著者
岡田 明彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.407-413, 1998-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ここ数年, 日本でも小規模醸造所のビール醸造が増加しているが, 醸造技術者を悩ませているものの一つに微生物汚染がある。微生物汚染は品質に直接影響を及ぼすため, 微生物管理の技術は非常に重要である。そこで, 小規模醸造所において役立つ技術を, 微生物管理に詳しい筆者に解説していただいた。現在ビール醸造に携わっている技術者のみならず, これからビール醸造に携わろうとする方々にとっても, 十分参考になると思われる。
著者
吉田 元
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.826-831, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
29

明治初年,文明開化の風潮に乗じて全国各地に小さなビール会社が数多く設立された。 著者は,東京遷都後の京都で産業振興のために設立された京都舎密局麦酒醸造所,そして扇麦酒,井筒麦酒,九重麦酒,兜麦酒などの知られざる興亡の経緯を,京都府庁文書,地元新聞記事を発掘調査して興味深く紹介された。
著者
西谷 尚道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.439-448, 1993-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5

全国新酒鑑評会も回を重ねて本年5月に第82回を開催した。一般公開の参加状況に象徴されるように, ことに近年の盛況さはいささか過熱気味との意見も聞かれる。ところで, 主催者の国税庁醸造試験所が東広島市へ移転することとなり, その建築工事が急ピッチで進められている。これを機会に, 著者に全国新酒鑑評会の時代変遷を概観していただいた。
著者
篠原 隆 柳田 藤寿
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.7, pp.593-603, 1999-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23

1.ワイン酵母 (S.cerevisiae) 48菌株の尿素およびアンモニアの利用性について, ブドウ果汁および窒素源添加ブドウ果汁を用いたアルコール発酵試験により検討した。供試酵母株の尿素およびアンモニアの消費量は, 初発濃度の40%から98%の範囲であった。供試菌株を尿素消費量に基づいて4グループに分けたところ, 多くの菌株が尿素高利用性 (消費量: 9.1~12.9mg/l) であり, 尿素低利用性 (消費量: 5.3~9.0mg/2) は少数であった。窒素源添加は一部の供試菌株の尿素消費を低下させた。アンモニアはいずれの供試菌株でも高利用性 (消費最: 16.1~19.6mg/l) であった。2.発酵における高温条件 (25, 30℃) は, 供試菌株の尿素消費を促進する傾向であり, 嫌気的条件は尿素消費を低下させる傾向であった。アンモニア消費は, これらの発酵条件下で良好であった。3.窒素源 (カザミノ酸, リン酸二アンモニウム, レアルギニン, 尿素) の添加による影響を, 発酵90日まで試験した。供試3株がリン酸ニアンモニウム, L-アルギニンおよび尿素の添加に影響された。とくに尿素低利用性の1株 (RIFY1062) は, 発酵中に尿素およびアンモニア濃度を増加させた。しかし, 他の供試2株においては, 窒素源添加の影響がみられなかった。4.甲州およびマスカット・ベリーAブドウを用いた小規模試験醸造において, 発酵もろみ中の尿素およびアンモニアは速やかに消費されて, 発酵以後も低レベルで推移した。本試験結果より, ワイン酵母による尿素利用性が明確となり, 尿素濃度を低レベル (5mg/l以下) とするための発酵条件が提示された。終わりに, 本研究にご協力下さいました成田真由美さん, 藤原真志さんに感謝いたします。
著者
橋爪 克己
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.966-973, 1999-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
30

ワインでは, ブドウの品種, 生産地域や気象条件さらには収穫時期などが重要視されている。メトキシピラジン化合物は, これまでカベルネ・ソービニヨン種の特徴的な香り成分と報告されているが, 検出及び定量が困難な化合物であった。本稿では, ブドウ及びワインにおけるメトキシピラジン化合物の挙動について解脱していただきたい。今後, 日本におけるブドウの栽培, さらにはワイン醸造への進展が期待される。
著者
広常 正人
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.221-228, 2013 (Released:2018-01-11)
参考文献数
19

最近では適正飲酒のヒトが最も長寿であるというコホート研究結果が,医学界でも定説になりつつあります。ワインがその発端ですが,酒類,特に醸造酒で幅広く効果が見いだされ,その一端を長年の研究成果からご紹介いただきました。清酒を代表する酒類は,食事をおいしくするためになくてはならない伴侶ですが,その味が忘れられつつあるのは大きな問題です。日本の食文化を維持・発展させる酒類を含めた食育が必要であることに同感です。
著者
三鍋 昌春
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.7, pp.466-474, 2001-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

日本初の国産ウイスキ-はスコッチウイスキーを範として始まった。その後日本人の味覚にあったウイスキーを追求するようになり, 製造方法に独自の手法が採り入れられるようになった。ウイスキ-の製造方法はすでに周知のとおりであるが, 国産ウイスキーの品質の特徴が製造工程のどの段階のどのようなメカニズムによるものなのか興味深いところである。本稿ではウイスキーの製造方法に造詣の深い筆者に, 国産ウイスキ-が生まれた経緯と国産ウイスキーの製造方法を解説していただいた。また, 日本におけるウイスキーの将来についても言及していただいた。
著者
北垣 浩志
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.335-345, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
83

ミトコンドリアは酵母などの真核生物がもつ細胞小器官であり,その主要な働きは酸素呼吸によるエネルギー生産である。このことから,清酒醸造のような酸素のほとんど存在しない醗酵においては,ミトコンドリアはなくてもよいものと思われていた。筆者は,ミトコンドリアのエネルギー生産以外の機能に着目し,清酒酵母の新たな代謝経路を明らかにし,さらに実用的な醸造技術の開発・技術移転にまで結びつけた。コロンブスの卵ともいえる画期的な研究成果について,研究の着想から,代謝経路の解析法の開発,ピルビン酸低減酵母の育種と実用化,ミトコンドリア分解に着目した新たな醸造技術の開発についてまで,詳しく解説していただいた。
著者
浜田 由紀雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.8, pp.573-577, 1992
被引用文献数
1

沖縄特産の泡盛は, 製造法がタイ国に由来するとの説がある。著者はそのタイ国に泡盛の原点を探る視察をされた。興味ある解説である。
著者
熊沢 賢二
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.388-393, 2016
被引用文献数
1

味噌は,「手前味噌」とも言われるように,醸造物の中でも異なる品質の多くの区分が存在して,多種多様であることが特徴である。味噌は,同じ区分に属する製品であっても香気に特徴があり,これらの品質評価には香気成分の同定や成分間バランスについての研究が必要であることがわかってきた。本解説では,味噌の香気成分の分析方法としてガスクロマトグラフィ-オルファクトメトリ(GC-O)を用いた生味噌の微量香気成分の分析と加熱による味噌香気成分の変動について最新の研究成果をわかりやすく説明していただいた。
著者
吉田 清
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.751-758, 1995-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
30
被引用文献数
11 11

最近では, 各地の醸造指導機関や大手酒造メーカーによる吟醸酒醸造用香気高生成酵母等の優良清酒酵母の育種, 実用化例が多数報告されている。そこで, 今回は溝酒の品質にたいへん重要な影響を及ぼす成分である有機酸に着目した少酸性及びリンゴ酸高生産性多酸性清酒酵母の育種について解説していただいた。
著者
増渕 隆
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.8, pp.544-548, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
5

微生物の育種において,変異導入を行う際には,従来は紫外線,EMSなどの薬剤が変異原として用いられてきた。イオンビーム育種とは,変異原として加速器で高速に加速したイオン(イオンビーム)を用いる比較的新しい技術である。イオンビームによる変異導入では,従来法とは異なる変異スペクトルが期待されるという。著者らは吟醸用清酒酵母のイオンビーム育種に早くから取り組んでおり,今回はその成果の一端をご紹介いただいた。
著者
井上 美保 井口 隆文 川田 あゆみ 佐藤 直樹 渡辺 敏郎 段 武夫 田辺 創一 武藤 徳男
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.499-504, 2008

大麦醗酵エキスと赤紫蘇エキスを主成分とした大麦赤紫蘇飲料の摂取がスギおよびヒノキ花粉症患者の症状に及ぼす影響について検討した。被験者は, スギ花粉症の症状を有し, 血液検査でスギRASTスコァーが陽性と判定された25人を対象とし, スギ花粉が飛散する前から大麦赤紫蘇飲料を飲用するA群と花粉が飛散してから飲用を開始するB群の2群に分けて実施した。くしゃみと鼻水 (鼻をかんだ回数) のスコアーでは, スギの花粉が飛散するとB群のスコアーが常に高値を示し, 症状が悪化した。一方で鼻詰まりと目のかゆみに関しては両群ともに差は認められなかった。鼻症状の総合的判断である鼻Symptom ScoreとSymptom Medication Scoreでは, スギの花粉飛散後, B群が高値を示し, A群は軽症であった。大麦赤紫蘇飲料は, 大麦醗酵エキスを主成分とする飲料であり, 大麦赤紫蘇飲料による花粉症症状の軽減効果は, 主として大麦醗酵エキス成分による効果と考えられた。
著者
杉中 茂之
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.141-155, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
19

多くの加工食品の場合,食中毒菌は勿論であるが,流通中の微生物の繁殖を抑制する必要があり,耐熱性芽胞や乳酸菌,酵母といった腐敗菌も制御すべき対象となる。したがって,惣菜工場や高次加工食品工場の製造ラインや環境などには,より高い衛生度が求められる。そこで,著者に対象とする汚れや微生物,用途,使用方法により,洗浄・除菌に影響する要因と注意点を説明いただき,適切な洗浄・除菌を選択し,使用しなければ期待する効果が得られないことを解説いただいた。醤油,味噌,清酒などの製麹中の汚染低減や製品の詰め時に役立つと考えられるので,是非共にご一読いただきたい。
著者
早川 享志
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.483-493, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
42

消化管内で消化・吸収されにくく,消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分をルミナコイドという。ルミナコイドのうちの食物繊維の整腸作用についてはよく知られているが,本報ではルミナコイドの1つであるレジスタントスターチについて解説していただいた。筆者の早川先生は平成23年度日本食物繊維学会学会賞を受賞されており,ルミナコイド研究の第一人者である。ご一読いただき,健康な食生活に生かしていただきたい。
著者
田辺 正行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.309-315, 1990-05-15 (Released:2011-09-20)

消費者の嗜好が多様化するのに伴い, 日本の市場で新たな地位を確保した酒類も少なくない。若者を中心として歓迎されているシードルについて, 原料のりんご, 醸造法, 製品の成分と幅広く解説していただいた。新たに他の果実を原料とした酒類を開発する際にも役立つところが多い。
著者
上田 護國
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.115, no.2, pp.70-74, 2020-02

近年,清酒の売上に占める特定名称酒の割合が増加傾向にあり,その結果蔵では多品種少量生産が常態化してきている。一方,近年,杜氏集団の後継者不足,酒造メーカーの零細化等により,酒造経験の比較的浅い社員杜氏やオーナー杜氏が増加している。ベテラン杜氏達は長い経験と卓越した技術を取得し,素晴らしい吟醸酒を醸出しているが,彼らと同じように習熟した技術を得るのは並大抵ではない。一般の吟醸麹造りは,揉み上げ時の水分が固定されず,麹の状貌を見て状況を判断し,手入れと積替え,掛け布等により品温と状貌をコントロールしながら製麹する。これは経験に裏付けられた高度な官能検査能力と技術を必要とすることを意味する。そこで,「誰にでも,簡単に,再現性よく造れる」をテーマに試行錯誤の結果,蒸米の吸水率を制御指針とする製麹(通称タライ麹,以下「上田流製麹」)技術の開発に至った。喜ばしいことに本製麹技術は,近年多くの蔵で検討していただいているが,中には基本的な考え方を誤解している例も散見されるようになってきた。ここでは上田流製麹を改めて解説すると共に,その効果を例示して技術の正しい普及を図ることとした。
著者
河村 幸雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.386-394, 2000-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

わが国では, 大豆は煮豆, 納豆, きな粉, 豆腐, また味噌, 醤油など発酵食品として広く利用され, 畑の肉といわれるほど, 蛋白質に富み, 栄養的にも優れた重要な食品である.近年は, 栄養だけではなく, 生活習慣病の増加にともない, 大豆の体調調整機能が大きくクローズァッされている。かねて, 食品中の蛋白質の生理機能の研究に従事され, 味噌の高血圧防止効果はACE阻害ペプチド “セリルトリプトファン” によることなどを発見され, 大豆の生理機能に関する最前線の研究をまとめた “ダイズのヘルシーテクノロジー” の編者でもある著者に, 発酵食品を中心に大豆の健康機能性について詳細に解説していただいた。
著者
渡辺 茂夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.640-644, 1991-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

社会生注を営む人間に常に付き纏う精神的ストレスを解消する手段として, 飲酒は重要な位置を占めているが, 音楽も亦, 然りである。音楽の中の「1~fのゆらぎ」が精神的安定に効果が高いと言われている。飲酒あるいは音楽が人間の感性に与える影響を分析しながら, 音楽と飲酒の関わりについて解説していただいた。