著者
鮎沢 啓夫
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.398-399, 1955

The present paper deals with the diminution of the virus activity with increasing time of the ultraviolet irradiation.<BR>Supernatant (3, 500 rpm for 15 min.) of the infected pupal blood was diluted 10<SUP>-3</SUP> or 10<SUP>-3</SUP> with distilled water and centrifuged at 3, 500 rpm for 10 minutes. The fluid was prepared in a Petri dish at the depth of 2-3 mm, being exposed to ultraviolet radiation from Matsuda GL-15 type ultraviolet lamp with about 95 per cent of its ultraviolet output at a wave length of &Aring; and tape distance from the lamp to Petri dish was 40 cm. The sample was gently agitated every 5 minutes. After the ultraviolet irradiation, decimal dilution was performed immediately and 0. 005 ml of the virus solution was injected into pupae. LD<SUB>50</SUB> was calculated after REED and MUENCH.<BR>Results obtained are shown in Fig. 1. There is a linear relationship^between LD50 and the irradiation period accords with the mode of the inactivation of other viruses, and when the higher diluted virus solution is used, the inclination of the line becomes steeper. Silkworm jaundice virus seems to be inactivated by the absorption of one ultraviolet quantum as in the inactivation of bacterial virus.<BR>The temperature in these experiments was 15-20&deg;C and its increase owing to the irradiation was less than 2&deg;C after 60 minutes.
著者
諸星 静次郎 大隈 琢巳
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.375-384, 1968-10-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
32

RALPH (1962) は食道下神経節とアラタ体一側心体の抽出物が著しく拮抗的にゴキブリの心臓搏動に作用することを報告した。蚕のアラタ体と食道下神経節のホルモンはそれぞれ若がえりホルモン, 休眠ホルモンなどとして知られているが両者の拮抗的な働きに関しては確実な実証はなされていない。そこで蚕の両ホルモンの拮抗的機能をくわしく知るため特に心臓搏動に観点をおいてこれらのホルモンの作用を調査した。これに関連させ脊椎動物ホルモンであるアドレナリンとインシュリンの影響についても調査した。無脊椎動物に対してアドレナリンとインシュリンの働きはほとんど知られていない. 蚕の逆脈の研究で横山 (1932) は幼虫及び蛾で脊脈管の頻度と方向にアドレナリンが影響することを報告している程度である. アラタ体及び食道下神経節は Ralph の抽出方法を用い蚕の幼虫からそれらの器官を取出したものから抽出したものを注射して実験を行なった。アドレナリン及びインシュリンは市販のものを使用し, 濃度を調製して実験を行なった。蚕の幼虫の食道下神経節の抽出物は蚕の幼虫の心臓搏動数を減じ, アラタ体抽出物は反対に増加させる傾向があって両者は拮抗的な働きをもっている。心臓搏動数の変化は抽出物中の筋肉収縮を刺激する神経ホルモンの働きによるものらしい。一方高等生物で拮抗的作用をもつといわれるアドレナリンとインシュリンについてみるとアドレナリンはその量を多くする場合には明らかに蚕幼虫の心臓搏動数を増加させるがインシュリンは殆んど影響がない。このような実験結果からアドレナリンとアラタ体の抽出物および食道下神経節の抽出物は蚕の筋収縮に影響することが明らかにされた。
著者
山田 晶子
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.266-271, 1997

絹と他の繊維素材布の熱伝導率を熱線法により20℃, 65%R. H. の環境で計測した。布の重ね枚数を50枚以上の厚さにすると, 再現性のある計測が可能である。<br>布の構造的な特徴は, 低荷重で計測した布厚さから求められる繊維体積率に表れ, 布の熱伝導率は, 繊維体積率と一定の関係を示した。一般的に, 繊維体積率が増えると, 熱伝導率も高くなるが, 絹では羊毛と同様にその変化が小さく, 綿, 麻, ポリエステルでは変化が大きい。絹と他の繊維素材を比較すると, 絹は羊毛に次いで大きく, ポリエステル, 綿, 麻の順に熱伝導率が高くなることが分かった。<br>布の熱伝導率λ<sub>k</sub>から, 空気分率に相当する熱伝導率λ<sub>a</sub>を引いて求めた繊維固有の熱伝導率λ<sub>kf</sub>は, 絹では0.25と最も低くまた素材毎に固有な値を示した。布の熱伝導率λ<sub>k</sub>と繊維固有熱伝導率λ<sub>kf</sub>は相関を示し (0.68), フィラメント織物の絹・ポリエステルでは, 繊維固有熱伝導率に較べて布の熱伝導率が高く, 綿・羊毛などの紡績糸織物では布の熱伝導率が低い傾向が認められた。絹では, 繊維固有熱伝導率が繊維中最も低いが, 布になると羊毛より高く, ポリエステルより低いという特徴を示した。
著者
山崎 寿 西村 国男 田口 亮平
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.413-419, 1955

6年生櫟樹の主幹及び側枝における貯蔵澱粉含有量の季節的変化を顕微化学的に追求し, 次の結果を得た。<BR>(1) 貯蔵澱粉の含有量は主幹においても側枝にても, 又各々の1年生部位, 2年生部位, 3年生部位及び4年生部位にても殆んど同様の季節的変化を示した。然し各部位共その先端部はその基部に比較して貯蔵澱粉の増減の変化がより判つきりしている。<BR>(2) 各部位共貯蔵澱粉の最大期は, 春の雨芽直前 (5月上旬) と秋の黄葉期 (10月中旬) との2回あり, 後者は前者に比して特に顕著である。貯蔵澱粉の最少期は初夏の雨芽伸長期 (6月上旬) と厳冬期 (1月上旬) との2回で, 前者では木質部の貯蔵澱粉は殆んど消失し, 後者では皮部木質部共に殆んど皆無になる。<BR>(3) 冬期貯蔵澱粉の減少に伴う脂肪の増加は認められず, 糖類の増大が起る。<BR>(4) 貯蔵澱粉の蓄積は皮部においては求心的に起り, 減少の場合は遠心的に消失する。木質部では斯る組織的な差異は認め難い。<BR>(5) 春期形成層が活動を始める時期は5月中旬- 下旬で, 主幹側枝共に1, 2年生部位は, 3, 4年生部位より早い。この時期より新しく形成された春材部に澱粉が出現するまでの期間は1, 2年生部位では3, 4年生部位よりも長い。秋材は6月下旬-7月上旬に生成が始まり, 各部位共殆んど同時にその部分に澱粉が現われる。<BR>(6) 幹及び側枝のところどころにおいて, 周皮と初生皮層との間に特殊な貯蔵組織が形成せられここに澱粉の蓄積が起る。これは9月中旬-10月上旬に生成され, 黄葉期には澱粉が充満するが冬期には澱粉は消失する。
著者
辻田 光雄 桜井 進
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.447-459, 1964

1. 色素顆粒を構成する蛋白は可溶性蛋白と不溶性蛋白とに分けられる。前者は顆粒の内方にあり, 後者は顆粒の外周を包む膜状物あるいは外殻を形成するものである。<BR>2.可溶性蛋白はDEAEセルローズに吸着させた後pH8.0のリン酸緩衝液で溶出し, 次の3分画に分けられた。<BR>i) 第1分画には褐色色素と結合した蛋白が集まる。ii) 正常型の第2分画にはsky-blueの蛍光を示す物質と結合する蛋白が含まれる。黄体色, 淡黄体色蚕試料ではsepiapterinと結合する蛋白がこの分画に集められる。iii) 第3分画には尿酸と結合する蛋白, isoxanthopterinと結合する蛋白が集められる。<BR>3.クエン酸ナトリウム-塩酸緩衝液中に色素顆粒の可溶性蛋白を入れると, ある範囲のpHの緩衝液中では, 結晶状沈澱物を生ずるが, pHの値により異なる分画の蛋白が沈澱してくるように考えられる。<BR>4. 顆粒内の可溶性蛋白ばかりではなく, 顆粒の周囲の外殻にも相当多量の尿酸およびisoxanthopterinが検出された。<BR>5. 色素顆粒は幼虫皮膚の油蚕性を支配する主要な要素と見做される。<BR>6. 多くのいわゆる油蚕遣伝子は色素顆粒の形成に直接的あるいは間接的に関与しているものと考えられる。
著者
木下 晴夫 菅沼 よし 渡瀬 久也
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.352-358, 1980

煮繭工程内の処理効果は互に関連しあっているので特定要因を独立に変動させても的確に工程を制御するとは必ずしも期待できない。そこで, 回帰主成分分析法により煮繭要因を集約して少数の煮繭温度パターンを決定することについて検討した。その結果の大要は次のとおりである。<br>1) 煮繭要因は3個の互に独立な回帰主成分に集約された。<br>2) 第1回帰主成分は浸漬部温度および触蒸部温度の影響が大きく, 繭層セリシンの膨潤程度の均一化をはかる温度パターンで, 特に大中節の個数および小節点に対して効果が大きい。<br>3) 第2回帰主成分は滲透部温度の影響が大きい。<br>4) 第3回帰主成分は触蒸部温度あるいは調整部温度の影響が大きい。<br>5) 第2回帰主成分, 第3回帰主成分は中層・内層セリシンあるいは繭層セリシン全体の膨化や凝集をはかる温度パターンで, 特に糸故障や索抄緒効率に対して効果が大きい。<br>6) 繰糸成績より, 適正な温度パターンを選択し, 煮繭工程を制御することによって, 煮繭の最適パターンが形式化され, また単純化された。
著者
河上 清
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.46-51, 1982

蚕室における消毒効果の判定, または清浄環境の保持のため, 空中浮遊糸状菌を対象に, その汚染度の調査に, RCS・エアーサンプラーを用いたところ, 落下法に比べ, 菌捕集効果が著しく高く, 定量的検査が可能であった。さらに, 本器は軽量で操作が簡便なため, 迅速な菌捕集作業ができた。消毒翌日の蚕室の空気中の糸状菌数は, 0.5個/100<i>l</i>であり, 病蚕発生のない飼育中の蚕室での同菌数は1.0~7.5×10個/100<i>l</i>程度であった。なお, 蚕飼育中における糸状菌汚染度の改善に, グルタルアルデハイド剤の散布が有効であった。検出された主要な糸状菌は, <i>Penicil-lium, Aspergillus</i> で, 他には <i>Cladosporium, Geotrichum, Alternaria, Paecilomyces, Cephalosporium, Rhizopus, Mucor</i> があった。
著者
桑原 昂 西崎 郁子
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.49-54, 1969

野蚕絹フィブロインの希薄な酸・アルカリ処理の際の溶出過程におけるフィブリルの生成・形態について, 野蚕種別および前報に報告した家蚕絹フィブロインとの差異を電子顕微鏡によって比較観察した。<br>(1) 野蚕種別により多少の差はあるが通常の精練方法によりセリシンを除去した野蚕絹フィブロインは, ほゞ斉一な経縞状のフィブリルから成り立っている。<br>(2) 希薄なアルカリの溶出作用によりフィブリルは, 錯そう, 離合, 崩壊して不規則に分岐もしくは渦巻, 断層状へと変化する。<br>(3) 希薄な酸では繊維軸方向あるいはある傾斜した方向に波浪または波紋状および分岐または枯木様フィブリル集束が観察される。<br>(4) 野蚕絹フィブロインにおけるフィブリル生成は家蚕絹フィブロインに比し可成り明確にしかも微細フィブリルが連続して見られ, 希薄な酸処理の場合にこの傾向はとくに顕著である。
著者
小林 勝 柳川 栄夫 田中 一行
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.344-348, 1989

テンサンを同一圃場で放養形式により継続飼育すると, 核多角体病ウイルス (NPV) で圃場が汚染され, それが原因となって違作を生ずることは既に報告した。そこで, 今回圃場に棲息する昆虫による病原伝播の可能性, 土壌および飼育樹に残存する病原を不活化する方途など, 作柄安定に資する方法を総合的に検討した。その結果, 次の事実が明らかとなった。(1) 圃場に棲息密度の高いアリ, アブラムシは本病病原の伝播を助長させる。(2) 飼育が終了したクヌギの枝葉に病原の残存が認められる。(3) 土壌に残存する病原は, 表層から約2cmまでにその大半が蓄積している。(4) 土壌に残存する病原は火炎放射消毒 (先端温度1,800℃) することにより, 不活化することができる。(5) 稚蚕期の減蚕の大半はアリによる食害が原因である。
著者
八尋 正樹 林 満
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.5-7, 1971-02-27 (Released:2010-07-01)
参考文献数
3

休眠期中および休眠解除後の冬眠期の桑冬芽につき水抽出をおこない, acidic, neutral, n-hexane の fraction にわけ, おのおのにつきペーパークロマトグラフィを適用し, アベナ伸長テストをおこない, 生長抑制物質と生長促進作用の変化を研究した。その結果休眠の深い時期には冬芽内の生長促進物質の活性化すなわちアベナの伸長を促進することはみとめられず, 生長抑制物質が冬芽内に多量に含まれていることがわかった。休眠解除にともない生長抑制物質 (Rf0.9~1.0) の量が減少し, 生長促進物質が活性化してアベナの伸長を促進することがみとめられた。またエーテル抽出液では認められなかったが, 水抽出の場合展開溶媒 ammoniacal isopropanol で acidic fraction に新にRf0.6~0.8の生長抑制物質が認められた。この物質は冬芽の休眠 (rest) 中にも多量に存在するが, 休眠が解除された冬眠期においても減少せず, 生長抑制作用がかなり強く残っている。この物質は萌芽前に減少することから, 休眠 (rest) と直接の関連があるよりも, 萌芽と関連がある物質ではないかと思われる。
著者
伊藤 智夫 堀江 保宏 Gottfried FRAENKEL
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.107-113, 1959-06-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

1. 5令起蚕の小顋切除後桑葉を与えると, 手術の直接的影響を受けたと思われる個体を除いては, 正常蚕と変りなく食桑し生長する。2. 5令起蚕の小顋切除後キャベツを与えると, 最初は比較的良く食べるが永続せず, 体重増加は僅かで数日後には死亡する。正常蚕も絶食が続くと極めて少量食べる。3. 5令起蚕の小顋切除後桜葉を与えると, 最初若干食べるが永続せず, 体重は反つて著減し遂に死亡する。正常蚕も絶食が続くと少量食べるが, 体重減少はさほど顕著ではない。4. 蚕児の食性に関与する感覚として味覚のようなものが考えられ, 小顋以外の感覚器官の機能によるものと思われる。5. 桜葉はキャベツに較べ蚕児に対し毒性のより強い物質を含有する。6. 5令中期に小顋を切除し桑葉を与えると正常蚕と生長の点で変らない。7. 5令中期に小顋を切除しキャベツを与えると, 最初若干食べるのみであり, 正常蚕も絶食が長びけば極く少量食べる。
著者
釜田 壹 島田 秀弥 浅野 昌司
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-136, 1979-04-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
19

5齢期のカイコに幼若ホルモン活性化合物の一種である methoprene を投与し, その生理作用を明らかにし, 育蚕への利用の観点から投与時期および投与濃度について検討した。1. Methoprene を蚕体に塗布した場合, 投与時期が遅く, かつ投与濃度が高くなるにしたがって, 幼虫期間の延長→幼虫と蛹の中間体→永続幼虫→過剰脱皮蚕へと変化の移行がみられた。2. 5齢の前期および中期における投与では, methoprene に対する感受性に雌雄差はみられないが, 後期では雄が雌よりも高かった。3. 5齢前期の0.1~1μgの methoprene の投与は, 食桑期間が0.2~1日延長し, 営繭率および健蛹率に低下はなく, 繭重および繭層重が増加する。5齢中期の methoprene 投与は, 繭重および繭層重の増加が最も高いが. 0.1μg以上の投与量は営繭率および健蛹率が低下した。5齢後期では, 営繭に影響しない濃度範囲が狭く. 繭重の増加は少なく繭層重も低下した。4. 5齢36~72時間に2.5ppmの methoprene を散布すると, 食桑期間は0.5~1.3日延長し, 健蛹率の低下もなくて繭重および繭層重が増加し, 繭層歩合も低下しなかった。5. 2.5~10ppmの methoprene の散布は, 健蛹率がやや低下するが, 繭重および繭層重はそれぞれ10~14%および13~20%増加し, 繭層歩合もやや増加した。繭糸長, 繭糸量, 解舒率および生糸量歩合も向上した。
著者
桑名 壽一
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.202-207, 1951

1) この虫は1年1世代, 4, 5, 6月に蛹, 成虫, 卵の時期があり, 1年の残りの10ケ月近くは幼虫ですごす。幼虫には普通の意味の休眠はなく, 常に運動し食物をとる。<BR>2) 自然状態の幼虫を25℃に移すと, 12月までのものは化蛹せず, 翌年2月になると全部が直ちに化蛹する。<BR>3) 幼虫を連続同一温度で飼うと, 30℃ではほとんど蛹にならす少くとも1.5年は幼虫として生きる。25-15℃だと8ヶ月くらいから後化蛹がおこる。20℃で最も早く化蛹がおこり最も短期間に化蛹しおわる。<BR>4) 5月孵化の幼虫を9月 (7令) から5-20℃に1-5ヶ月おき25℃に移した。5℃では化蛹なく, 10-20℃では3ヶ月処理以後化蛹があつた。15-20℃では4ケ月で化蛹率100%に近い。<BR>5) 各温度の効果は15°, 20℃が最高でこの両側に低くなり, 5及び30℃でほぼ0となる。<BR>6) この幼虫には休眠に似た化蛹のブロックがあつて, これからの離脱には特殊範囲の温度が効果をもち, その強さは5) のようなものである。
著者
阿部 広明 大林 富美 原田 多恵 嶋田 透 横山 岳 小林 正彦 黄色 俊一
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.196-200, 1996

CSD-1系統はカイコ支137号 (<i>nsd-1</i>/<i>nsd-1</i>) に日137号 (+<sup><i>nsd-1</i></sup>/+<sup><i>nsd-1</i></sup>) の濃核病ウイルス1型 (DNV-1) 感受性遺伝子 (+<sup><i>nsd-1</i></sup>) が所属する第21連関群を導入し, 継代, 維持している。このためCSD-1系統は, 第21連関群について, 日137号の染色体と支137号の染色体を一本ずつもつ<i>nsd-1</i>/+の雌に, 支137号の雄を交配し, 蛾区内でDNV-1感受性個体 (<i>nsd-1</i>/+) とDNV-1非感受性 (完全抵抗性) 個体 (<i>nsd-1</i>/<i>nsd-1</i>) が1:1で分離するようにしてある。本研究は, +<sup><i>nsd-1</i></sup>遺伝子に連関しているランダム増幅多型DNA (RAPD) を利用し, CSD-1系統内よりDNV-1を接種することなく, 幼虫ならびに成虫のDNV-1感受性を診断する方法について検討した。PCRの鋳型となるゲノムDNAを, 幼虫の場合は切断した腹脚2本から, 成虫の場合は切断した脚2本から, それぞれ抽出し, 特定のプライマーを使用してPCRを行い, RAPDの有無を調べた。その結果, RAPDによる診断結果とDNV-1感染の有無が一致した。この方法により, ウイルスを使用することなくDNV-1感受性個体を検出し, その個体から次代を得ることが可能となった。
著者
橋本 春雄
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.205-210, 1953-10-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
13

Kiel bone konate la hibridigo inter normaltipaj diploidaj inoj kaj d-tralumaj viroj donas ce la morusa silkraupo en F1 generacio d-tralumajn inojn kaj normaltipajn virojn, la d-traluma geno estante seksligita kaj recesiva, dum la hibridigo inter tetraploidaj inoj kaj d-tralumaj viroj normaltipajn inojn kaj normaltipajn virojn. Ni do povus diveni per la hibridigo, ke la inoj parigitaj estus miksoploido kunmetita de diploido kaj tetraploido. E1 43, 200 ovoj elprenitaj el papilioj de sekslimigita Zebro, X-radio-mutacio, heteroziga por dominanta Flavsanga geno, l'autoro sukcesis akini 288 raupojn Zebro-Flavsangajn per artefarita partenogenezo (pro trempado en varman akvon). 9 el 12 ekzamenitaj ce F1 montrigis miksoploidaj. La nombro de ne-d-tralumaj inoj variis ce F1 inter 1.0 kaj 30.2%. La miksoploidaj inoj demetis krom ordinaraj ovoj ankau pligrandajn, kies nombro proporcie bone koincidis kun tiu de la ne-d-tralumaj inoj de F1.Estis ankau konstatite, ke la proporcio inter Flavsangaj kaj normaltipaj individuoj estas en la ne-d-tralumaj inoj iom neordinara, car la nombra proparcio de la dominanta tipo al la recesiva sajnis aperi iom pligranda ol en la ordinara proporcio de 5:1.La partenogenezo sajnas deveni de la ovoj, kies kerno ne faris reduktan dividigon. La miksoploido el diploido kaj tetraploido okazas eble de duobligo de kromosomnombroj pro la kunigo de filinaj kernoj ce la dua au pliposta fendiga dividigo (cleavage).
著者
高岸 秀次郎 東野 正三 飯塚 隆治
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.135-143, 1973-04-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
18

兵庫県下の蛇紋岩質土壌地域における桑の生育異常を栽培桑に関してはじめてニッケル過剰症と判定し, さらに現地桑園土壌および桑の化学組成の特徴を論じた。1. 桑のニッケル過剰症は通常夏切り後伸長した枝条の葉に発現しやすく, 特に7月中~下旬頃最も著しく, その後発育した桑葉は次第に健全な様相を呈する。7月中旬の症状は上位1/3葉位の葉が黄化, 中位1/3の葉の葉脈間に褐色ないし黒褐色のネクローシスを生ずる。下位1/3葉位は淡緑から緑色に漸移する。2. 同一桑園で亜鉛欠乏症, 鉄欠乏症および両者の複合症状を呈する桑株が見出された。3. 本桑園の表層土は強酸性で塩基飽和度も低いが, 下層土ほど酸性が弱くなる。塩基組成は下層土ほどマグネシウムの占める割合が高くなる。置換態ニッケル含量は3.0~34.2ppmで概して第2層で最も高含量を示した。4. 桑の葉身, 葉柄, 枝条について, カルシウム, マグネシウム含量は異常株の方がやや高い傾向を示したが明瞭でない。ニッケル含量は概して葉身で最も高く, 葉位, 障害程度によって異なるがおおよそ20~50ppmの範囲にあった。なお葉身中ニッケル含量は障害の激しい株ほど高く, これに対し亜鉛含量は逆に低かった。
著者
田辺 仁志 中山 忠三 浅山 哲 内海 進 栗栖 弍彦 市川 吉夫 河合 孝 鮎沢 千尋 河原畑 勇 福原 敏彦 橋本 陽子 久保 正太郎 楠野 正夫 中村 二郎 宮沢 左門 有賀 久雄 宮島 成寿 今井 退 小田 常治 川森 郁郎 川瀬 茂実 石川 義文 沖野 英男 山口 孝根 三好 健勝 倉田 啓而 鮎沢 啓夫 山口 定次郎 小林 勝 岩下 嘉光 細田 茂和 松沢 則子 山崎 寿 小林 あつ子 山田 たけを 市岡 正道 丸山 長治 高須 敏夫 佐藤 清 山崎 昭治 酒井 英卿 片岡 平 梅村 義雄 村上 昭雄 田島 弥太郎 鬼丸 喜美治 佐渡 敏彦 広部 達道 沓掛 久雄 渡部 仁 長野 ヒロ 小林 悦雄 佐伯 佳之 阿相 敏雄 佐藤 正市 平田 保夫 武井 隆三 長島 栄一 高沼 重義 蒲生 卓磨 一場 静夫 宮川 千三郎 清水 滋 堀内 彬明 波島 千恵子 安江 昇 辻田 光雄 真野 保久 板垣 正男 田中 義麿 中山 光育 筑紫 春生 土井 良宏 山下 興亜 長谷川 金作 小林 勝利 石戸谷 幸雄 楠木園 正雄 橋口 勉 吉武 成美 赤井 弘 森 精 有本 肇 小西 孝 小野 四郎 荒井 三雄 加藤 康雄 土橋 俊人 後藤田 さっき 吉田 勝 進士 安治 青木 一三 小松 計一 鳥居 礼子 橋本 嘉男 清水 正徳 坂口 育三 小笠原 真次 中川 房吉 北村 愛夫 佐藤 歌子 大野 巌 原田 泰介 関 文夫 石垣 隆謌 嶋崎 昭典 大沢 定敏 小島 哲雄 布目 順郎 小川 敬之 松田 和夫 大工原 建
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.207-221, 1965

126) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第1報) 発生実態調査と多角体の性状について<BR>127) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第2報) ウイルスのキンケムシに対する感染力とウイルス伝播の-知見<BR>128) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第3報) ウイルスの交差感染について<BR>129) 野外昆虫多角体病と家蚕多角体病に関する研究 (VIII) 家蚕, サクサンなどに感染性を示す核多角体病ウイルス
著者
藤本 直正 林屋 慶三
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.83-88, 1961

1) 家蚕着色繭品種61種を供試して, 繭に含有されるフラボノイドとカロチノイドとの割合によって品種の分類を行なった。<BR>2) 大部分がカロチノイドでわずかのフラボノイドを含む品種の群と家蚕の祖先型のクワコと同様に両色素がほぼ等量宛含有される群と全色素がフラボノイドである群の3群およびそれら3群の各中間の割合を示す品種の群を認めた。<BR>3) 大部分がカロチノイドである群には欧洲種の大部分の品種が属し, 熱帯系のすべてはほとんどあるいは全部の色素がフラボノイドである群に属していた。<BR>4) クワコと同様に雨色素がほぼ等量ずつ含まれる群には欧州, 中国, 日本の各品種の1.2が属していた。<BR>5) 外観から黄繭系とみられるもののうちにもカロチノイドよりフラボノイドの方がかえって多く含まれる品種が存在する。また, フラボノイドの全然含有されない着色繭品種は1種も認められなかった。
著者
須藤 允 宗 従男 岡島 輝雄
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.306-310, 1981-08-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
3

窒素の施用量 (N: 45kgとN: 15kg) を変えた夏切桑の桑葉を用い, 晩秋蚕期に最大光葉を基準に葉位ごとに1頭育を行い, 葉位と蚕体重, 繭重, 繭層重との関係を検討した。1. 葉位と蚕体重, 繭重, 繭層重ともそれぞれ負の相関があり, 直線回帰式で表示できた。2. 桑葉中の窒素含有量は葉位との間で負の相関があり, 直緑回帰式で表示できた。3. 桑葉中の窒素含有量は蚕体重, 繭重, 繭層重と高い正の相関があり, いずれも直線回帰式で表示できた。
著者
石島 嶄
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.136-140, 1971-04-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
16

山形県新庄市および長野県松本市採取クワ枝条から越冬卵が検出され, ヒシモンモドキ (Hishimonoides sellatiformis ISHIHARA) と命名された新種の昆虫が, クワ萎縮病を媒介することを明らかにした。1) 本種は短期間の罹病株吸汁で病原を高率に獲得し, 個体接種によって健全クワ苗に媒介した。2) 保毒虫は, 25℃において, 接種吸汁1時間で16%, 12~15時間で75%の媒介率を示した。3) 病原の虫体内潜伏期間は, 28℃において21~39日であった。本種は, 病株吸汁後病原を永続して保持し, 一定の潜伏期間を終えた後へい死直前までほぼ連続した媒介を行なった。4) 以上の点から, 本種の本病媒介能力はヒシモンヨコバイにまさると考えられた。