- 著者
-
川口 孝泰
松岡 淳夫
- 出版者
- 一般社団法人 日本看護研究学会
- 雑誌
- 日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.1_82-1_94, 1990-04-01 (Released:2016-03-31)
- 参考文献数
- 15
本論文は,本学会誌Vol.12,No.1で報告した「プライバシー及びテリトリーの基礎概念の提案」に引き続き,多床室における患者のテリトリー及びプライバシーに関する意識の実態を明らかにし,患者の療養生活を援助してゆくために重要な,看護としての基礎的な知見を得ることを目的としている。 本論の中で使われているテリトリー及びプライバシーは, テリトリー;personalised spaceとして扱い,患者が自分だけの場所として認知している空間 プライバシー;自分の望んでいない侵入事物に対して,調整しようとする心理的な防壁(Westin. 1977)として捉え,検討を行った。 結果は,以下のとおりである。1) テリトリーの意識は,病室でのベット位置に影響を受けた。2) ほとんどの患者のベット位置の好みは,ほぼ同様の傾向であった。患者のテリトリーの意識と,好みのベット位置との関連をみると,多床室では患者同志が,お互いに遠慮しあいながらテリトリーを認知していると考えられる。3) プライバシーの意識は,患者の属性,病室の環境条件,患者の状態などの要因と関連がみられた。これにより,プライバシーは患者が入院生活を過ごす上で最も重要な事柄の一つであると考えられる。4) プライバシーは,日常生活の場面状況によって,質的に異なることが明らかとなった。