著者
神 勝紀 桜井 健一 平子 慶之 唐澤 豊
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.62-64, 1998-01-25
参考文献数
10

Digestibilities and nitrogen retention of non-gelatinized and gelatinized limed splits, and effects of the limed splits on digestibilities of nutrients were studied in colostomized chickens. Egg albumen (control diet), a 1:1 (on the basis of crude protein) mixture of egg albumen and non -gelatinized limed split (AS diet) and that of egg albumen and gelatinized limed split (AGS diet) were used as the dietary protein source. All diets contained 14% crude protein. Decreased feed consumption was observed in AS diet and AGS diet groups. There was no difference in digestibilities of nutrients among 3 groups, but nitrogen retention in AS and AGS diet groups was lower than in control group. Results obtained here indicate that more than 90% of limed split is digested by chickens irrespective of gelatinization and that the palatability of limed split should be improved for practical use.
著者
神 勝紀 河合 弘恵 桜井 健一 平子 慶之 唐澤 豊
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1085-1088, 1997-11-25
参考文献数
15
被引用文献数
3

The aim of the present study is to estimate utilization of limed split as a protein source of the diet for chickens. Egg albumen (control diet), a 1:1 (on the basis of crude protein) mixture of egg albumen and limed split (AS diet) and that of egg albumen and gelatinized limed split (AGS diet) were used as the dietary protein source. All diets contained 20% of crude protein. Chicks were force-fed on the diets for 10 days. Composition and contents of amino acids in limed split were much the same as those in gelatinized one. Out of essential amino acids, glycine was extremely excessive, while histidine, isoleucine, methionine and tyrosine were deficient, and cystine and tryptophan were negligible. AS and AGS diets were suboptimal in threonine and tryptophan. There was no significant difference in body weight gain, feed efficiency and nitrogen retention among control, AS and AGS groups. Results obtained here suggest that limed split may be used as a protein source of the diet for chicks, supplying essential amino acids, and that gelatinization of limed split may be unnecessary.
著者
曹 兵海 唐澤 豊 神 勝紀
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.65-68, 1998-01-25
参考文献数
7

This study was conducted to examine effects of dietary cellulose levels on growth and nitrogen utilization in young chicks fed equal amounts of nutrients of a 15% protein diet. Body weight gain significantly increased with an increase in dietary cellulose level until 3.5%, then decreased linearly up to an inclusion of 20% of cellulose in the diet (3.5 vs. 0, 10 or 20%, P<0.05). Feed efficiency was not influenced by dietary cellulose levels from 0 to 5%, but decreased by 10% and more dietary cellulose levels(10 vs. 1.5, 3.5 or 5%, P<0.05; 20 vs. 0, 1.5, 3.5 or 5%, P<0.05). Nitrogen(N) retention, N retention rate and retention rate of absorbed N were significantly increased by 1.5% cellulose level (P<0.05), then significantly decreased by 3.5% and more dietary cellulose levels (P<0.05). Apparent digestibility of dietary protein was not influenced by changes in dietary cellulose level. It is concluded that the highest rates of growth and N retention and retention rate are obtained by 1.5% dietary cellulose, and lowered by 3.5% and more dietary cellulose levels when protein intake is restricted to 15% crude protein in chicks.
著者
平田 昌弘 板垣 希美 内田 健治 花田 正明 河合 正人
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.175-190, 2013-05-25
参考文献数
28

本研究は,BC1200~BC300年頃に編纂されたVeda文献/Pāli聖典をテキストに用い,古代インドの乳製品を再現・同定し,それらの乳加工技術の起原について推論することを目的とした.再現実験の結果,dadhi/dadhiは酸乳,navanīta/navanīta・nonītaはバター,takra/takkaはバターミルク,ājya/&mdash;はバターオイル,āmikṣā/&mdash;はカッテージチーズ様の乳製品,vājina/&mdash;はホエイと同定された.sarpiṣ/sappihaはバターオイル,sarpirmaṇḍa/sappimaṇḍaはバターオイルからの唯一派生する乳製品として低級脂肪酸と不飽和脂肪酸の含有量が多い液状のバターオイルであると類推された.Veda文献・Pāli聖典は,「kṣīra/khīraからdadhi/dadhiが,dadhi/dadhiからnavanīta/navanītaが,navanīta/navanītaからsarpiṣ/sappiが,sarpiṣ/sappiからsarpirmaṇḍa/sappimaṇḍaが生じる」と説明する.再現実験により示唆されたことは,この一連の加工工程は「生乳を酸乳化し,酸乳をチャーニングしてバターを,バターを加熱することによりバターオイルを加工し,静置することにより低級脂肪酸と不飽和脂肪酸とがより多く含有した液状のバターオイルを分離する」ことである.さらに,ユーラシア大陸の牧畜民の乳加工技術の事例群と比較検討した結果,Veda文献・Pāli聖典に記載された乳加工技術の起原は西アジアであろうことが推論された.
著者
賀来 康一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.618-629, 1995-07-25
被引用文献数
14 2

畜産生産者の,現在設立の準備が進行している国内鶏卵•豚肉先物市場活用に関する検討を実施した.1993年現在,飼養頭羽数について採卵場の約60%,豚の約35%が農家以外の生産者によって飼養され,鶏卵•豚肉に関する生産主体は,農家から企業への移行過程にあり,生産者がヘッジャー(リスク削減の手段を取る人)として先物市場を活用する前提条件を満たしつつある.本稿ではまず,1983年から1993年までのシカゴ•マーカンタイル取引所(CME)上場畜産物先物3商品(Live Hog,Frozen Pork Bellies, Feeder Cattle)および1988年から1993年までの国内先物市場上場10商品(小豆,米国産大豆,トウモロコシ,粗糖,乾繭,生糸,金,銀,白金,ゴム),さらに「農村物価賃金統計」による国内豚肉(肥育豚生体10kg)•鶏卵(M1級,10kg)の値動きデータを使用して,期間1年,6ヵ月,1ヵ月の価格に関する変化率を比較した.その結果,鶏卵•豚肉の価格変化率は他の先物商品と比較して,ヘッジ(リスクを他へ移転すること)を必要とする水準にあることが明らかとなった.国内先物市場上場10商品の,順ザヤ(当限価格よりも期先価格が高い状態)または同ザヤ(当限価格と期先価格が等しい状態)期間の調査期間に占める比率と,発会ごとに売買最低単位である1枚を売り,納会ごとに売り契約を乗り換えるRoll hedge(生産者にとって,長期間にわたる大量の生産物の販売価格を,満期が個々に異なる一連の先物契約を利用してヘッジする方法)による損益の関係はr2=0.6200 (rは相関係数)であり,相関が有意に認められた(p<0.01).同様にCME畜産上場3商品のRoll hedgeとの関係もr2=0.9999となり有意な相関が認あられた(p<0.01).先物商品のうちStrorables(在庫可能商品)は順ザヤまたは同ザヤ期間が逆ザヤ(当限価格が期先価格よりも高い状態)期間よりも長い商品が多く,順ザヤまたは同ザヤ期間が長いほど売り方が有利であることが明らかとなった.また,国内先物市場10商品に関するRoll hedgeによる損益と実施年数から,Storablesに関する長期間のRoll hedgeは有利である傾向が示唆された.いっぽう,Nonstorables(在庫不能商品)は,逆ザヤ期間が長く,長期間のRoll hedgeは不利である傾向が示唆された.現在検討中の畜産物価格指数はNonstorablesと考えられるので,畜産生産者が先物市場を経営の安定化を目的として活用するには,売りヘッジを生産畜産物の範囲内にとどめ,ヘッジャーとして生産物の売却価格の将来的な固定を図るべきであり,オーバーヘッジ(生産者にとって,生産販売予定量以上を先物市場において売り約定すること)はリスクが大きい.いっぽう,畜産物先物市場を収益拡大の場として活用するにはストラドル(1つの先物契約を購入すると同時に,もう1つの先物契約を売却し,その価格の連関の変化から利益を得ようとする取引)等の技術が必要となる.
著者
苗川 博史
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.241-245, 2004-05-25
参考文献数
10

本研究は,モンゴル遊牧体系における二地域の夏営地のヒツジ母子間100組を対象に,音節の組み合わせによる発声タイプと行動型を,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間との関係について検討した.音節の組み合わせによる母子間の相互作用については,子ヒツジがイニシアチブを有した8タイプと母ヒツジがイニシアチブを有した5タイプに分類された.母子ヒツジともに口の開および閉による発声の割合は,約9 : 1と開いた方が多く,また,母ヒツジが双方向(75%),子ヒツジは一方向(46%)と発声なし(31%)を示す特徴があった.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8(母子双方に発声なし)は,母子間距離と母子が遭遇するまでの時間との間に有意な正の相関が,また吸乳時間と母子間距離の間には有意な負の相関があり,母子間距離によって母子が遭遇するまでの時間,吸乳時間に関連性があることを示唆した.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ5(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答なし)は,食草移動時に71.4%,休息行動時に28.6%出現した.この発声タイプ5は,発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/)との間に,母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差があり,母子が遭遇するまでの時間,および母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.子ヒツジの発声タイプ8は,食草移動時に28.6%,休息行動時に71.4%出現し,食草移動時間および休息時間の割合が発声タイプ5と対称的であった.この発声タイプ8は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ1(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnae/),発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/),発声タイプ3(子ヒツジの発声/nee/と母ヒツジの応答/nnae/)との間に母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差が見られ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.母ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプIII(母ヒツジの発声/nnae/と子ヒツジの応答/nee/)は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8との間に,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離において有意差が認められ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声のタイプが異なることを示唆した.今回の結果から,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間は,発声時における音節の組み合わせによるタイプと行動型によってそれぞれ異なることが示唆された.
著者
苗川 博史
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.228-239, 2004-05-25
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

14頭もしくは20頭の小群内において,生後3週齢までのヒツジ母子5組の音声コミュニケーションにおける母子間の反応(以下相互作用)を音声表記と情報量に基づいて検討し,母子間の接近行動の経日的推移について解析した.音声表記については,調音作用の観点から口の開閉によって構成される母ヒツジ/nnn/と/nae/と/nnae/および子ヒツジ/nnn/と/eee/と/nee/を発声タイプとして表した.相互作用については,母子それぞれ3タイプの発声と,これらに対する反応を8タイプに分類した24通りのダイアド(母子いずれかの発声とその後に続く一方または双方の行動を1組の完了行動とする)ならびに,それらの情報量について解析した.また,接近行動については,発声の有無に分けて母子ペア毎に経日的に解析した.その結果,母子間の相互作用は,情報伝達機能上,口を開けた発声が主導を占め,発声後は相手を視認もしくは注視し,その後の行動に移行する反応系で構成されていた.その際には,口の開閉のタイプによって生起する反応のしかたに個体差が見られ,発声のしかたによって応答が異なることが示された.また,いずれの発声においても母子ヒツジ間に共有される情報量は0ビットよりも大きく,母子ヒツジ双方に情報の共有があったことが示された.音声表記の結果については,発声タイプによって周波数と持続時間に違いが認められ,それぞれの発声構造の特徴を示すことができた.すなわち,母ヒツジの場合は,口を開けた/nae//nnae/タイプが,口を閉じた/nnn/タイプよりも周波数が50ヘルツ高く,発声時間も0.1秒長かった.子ヒツジの場合は,口を開けた/eee/と/nee/タイプが,口を閉じた/nnn/タイプよりも周波数が50ヘルツ高いものの,発声時間は0.1&sim;0.2秒短かった.発声に基づく接近のイニシアチブは,生後3週齢までは母ヒツジ主導型であったが,発声によらない接近のイニシアチブの割合については,子ヒツジの方が大きい傾向にあった.
著者
ブンチャサック チャイヤプーン 田中 桂一 大谷 滋 コリアド クリスチーノM.
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.956-966, 1996-11-25
参考文献数
43
被引用文献数
6 2

低タンパク質飼料にメチオニンとシスチン(Met+Cys)を添加することによって雌ブロイラーヒナ(0から21日齢)の成長と脂肪蓄積に及ぼす影響を検討した.17%タンパク質(CP)含量試料(CP;17%,代謝エネルギー(ME);3,017kcal/kg)にMet+Cysを0.64%,0.93%,1.25%あるいは1.50%を添加した.23%CP含量の飼料(CP;23%,ME;3,017kcal/kg)を対照区とした.飼料摂取及び飲水は自由にさせた.増体量は23%CP飼料区の方が17%CP飼料区より大きかった.しかしMet+Cys1.50%添加17%CP飼料区の増体量は23%CP飼料区の値に近づき統計的に有意な差は観察されなかった.飼料要求率は23%CP飼料区の方が良かった.しかしタンパク質効率,飼料及びエネルギー摂取量は17%CP飼料区と23%CP飼料区との間で統計的に有意な差は観察されなかった.腹腔内脂肪量17%CP飼料区の方が高かった.しかし17%CP飼料区間ではMet+Cysの添加量が大きいほど腹腔内脂肪量は減少した.肝臓におけるacetyl-CoA carboxylase活性は処理間で差が観察されなかったが,fatty acid synthetase活性は17%CP飼料区の方が高い値を示した.一般に,低タンパク質飼料を給与すると肝臓,血清及び胸筋中のトリグリセリド含量は高くなるが,Met+Cysを1.5%添加することによって肝臓中のトリグリセリド含量は高タンパク質飼料区の値に近づいた.血清及び胸筋中の遊離型コレステロール含量は飼料中タンパク質含量の影響を受けなかった.肝臓では17%CP飼料区より23%CP飼料区の方がむしろ高かった.肝臓中リン脂質含量は飼料中タンパク質レベルやMet+Cys添加量による影響は観察されなかったが,胸筋中リン脂質含量は17%CP飼料区へのMet+Cys添加量の増加に伴って高くなる傾向を示した.本実験の結果は17%CP飼料でも適切な量のMet+Cysを添加することによって21日齢までの成長中ブロイラーの成長を改善することができることを,また腹腔内脂肪量は,23%CP飼料区の値よりは大きかったが,17%CP飼料にMet+Cysを添加することによって減少させることができることを示唆した.
著者
石橋 晃
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-13, 2007-02-25
参考文献数
33
被引用文献数
3 1

日本の配合飼料の生産量はここ数年約24,000万tである.その原料の大部分は外国からの輸入に依存しており,TDN換算で純国内産飼料の自給率は24.7%,濃厚飼料の自給率は9.7%である.そのため,自給率をあげることはわが国の畜産業界の最大の課題である.それを35%にまで引き上げるべく取り組みがなされている.また,BSE発生以来食の安全性に対する関心が高まり,安全性を担保するため色々な方策が講じられている.反芻動物の飼料への動物性タンパク質の混入を防止するためのA飼料,B飼料の製造工程分離,有害物質の混入防止,その他,配合飼料のトレサビリティ,鳥インフルエンザなどの疾病対策,環境問題など取り組むべき課題は山積している.しかし,絶対的な安全性の担保は不可能である.可能な限り,科学的な立場で対処していかなければならない.その中で不安視され,関心が持たれている遺伝子組換え作物と抗生物質の現状について述べた.
著者
松田 敦郎 梅津 元昭
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.167-173, 2005-05-25
参考文献数
19

妊娠豚へクロプロステノール(CLO ; PGF<SUB>2&alpha;</SUB>類縁体)およびカルベトシン(CAR ; オキシトシン類縁体)を投与し,分娩および子豚の成長を調べた.実験1では妊娠豚80頭を各群20頭に割付け,妊娠113日目にCLO 0.175mgを投与し,24時間後にCAR 0.05,0.1,0.2mgまたはオキシトシン25IUを筋肉内投与してCARの最適投与量を検討した.その結果,CAR投与から第1子娩出および分娩終了までの平均時間はCAR 0.1mg投与群が最短であった.実験2では妊娠114日目にCLO 0.175mgを投与し,24時間後にCAR 0.1mgまたは生理食塩水を筋肉内投与して分娩および子豚の成長を観察した.CAR 0.1mg投与群(50頭)の第1子娩出までの平均時間は43分で生理食塩水投与群(40頭)の299分に比べて有意に短縮した.CAR 0.1mg投与群では50例すべてが投与日の昼前に分娩を開始したが,生理食塩水投与群は40例中24例の分娩が昼以降になった.また,生後2,5,14日の子豚の平均体重は群間で差がなかった.以上の結果より,妊娠末期のブタへCLO 0.175mg投与後24時間にCAR 0.1mgを投与することは昼間分娩集中化を可能にすると考えられた.
著者
高橋 健一郎 堀 武司 波 通隆 本間 稔規 小高 仁重 口田 圭吾
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.237-244, 2006-05-25
参考文献数
8
被引用文献数
1

高精細牛枝肉横断面撮影装置(以下,新型撮影装置)により得られた牛枝肉画像を複数の画像形式に変換し,BCSナンバーの推定に最適な方法を検討した.材料には新型撮影装置を用いて撮影された黒毛和種肥育牛46頭の第6-7肋骨間の鮮明な画像を用いた.画像はロース芯をその輪郭で抽出したJPEG形式とTIFF形式の画像,ロース芯の一部を矩形で切り取ったJPEG形式とTIFF形式の画像および輝度ムラを補正し,上記と同様の処理をしたJPEG画像(ロース芯,矩形)の計6種類の画像を用意した.その6種類の画像よりロース芯全体,ロース芯の筋肉および脂肪交雑部分のR(赤),G(緑),B(青)各階調値および輝度の平均値など,計108変数を算出した.格付員によるBCSナンバーを従属変数,画像解析で得られた形質を説明変数候補とする重回帰分析を行ったところ,輝度ムラ補正を行い,ロース芯をその輪郭で抽出した画像において決定係数がもっとも高かった(R<SUP>2</SUP>=0.793).推定されたBCSナンバーと格付員によるそれとの差が&plusmn;0であったサンプルの割合は95.7%となった.以上のことから高精細撮影装置による圧縮画像からでも非常に高い精度でBCSナンバーを判定可能であることが示された.
著者
鎌田 靖弘 大城 伸明 屋 宏典 本郷 富士弥 知念 功
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.121-130, 1997-02-25
参考文献数
17
被引用文献数
1

ギンネムには毒性物質ミモシンが存在するため,家畜に多量給与するとミモシン中毒症を引き起こすので,飼料としては制限給与している.このミモシン中毒症の治癒,解明を行うためには実験動物にその中毒症を誘発させる必要がある.そこでまずブロイラー雛にミモシン中毒症を迅速で簡易に誘発させる研究を行い,またその中毒時のミモシンの代謝についても調べた.まず,7日齢のブロイラー雄雛にギンネム種子を粉砕し20メッシュの篩を通した種子粉末(ミモシン含量6.55%)を,市販飼料に0,10,15,20添加し各々12日間自由給与した.その結果,各種子粉末飼料群では食欲不振,体重増加の減少がみられ,更に座り込み,足をけいれんさせる特異的な脚弱症状,および腎臓の肥大化がみられた.また各組織でミモシンが検出され,特に羽毛,皮膚および腎臓で高い値が得られた.更に1%粗ミモシン飼料を自由給与すると,15%種子粉末飼料給与時と全く同程度の中毒症が認められミモシン中毒症と断定された.次に粗ミモシンを250mg/日,経口投与しながら市販飼料を給与すると,食欲不振と体重増加の減少は緩和した.しかし,各組織中でのミモシン含量は15%種子粉末飼料給与と同様に存在した.次に加齢とミモシン中毒症との関係を調べた.1,2,3,4および5週齢で15%種子粉末飼料を12日間給与すると,食欲不振,体重増加の減少は加齢に関係なく見られたが,組織中のミモシン含量は加齢に伴って減少した.最後に,ミモシン中毒症の雛に市販飼料を20日間給与し4日ごとに屠殺し,体内でのミモシンの代謝を調べた.その結果,まず市販飼料を給与した初日から食欲が回復し,採食量は市販飼料給与後17日目で対照群と有意差が認められなくなった.それに伴って体重も増加した.また各組織のミモシン濃度は羽毛,甲状腺では20日目でもミモシンが認められた.それに対し腎臓,血清,肝臓は4日目から,総排泄物は8日目から検出されなくなった.皮膚,筋肉,冠,精巣は20日目でも極少量のミモシンが検出された.
著者
小松 正憲 西尾 元秀 佐藤 正寛 千田 雅之 広岡 博之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.157-169, 2009-05-25
参考文献数
35
被引用文献数
1 2

黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家経営において,BMSナンバーや枝肉重量(CW)に関与するQTLアリル型情報はどの程度収益上昇に活用できるかを,初期QTLアリル頻度 (<I>p</I>),計画年数 (<I>T</I>),DNAタイピング料金(<I>C<SUB>TYP</SUB></I>),使用する精液差額(<I>SEM</I>),種雄牛と繁殖雌牛の割合(<I>R (s/d)</I>)を変化させて検討した.その結果,BMSナンバーに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られるBMSランク上昇分(Δ<I>BMS<SUB>QTL</SUB></I>)を1.0,BMSナンバー1ランク上昇分の枝肉単価(<I>CWP<SUB>BMS</SUB></I>)を150円/kg, <I>CW</I>を440 kg, CWに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られる枝肉重量上昇分(Δ<I>C<SUB>WQTL</SUB></I>)を20 kg, 黒毛和種去勢枝肉単価(<I>CW<SUB>PU</SUB></I>)を1,900円/kgとした場合,QTLアリル型情報は,黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家の経営に充分活用できると考えられた.また,以下のことが明らかになった.QTLアリル型情報を経営に活用する際,集団における<I>p</I>の頻度,<I>SEM</I>および<I>T</I>数が重要であり,<I>C<SUB>TYP</SUB></I>と<I>R (s/d)</I> の重要性は低かった.<I>C<SUB>TYP</SUB></I>が5千円/頭,<I>SEM</I>が1万円程度以下で,1頭当たり1万円程度の収益上昇を確保するためには,<I>p</I>の頻度は,BMSナンバーでは0.6~0.7以下,CWでは0.4~0.5以下であることが示唆された.繁殖雌牛集団のQTLアリル型情報は,<I>p</I>の頻度が0.5~0.7程度の範囲内,<I>T</I>数がBMSナンバーで6年以上,CWで8年以上であれば,収益上昇に貢献できることが明らかになった.
著者
古川 徳 高橋 強 山中 良忠
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.153-159, 1996-02-25
被引用文献数
1

パイェル板細胞と胸腺細胞および脾臓細胞との相互関係を明らかにするため,ケフィール粒から分離した菌体区分(KGM),多糖区分(KGP)およびタンパク質区分(KGPP)を添加してin vitroで培養したパイエル板細胞の培養上澄液(PPS)が胸腺細胞ならびに脾臓細胞のマイドジェン応答性に及ぼす影響を検討した.<br>正常C3H/HeJマウスから得た胸腺細胞の増殖は,KGMおよびKGPPを添加して培養した正常C57BL/6マウスならびにLewis担癌C57BL/6マウスのPPSの添加によっても影響されなかった.KGPを添加して培養したバイエル板細胞から得たPPSの添加は,胸腺細胞に対するフィトヘマグルチニンーP(PHA-P)のマイトジェン活性を高めた.この傾向は,正常C57BL/6マウスのPPSに比べてLewis担癌C57BL/6マウスのPPSで高い傾向を認めた.また,胸腺細胞に対するPHA-Pのマイトジェン活性は,KGPPを添加して培養したLewis担癌C57BL/6マウスのPPSの添加によっても促進された.しかしながら,これらのPPSの添加は,胸腺細胞に対するコンカナバリンA(Con A)およびリポポリサッカライド(LPS)のマイトジェン活性に影響しなかった.<br>正常C57BL/6マウスから得た脾臓細胞の増殖ならびにCon A, LPSおよびPHA-Pに対するマイトジェン応答は,KGM, KGPおよびKGPPを添加して培養した正常C57BL/6マウスPPSの添加によって影響されなかった.いっぽう,Lewis担癌C57BL/6マウスのパイェル板細胞にKGPおよびKGPPを添加して培養し,分離したPPSは,正常C57BL/6マウスから得た脾臓細胞の増殖と脾臓細胞に対するCon Aのマイトジェン活性を高めた.さらに,KGPを添加して培養したLewis担C57BL/6マウスのPPSは,脾臓細胞に対するLPSおよびPHA-Pのマイトジェン活性をも高めた.
著者
崔 暁 加藤 ゆうこ 佐藤 靜治 須藤 鎮世
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.333-337, 1996-04-25

哺乳類の性決定遺伝子はSRY(ヒト)/Sry(動物)であるといわれるが,我々はウシのSry遺伝子をウシのゲノムライブラリーからクローニングし(本誌,66,994-1001,1995),また,FISH法によりY染色体長腕の末端にマッピングした(本誌,66,441-444,1995).PCR法によりヒツジおよびヤギのSry遺伝子の一部(HMGボックス)はウシのSry遺伝子と相同性が高いことが判明したので,ウシのSry遺伝子を用いてヒツジおよびヤギの染色体に対するFISH法を行った,ヒツジ(メリノ種)の染色体は出生直後死亡した雄の肺由来の培養細胞から,ヤギ(ザーネン種)の染色体は雄の血液細胞を培養して得た.その結果,ヒツジではY染色体の長腕に,ヤギでは同じく長腕の末端にマッピングされた.両種ともにY染色体は短く,ヒツジSryの絶対距離は末端に近いといえる.SRY/Sry遺伝子はヒトやマウスでもY染色体の末端またはその近傍(ともに短腕上)にある.精子形成に関与するといわれるZFY/Zfy遺伝子もヒトおよびマウスでSRY/Sryの近傍にあるが,ウシ,ヒツジ,およびヤギでも末端近くに位置する(未発表).マウスのH-Y抗原遺伝子はやはりZfyの近くに位置する.これらのことから,相同の染色体対からY染色体が進化する過程で,染色体内組換えや欠失により,機能を有する遺伝子はY染色体の末端へ追われたものと想定される.
著者
ナセル M. E. A 小野寺 良次
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.654-656, 1997-07-25
被引用文献数
6

A rumen protozoon, Entodinium caudatum, and mixed rumen protozoa were isolated from a monofaunated and a naturally faunated goats with rumen fistula, respectively. Diaminopimelate decarboxylase activities of the crude enzymes of the protozoa were assayed by determining the lysine production with a high-performance liquid chromatography. The optimal pH and temperature for the catalytic activities of the crude enzymes were found to be 6.3 and 50°C, respectively, in both E. caudatum and mixed rumen protozoa, while the Km values for 2, 6-diaminopimelate in both protozoal crude enzymes were 0.62 and 0.68mM, respectively. For the stability of the enzyme of E. caudatum, the presence of pyridoxal 5'-phosphate and thiol group such as 2-mercaptoethanol and dithiothreitol was necessary and higher catalytic activities were retained in the pH range of 5.0 and 6.8. The enzyme was stable when kept in the temperature range of 25 and 60°C for 10min, but the activity was completely lost at 70°C. DL-penicillamine inhibited the enzyme at a concentration of 1.6mM, but its effect was lessened by increasing the concentration of pyridoxal-5'-phosphate.
著者
徐 春城 蔡 義民 藤田 泰仁 河本 英憲 佐藤 崇紀 増田 信義
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.343-348, 2003-08-25
被引用文献数
7 9

麦茶飲料残渣を有効利用するため,容易に流通できる100L容のポリドラム缶サイロを用い,無添加処理(対照区)および乳酸菌+アクレモニウムセルラーゼ添加処理(添加区)して麦茶飲料残渣サイレージを調製した.貯蔵後245日目にサイロを開封し,発酵品質を調査した.また,チモシー乾草と市販濃厚飼料(乾物比で4 : 1)を基礎飼料として,さらに基礎飼料の1/4(乾物比で)を麦茶飲料残渣サイレージに代替して,6頭のメンヨウに給与してサイレージの栄養価を推定した.添加区は対照区に比べてpHが有意(P<0.05)に低く,乳酸含量は有意(P<0.05)に高く,長期間貯蔵でも品質は安定に保持された.また,添加区では対照区より細胞壁の有機物成分(OCW)が有意(P<0.05)に低く,細胞内容物の有機物成分(OCC)は有意(P<0.05)に高かった.添加区と対照区の乾物中の可消化養分総量(TDN),可消化粗タンパク質(DCP),可消化エネルギー(DE)はそれぞれ67.3%と65.1%,5.0%と4.8%,13.3MJ/kgと13.0MJ/kgであった.添加区のTDN,DCPおよびDEは対照区より高い傾向を示したが,有意差は認められなかった.
著者
口田 圭吾 栗原 晃子 鈴木 三義 三好 俊三
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.853-859, 1997-09-25
被引用文献数
21 4

ロース芯断面内の脂肪割合を画像解析により客観的に測定する方法について検討した.脂肪交雑の2値化は,粒子ごとに閾値を決定する多重閾値法により行った.使用した入力機器はデジタルビデオカメラ,デジタル静止画キャプチャーボードおよびカラーイメージスキャナーである.これらの装置を使うことにより,フルカラー(255<sup>3</sup>色)の画像をコンピュータに取り込むことが可能となる.測定対象は畜試式牛標準脂肪交雑(BMS)の標準模型および黒毛和種去勢牛5頭のロース芯断面の写真である.ロース芯断面の写真は,カラーイメージスキャナーで,ビデオイメージはデジタル静止画キャプチャーボードでそれぞれコンピュータに取り込んだ.Visual C++で作成したプログラムで脂肪交雑粒子と赤肉部分とを多重閾値法により2値化し,その面積比から脂肪割合を算出した.画像解析による算出値と比較するための基準となる脂肪割合は,BMSをデジタルコピー機で,黒毛和種去勢牛のロース芯断面の写真をカラーレーザープリンターでそれぞれ拡大出力し,ロース芯と脂肪交雑の紙片の重量を測定することで算出した.多重閾値を基にした画像解析により算出した脂肪割合と,重量比により算出したそれとの差はBMS No. 2, No. 4, No. 7, No. 10およびNo. 12でそれぞれ0.2%,0.5%,2.1%,0.6%および4.6%以内であった.また,脂肪割合の範囲が13.6~24.4%であった黒毛和種去勢牛の画像解析による脂肪割合と重量比によるそれとの差は2%以内であった.画像解析に尾いる画像の解像度の影響は,低解像度において脂肪割合を低く算出する傾向が認められた.本研究で開発した方法を用いることで,ロース芯断面内脂肪割合の客観的で精度の高い計測が可能となった.
著者
山崎 信 村上 斉 中島 一喜 阿部 啓之 杉浦 俊彦 横沢 正幸 栗原 光規
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.231-235, 2006-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

わが国で飼養されているブロイラーの産肉量に対する地球温暖化の影響を各地域の月平均気温の変動から推定した.環境制御室を用いて気温が産肉量に及ぼす影響を検討したところ,23℃における産肉量と比べて5および15%低下する気温はそれぞれ27.2および30.0℃であることが示された.夏季(7,8および9月)について,その気温域に該当する区域を日本地図上に図示するプログラムにより,地球温暖化の影響を解析した.将来の気候予測データとして「気候変化メッシュデータ(日本)」を用い,約10×10km単位のメッシュで解析を行った.その結果,2060年の7~9月における気温の上昇は,九州の宮崎市および鹿児島市において1.8~2.5℃,東北の青森市および盛岡市において3.0~4.5℃と推定された.また,7,8および9月の各月とも,2020年,2040年,2060年と年代の経過とともに産肉量への地球温暖化の影響が大きくなることが予測され,とくに九州,四国,中国,近畿などの西日本において産肉量が比較的大幅に低下する地域の拡大が懸念された.さらに,現在は産肉量が低下する気温ではない東北地方も,年代の経過とともに産肉量の低下する地域になる可能性が示された.九州および東北地方はわが国の鶏肉生産の半分以上を生産する主要地域であるが,今後とも高い生産を維持するためには地球温暖化を考慮した飼養法の改善が必要であると考えられた.以上の結果から,地球温暖化は今後半世紀でわが国の鶏肉生産に大きな影響をもたらす可能性が示された.
著者
出口 善隆 佐藤 衆介 菅原 和夫
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.383-388, 2003-08-25
参考文献数
17
被引用文献数
5 3

2001年7月18日から9月5日まで東北大学附属農場の飼料用トウモロコシ圃場においてビデオ撮影を行いクマの侵入実態を,また圃場での倒伏本数調査より被害実態を明らかにした.調査期間中の圃場へのクマの侵入は52回観察された.調査圃場では7月22日に雌穂出穂が5割に達した.侵入期間は乳熟前期と乳熟後期に有意に偏っていた(χ<SUP>2</SUP>=33.2, P<0.001).侵入時間帯も00 : 00から06 : 00までと18 : 00から24 : 00までに有意に偏っていた(χ<SUP>2</SUP>=36.5, P<0.001).調査期間を通じてのトウモロコシの被害割合は13.8%,1日あたりの被害熱量は169,171kJ/日で,クマ6.52頭分の日摂取熱量に相当した.クマは乳熟前期から乳熟後期までのトウモロコシ圃場に強い侵入動機を示し,その時期の栄養要求のほぼすべてをトウモロコシで満たしている可能性が示唆された.