだ光条件下で生育させ避陰反応を誘導すると腋芽からの分岐が極端に阻害され、白色光条件下で生育させた植物体と全く異なる形態を示すことを見いだした。このことはミヤコグサが「光シグナルによる避陰反応の誘導」と「ストリゴラクトンによる分岐制御」とのリンクを解析する上で格好の材料であることを示している。以上のような背景をもとに、今回は次の点を中心に報告する。(i)ミヤコグサにおける避陰反応としての腋芽分岐制御の詳細な現象の記述。(ii)トウモロコシの分岐制御因子<I>teosinte branched 1</I> (<I>tb1</I>)のミヤコグサオルソログの機能解析。(iii)シロイヌナズナで研究の進んでいる分岐制御MAX経路に相当するミヤコグサ遺伝子群の同定と解析。
著者
藤田 直子 吉田 真由美 斎藤 かほり 宮尾 安藝雄 廣近 洋彦 中村 保典
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.110, 2005

イネのスターチシンターゼ(SS)には10種類ものアイソザイムが存在する。このうち、機能が解明されているのはアミロース合成に関わるGBSSI、我々がTos17ノックアウトイネから変異体を単離したSSIおよびインディカ米、ジャポニカ米のアミロペクチンの構造比較から明らかになったSSIIaのみである。トウモロコシでは登熟胚乳中の最も活性が高いSSはSSIとSSIIIである。SSIIIの変異体である<I>dull-1</I>が古くから知られていたが、イネにおいてはトウモロコシの<I>dull-1</I>に相当する変異体が見つかっておらず、その機能は解明されていない。我々は、イネSSI変異体の単離に引き続き、同じノックアウト集団(約4万系統)からSSIIIa変異体を選抜し、その解析を行った。<br> 得られたSSIIIa変異体は、Tos17がエキソン1に挿入されたものであった。登熟胚乳の可溶性画分のNative-PAGE/SS活性染色を行うと、SSIバンドに加えて非常に移動度の遅い部分にバンドが検出される。SSIIIa変異体ではこのバンドが完全に欠失していたことから、これがイネにおけるSSIIIaバンドであることがわかった。SSIIIa変異体の胚乳アミロペクチンは、野生型に比べて、DP6-8, 17-18, 31-70が低下し、DP10-15, 20-29が増加していた。イネにおけるSSIIIaの機能について、議論する。
著者
川原 愛子 高橋 秀典 井上 康則
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.771, 2005

中性培地(pH6)で育てたレタス芽生えを酸性培地(pH4)に移すと根毛形成を行なう。この根毛形成には、細胞長軸に対して垂直に配向していた表皮細胞の表層微小管(CMT)の配列が崩壊することが必須である。CMT配向のランダム化はオーキシンにより引き起こされ、エチレンはオーキシンの効果を増強させる。本研究では、表皮細胞のアクチンフィラメント(MF)が根毛形成にどう関与しているのか調べた。<br>pH4培地にサイトカラシンBまたはジャスプラキノライドを添加してMFの重合、脱重合を阻害すると根毛形成は抑制された。この時の根毛形成阻害はIAAまたはエチレン前駆体ACCを添加しても回復しなかった。また、pH6でMFの重合、脱重合を阻害すると根毛形成は阻害されたが、CMTランダム化は引き起こされた。このCMTランダム化はオーキシン拮抗阻害剤PCIBまたはエチレン生合成阻害剤AVGを添加しても阻害されなかった。さらに、pH6培地にコルヒチンを添加し、CMTを脱重合させると根毛形成は誘導されたが、ここにPCIBまたはAVGを添加すると根毛形成は抑制された。AVGによる根毛形成阻害はIAA添加により回復したが、PCIBによる阻害はACC添加では回復しなかった。<br>以上のことから、低pHによる根毛形成には、MFの重合・脱重合、CMTの垂直配向の崩壊、オーキシンが必要だとわかった。
著者
藤 泰子 金 鍾明 栗原 志夫 松井 章浩 石田 順子 田中 真帆 諸沢 妙子 川嶋 真貴子 豊田 哲郎 横山 茂之 篠崎 一雄 関 原明
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.422, 2009

真核生物における遺伝子発現制御およびヘテロクロマチン形成には,ヒストンおよびDNAの化学修飾やsiRNAを介したエピジェネティックな機構が関与している.シロイヌナズナにおけるsiRNAを介したエピジェネティックな遺伝子抑制には, siRNA合成に関わる<I>RDR2</I>遺伝子, siRNAを介したDNAメチル化に関わる<I>DRM1, DRM2, CMT3</I>遺伝子, およびヒストン脱アセチル化酵素をコードする<I>HDA6</I>遺伝子が機能すると考えられている. <br>我々は, タイリングアレイを用いたゲノムワイドな発現解析により, <I>hda6</I>変異体において特異的に発現上昇が認められる遺伝子群を同定した. それら遺伝子群は, データベース上に公開されているsiRNAおよびDNAメチル化のマッピング領域と高度に重複していた. 一方, <I>rdr2</I>および<I>ddc</I>変異体(<I>drm1,drm2,cmt3</I>三重変異体)を用いた発現解析の結果から, <I>RDR2</I>や<I>DDC</I>により制御される遺伝子群は, 予想に反して<I>HDA6</I>遺伝子による制御領域とは殆ど一致しないことが明らかとなった. 以上のことから, <I>HDA6</I>による遺伝子抑制は, <I>RDR2</I>や<I>DDC</I>経路に依存しない機構であることが示唆された.
著者
藤 泰子 金 鍾明 松井 章浩 栗原 志夫 諸澤 妙子 石田 順子 田中 真帆 遠藤 高帆 角谷 徹仁 豊田 哲郎 木村 宏 横山 茂之 篠崎 一雄 関 原明
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.375, 2011

シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素HDA6は、RNA依存性DNAメチル化を介したヘテロクロマチン制御因子として同定されている。我々が行った全ゲノム発現解析の結果から、HDA6とDNAメチル化酵素MET1は、ヘテロクロマチン領域を主とした共通の遺伝子を抑制することが示された。また<I>hda6</I>機能欠損により、これら領域ではヒストンアセチル化の上昇など、エピジェネティックなクロマチン状態の推移が認められた。一方、同領域にはRDR2依存的な24nt siRNAが多数マップされるにもかかわらず、その転写活性は<I>rdr2</I>変異では殆ど影響を受けなかった。HDA6標的領域では周辺のDNAメチル化状態に呼応した2つのCGメチル化状態が観察された。周辺のDNAメチル化領域から孤立している場合では、<I>hda6</I>機能欠損により標的領域のCGメチル化は完全に消失していた。一方、DNAメチル化が隣接する場合には、CGメチル化が残留していた。また、これら両領域ではCGメチル化の状態に関わらず、CHGおよびCHHメチル化はともに消失し、転写が再活性化されていた。さらに、HDA6は周囲のDNAメチル化領域には結合せず、その標的領域にのみ結合していることが確認された。これらの結果から、HDA6はRNA依存性DNAメチル化経路に殆ど依存せず、MET1と協調して領域特異的なヘテロクロマチン抑制に機能することが示唆された。
著者
稲田 秀俊 伊藤 利章 長尾 学 藤川 清三 荒川 圭太
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.381, 2005

我々は、酸性雪が越冬性植物に及ぼす影響を調べるため、冬小麦(<I>Triticum aestivum</I> L. cv. Chihokukomugi)緑葉の組織切片を用いて酸性条件下で耐凍性試験を行い、酸性雪ストレスによる越冬性植物の傷害発生機構の解析を進めてきた。これまでに冬小麦の緑葉を硫酸溶液(pH 2.0)の存在下で細胞外凍結させると融解後の生存率が著しく低下することを明らかにした。本研究では、気温の寒暖差の大きい初冬や初春に酸性融雪水中で植物が凍結融解される影響を見積もるため、冬小麦緑葉の切片を純水または硫酸溶液の存在下で平衡凍結融解を繰り返し行った。すると、硫酸溶液共存下では凍結融解を繰り返す度毎に緑葉の生存率は徐々に低下し、純水で処理したものに比べてより生存率が低下した。次に、冬小麦緑葉組織の凍結融解過程のどの段階で酸性化すると生存率が低下するかを調べるために、硫酸溶液を添加する時期を植氷前、融解時、融解後にそれぞれ設定して耐凍性試験を行い、緑葉組織の生存率への影響について評価した。その結果、細胞外凍結した冬小麦の緑葉組織では、融解時に酸性物質が存在することが傷害発生を助長させる要因となりうることが予想された。
著者
池澤 信博 Nguyen Don Gopfert Jens Ro Dae-Kyun
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.252, 2011

セスキテルペンラクトン (STL) はキク科植物に主に見られる二次代謝産物である。多くのSTLは生理学的、薬理学的な重要性を持つにも関わらず、それらの生合成に関する知見は乏しい。我々はSTL生合成研究の第一歩として、最も単純な構造を持つSTLであり、多様なSTLの前駆体であると考えられているcostunolideを対象として研究を行った。<br> Costunolideはセスキテルペノイドの共通前駆体であるファルネシル二リン酸(FPP)からgermacrene Aとgermacrene A acid (GAA) を経由して生合成される。これまでに、FPPからGAAに至る生合成酵素遺伝子の単離はなされている一方で、GAAからcostunolideへのラクトン環形成に関わるP450遺伝子は未同定であった。我々はヒマワリのトライコームESTライブラリーからGAAを基質とする新規P450遺伝子を単離すると共に、そのホモログとしてレタスから、目的とするcostunolide合成酵素遺伝子の単離に成功した。更に、costunolide生合成系をFPP高生産酵母中で再構成する事により、costunolideの酵母中におけるde novo合成に成功した。また、ヒマワリの新規P450とレタスのcostunolide合成酵素遺伝子の反応産物の構造からSTLのラクトン環形成についての新たな知見が得られた。