著者
三上 佳澄 對馬 明美 西沢 義子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_93-1_101, 2010-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
27

本研究は,看護者が患者の姿勢からどのような感情を認知しているのかを養護教諭と比較し,明らかにすることを目的とした。対象者は看護者195名,養護教諭40名である。基本,不安,落胆,緊張,興味,怒り,喜びの7つの感情を表している姿勢を刺激図版として用いた。対象者には刺激図版を提示し,その患者がどのような感情状態であるかを気分調査票を用いて評価した。不安や落胆の感情を表現していると考えられる姿勢は,抑うつ感や不安感の得点が看護者,養護教諭ともに高く,これらの感情を適切に認知していると考えられる。看護者は経験年数によって認知する感情に違いがあり,経験年数が少ないほど得点が低い傾向にあった。看護者,養護教諭ともに1つの姿勢でも複数の感情認知得点が高く,特定の感情だけを認知していないことが示唆された。姿勢から認知する感情は看護者と養護教諭,経験年数により差異があることが考えられる。
著者
藤野 成美 脇﨑 裕子 岡村 仁
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_87-2_95, 2007-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
40

本研究の目的は,精神科における長期入院患者の苦悩の訴えの構造を明らかにし,その概念分析を行うことである。対象は,精神病院に5年以上入院中であり,本研究に同意の得られた男性26名,女性8名である。参加観察及び半構成的面接を行い質的記述的研究を行った。その結果,精神科における長期入院患者が経験する苦悩として,【孤独感への脅威】【精神疾患を抱えて生活する苦悩】【社会適応能力の低下から生じる生活の困難性】【実存性が脅かされることへの不安】【自己受容性の低下に伴う苦悩】が抽出された。苦悩とは生きる過程におけるその人の信念や価値態度,患者の認知的な要素と深く関連している。そのため,患者の苦悩を評価することは,患者のQOL向上の一端を担う重要な精神的ケアであることが示唆された。
著者
戸ヶ里 泰典 山田 正己 泉 キヨ子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_115-1_123, 2004-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
39

尿路カテーテル装着患者への尿路感染予防のための外尿道口周囲のケア(meatal care)は,様々な根拠に基づいた多種の方法で実施されていることが多い。そこで米国や英国のレビューやガイドライン,RCT研究等を概観し,尿路感染予防に効果的な外尿道口ケア方法を検討した。その結果,短期間(~7日)の留置に限る場合にはポビドンヨードによる消毒や石鹸洗浄の実施,抗生剤軟膏の塗布が細菌尿の出現に関連するという報告から,これらの実施を控えることが望ましいことがわかった。一方,中期間(7~30日)および長期間(1ヶ月以上)留置の場合,根拠とすべき研究は未だ報告されていない。すなわちEBNの観点より,尿路感染予防のための外尿道口ケアとは,通常の身体保清のみであるといえる。また今後,長期留置患者では感染防止に加え,顕性感染予防のためのケア方法の探究といった,視野を広げた研究が必要と考えられる。
著者
白砂 恭子 渕田 英津子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20190716061, (Released:2019-11-08)
参考文献数
26

目的:日本における高齢者が健康に独居生活を送れる条件を検討する。方法:『医中誌Web』で検索し,18件を分析対象文献とした。結果:高齢者自身の条件である〔個人の特性〕〔意図した活動〕〔日常生活活動の維持〕と,高齢者を取り巻く条件である〔孤独との向き合い方〕〔安心できる生活環境〕が抽出された。高齢者が健康に独居生活を送る記述内容は,19の身体的健康,20の精神的健康,27の社会的健康に分類された。結論:高齢者自身の条件は,生活習慣や価値観などは個々で大きく異なるため,高齢者自身が物事を能動的に決定できることが健康な生活の継続に関係していると推察された。また,高齢者を取り巻く条件は,他者との関係性や生活環境が要因になると考えられた。さらに,社会的健康が多く分類されたことから,高齢者が健康に独居生活を送るためには人や社会とのつながりが重要であることが示唆された。
著者
山田 理絵
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.5_1021-5_1032, 2018-12-20 (Released:2018-12-21)
参考文献数
53

目的:看護師の直観に基づく意思決定に関する研究の動向を整理し,今後の研究課題を明らかにする。方法:PubMed,MEDLINE,CINAHL,医学中央雑誌Web版を用いて“intuition(直観)”“intuitive”“decisionmaking(意思決定)”“nursing(看護)”“nurses(看護師)”をキーワードに2017年9月までに発表された論文を検索し22件をレビューの対象とした。結果:22件の文献を分析した結果,【直観に基づく意思決定と経験】【看護実践における直観に基づく意思決定】【直観に基づく意思決定を育むストラテジー】の3つのカテゴリーが抽出された。介入研究は見当たらず,探索的研究と記述的研究のみであった。結論:今後は直観に基づく意思決定の思考プロセスの探究のため,他の学問分野と協働しその構造を具体的で簡潔に提示する必要がある。
著者
白砂 恭子 渕田 英津子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.5_921-5_931, 2019-12-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
26

目的:日本における高齢者が健康に独居生活を送れる条件を検討する。方法:『医中誌Web』で検索し,18件を分析対象文献とした。結果:高齢者自身の条件である〔個人の特性〕〔意図した活動〕〔日常生活活動の維持〕と,高齢者を取り巻く条件である〔孤独との向き合い方〕〔安心できる生活環境〕が抽出された。高齢者が健康に独居生活を送る記述内容は,19の身体的健康,20の精神的健康,27の社会的健康に分類された。結論:高齢者自身の条件は,生活習慣や価値観などは個々で大きく異なるため,高齢者自身が物事を能動的に決定できることが健康な生活の継続に関係していると推察された。また,高齢者を取り巻く条件は,他者との関係性や生活環境が要因になると考えられた。さらに,社会的健康が多く分類されたことから,高齢者が健康に独居生活を送るためには人や社会とのつながりが重要であることが示唆された。
著者
石田 芳子 石川 千鶴子 阿部 テル子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.151-161, 2011-06-20
参考文献数
17

本研究は,多床室における間仕切りカーテン使用に対する患者の認識と使用状況を明らかにすることを目的とした。方法は,質問紙による無記名自己記入式の調査である。一般病棟4床室に入院している成人患者278名を対象に,カーテンの使用状況,カーテンを閉める理由,カーテンの開閉を思い通りにできているか,看護者に望むことについて調査した。有効回答235名のデータを分析した結果,夜間は約90%,日中は約25%の患者がカーテンを閉めていた。カーテンの閉め方は,終日閉めている患者は時間帯で差異を認め,一方夜間はベッド位置により差異を認めた。カーテンを閉める理由は,夜間は6カテゴリー,日中は5カテゴリーに分類され,コード数が最も多かった理由は【プライバシー】保持であった。患者にとって他者からの介入を拒みつつ個人の尊厳を守ることができるのはカーテン一枚で仕切られた空間であり,患者の個人空間に配慮した看護の重要性が示唆された。
著者
田甫 久美子 稲垣 美智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.5_39-5_49, 2009-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
49

目的:若年男性労働者の就職以降に体重増加に繋がる8要因とその背景48項目からなる6件法の「体重増加に繋がる思考・行動のパターンを見出す質問紙」を作成することを目的とする。 方法:事業所常勤の25~35歳の男性197名を対象とした。作成した質問紙は、主成分分析を用いて検討した。結果:対象者の62.8%に就職以降3㎏以上の体重増加を認め、そのうち43.9%に10㎏以上の体重増加を認めた。主要2成分から採用した設問18項目の回答合計を用い6割以上の10㎏以上体重増加者および肥満者の判別と、そのスクリーニングが可能であり、また48項目から3タイプの肥満者の体重増加に繋がる思考・行動パターンが類型化できた。 結論:若年男性労働者の就職以降の体重管理に用いる保健指導ツールとして「体重増加に繋がる8要因とその背景48項目の質問紙」は有用であることが示された。
著者
山口 恵子 稲垣 美智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.2_79-2_90, 2012-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
28

本研究の目的は,FBSSの患者が手術や痛みの体験と生活にどのような意味づけをしているのかを明らかにすることである。外来通院のFBSSの患者10名を対象に半構成的面接を実施し,M-GTAで分析した。 その結果,手術や痛みの体験と生活の意味づけには『だましだまし付き合う』と『治療を探す』の2つがあった。『だましだまし付き合う』は,《手術が振り出し》から始まり,手術の結果を【とりあえず納める】,そして《痛みと取引しながらの生活》《痛みをもったまま生活することの弱さからの脱出》と時間の流れとともに生活の幅が広がる意味づけであった。『治療を探す』は,《手術が振り出し》の体験から始まり,痛みや症状が残ったことで【腑に落ちない】と考え,《痛みにとらわれた生活》に留まる意味づけであった。生活の知恵としてできた『だましだまし付き合う』は,今後,FBSSの患者教育の内容として重要であることが示唆された。
著者
高橋 方子 布施 淳子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1_49-1_60, 2014

目的:在宅療養高齢者の終末期医療における意思の尊重は重要であるが,意思を尊重するうえで,自己表現を十分なし得ない高齢者の意思を如何に把握するかが今後の課題である。本研究は,在宅療養高齢者の終末期医療の意思把握に訪問看護師が必要なコア情報の特定を目的とした。 方法:訪問看護師5人に対する面接調査結果およびバリューズヒストリーの内容をもとに,意思把握に必要な情報として57項目を抽出し,訪問看護師756人を対象に郵送法にて調査を実施した。有効回答率は14.2%(107人)だった。これらの情報について探索的因子分析を行い,得られた結果をもとに高次モデルを作成して,検証的因子分析により適合度を検討しコア情報の特定を行った。 結果:探索的因子分析の結果,11項目3因子が抽出された。意思把握を二次因子,抽出された3因子を一次因子とする高次モデルを仮定したところ,適合度指数はGFI= .909,AGFI= .835,CFI= .947,RMSEA= .057と良好な値であった。 結論:本研究の結果, "悔いなき終焉" "つつがない暮らし" "生き方の手がかり" の3因子がコア情報とてして特定された。
著者
成田 栄子 水上 明子 栄 唱子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.2_26-2_31, 1982

本調査は,第一報に引き続き生後7か月児について夜泣きの要因の検討を行ったものである。対象は受診児821人中夜泣き児89人である。今回は夜泣き群を二群に分け,夜泣きが長期間で泣き方のひどいものをA,長期間で泣き方のひどくないものをBとした。 その結果,A・B群に共通しているものは就寝時少しの物音にピクつく,湿疹の既往,夜間授乳や添寝・添乳の習慣,あやしすぎ,日光浴を行っていない,母親は神経質な傾向がある等の要因がみられる。一方,Aに特徴的なものは,下痢と発熱の既往,最終授乳時刻が遅いか或は決っていない等であり,Bに夜間授乳を出生時より継続している。離乳食の進行状態がよくない等養育にかかわる要因が多い。
著者
岩佐 由貴 加藤 真紀 原 祥子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.5_889-5_897, 2019-12-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
17

目的:初発脳卒中で急性期病院に入院した高齢患者の子が親の入院中に抱く思いを明らかにする。方法:急性期病院に入院した65歳以上の初発脳卒中患者の子10名に半構造化面接を行い質的記述的に分析した。結果:高齢脳卒中患者の子は,親が突然に【脳卒中になったことに衝撃を受ける】思いを抱いていた。親の命が危機にさらされることで改めて【親の生は尊い】とし,親が脳卒中を発症したことや障害を負ったことに【自分にはどうしようもないから心が痛む】と思っていた。それでもやはり,親には脳卒中発症前の【もとの姿を取り戻してほしい】と願い,治療にのぞむ親に対して【子としてできることをしてあげたい】が,障害を負った親と自分の【今後の生活が悩ましい】という思いを抱いていた。考察:看護師は高齢脳卒中患者の子が抱く思いを理解し,衝撃や苦悩を和らげるとともに,子としての役割を果たせるよう支援することの重要性が示唆された。
著者
佐藤 美紀子 百田 武司
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.2_311-2_325, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
88

目的:脳卒中後のアパシーに関する研究の動向,実態,予防・改善が期待できる介入方法を明らかにした。方法:PubMed,医学中央雑誌から抽出した75文献を分類,要約,記述した。結果:内容は「レビュー」9件,「発症メカニズム」14件,「治療」14件,「評価スケール」7件,「実態」12件,「関連要因」15件,「メタアナリシス」2件,「介入研究」2件に分類された。近年,質の高い研究が行われつつあったが,実態と介入方法に関する科学的根拠は十分に構築されていなかった。アパシー発症率は4割弱,発症には「脳卒中発症回数」「うつ」「認知機能障害」が関連した。脳病変部位,脳卒中病型,年齢,脳卒中発症後の時間,臨床的アウトカムの重症度との関連については知見が一致していなかった。予防・改善が期待できる介入方法として,脳卒中再発予防,認知行動療法,問題解決プロセスの促進,行動活性化が見出された。結論:実態解明,介入方法の確立が求められる。
著者
白井 喜代子 松岡 淳夫
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1_73-1_81, 1990-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
16

The purpose of study is to obtain the relation of the bed-lying positions with intraabdominal pressure which is concerned to the respiratory and circulate function. The knowledge is important to select the bed-lying position for the effective nursing care to patient with the probrem of respration and / or circulation.The method : For the chair-sitting posistion, standing position, and bed-lying positions holding by 15°, 30°, 45°, 60°, 75°, 90°, up the upper half-body to the horizon by the gadget bed, the intra-abdominal pressure, the amplified respiration curves on chest wall and abdominal wall, the electromyogram with electrod on the surface of M. obliquus ext. abd. and M. rectus abd., and the rate of pulseusing E.C.G., were examined under the states of the quiet respiration, the forced respiration and the strains during inspiration and exspiration.The equipment to measure the intraabdominal pressure was consisted of the pressuresensitive radio transducer and the gastric-tube type receiver which was deviced by us. After the top of receiver was settled certainly on 45cm distance from the incisor, we measured the intragastric pressure which was approximately as the intra-abdominal pressure (P.R. DAVIS.).The volunteer subjectswere 10 healthy nurses with the age of 19~39 years.The results were as follows:1) The highest intraabdominal pressure was observed by the inspiraton with strain, and the less higher pressure was seen by the exspiraton with strain, the forced respiration and the quiet respiration.2) Under each type of respiration and strain form, the intraabdominal pressure increased according to the degree of holding up the upper half-body, and the highest was obtained 28.3mmHg by the inspiration with strain by 90°holding up position.3) The difference of pressure between of the inspiratory and the exspiratoly strain by the every bed-lying position went down almost on the same way. The difference of pressures between the quiet respiration and those with strain, was tended to increase acording rais-ing the upper half-body.4) The type of respiration was ofserved as the chest type when the upper half-body was laid horizontally, but it came gradually into the abdominal type during the rpper half-body was raised.5) On the electromyogram, the action potential of the abdominal wall muscles tended to decrease acording to lift up the upper half-body by each form of the respiration and the strain.Holding the upper half-body with some angle to the horizon seems to be significantly effective for the nursing plan to control the intra-abdominal pressure such as by chance of cough, expectoration, defecation and labor.