- 著者
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高田 祥司
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.4, pp.32-47, 2008-10-01 (Released:2017-07-28)
日本語東北方言と韓国語には,過去形として,「〜タ」/-ess-ta(過去形1)の他に,「〜タッタ」/-essess-ta(過去形2)という形式が存在する。後者は前者と異なり,(1)現在との断絶性,(2)直接体験・認識の解釈,(3)トキ節/ttay節で<限界達成後>を表さない,(4)反事実条件文への使用という特徴を持つ。これは,<過去>の<継続性>を表す「〜テアッタ」/-e iss-ess-taを出自とし,その文脈的意味を受け継ぐためだと説明される。-essess-taは,より原形に近い古い用法を保ち,<継続性>やその派生的意味<過去パーフェクト><発見>を表し,存在動詞への使用は難しい。一方,「〜タッタ」は形容詞・名詞述語に用いにくい。また,両言語の回想表現「ケ」/-te-も(1),(2)を持つが,話し手の行為の体験は表さず,過去形2とは逆に(2)(認識)に基づき,文脈的に<過去>や<継続性>を表す。両言語では,過去形1が現在の状態を表すことと関わり,(1)を持つ過去形2や回想表現が<過去>を現在から明確に区別している。