著者
佐々木 大介 芳賀 一 松田 健太郎 三澤 知央
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.158-160, 2018 (Released:2018-09-06)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Damping-off of kale (Brassica oleracea L., Acephala group) was found in Iwata, Shizuoka, Japan in 2016. Isolates obtained from basal stems with typical symptoms were identified as Rhizoctonia solani AG-4 HG-I. Original symptoms were reproduced on healthy kale seedlings after inoculation with the isolates, and inoculated fungi were reisolated from the diseased plants. This is the first report of kale damping-off caused by R. solani in Japan; therefore, we refer to this new disease as “damping-off of kale”.
著者
赤石 行雄 關口 昭良
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3-4, pp.129-132, 1953-07-31 (Released:2009-04-21)
参考文献数
12

1. 苹果紫紋羽病は青森縣に於て數十年前より發生して大害を見て居たが,筆者等は本病原菌の純粋分離中本菌に對し拮抗性を有する多數の微生物を發見分離した。2. 分離した微生物について種々調査した結果,拮抗性の強力なるもの假稱A.B.C.D.E.の5型を選出し其の性質について種々調査した。3. 拮抗作用の強度を調査せるに混合培養法に於いてA.E.D.C.B.,培養基混合法に於いてE.A.D. C.B.,培養基點状移植法に於いてE.D.B.C.A.,塗布培養法ではE.C.D.A.B.の順位であつた。4. 又各種培養基について其の生育状況を調査せるに大豆粕培養基は生育最良なるのみならず微生物増量材料としても好適である。又培養液稀釋量に拮抗性との關係を調査せるに5萬倍まで本菌に對し極めて強力なる拮抗性を認めることが出來た。
著者
古市 尚高 鈴木 譲一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.457-467, 1990
被引用文献数
1

ジャガイモ疫病菌の過敏感反応サプレッサー(抑制因子)を2種類の異なったレースより抽出し,HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により精製した。サプレッサー活性をもつ分画は,親和性菌,非親和性菌ともに分子量(<i>Mr</i>) 4,700と280の成分であった。これらの成分をジャガイモスライス切片(直径,14mm)に滴下処理したあと,非親和性菌遊走子を接種して,ファイトアレキシン(PA)生成をマーカーとして活性の強さを調べた。HPLCにより純化する前のグルカン成分と,両レースの<i>Mr</i> 4,700と<i>Mr</i> 280のサプレッサー分画は,12.5&sim;50&mu;g/diskの濃度ではレース間で統計的に有意の差は示さなかった。以上の結果から,疫病菌の分子量の異なった本グルカン2成分が,レースにかかわりなくサプレッサー活性を有することが示唆された。標準糖と本サプレッサー成分のTLCによる解析の結果,<i>Mr</i> 280の成分はグルコースモノマーと<i>Rf</i>値が近似した。また,HPLCにより遊走子発芽液中にMr 280の成分が検出されることから,感染初期の過程において機能している可能性が示唆された。
著者
本間 善久 鈴井 孝仁
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.643-652, 1989
被引用文献数
35

<i>Pseudomonas cepacia</i> RB425およびRB3292は,抗生物質ピロールニトリンおよびシューダン(HMQ, NMQ)を生産し,ダイコン種子にコーティングすることによって,<i>Rhizoctonia solani</i>による苗立枯病を抑制した。<i>Cymbidium</i> spp.の褐色斑点細菌病菌<i>P. cepacia</i> A2およびA4は,シューダンは生産しないがピロールニトリンを生産し,発病抑制効果が認められた。<i>P. cepacia</i> ATCC No.25416は,いずれの抗生物質も生産せず,抑制効果がなかった。ニトロソグアニジンで誘導したRB425の突然変異株8菌株は抗生物質生産性に変異が認められ,培地上の3種の抗生物質生産性と,<i>R. solani</i>の幼苗への着生率抑制および発病抑制能との間に高い相関関係が認められた。種子当り10<sup>7</sup>cfuのRB425の生菌または,1.0μgの純化したピロールニトリンを種子にコーティングすることによって,およそ50%の発病抑制率が得られた。シューダンを種子当り40μgコーティングした場合には,ほとんど抑制効果がなかった。RB425のリファンピシンおよびナリジキシ酸耐性菌株を用いて播種後の菌数を測定したところ,種子当り9.4×10<sup>6</sup>, 4.7×10<sup>5</sup>および9.4×10<sup>4</sup>cfuコーティングした場合,7日目に幼根1g当り4.6×10<sup>5</sup>, 1.8×10<sup>4</sup>および5.3×10<sup>3</sup>cfuであった。種子コーティングしたRB425は,播種後,幼根表皮細胞の縫合部に沿って生育し,根圏で増殖するのがSEMによって観察された。これらの結果から,<i>P. cepacia</i> RB425はダイコン幼苗根圏で増殖でき,種子コーティングによるダイコン苗立枯病の抑制効果にピロールニトリンが重要な役割を有すると考えられた。
著者
佐藤 衛 福本 文良
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.393-396, 1996
被引用文献数
11

香川県の3点のキャベツ,三重県の2点および鳥取県の1点のブロッコリーから<i>Peronospora parasitica</i>のサンプルを集め,各サンプルから5菌株,合計30の単胞子分離株を調製し,これらの宿主範囲を調査した。供試植物として,<i>Brassica oleracea</i>(カリフラワー,キャベツおよびブロッコリー18品種)の他,<i>B. campestris</i>(タイサイ,ミズナ,アブラナ,ハクサイおよびカブ8品種),<i>B. juncea</i>(カラシナ1品種),<i>B. napus</i>(ルタバガ1品種)および<i>Raphanus sativus</i>(ダイコン2品種)を用いた。接種試験の結果,分離源と同種の植物である<i>B. oleracea</i>の3作物の16品種は高い感受性を示し,本種は宿主植物と考えられた。また,<i>B. napus</i>は中程度の感受性を示したことから宿主となる可能性が示唆されたが,<i>B. campestris</i>, <i>B. juncea</i>, <i>R. sativus</i>は抵抗性を示したことから非宿主と考えられた。供試したべと病菌はすべて同じ系統に属し,<i>B. oleracea</i> (<i>B. napus</i>も含む可能性がある)を宿主とする系統と考えられた。<i>B. oleracea</i>の中でキャベツの2品種,ゴールデンベストおよびYR-さわみどりは抵抗性を示した。供試した単胞子分離菌株で病原性に違いは見られなかった。
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.531-539, 1987
被引用文献数
9

ユウガオつる割病はユウガオの重要な土壌伝染性病害であるが,その連作にかかわらず,発生が認められない圃場が存在し,これらの圃場ではユウガオと共にネギの混植が慣行的に行われている例が多かった。そこで,この原因を調べたところ,現地のネギ地下部からは高率に<i>Pseudomonas gladioli</i>が分離され,これらはユウガオつる割病菌(<i>Fusarium oxysporum</i> f. sp. <i>lagenariae</i>)に対して高い抗菌性を示した。そこで,<i>Pseudomonas gladioli</i>を中心に,20種の植物より分離した<i>Pseudomonas</i>属細菌4種90菌株について,つる割病菌に対して強い抗菌性を有し,かつネギの地下部に定着性のある菌株を探究したところ,<i>P. gladioli</i> M-2196が選抜された。ネギおよびニラの地下部に本菌株を浸根接種し,ユウガオつる割病汚染土にユウガオと混植したところ,つる割病の発病が著しく抑制され,その実用性が確認された。以上の結果,抗菌性を持つ細菌と定着植物を用いた土壌病害の生物的防除の可能性が明らかになった。
著者
橋本 俊祐 河村 郁恵 中島 雅己 阿久津 克己
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.104-107, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

The efficacy of Bacillus subtilis var. natto, a beneficial food microbe, was tested as a control for gray mold of strawberry. When five isolates of Bacillus subtilis var. natto were cultured with the gray mold fungus on potato sucrose agar plates, all isolates inhibited fungal growth. Isolate No. 2, which was the most inhibitory of the fungus in vitro, reduced disease progress in both detached leaves and flowers. These results suggest that isolate No. 2 of B. subtilis var. natto has potential as biological control agent of gray mold of strawberry plants.
著者
後藤 岩三郎
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.447-455, 1978
被引用文献数
12

標識品種H-79に銀河をもどし交配し,そのB<sub>5</sub>F<sub>4</sub>からもつれ銀河を育成した。もつれ(<i>la</i>)は戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>と密接に連鎖する。戦捷×もつれ銀河,戦捷×もつれ亀の尾,銀河×H-79等の分析から次のことが明らかになった。(1)銀河には戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>がとりこまれていない。これが銀河のいもち病抵抗性を低下させる主な要因と考えられる。田戦捷,真珠,双葉,秀峰やほまれ錦も銀河と同程度の抵抗性を示し,戦捷よりは弱い。したがって戦捷の高度抵抗性導入の育種過程の早い段階で低下したものである。(2)銀河には2対の抵抗性遺伝子があり,その相加的な効果で本品種の中程度の抵抗性を支配する。この2対は戦捷の他の2対の抵抗性遺伝子と複対立関係にあるか,あるいは極めて近く連鎖する。
著者
後藤 岩三郎
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.447-455, 1978
被引用文献数
5 12

標識品種H-79に銀河をもどし交配し,そのB<sub>5</sub>F<sub>4</sub>からもつれ銀河を育成した。もつれ(<i>la</i>)は戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>と密接に連鎖する。戦捷&times;もつれ銀河,戦捷&times;もつれ亀の尾,銀河&times;H-79等の分析から次のことが明らかになった。(1)銀河には戦捷の<i>Rb</i><sub>1</sub>がとりこまれていない。これが銀河のいもち病抵抗性を低下させる主な要因と考えられる。田戦捷,真珠,双葉,秀峰やほまれ錦も銀河と同程度の抵抗性を示し,戦捷よりは弱い。したがって戦捷の高度抵抗性導入の育種過程の早い段階で低下したものである。(2)銀河には2対の抵抗性遺伝子があり,その相加的な効果で本品種の中程度の抵抗性を支配する。この2対は戦捷の他の2対の抵抗性遺伝子と複対立関係にあるか,あるいは極めて近く連鎖する。
著者
田浜 康夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.156-161, 1967-06-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1

熊本県玉名郡岱明町と菊池市の桑樹萎縮病は圃場観察において外見的にまたその病徴発見過程において顕著な差異のあることはすでに明らかにされているが,これらは環境条件によって左右されるものではなく,その萎縮病における本質的なものと思考された。このことから両者は病原ウイルスの系統の異なるものとみて,前者を玉名系(Tamana severe strain),後者を菊池系(Kikuchi mild strain)とした。
著者
澤岻 哲也 嘉手苅 佳太 新崎 千江美 田場 聡
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.119-123, 2014
被引用文献数
7

我が国のマンゴー(Mangifera indica L.)は沖縄県,鹿児島県および宮崎県などの西南暖地を中心に栽培が盛んに行われているが,果実の流通過程においてマンゴー炭疽病の発病が深刻な問題となっている。本病は輸送中の果実に黒色円状の病斑が発症,進行するため,経済的損失だけでなく市場や消費者の信頼,さらには産地ブランドの評価にも大きく影響を与える。そのため,生育期の圃場における防除対策が急務となっている。マンゴー炭疽病は,Colletotrichum gloeosporioides (Penzig) Penzig and Saccardo(岸,1998)およびC. acutatum J. H. Simmonds(田場ら,2004)の2種の糸状菌によって引き起こされ,特にC. gloeosporioidesは圃場での優占種であることが明らかとなっている(澤岻ら,2012)。沖縄県の施設マンゴーにおける一般的な炭疽病対策は,出蕾期の1月以降から収穫期の7月まで,ビニール被覆による雨よけと併せて薬剤防除が行われている。とくに着果期から袋かけ直前までの主要散布剤として,残効性に優れ,果実の汚れが少ないストロビルリン系薬剤(以下,QoI剤)であるアゾキシストロビン剤やクレソキシムメチル剤の散布が普及,定着しつつある。しかし,佐賀県(稲田ら,2008),奈良県(平山ら,2008)および茨城県(菊地ら,2010)においてQoI剤耐性イチゴ炭疽病菌が既に確認されており,防除暦における散布回数の削減を余犠なくされている。2010年4月現在,沖縄県におけるマンゴー炭疽病菌では本剤に対する防除効果の低下事例ならびに耐性菌の発生は確認されておらず,その実態については不明である。
著者
土居 養二 寺中 理明 与良 清 明日山 秀文
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.259-266, 1967-09-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
42
被引用文献数
184 490

1. クワ萎縮病の罹病新梢の茎葉を電子顕微鏡観察したところ,既知の植物ウイルス粒子様のものは見出されなかつたが,篩管,ときに篩部柔細胞内に,大小(80∼800mμ)多数の球∼不斉楕円形のMycoplasma様あるいはPLT様の粒子が見出された。これらは2層の限界膜(約8mμ)に包まれ,細胞壁はなく,小形(100∼250mμ)の粒子は概ね球形でribosome様顆粒(径約13mμ)で充たされ,ときに核質様の繊維状領域を示すものもあり,大形(300mμ以上)の粒子は中心が空虚で僅かに核質様の繊維が認められ,顆粒は周辺に偏在する。大小粒子が篩管内に混在する点からみて,小形粒子が生長して大形粒子となるらしく,またときに大形粒子が一部くびれて小形粒子ができるごとき像,小形粒子が大形粒子の内部に数個生じ大形粒子が崩解するような像も認められた。健全植物にはこのような粒子は見出されない。なお,テトラサイクリンで萎縮病から回復したクワ茎葉からはこの粒子は見出されなくなつた。2. ジャガイモてんぐ巣病の罹病茎葉篩部にも大形粒子がやや多いが,同類の大小粒子が見出された。異常肥大した篩部柔細胞の細胞質には大形粒子が充満する例がしばしば認められた。3. Aster yellows感染で叢生萎黄症状を示したペチュニア茎葉篩管部にも前2者と同類の大小粒子が見出された。4. 典型的なてんぐ巣症状を示すキリの側生枝茎葉の篩管内にもクワ萎縮病と同類の大小粒子が見出された。症状の著しい場合は多くの粒子が見出される傾向がある。5. 4種の“叢生萎黄”グループに属する植物病で茎葉篩部に共通して見出された同類の粒子は植物寄生では未報告であるが,それらの形状,構造,所在様式などから,Mycoplasmaに近い寄生微生物であるとの結論に達したので,さらにそれらの病原的意義について若干の考察を行なつた。
著者
道家 紀志 酒井 進 冨山 宏平
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.386-393, 1979
被引用文献数
6

ジャガイモ組織に過敏感反応を誘導する<i>Phytophthora infestans</i>の細胞壁成分(CW)とその誘導を抑制する水溶性グルカン(WSG)を各種宿主及び非宿主植物葉に,カーボランダムによる摩擦塗布処理をし,葉組織の過敏感反応性を調べた。ナス科のジャガイモ,トマト,ピーマン,ナス,トウガラシ,ダチュラ,ホーズキ,マメ科のダイズ,インゲン,エンドウ,ソラマメ,ササゲ,ユリ科のタマネギ,ネギ,テッポーユリの葉はCWに反応し,処理後24時間後には褐変え死細胞を生じた。ナス科のタバコ,アカザ科の4種,キク科の3種,十字花科の4種,イネ科の4種,バラ科の3種の各植物葉はいずれも,処理後72時間以内にも肉眼的観察可能な細胞の反応は示さなかった。 トウガラシ,ホーズキ,ダイズ,ササゲ及びシロザの葉はCWと同様に,WSGとも反応し褐変え死細胞を生じた。それらの処理により過敏感反応を起し得る葉は,処理後,5時間以内に異常な電解質の漏出を起した。これらの結果は,特定な科に属する植物が,<i>P. infestans</i>のCW及びWSGに対して,宿主・非宿主とにかかわりなく過敏感反応を起す性質を持つことを示唆した。
著者
道家 紀志 酒井 進 冨山 宏平
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.386-393, 1979
被引用文献数
6

ジャガイモ組織に過敏感反応を誘導する<i>Phytophthora infestans</i>の細胞壁成分(CW)とその誘導を抑制する水溶性グルカン(WSG)を各種宿主及び非宿主植物葉に,カーボランダムによる摩擦塗布処理をし,葉組織の過敏感反応性を調べた。ナス科のジャガイモ,トマト,ピーマン,ナス,トウガラシ,ダチュラ,ホーズキ,マメ科のダイズ,インゲン,エンドウ,ソラマメ,ササゲ,ユリ科のタマネギ,ネギ,テッポーユリの葉はCWに反応し,処理後24時間後には褐変え死細胞を生じた。ナス科のタバコ,アカザ科の4種,キク科の3種,十字花科の4種,イネ科の4種,バラ科の3種の各植物葉はいずれも,処理後72時間以内にも肉眼的観察可能な細胞の反応は示さなかった。 トウガラシ,ホーズキ,ダイズ,ササゲ及びシロザの葉はCWと同様に,WSGとも反応し褐変え死細胞を生じた。それらの処理により過敏感反応を起し得る葉は,処理後,5時間以内に異常な電解質の漏出を起した。これらの結果は,特定な科に属する植物が,<i>P. infestans</i>のCW及びWSGに対して,宿主・非宿主とにかかわりなく過敏感反応を起す性質を持つことを示唆した。
著者
善 正二郎 奥田 充 藤 晋一
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.269-274, 2010

アイリスイエロースポットウイルス(IYSV)はトマト黄化えそウイルス(TSWV)をタイプ種とするトスポウイルス属に属し、ネギアザミウマにより媒介される。IYSVはダッチアイリスから最初に分離されたウイルスであり、我が国ではアルストロメリアで初めて感染が報告された。その後、トルコギキョウ、タマネギ、ネギ、ニラで発生が報告されている。宿主植物のIYSVによる病徴は、えそ輪紋、えそ斑点、えそ条斑など様々であるが、発病部位である葉が商品価値に影響を与えるトルコギキョウやネギなどでは、IYSVの発生が直接、農家経営に影響を与えるため、発生地域では生産上の重要な病害となっている。本研究では、ネギアザミウマまたはアザミウマ類に農薬登録がある数種の殺虫剤について残効期間とIYSV感染に対する抑制効果を検討した。
著者
富濱 毅 西 八束 荒井 啓
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.3-13, 2006 (Released:2007-09-14)
参考文献数
31
被引用文献数
5 9

赤焼病細菌の運動性やバイオフィルム形成, 葉圏での生存, 病原力に及ぼす菌体外多糖質 (EPS) 産生および鞭毛の影響について, 突然変異株を用いて検討した. EPS産生はバイオフィルム形成, 葉圏における細菌集合体の形成, 無傷部位での乾燥耐性に関与したが, 病原力に対する影響はなかった. 鞭毛は, Swim型の運動性, バイオフィルム形成, 葉圏における細菌集合体の形成, 有傷部位での生存, 組織内での増殖に関与した. さらに, EPSと鞭毛との交互作用が, バイオフィルム形成および無傷部位での生存に関与することが明らかとなった. Swarm型の運動性には, 鞭毛およびEPS以外の要因が関与し, Swarm型の運動性と病原力との間には高い相関が見られた. 以上の結果から, 赤焼病細菌のEPS産生は主に葉圏の無傷部位における生存に, 鞭毛は葉圏の有傷部位における生存および組織内での増殖に重要な役割を持つことが明らかとなった.