著者
伊藤 俊彦 高橋 仁 志賀 拓也 佐藤 勉 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.453-460, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

清酒麹に残存するアミノ酸について,品種の異なる麹米5点と麹菌17株を用いて清酒麹85個をシャーレ法で製麹し,レベル変動に関与する要因について検討したところ以下の知見を得た。1.麹の残存アミノ酸はグルタミンとアルギニンが多く,次いでリジン,グルタミン酸,ロイシン,チロシン,アラニンの順であった。2.麹米タンパク質が酵素分解されて生成する全アミノ酸の約80%は麹菌の増殖に利用され,約20%が麹の残存アミノ酸となることが推定された。3.麹の残存アミノ酸量の多い麹はタンパク質分解酵素活性が高かった。4.麹の残存アミノ酸量は麹米品種と麹菌株に共に影響された。5.麹菌株の選択により麹の残存アミノ酸量を約半分に低減できる可能性がある。
著者
岩瀬 平
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.805-811, 1994-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19

新嘗祭, 大嘗祭に神前に供える白酒・黒酒は, その製造方法が醍醐天皇の勅命により編集された律令の施行細則法である「延喜式」に定められている。その中で黒酒を造る際に使用される木灰は久佐木 (臭木) というクマツヅラ科の低木の灰であるが何故久佐木を使うのか, また, 仕込配合や製成酒の数値は経験則によるものなのか, 筆者はそのことについて中国の「易」と「陰陽五行説」に基づいて仮説を展開する。
著者
原田 勝二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.938-942, 1993-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
2

お酒には生まれつき強い人と弱い人があり, 強い人はいくら飲んでも顔色ひとつ変えないが, 弱い人はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなり, 心臓がどきどきし, 頭が痛くなる。こうした体質は遣伝するものと古くから漠然と考えられていたが, 最近になって, その原因として体内のアセトアルデヒド脱水素酵素に活性型と不活性型の2種類があり, この組み合わせによって遺伝していることが詳しい分子遺伝学的研究によって明らかになった。
著者
佐藤 幸徳
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.315-319, 2016

高島屋新宿店で2015年5月28日から6月2日までの6日間,「研究心と豊かな発想で生まれた,大学のおいしい成果を一堂に」と謳われた第8回「大学は美味しい!!」フェアが,NPO法人「プロジェクト88」(代表理事高橋菜里氏)主催のもとに開催され,全国大学34校が参加した。秋田県立大学も純米吟醸「究(きわむ)」を出展した。林農水大臣,石破地方創生大臣,安倍昭恵首相夫人他も臨席され好評であった。これまで大学発ブランドの日本酒を比較した報告は無かったので調査し読者の参考に資する。
著者
老川 典夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.4, pp.189-197, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

近年の分析技術の進歩により,D-アミノ酸は医学,薬学分野において様々な生理機能との関連が明らかとなってきた。また,食品分野においても呈味性や機能性の面から大変注目され,呈味性を改善するための調味料や機能性を訴求する健康食品,美容食品などに利用されている。D-アミノ酸は乳酸菌を始めとする微生物が関与する発酵食品中に広く分布することから,清酒中のD-アミノ酸についても大変興味が持たれるところである。本稿では,清酒に含まれるD-アミノ酸と製造方法の関係や味への影響について解説頂くとともに,その生成機構についても解説頂いた。清酒の多様化という観点からの研究開発に大いに参考となることから,是非ご一読をお勧めしたい。
著者
中島 淳
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.882-888, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

排水問題は, 地球環境規模での問題である。醸造等の食品製造業, 特に中小企模のメーカーにとっては切迫している問題である。本稿では, 排水対策の中でも, BOD負荷量低減のための対策について解説していただいた
著者
星 靖子 鈴木 整
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.120-126, 2016 (Released:2018-05-30)
参考文献数
7

アルコールの種類を問わず,スパークリング飲料は場を華やかに変え,気分を爽快にさせてくれる。マイナーだった発泡清酒を一躍注目商品に変えたのが,この「すず音」と言えよう。日本酒らしさを排除しながら日本酒の独自性は守る,固定観念にとらわれない新たな商品開発に必要な姿勢を教えていただいた。
著者
十川 浩
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.588-594, 1990-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
48
被引用文献数
2 2

ビールと人類との係り合いの中からビールの機能性を論じるとき, その多くは致酔性に関連したものといえる。本稿では食品の機能性に準じて幅広い見地から解説していただいた。三次機能 (生理活性, 生体調節機能) の解明については, 今後の研究の発展に期待したい。
著者
宇都宮 仁 木田 信 牧 則光 磯谷 敦子 岩田 博 西谷 尚道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.446-457, 2006
被引用文献数
4

1.ヘッドスペースSPME法による焼酎及びホワイトスピリッツの中高沸点香気成分分析条件を検討した。高級アルコールや脂肪酸エチルエステル等の共通する成分に加えて, 甘藷焼酎にはテルペン類及びサリチル酸メチル, 泡盛には1-オクテン-3-オールといった特徴のある成分が検出され, 本法は中高沸点成分の分析に有用であった。<BR>2.一般成分 (pH, 酸度, TBA価), 酵素法で測定したアセトアルデヒド及び酢酸, 直接ヘッドスペース法で測定した7成分, ヘッドスペースSPME法で測定した20成分を合わせた32成分を用いて, 本格焼酎 (28), 花酒 (1), 甲類 (3), 甲乙混和 (2), ウオッカ (3), ラム (3), アラック (1), テキーラ (1), ピンガ (1) のクラスター分析を行ったところ, 酒粕焼酎2点を除き, (1) 本格焼酎, (2) 甲類・甲乙混和・ウオッカ・ラム, (3) その他のグループに類別された。<BR>3.ステップワイズ変数選択を行い, 酢酸, 酢酸エチル, イソアミルアルコール, 1-ドデカノールを用いて「本格焼酎 (28)」,「甲類・甲乙混和・ウオツカ・ラム (11)」,「中国白酒 (4)」のカテゴリーの判別分析を行うと誤判定1で判別が可能であった。<BR>4.本格焼酎 (28) 間では, メタノール, 1-プロパノール, イソブタノール, カプリル酸エチルを用いて, 誤判定1で甘藷, 泡盛, 米, 麦, ソバ, 黒糖, 酒粕の判別が可能であった。<BR>5.本格焼酎の特徴は, 高級アルコール及び低沸点のエステルが多いことであったが, 中国白酒より酢酸, 酢酸エチル, アセトアルデヒドが少なく, 穏やかな香味を持つと考えられた。
著者
鈴木 崇 横瀬 正英
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.578-584, 2007

日本ではスピリッツという酒類の概念は一般的には, ウオッカやジンなどを指すが, 欧米では蒸留酒一般を, 広くスピリッツと呼ぶ場合が多い。世界各国の酒類制度は, それぞれの国の歴史や文化に影響を受けながら変遷して来ており, 言わば酒類制度は, その国の酒類に関する歴史, 文化の裏返しであるとも言える。著者らは, カナダのケベック州のスピリッツを中心にした酒類制度を, 行政, 酒税制度, 組織, 許認可, 歴史など, 多面的な角度から調査した。現在の欧米の酒類制度と日本の酒類制度を文化や歴史を踏まえて比較するうえで, 参考になる調査となっている。
著者
中村 圭寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.200-207, 1991

偶然に発見されたアスパルテームは甘味料として, アメリカで1981年, 日本で1983年に使用が認可された。甘味の質は砂糖によく似ており, 砂糖の約200倍の甘味度をもち, 果実7レーバー増強の効果をもつ。蛋白質の成分からできているダイエット甘味料として, 欧米及び日本では大きな注目を集めている。
著者
安井 哲二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.94-99, 2001-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

ビールの劣化により生ずるカードボード臭はビールの代表的なオフフレーバー である。カードボード臭はこれまで製品ビールの酸化により生成するものと考えられてきたが, 最近非酸化経路による有力な生成説が提唱された。本稿ではカードボード臭に精通している筆者に, カードボード臭の生成メカニズムの詳細と生成抑制の考え方について解説していただいた。
著者
佐々木 定
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.222-226, 2000-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19

ここ数年, 清酒業界では, 商品の多様化, ブランドの差別化などの目的で酒造用原料米の新品種の開発, 復古米の試みが各地で盛んに行われている。酒造用原料米晶種である「神力」は, 昭和10年頃まで西日本各地で清酒醸造用に広く使用されていたものの, その後廃れてしまっていた。このほど熊本県で復活したので, この間の事情について解説していただいた。
著者
瀧村 剛 樋口 進
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.308-314, 2016 (Released:2018-07-12)
参考文献数
12

平成25年に成立したアルコール健康障害対策基本法に基づき,現在,アルコール健康障害対策推進基本計画の策定が進められており,平成28年6月までには公表される予定である。お酒は百薬の長と言われているが,一方では,アルコール依存症,飲酒運転等,多くの問題も抱えている。基本計画では,「不適切な飲酒の誘因防止」に関する施策も講じられると聞いている。酒類の製造,販売に携わる者にとってアルコールのマイナス面への対応も大切なことであり,法律の背景と概要について解説していただいた。
著者
柳田 藤寿 陳 奕伸
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.855-861, 2006-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1

乳酸菌類は広い生活圏を持っており, 普遍性の高い細菌である。 食品に限らず動植物の表面から内部にまで, 至るところに乳酸菌は生活の場を有している。 その種類も大変多く, それだけに幅のある性質を乳酸菌全体として保有している。 多彩な環境に生活している乳酸菌のうち, 分離例としてはきわめて少ない土壌から分離した乳酸菌の特性についてお伺いした。
著者
上東 治彦 加藤 麗奈 森山 洋憲 甫木 嘉朗 永田 信二 伊藤 伸一 神谷 昌宏
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.310-317, 2014
被引用文献数
1

発酵促進効果のあるチアミンを用いた吟醸酒小仕込み試験を行い,さらに実地醸造でのチアミン添加試験を行った結果,以下のような知見を得た。<br>1.ピルビン酸の残存しやすいAC-95株を用いた小仕込み試験において,チアミンを原料米1トン当たり1 g添加することにより発酵が促進され,ピルビン酸もピーク時で約1/7まで減少した。また,酸度やアミノ酸度は減少し,香気成分は増加した。<br>2.酒質を大きく変えることなくピルビン酸を低減させるためにはチアミン添加量は0.1~0.3 g/トン程度が適当であった。<br>3.チアミンを含む発酵助成剤フェルメイドKの添加によりピルビン酸が減少するとともにアルコール収量は増加した。<br>4.実地醸造においてチアミンを0.1~0.3 g/トン添加した結果,対照に比べモロミ中のピルビン酸が約半分に低下した。
著者
清野 慧至
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.85-88, 2020-02

アルコール飲料は世界中で広く飲用されており,社会的コミュニケーションの促進に寄与している。健康との関連性については,「酒は百薬の長」という言葉にある通り,適度な飲酒が死亡率を低減させるという報告もあるが,過度の飲酒は心身の健康に悪影響を及ぼし,社会的損失をもたらす。微生物の世界においても,アルコールへの耐性はその分類によって異なる。酢酸菌は食酢の醸造に用いられるグラム陰性の好気性細菌である。食酢の製造工程において,酢酸菌はアルコールをADHおよびALDHにより分解し,酢酸を生成する。これらの背景を鑑み,我々は酢酸菌のヘルスケア領域における活用を目指した。酢酸菌とヒトにおけるアルコール代謝の類似性に着目し,酢酸菌に含まれるADH,ALDHが,アルコールの分解を促進することで飲酒時における種々の問題を軽減するのではないかと仮説を立てた。これまでに,ADHとALDH活性を保持する酢酸菌粉末の工業的生産法を確立した。本稿では,飲酒ケアの観点から酢酸菌の様々な機能性を評価した結果を紹介する。