著者
藤井 千里 赤間 明子 大竹 まり子 鈴木 育子 細谷 たき子 小林 淳子 佐藤 千史 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_117-1_130, 2011-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
42

本研究の目的は,訪問看護ステーションの収益と管理者の経営能力との関連を明らかにすることである。全国のステーション管理者を対象に質問紙調査を行い,有効回答数64ヶ所のデータを集計分析した。 その結果,次のことが明らかとなった。管理者が収支を予測したり,経営戦略の策定,経理・財務を理解している割合や他職種にステーションの過去の実績を示す,利用者獲得に向けた活動の評価について実施している割合が低かった。一方,従事者数や利用者数が中央値より多い,管理者が経営学を学んでいる,経営戦略や経営計画を策定し,採算性の評価をしている,必要な情報を収集・分析し,有効に活用しているステーションは,有意に収益が高かった。 以上より,ステーションの経営の安定化には,計画に基づいた事業の実施とその評価,利用者だけではなく,医師や介護支援専門員等の専門職を顧客と位置づけて営業活動を実施していくことの重要性が示唆された。
著者
山勢 博彰
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.2_95-2_102, 2006-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
25

本研究はCNS-FACE (Coping & Needs Scale for Family Assessment in Critical and Emergency care settings)を測定ツールとして用い,重症・救急患者家族のニードとコーピングの推移の特徴を明らかにし,その関係について因果構造をモデル化することを目的に行った。方法は,救命救急センター,ICU・CCUに入院した患者194名の家族211名を対象とし,日毎のニードとコーピングを測定した。その結果,情報,接近,保証のニードと問題志向的コーピングが経過に従って高くなる傾向が見られ,情緒的サポートと情動的コーピングは経過に従って低くなる傾向にあった。また,患者との相互関係上のニード,自己の安定性を維持するニード,情動的コーピング,問題志向的コーピングを潜在変数とする構造方程式モデリングを作成した。
著者
魚住 郁子 山田 紀代美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.5_35-5_43, 2014

目的:青年期にある看護学生の発達課題である自我同一性の様相を明らかにすることと,自我同一性と友人とのかかわりを検討することである。<br>方法:同一県内の看護学生を対象とし,宮下(1987),榎本(2003,pp.60-72)らが作成した尺度,対象者の属性などで構成した質問紙による調査研究を実施した。そのうち214名を分析対象とした。<br>結果:本研究における看護学生の自我同一性を示すREIS:Ⅴの値は,他学部の女学生と類似しており,自我同一性の獲得が困難になっている状況を示唆していた。さらに,自我同一性と有意な相関が認められた10項目から,多重共線性を考慮し,友人に対する感情である【信頼・安定】【不安・懸念】【独立】【葛藤】を含んだ6項目との間で重回帰分析を実施した。本研究における看護学生の自我同一性には,友人への【信頼・安定】【独立】の感情が強い影響を与えていることが明らかになった。
著者
伊山 聡子 前田 ひとみ 松本 智晴 南家 貴美代 児玉 栄一
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.4_769-4_777, 2020-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
12

本研究は,2016年の熊本地震を経験した医療機関の被害状況の特徴や診療体制,支援体制への影響をもとに,災害時の業務継続に必要な取り組みを考察することを目的とした。熊本地震被害の大きかった地域で,病床数100床以上の病院の看護部長と医療設備担当者を対象に半構造化面接法によるデータ収集を行った。①震災による診療・看護への影響,②施設のライフライン,建築・医療設備の被害状況,③災害対策マニュアルとBCPの活用状況,④医療スタッフへの対応と健康管理について分析した。災害時の業務継続に向けた取り組むべき対策として,医療設備や地域性を考慮した「使える災害対策マニュアル・BCPの作成」,「災害に対する社会が持つ脆弱性を考慮した防災教育・訓練の実施」,「業務継続に伴う職員の健康管理対策および平常時の地域・広域施設との連携の強化」の重要性が示された。
著者
曽山 小織 吉田 和枝 米田 昌代
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1_139-1_150, 2015

子育てする母親とそれを支援する祖父母との間には,子育て方法に関する世代間相違があると指摘されている。本研究の目的は,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との関連を明らかにすることである。調査方法は無記名自記式質問紙調査であった。妊婦の母親651名に調査票を配布して,有効回答数は180名であった。分析は単純集計とχ<sup>2</sup>検定を用いた。対象の平均年齢は57.1±5.5歳で,祖母の子育て経験と孫育てに対する意識との間に関連が認められたのは,おしゃぶりの使用,沐浴後の湯冷ましの使用,離乳食を大人が噛み砕いて子どもに与えること,果汁開始や断乳の時期,三歳児神話,または性別役割分業意識であった。赤ちゃんが泣きやまないときの粉ミルクの使用に対する意識と祖母の子育て経験との間には関連が認められなかったが,初孫か初孫以外かとの間には関連が認められ,孫の誕生が粉ミルク使用に対する意識を変化すると示唆される。
著者
中野 雅子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_109-4_121, 2003-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
29

アトピー性皮膚炎患者の皮膚の自己管理を支援する目的で,中等症から重症の男女の患者59名に対し,スキンケア指導を試みた。 さらに指導前と指導後の調査によって,指導の有効性と指導内容の5つの要素 『洗浄回数』 『洗浄時の力の入れ具合』 『石鹸の使用』 『綿タオルの使用』 『洗顔にかける時間』 と皮膚症状改善の関連について分析した。 (1)5つの要素全てが有意に日常生活動作に定着した (p<.001)。 (2)皮膚症状は83%が 「改善」,17%が 「非改善」 であった。 (3) 『力』 と 『時間』 は他の要素より日常生活動作への定着率が低いが,症状改善に有意に関連した。 (4)対象者の76%が指導を受容した。 以上から,スキンケア指導は,口頭での説明で伝わりにくい要素 『力』 『時間』 を伝えることができ,生活の場で再現しやすく患者の自己管理の意識を支えると考えられる。
著者
泊 祐子 岡田 摩理 遠渡 絹代 市川 百香里 部谷 知佐恵 濵田 裕子 叶谷 由佳 赤羽根 章子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210123121, (Released:2021-07-09)
参考文献数
23

目的:医療的ケアのある重症児を看ている小児専門訪問看護ステーションの専門的役割と機能を明らかにすることである。今後,小児の訪問を新たに始める場合の準備の目安や,重症児と家族をケアする看護師の指針となると考えられる。方法:小児を専門としている訪問看護ステーション5か所の看護管理者5人にインタビューを行い,質的に分析を行った。結果:小児専門訪問看護ステーションは,【重症児の特徴をふまえた高度なケアの実施】と【家族全体の生活を支える援助】から成る『重症児と家族を支える小児専門訪問看護の役割』をもち,その土台には『小児専門としての役割を果たすための訪問看護ステーションの機能』として【小児在宅のプロの育成】と【家族のニーズに応える体制づくり】があった。結論:小児専門訪問看護の教育的機能と相談機能を推進することは,小児の訪問看護の拡大と質の向上につながると考えられる。
著者
沖中 由美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.4_649-4_656, 2017

本研究の目的は,ひとりで暮らす要支援・要介護高齢者がどのように老いを生きているのかを明らかにすることである。13名を対象に半構造化面接法によりデータ収集し,質的記述的に分析した。ひとりで暮らす要支援・要介護高齢者は,〈配偶者との離別による喪失感と自由〉〈日常的な緊張と不安〉〈子どもの考え次第でいずれは家を出る覚悟〉〈昔なじみの人がいなくなりケアスタッフがいまの支え〉という【老いとともにひとりで暮らす自由と孤独と緊張感】を抱き,〈衰えゆく身体と健康は自分で護る〉〈自分に見合った活動をする〉〈老いを生きぬく力がある〉〈老いに立ち向かわず受けいれる〉ことにより【老いてもいまの自分にできることを試し続ける】という老いの生き方をしていた。したがって,ひとりで暮らす要支援・要介護高齢者の人生経験に基づく老いを生きる力を通して,自らの役割を認識し,人生を肯定的に価値づけられるよう支援することが重要である。
著者
深井 喜代子 大名門 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.3_47-3_55, 1992

注射や採血などの針刺し時に生じる痛み(注射痛)を訴える患者に対処するために,三種類の看護的除痛技術実施中に,手背部痛点分布密度がどのように変化するかを調べた。被験者には88人の健康な学生(男27人,女61人,18-37才)を選んだ。痛点はタングステン製の刺激毛(直径140μm)を用いて測定した。反対側の手背マッサージにより,男の48.1%,女の60.7%で痛点数が減0少したが,男の48.1%,女の32.7%で逆に増加した。同側手背の蒸しタオルによる温罨法では,痛点は著しく減少し(男77.8%,女85.2%),氷嚢と冷やしたタオルによる冷罨法では,効果は更に大きかった(男85.2%,女91.8%)。以上の結果から罨法は注射痛に有効であること,またマッサージも一部の例では効果的であることが明らかになった。更にこのような看護的除痛のメカニズムについても考察した。