著者
渡辺 雄一郎 栗原 志夫 霧生 尚志
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.S011, 2004

植物にウイルスが感染すると、同類のウイルスによる再感染から免れることが知られている。われわれはシロイヌナズナ-TMV Cgの系をもちいて、この干渉作用と呼ばれる分子基盤を解析している。まずTMV-CgからYDと名付けた人工弱毒ウイルスを作成した。このYDは増殖量は少ないがちゃんと全身感染し、無病徴で成長に影響を与えない。この状態に強毒TMV Cgが2次感染してもまったく受け付けない。病徴がでないのみならず、RT-PCRによる検出でもその2次感染は検出できない。干渉作用はRNAの配列レベルでの類似性に依存して起こる状況からposttranscriptional gene silencing (PTGS) 現象との類似性が示唆されてきた。しかし、いくつかのPTGSに関与することがしられた遺伝子の変異体シロイヌナズナでもこの干渉作用が観察されることから、PTGSとの相違点が明らかとなった。シロイヌナズナでは種々のmiRNAが合成され、通常の発生制御などに関わることが示唆されてきた。われわれはCgとYDが感染したシロイヌナズナにおいてmiRNAの量に変動があるのかを調べた。その結果、多くのmiRNAがCgの感染によってその蓄積が上昇することがわかった。それに対してYDが感染したアラビドプシスではmiRNA量に変動は見られず、miRNAの量の変動と病徴発現との関連が強く示唆された。
著者
山田 健志 富士 健太郎 嶋田 知生 西村 いくこ 西村 幹夫
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.239, 2005

植物において,原形質膜のタンパク質がどのように液胞へ運ばれ分解されるかは明らかにされていない.そこで,原形質膜タンパク質の液胞への輸送を調べる目的で,シロイヌナズナとタバコ培養細胞(BY-2)におけるエンドサイトーシスを解析した.エンドソームは非常に早く液胞へ到達するので,通常の条件ではほとんど見ることができない.しかし,パパイン型システインプロテアーゼの阻害剤であるE64dでBY-2を処理すると,エンドソームが細胞礎質に大量に蓄積することが分かった.このことは,E64dがエンドソームと液胞の融合を阻害することを示唆している.原形質膜タンパク質(PIP2a,LTI6b)とGFPの融合タンパク質を発現するシロイヌナズナ形質転換株にE64dを処理したところ,GFP蛍光を持つエンドソームが蓄積し,融合タンパク質の分解が阻害された.さらに,ビオチン化阻害剤を用いて,蓄積したエンドソームに2つのパパインホモログ(ENP)が局在することを見つけた.以上の結果から,ENPは原形質膜タンパク質の液胞への輸送過程の一つであるエンドソームと液胞の融合に働くことが示された(1).<br>1) Yamada et al. (2004) Plant J., in press.
著者
中村 輝子
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.S24, 2003

高尾山麓の森林総合研究所多摩森林科学園のサクラのジーンバンク(桜保存林)および新たに開かれた農場を利用してシダレザクラのしだれ性のメカニズムに関する植物生理学的研究をおこなってきた。それまでの制御された実験室環境における幼植物を用いた実験とは異なり、フィールドの実験は、予期せぬ様々な困難を伴う一方、自然環境の中で樹木サクラを育てることにより、そのライフサイクルの進行に伴う動物すなわち、哺乳類、鳥類、および昆虫との様々な関係があり、またこれに関わるアレロパシー物質(クマリンなど)の関与もあることを学ぶことができた。この体験に基づいて「フィールドで植物生理学の実験をおこなうこと」および「フィールドにおけるサクラとそれをとりまく生物間の相互作用」につき論じたい。<br> フィールドにおけるしだれ性に係わるジベレリン等の植物ホルモンの研究は、さらにサクラの重力生物学の研究へと発展し、近年は、三次元クライノスタットを用いたサクラの形態形成とその重力センサーの研究がおこなわるようになった。ここでえられた宇宙環境の植物におよぼす影響をも合わせて論じたい。
著者
Usuda Hideaki
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.528, 2004

The research of simultaneous measurements of CO<SUB>2</SUB> exchange and growth have been continued to evaluate the impact of photosynthesis on biomass. Plants of radish, cv White Cherrish with big storage root were grown for 6 days under 4 different conditions (1: ambient CO<SUB>2</SUB> of ca. 380 ppm and 23 molE/m<SUP>2+</SUP>/day, 2: elevated CO<SUB>2</SUB> of ca. 750 ppm and 23 molE/m<SUP>2+</SUP>/day, 3: ambient CO<SUB>2</SUB> of ca. 380 ppm and 15 molE/m<SUP>2+</SUP>/day, 4:elevated CO<SUB>2</SUB> of ca. 750 ppm and 15 molE/m<SUP>2+</SUP>/day) and the rates of CO<SUB>2</SUB> exchange were monitored continuously during whole periods of growth analysis. The results of growth analysis of RGR, NAR, LAR, LWR, SLA, leaf area, rates of photosynthesis and respiration, and water use efficiencies under 4 different conditions will be discussed comparing the results with radish cv. Kosena with small storage root which was presented last year.
著者
伊藤 剛
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.S053, 2006

イネゲノム全塩基配列決定の完了にともない、更なる実験やデータ解析の基礎情報を作成するため、全ゲノム配列を用いたアノテーションを行った。配列決定後のゲノム解析を良質のものとするには、このアノテーションは高精度でなければならないが、一方で遺伝子予測プログラムに基づくような自動アノテーションには多くの誤りが含まれることが知られている。そこでまず完全長cDNAやESTを最大限利用し、転写の証拠のある領域を中心に遺伝子を同定した。また、自動アノテーションの専門家による精査(いわゆるキュレーション)を全遺伝子に渡って短期間で大規模に行うため、ジャンボリー型のアノテーション会議(The Rice Annotation Project Meeting)を開催し、同定された遺伝子座の全てに亘って可能な限り機能情報を確定した。この結果はRAP-DBとして公開されている。このアノテーション結果に基づき、イネとシロイヌナズナの全タンパク質を用いて配列比較を行ったところ、種分岐後にそれぞれの種で特異的な遺伝子重複は多数あるものの、現在保有している機能ドメインの数や種類、さらにはタンパク質をコードしている遺伝子数は大きく違わないことが明らかになった。加えて、野生稲のBAC端配列を日本晴のゲノムと比較することにより、栽培稲では失われた遺伝子が野生稲には相当数あることも示唆されているので、このような多様性解析についても併せて報告する。
著者
吉田 光毅 今泉 信之 小前 幸三
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.724, 2005

合成オーキシン、2,4-Dはイネ幼根切片で内鞘細胞からの不定根原基の形成を促進する。私達はこの過程でエンド-1,4-β-グルカナーゼの活性が上昇する事を見い出した(Plant Cell Physiol.34:507-514)。このオーキシンで活性上昇する酵素活性を等電点の異なる3画分に精製し、それぞれSDS-PAGEと等電点電気泳動によりクマシーブルー染色で単一のバンドである事を確認した。最も活性の高い画分(MALDI-TOF-MSによる分子量:51216Da、等電点:5.5)を用いて基質特異性を解析した。本画分はCM-セルロース、リン酸膨潤セルロース、(1→3),(1→4)-β-グルカン、セロオリゴ糖(DP4以上)だけでなく、アラビノキシランやキシランのようなタイプII細胞壁の主要マトリクス多糖や、グルコマンナン、1,4-β-キシロヘキサオースも分解した。つぎに精製タンパクのN末端・内部アミノ酸配列をcDNAやゲノム配列と対応させて、全アミノ酸配列を決定した。本遺伝子の翻訳産物(GHファミリ-9)は全長が約68kDaの長さで、精製タンパクよりもC末が約130残基ほど長い事が示された。ノーザン解析により、この遺伝子は幼根切片で2,4-Dにより発現量が増大し、根由来のカルスでも発現している事が示された。単子葉植物イネで、オーキシンの不定根誘導と関わるエンド-1,4-β-グルカナーゼの部分的性質を明らかにする。
著者
吉川 拓夫 竹田 浩之 劉 希珍 周 薇 中川 直樹 李 一勤 桜井 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.273, 2003

花粉管伸長は有性生殖に関わる非常に特殊な伸長で、先端成長と呼ばれ、他には高等植物の根毛やカビの菌糸など一部の組織でしかみられない。我々はテッポウユリの花粉管の細胞壁に結合している2つのエキソ型のグルカナーゼを発見し、それぞれ、LP-ExoI(83kDa)とLP-ExoII(71kDa)と名づけた(Kotake et al. 2000)。これら2つのグルカナーゼは花粉管伸長に伴って活性が高くなり、ラミナリン(1,3-&beta;-グルカン)、セロオリゴ糖、イネ科の1,3;1,4-&beta;-グルカンを加水分解することから、その基質は花粉管に含まれるカロースやセルロースと考えられた。しかし、今回、花粉管細胞壁のヘミセルロース性多糖類を枯草菌のグルカナーゼにより加水分解し、その断片を調べたところ、花粉管のヘミセルロースにはイネ科に特有の1,3;1,4-&beta;-グルカンが存在する可能性が示された。また、花粉管の通り道である柱頭と花柱のヘミセルロースをメチル化分析で調べたところ、1,3-1,4-&beta;-グルカンやカロースの存在は確認されず、主成分はグルコマンナンであった。これらの結果より、LP-ExoIとIIの基質はセルロースやカロースだけでなく、1,3-1,4-&beta;-グルカンである可能性と、柱頭と花柱には基質となるカロースや1,3-1,4-&beta;-グルカンが存在しないことがわかった。
著者
塚本 学 小林 大輔 岩城 俊雄 和田野 晃
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.374, 2003

シアノバクテリアは,無機炭素濃縮機構(CCM)を持ち効率良く光合成を行っている.この CCM の構成要素としてカルボキシゾームが挙げられる.現在までに様々なカルボキシゾーム変異株が報告され,これらは High CO<SUB>2</SUB> 要求性を示す. 本研究では,このような High CO<SUB>2</SUB> 要求性株に対して外来 Ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase/oxgenase (RuBisCO)を導入し,High CO<SUB>2</SUB>要求性の改善を検討した.<br><I>Synechococcus</I> PCC7942においてカルボキシゾームレスミュータント(CL)を作成した.CLは High CO<SUB>2</SUB> 要求性,CO<SUB>2</SUB> 親和性の低下,0.5% CO<SUB>2</SUB> 環境下における顕著な生育阻害という3つの特徴が見られた.この変異株に外来 RuBisCO を導入するため発現ベクターを作成した.プロモーターとして 6803psbAII promoter を,外来 RuBisCO として <I>Chromatium vinosum</I> RuBisCO を用いた.これらが導入された CL(CL-AX)で,RuBisCO 活性が約5倍増加し,最大光合成速度は約 2.5 倍に増加した.さらに CL-AX では,0.5% CO<SUB>2</SUB>条件下において生育阻害が緩和された.
著者
津長 雄太 阪田 忠 藤岡 智明 増子 潤実 諏訪部 圭太 永野 邦明 川岸 万紀子 渡辺 正夫 東谷 篤志
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.667, 2010

イネ冷害は、穂ばらみ期の低温により、葯壁タペート細胞が本来委縮し崩壊に向かう過程で逆に肥大化し、花粉形成が阻害されることにより生じる。一方で、その分子機序について不明な点が多い。そこで本研究では、耐冷性極強のヒトメボレならびに耐冷性やや弱のササニシキを用いて、低温障害と各種植物ホルモンの生合成・応答にかかわる遺伝子群の発現変動との関連を明らかにすることとした。今回解析した遺伝子群は、Hirano et al.,PCP 49:1429によるマイクロダイセクション解析で、花粉小胞子またはタペート細胞での発現が明らかにされたものを選抜した。その結果、低温はGA生合成遺伝子群ならびにその応答性転写因子の発現量を上昇させ、この傾向は、ヒトメボレにおいてより顕著であることがわかった。また、これらは高温障害時に、逆に発現が低下し、GA関連遺伝子群の葯における発現は温度により調節される可能性が示唆された。オーキシン応答性遺伝子については、3細胞期の葯で低温により発現が増加すること、JAの応答の転写抑制因子JAZは発現低下が、その下流にあるMYC遺伝子は発現上昇が、それぞれ両系統でみとめられた。エチレン応答性遺伝子も低温により発現上昇がみられ、その傾向はササニシキにおいてより顕著であった。その他の植物ホルモンにかかわるデータとともに、ファイトトロンを用いた実験系に関する進捗状況も報告したい。<br>.
著者
中嶋 信美 西沢 徹 玉置 雅紀 青野 光子 久保 明弘 佐治 光
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.909, 2006

除草剤耐性遺伝子組換えセイヨウアブラナ(以下GMセイヨウアブラナ)の一般環境中での生育状態の把握を行うことを目的として、関東地方の幹線道路沿いや河川敷に生育しているセイヨウアブラナ(<I>Brassica napus L.</I>)やカラシナ(<I>Brassica juncea L.</I>)の種子を139地点から採取した。種子を閉鎖系温室で播種し、除草剤耐性試験と除草剤耐性遺伝子の存在を調べた。その結果、鹿嶋港の5 地点および国道51号線沿いの8地点からグリホサート(商品名:ラウンドアップ)耐性GMセイヨウアブラナが検出された。これらの個体よりDNAを抽出して、グリホサート耐性遺伝子の有無を確認したところ、1地点を除くすべての個体でグリホサート耐性遺伝子が確認できた。また、鹿嶋港の1地点、国道51号線沿いの2地点及び国道124号線の1地点でグルホシネート(商品名:バスタ)耐性GMセイヨウアブラナが検出された。これらの植物ではグルホシネート耐性遺伝子が1地点を除くすべての個体において確認できた。一方、上記以外の地点から採取した種子からは除草剤耐性個体は検出されなかった。以上の結果、鹿島港、国道51号線および国道124号線沿いにはGMセイヨウアブラナが生育していたと考えられ、それらは輸入した種子が輸送中にこぼれ落ちたことに由来すると考えられる。
著者
篠崎 一雄
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.S057, 2004

2000年にシロイヌナズナのゲノムシークエンスが99.99%の高精度で国際研究チーム(日本ではかずさDNA研が25%を決定)によって決定された。植物では初めてのゲノムシークエンスの決定であり、その後の遺伝子の機能研究の基礎となる大きなマイルストーンであった。その後、アメリカでは2010年プロジェクトが始まり機能解読のためのリソースの整備と機能解析システムの開発などが本格化した。26,000個あるすべての遺伝子の機能を解析するためのT-DNAやトランスポゾンによる遺伝子破壊型変異体の作成と変異遺伝子の同定が精力的に進められつつある。現在、T-DNA遺伝子破壊変異体は世界では数十万株に達しており、大部分の遺伝子にT-DNAが挿入したラインがアメリカ、日本、ヨーロッパで作成されている。これらの遺伝子破壊系統を用いて遺伝子を破壊した系統を集めて網羅的に表現型を観察するフェノーム解析もはじめられている。さらに、我々はmRNAのコピーである完全長cDNAの収集を進めており、すでに18,000個(全遺伝子の70%)収集した。完全長cDNAはゲノム上の遺伝子の位置と転写開始部位を正確に決定するために必要である。さらに遺伝子発現プロファイルを解析するために利用した。また完全長cDNAはタンパク質の機能や構造を解析するための重要なリソースである。現在、これらのゲノムリソースを用いてすべての遺伝子の機能解読が本格化している。
著者
明石 智義 嶋田 典基 青木 俊夫 綾部 真一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.345, 2006

イソフラバンvestitolはミヤコグサなどマメ科<I>Lotus</I>属植物のファイトアレキシンである.これまでにvestitol生合成系の酵素・遺伝子の殆ど全てが同定されたが,イソフラバン骨格の生合成機構は未知であった.リグナン合成系に見出される,プテロカルパンからイソフラバンへの変換と形式的に同等の反応を触媒する還元酵素のホモログをミヤコグサから得て,基質特異性を検討した.ミヤコグサESTデータベースからフェニルクマランベンジルエーテル還元酵素 (PCBER)様の2配列(<I>PTR1</I>, <I>PTR2</I>)を選抜した.PTR1とPTR2は,PCBERやイソフラボン還元酵素とアミノ酸レベルで60%の同一性を示した.大腸菌系で発現したPTR1とPTR2は,NADPH存在下で(-)-medicarpinからvestitolの変換を触媒した.一方,リグナンや2'-hydroxyformononetinを用いたアッセイでは生成物は見られなかった.以上より,PTR1とPTR2がプテロカルパン還元酵素活性を持つことがわかった.ミヤコグサ幼植物体では<I>PTR</I>遺伝子は常に発現し,vestitol生合成のエリシターである還元型グルタチオン処理による発現誘導はみられなかった.今後,酵素反応の速度論的解析や,ミヤコグサ植物体や培養細胞での酵素活性と遺伝子発現の相関を検討し,PTRの植物細胞内での役割を明らかにする.
著者
小澤 友香 青木 俊夫 加藤 謙之 今泉 隆次郎 島村 昌幸 佐藤 修正 田畑 哲之 由田 和津子 作田 正明 綾部 真一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.235, 2010

縮合型タンニン(CT)はアントシアニン生合成の中間体であるフラバン-3,4-ジオールとその誘導体フラバン-3-オール(カテキン類)の重合体で、抗菌作用や昆虫に対する防御作用、食品成分として健康増進に役立つなど、様々な生理活性が注目されている。発表者らはCT生合成調節機構の解明を目的として、アントシアニンとCTがともに欠失しているマメ科モデル植物ミヤコグサ(<I>Lotus japonicus</I>)の<I>viridicaulis1</I>(<I>vic1</I>)および<I>vic2</I>変異体を解析している。昨年の本大会では<I>VIC1</I>がbHLH型転写因子をコードすることを発表した。今回、<I>vic2</I>遺伝子のポジショナルクローニングを行い候補遺伝子の塩基配列を調べたところ、WD40リピートタンパク質をコードするシロイヌナズナの<I>TTG1</I>オルソログの354番目の塩基にナンセンス変異が見つかり、翻訳産物のWD40リピートドメインが欠失していることが推定された。野生型遺伝子を用いて<I>vic2</I>の相補実験を行ったところ、アントシアニンとCTの蓄積が確認された。リアルタイムPCRによる発現解析の結果、<I>vic1</I>および<I>vic2</I>変異体ではジヒドロフラボノール4-還元酵素とアントシアニジン合成酵素をコードする遺伝子の転写物レベルが大きく低下し、相補株では回復しており、VIC1とVIC2がこれら酵素遺伝子の調節因子であることがわかった。
著者
藤原 誠 関根 康介 山本 義治 阿部 知子 佐藤 直樹 伊藤 竜一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.362, 2010

葉緑体は植物細胞内で対称二分裂によって増殖する。葉緑体分裂の初期イベントはチューブリン様タンパク質FtsZが重合して出来るZリング形成であると考えられており、我々はこれまでにZリング形成の空間的制御にはストロマタンパク質MinDとMinEの活性のバランスが重要であることを示してきた。しかし、FtsZタンパク質が葉緑体内の特定の位置で凝集、重合し、さらに高次リング構造を形成する<I>in vivo</I>の過程については、未だ不明な点が多い。今回、我々はFtsZ1とGFPとの融合タンパク質(FtsZ1-GFP)を発現するシロイヌナズナ<I>MinE</I>(<I>AtMinE1</I>)過剰発現体及び変異体を用いて、生体葉緑体内におけるFtsZ1の構造と挙動を詳細に観察した。<br> 経時観察の結果、<I>AtMinE1</I>過剰発現体及び変異体いずれにおいても、ドット状及び短いフィラメント状のFtsZ1構造が存在し、無秩序な運動性を示すことが明らかになった。短いフィラメント状のFtsZはしばしばドット状のFtsZから伸張しており、別のフィラメントに組み込まれ太いフィラメントを形成した。<I>AtMinE1</I>過剰発現体では伸張した葉緑体を巻く螺旋状のFtsZが観察されたほか、<I>atminE1</I>変異体では巨大葉緑体のストロマ中に浮かぶ直径2μm以下のリングが検出された。
著者
小山 時隆
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.S0088, 2009

ウキクサは湖沼・水田などで普通にみられる植物である。単子葉類のサトイモ目に属するウキクサ科は、主に<i>Spirodela</i>属、<i>Lemna</i>属、<i>Wolffia</i>属の3属から構成され、根の本数(それぞれ複数本、1本、0本)によって分類されている。小さく成長が早いといった見た目の特徴がウキクサでは際だっているが、それ以外にも研究者を惹きつける様々な要素を持っている。生理学的研究においてはシロイヌナズナ以上に長い歴史をもつが、遺伝学的あるいは分子生物学的な研究はほとんどなされてこなかった。演者は<i>Lemna</i>属のウキクサを用いて、概日時計・光周性の生理学的・分子生物学的研究を7年余り前から進めてきた。また、2008年から<i>Spirodela polyrrhiza</i>のゲノムプロジェクトがスタートし、さらに、突然変異体単離などの遺伝学的アプローチも進められるなど研究環境整備が進められている。本発表では基礎・応用研究材料としてのウキクサの可能性を議論する。ゲノム情報などの大量データ取得が容易になりつつある現在の研究環境において、古典的な実験植物の魅力を再発見する機会をつくりたいと考えている。また、ウキクサを用いた研究分野の現状について紹介する。
著者
小林 正智 安部 洋 井内 聖 小林 俊弘
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.1034, 2009

理化学研究所バイオリソースセンター実験植物開発室は文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「シロイヌナズナ/植物培養細胞・遺伝子」の中核機関として植物材料の収集・保存・提供を行っている。平成20年度は新たなリソースとして理研植物科学研究センターが開発したシロイヌナズナFOXライン種子の提供を開始した。またヒメツリガネゴケ、ポプラ、タバコの遺伝子材料の追加公開や形質転換培養細胞の公開準備を進めている。このほかデータベースの更新情報や公開を予定しているリソースの準備状況、更には2010年6月に横浜市で開催予定の21st International Conference on Arabidopsis Researchの概要について報告する予定である。
著者
河野 卓成 メヒロートラ サンディア 横田 明穂 蘆田 弘樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.160, 2011

生物進化においてカルビンサイクルはラン藻で完成したと考えられてきた。カルビンサイクルでは11酵素が働いているが、RuBisCO、phosphoribulokinase (PRK)はこの回路特異的酵素である。原始ラン藻<I>Gloeobacter violaceus</I>は、典型的なラン藻PRK遺伝子<I>prk1</I>に加え、2つのPRKホモログ遺伝子<I>prk2</I>と<I>3</I>を有している。大腸菌リコンビナントタンパク質を用いた解析の結果、PRK1は200 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 0.28 mM)、PRK3は23.5 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 5 mM)のPRK活性を示したが、PRK2は全く活性を示さなかった。系統樹においてPRK3は<I>Methanospirillum hungatei</I>などのメタン産生古細菌PRKホモログと共にPRK1と独立したクレードを形成した。解析の結果、<I>M. hungatei</I> PRKは29.3 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 0.21 mM)のPRK活性を示したことから、古細菌型PRKの存在が明らかになった。これまで古細菌においてカルビンサイクルの存在は報告されていないが、本研究結果と<I>M. hungatei</I>がRuBisCOホモログを有することから、この古細菌で原始的なカルビンサイクルが機能していると予想された。
著者
森 美穂子 吉田 久美 近藤 忠雄
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.415, 2004

(目的)ほとんどの花色を担う色素のアントシアニンは、花弁の表層にある着色細胞の液胞に局在する。液胞内の色素濃度は10<SUP>-2</SUP> Mと非常に高く、様々な分子会合により安定化され、かつ色が変化する。我々は、花弁の着色液胞における<I>in vivo</I>花色発現解明に取り組んでおり、今回細胞内での色素の分子会合を明らかにする目的で、花弁および着色細胞の円二色性(CD)を測定し、<I>in vitro</I>の花色再現実験と比較した。<br>(結果)既に我々はネモフィラ(<I>Nemophila menziesii</I>)青色花弁色素がメタロアントシアニンのネモフィリンであることを、構成成分の単離と再合成実験により明らかにしている。Mg<SUP>2+</SUP>-Mg<SUP>2+</SUP>型錯体は紫色だがMg<SUP>2+</SUP>-Fe<SUP>3+</SUP>型錯体は青色を示し、それぞれ可視吸収スペクトルとCDが異なる。生花弁を測定すると乱反射によるノイズのため極大波長を正確に求められない。そこで、吸水させた花弁及びプロトプラスト懸濁液を用いて測定したところ、いずれもMg<SUP>2+</SUP>-Fe<SUP>3+</SUP>型とよい一致を示した。CDには特有の励起子型の負のコットンが認められ、色素同士のキラルな会合の存在がわかった。さらにアジサイ(<I>Hydrangea macrophylla</I>)など数種の花について測定を行ったので合わせて報告する。
著者
高市 真一
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.285, 2004

緑色硫黄細菌<I>Chlorobiaceae</I>は5属15種が知られている.<I>Chlorobium tepidum</I>は全カロテノイド,全ゲノム塩基配列,一部のカロテノイド合成遺伝子が同定された.クロロバクテンと&gamma;-カロテンとその1,2-ジヒドロ体,OH-クロロバクテンとOH-&gamma;-カロテンの配糖体C12:0エステルを持っている.<I>C. phaeobacterioides</I>はイソレニエラテン,&beta;-イソレニエラテンが主成分で,微量のOH-クロロバクテンとOH-&gamma;-カロテンの配糖体C12:0エステルも持っていた.数%の7,8-ジヒドロ-&beta;-カロテンはニューロスポレンの両側が&beta;末端基に環化したと考えられる.<I>C. vibrioforme</I>はクロロバクテンと&gamma;-カロテンが主成分で,微量のOH-クロロバクテンとOH-&gamma;-カロテンの配糖体C12:0エステルも持っていた.数%の7,8-ジヒドロ-&gamma;-カロテンはニューロスポレンの片側が&beta;末端基に環化したと考えられる.<I>C. limicola</I>はクロロバクテン,&gamma;-カロテンだけでなく1,2-ジヒドロクロロバクテンや7,8-ジヒドロ-&beta;-カロテンもあった.しかしカロテノイド配糖体エステルは見つからなかった.<I>C. tepidum</I>からCrtB, CrtP, CrtQ, CrtH, CrtC, CrtUが見つかったが,リコペン・シクラーゼ,糖転移酵素,C12:0脂肪酸転移酵素,1,2-飽和化酵素が必要であり,カロテノイドの多様性は基質特異性の違い,酵素の存在の有無によると考えられる.最近<I>Chlorobiaceae</I>内の分類が再編成された.
著者
藤原 誠 道上 達男 箕浦 高子 青木 誠志郎 片山 光徳 坂山 英俊 柴尾 晴信 関本 弘之 長田 洋輔 福井 彰雅 水澤 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.312, 2007

昨春、新学習指導要領(いわゆるゆとり教育)による高校教育を受けた学生が大学に入学した。東京大学では、これに関連して以前から大学1,2年次における教育のあり方を検討するとともに、論理(モデルを立てる)と実証(実験によって確かめる)のサイクルを伴う自然科学導入プログラムの開発に取組んできた。<br>東京大学教養学部生物部会においては、従来の生命科学系(東京大学では理科2類、3類)学生対象の実習「基礎実験(生物)」の内容を吟味し、新たに「基礎生命科学実験」として新規3種目の開発を含む全11種目の全面的改訂を行った。また、今春から生命科学系の学生に加えて文系と理工系(理科1類)の学生にも実習選択の門戸が開かれるのにともない、教育背景が多様な学生にも効果的に実習内容を伝えられる教科書副教材(DVD教材)を作製した。<br>本大会では、「基礎生命科学実験」の植物関連種目である、(1)電気泳動による光合成関連タンパク質の分離、(2)植物の多様性と生殖(クラミドモナスの接合、シダ植物の世代交代、テッポウユリの花粉管伸長)、(3)被子植物の維管束構造の紹介も含めて、我々の取組みを発表する。