1 0 0 0 OA 食塩について

著者
橋本 壽夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.7-15, 2004-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25

塩の専売法が廃止されてから, 様々な塩が販売されるようになった。しかし, 現在でも, 製塩や塩に関する情報は少なく, マスメディアや特殊製法塩の製造業者の多くは, 科学的根拠が乏しかったり, 無いにも拘らず, ある種の塩を誇大に宣伝して, 消費者に誤った認識を与えていると言われる。塩についての判断基準となる「塩の科学」の著者であり, 前に本誌に「食塩と高血圧との関係」についての解説もいただいた著者に, 改めて今回は, 製塩法と塩の品質, 食塩の安全性, ナトリウム以外のミネラル, 食塩と健康問題等について詳細に解説いただいた。
著者
蛸井 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.306-316, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
34
被引用文献数
1

ホップはビールに爽快な苦みと香りを与える。ホップ品種特有の香りと,そこに寄与する化合物の探索について国内外で盛んに取り組まれている。さらに近年は分析技術の発展に伴い微量な香気成分の探索も可能となった。本稿では,ホップ品種が与えるソーヴィニオン・ブラン様香気と,寄与成分である微量化合物について,ワインのチオール研究の第一人者である故富永敬俊博士らと共に筆者らが取り組んだ研究を紹介する。
著者
宮田 悟
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.585-588, 1994-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
1

米の品種と醸造特性はもとより, 最近は栽培条件と醸造特性に関心が払われるようになってきた。米作に携わる人々にとっては何よりも収穫量の確保が最優先課題と思われるが, 過去に例をみない平成5年の不作のときでさえ, 周辺が壊滅状態の中で平年並みに近い収穫をあげた農家があるという。それほど栽培技術はいろいろな可能性を秘めているが, 今後醸造特性との関連を究明していくうえで興味ある体験であったと言える。酒造家が稲作も兼業するケースがみられるようになって, 今後ますますその分野の研究が進展することが期待される。
著者
竹中 哲夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.858-865, 2009 (Released:2016-02-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

味噌,醤油,納豆製造時に副生する蒸煮廃液(大豆煮汁)は排水処理にコストがかかるので,その有効利用が求められている。そこで,著者は大豆煮汁に含まれるアンギオテンシンI変換酵素(ACE)阻害物質として,ニコチアナミンを分離・同定した。さらに,このニコチアナミンを高血圧自然発症ラット(SHR)に投与して,降圧作用を認めた。したがって,大豆煮汁は脂質やタンパク質などの夾雑物が少ないので,ニコチアナミンの供給源として期待できるので解説いただいた。
著者
康巳 黄金井
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.11-18, 2012 (Released:2017-10-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2

平成6年の規制緩和により製造開始された地ビールは,当初のブーム後の品質淘汰を経て現在では品質も安定し,一定の市場を獲得し,我が国に「地ビール文化」を創造した。本稿では,全国で唯一の地ビール製造業の業界団体であるJBA(全国地ビール醸造者協議会)会長に,地ビール誕生から変遷を概観し,地ビール製造業の実態,地ビールの商品特性と社会的役割,将来展望等について解説していただいた。新たな市場を開拓する観点から,他種類の製造業者等にも参考となるので,ご一読をお勧めしたい。
著者
鈴木 康司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.8, pp.568-575, 2014 (Released:2018-03-15)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

免疫力を高められるなどの機能性ヨーグルトの販売が今冬も好調だった。ヨーグルトにおいては,乳酸菌は善玉菌である。一方,同じ乳酸菌でもアルコール飲料に生育すると,腐敗や混濁を引き起こし,悪玉菌になる。グラム陽性菌に対して抗菌活性を示すホップ成分を含んでいるなど,ビールは微生物が生育しにくい飲料である。そのビール中で生育できるビール混濁乳酸菌について,長いビール醸造の歴史の中でどのように適応進化してきたか,また,その耐性機構はどのようなものかについて,解説いただいた。
著者
今井 泰彦 徳武 昌一 山次 信幸 鈴木 勝
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.296-302, 1997-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
4 6

米麹中のα-グルコシダーゼ活性測定法について検討した。PNPGを基質とし, 反応pHを4.0で行うことにより, 最適な条件で測定することができた。添加回収試験の結果は99.4%, 再現性のCV値は2%未満と良好であった。この基質には麹菌のグルコアミラーゼおよびα-アミラーゼは作用しなかったが, 試料中に含まれるグルコース, G2により影響を受け, 見かけ上測定値が少し低下した。さらに, G2-PNPを用いた糖化力測定法と組み合わせて, 米麹抽出液中のグルコアミラーゼ活性とα-グルコシダーゼ活性を精度よく分別定量することができた。
著者
小林 晃
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.71-78, 2019-02

サツマイモは日本全国で栽培されており,平成29年全国の作付面積は,前年に比べ400ha(1%)減少した3万5600ha,生産量は前年に比べ5万3600トン減少した80万7100トンである。サツマイモの主な用途としては,市場販売用,でん粉原料用,焼酎原料用,加工食品用があるが,平成27年においては生産量全体の25%,約20万トンのサツマイモが焼酎原料として消費されている。また,焼酎メーカーが多く所在する宮崎県および鹿児島県では,焼酎原料用途の消費比率が高く,宮崎県産および鹿児島県産サツマイモのそれぞれ66%(5.6万トン),48%(14.3万トン)が焼酎原料として使われており,南九州における焼酎原料用サツマイモは農業生産においても,また,地域経済においても重要な品目となっている。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター都城研究拠点サツマイモ育種グループ(所在地 宮崎県都城市)では,これまでに様々なサツマイモの品種開発を行ってきたが,ここでは,焼酎原料用サツマイモを中心に,品種開発の変遷と今後の展望について紹介する。
著者
古林 万木夫 松下 裕昭 真岸 範浩
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.647-651, 2009 (Released:2016-02-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

日本における醤油の消費量の減少に歯止めをかけるため,醤油の機能性(魅力)をPRすることも一方策と考えられる。日本の国民の約3人に1人が何らかのアレルギーに発症しているといわれるほど,アレルギーは国民病として社会問題化している。そこで,副作用の心配のない,食品由来の抗アレルギー剤の開発が望まれている。さらに,成人女性の約10%は鉄欠乏性貧血であり,約40%は貧血予備軍といわれ,栄養上大きな問題となっている。今回は特にヒト臨床試験において,醤油に約1%含まれる醤油多糖類(SPS)に抗アレルギー作用と免疫調節機能,および鉄吸収促進効果のあることを解説いただいた。
著者
磯谷 敦子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.847-857, 2009 (Released:2016-02-15)
参考文献数
22
被引用文献数
2

「ひね(陳・老成)」は,「ふるびている。老成している。」という意味で「ひねしょうが」や「ひね米」といった使い方がある。また,酒造りにおいては「老麹」,「老〓」などの表現があり「ひね」すなわち「悪い」ということではないと考えられる。しかし,清酒を貯蔵して生じる「老香」は劣化臭とされ,「老香」をださないように製造方法や貯蔵出荷管理方法に注意が払われてきた。老香は,これまで経験的知見から「よい老香と悪い老香がある」,「清酒を貯蔵しておくと1~2年は老香だが,長期貯蔵により好ましい熟成香に変わる」,「老香のでやすい酒(蔵)とでにくい酒(蔵)がある」などといわれていたが,複合香であり充分に解明されていなかった。筆者は,最新の分析技術を駆使して,古酒の香りと老香成分の違い,また,老香中の不快な香りの主要成分さらにはその前駆物質の発見など,これからの清酒の品質向上において鍵となる研究をされた。そこで,2回にわたり詳細に解説していただいた。
著者
鈴木 昭紀
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.641-652, 2010 (Released:2016-02-04)

日本酒の販売数量は昭和48年から前年対比マイナスという状況が続き,昭和48年の最高時の40%を割り込み,酒類全体に占める日本酒のシェアも7%以下の状況になっているが,明確に歯止めがかかったとはいえない状況で,今もまだ減少傾向が続く状態で推移している。このような状況を打破するため,経営者はいろいろ検討されてきているものの,それらの各種試みが効を奏していない現状から,筆者の解析や今までの経験などを通じて至った結論をベースに,新たな今後の展開に対する考え方についての解説をお願いした。
著者
木村 功 松原 保仁 柴崎 博行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.7, pp.478-485, 1997-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

大豆の蒸煮を伴う加工工程からは, 多量の有機物を含み処理困難な廃水が排出される。これまでその廃水処理方法について多くの報告が見られる。今回はそれを資源としての有効利用法について解説願った。
著者
神渡 巧 瀬戸口 眞治 高峯 和則 緒方 新一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.520-526, 2005-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
7 8

芋焼酎のMTAについて, 香気特性及びストレス芋と含量との関係について検討し, 次の結果を得た。1.閾値の最も低い成分はリナロール, 次にゲラニオール, 最大はα-テルピネオールであり, 最低と最高では大きな濃度差が示された。2.MTAの香りの評価は, α-テルピネオールにおいて不快な表現が見られたが, その他の成分には好意的な印象を受けた。同時にネロール及びシトロネロールには,「芋イタミ臭」が指摘された。3.ストレス芋には多量のMTAが存在したが, 健全芋には痕跡量しか確認できなかった。なお, ストレス芋にMTAが存在する理由として, サツマイモが自己防御反応により生産しているものと推測した。4.ナンプ芋に生じる「芋イタミ臭」にMTAが大きく関与しており, さらにシトロネロールとネロールがその主要成分であることを明らかにした。5.市販芋焼酎はマスカットワインと比べてMTA濃度が著しく少ないことから, 芋焼酎の香りに及ぼすMTAの影響はマスカットワインより小さいことがわかった。6.芋焼酎のMTA濃度は, ストレス芋を原料とすることで極端に増加することが示された, また, MTA濃度と芋焼酎の香気には密接な関係が認められた。さらに芋焼酎で指摘される「芋イタミ臭」にMTAが大きく関与していた。7.ナンプ芋を原料に用いることで, マスカットやライチの香りを有する芋焼酎の製造が可能であることが分かった。
著者
岩下 敦子 高橋 裕司 河村 幸雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.869-872, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

日本人の国民的な食品の味噌あるいは味噌汁の生理的機能については, 1986年平山の味噌汁摂取頻度と胃がん死亡率の疫学的調査を始めとして多岐に亘る多くの研究が進められ, それらの初期のものについては本誌85巻に解説がある。本稿では最新の諸研究, 特に著者らの専攻する血圧調節機能を中心に解説していただいた。
著者
中田 久保 手口 宏子 識名 顕司 穂坂 賢
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.133-136, 1991-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

Aroma compounds in Awamori (one of Japanese traditional distilled spirits produced in Okinawa district) were analyzed and compared on samples distilled in 1989 and ones distilled in 1960-4965. In 12 samples distilled in 1989, the ratio of i-amyl alcohol/i-butyl alcohol (A/B) was lower than 1.99 (average 1.92) for 6 samples, and higher than 2.01 (average 2.62) for other samples. The latter group contained large amounts (average 6.17 ppm) of i-amyl acetate. These differences were largely accounted for by difference in fermentation temperaure of Awamori mashes. In samples distilled in 1960-1965 and stored in glass bottles, the A/B ratio was higher than 2.01 (average 2.25). But the concentration of i-amyl acetate was low (average 2.42 ppm) in these Awamori. These differences were considered to be due to the difference in Awamori yeast used in 1989 and 1969-1965.
著者
岡本 匡史 山内 徹 矢野 駿太郎 黒瀬 直孝 川北 貞夫 高橋 康次郎 中村 輝也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.827-832, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

(1) 清酒中の溶存酸素の保存中での消費速度はビンの色によって異なり, 無色透明ビンのような光透過量の多いビンに詰めた清酒の溶存酸素は速く消費された。(2) 光透過量が多い容器では, 溶存酸素を低減させることにより日光着色を顕著に抑制できた。しかしながら, 日光臭が強く発生して品質が悪くなった。(3) 光透過量の少ない褐色ビン, 黒色ビンおよび緑色ビンの場合, 初発の溶存酸素濃度が従来清酒と同程度 (3.2ppm) であれば, 保存中に老香, 雑味, 着色が増加した。また, 低すぎる (0.7PPm) と苦味, えぐ味および日光臭が発生した。これらの結果から, その間の溶存酸素濃度の中に品質維持に最適な濃度が存在するものと考えられた。(4) 最適な溶存酸素濃度は褐色ビンと黒色ビンでは2.0 ppm前後, 緑色ビンでは2.0 ppmよりも高いところにあり, この溶存酸素濃度に清酒を調整して詰口を行うことによって, 詰口時の品質を流通段階で長く維持できると考えられた。