著者
近藤 恵二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.228-240, 2003-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

ビールはお酒としての機能のほかに, 栄養源としての役割や食品増進及び利尿作用などの効用が広く認識されている。最近, ビールの虚血性心疾患リスクの低減効果が報告されるなど, 科学的見地からビールと健康との関連が報告されている。ビールは多くの人々に飲まれており, その健康機能性の解明は世界規模で意義がある。筆者らは生活習慣病予防効果の観点からビールとその原材料の機能性を科学的にアプローチされている。今後の発展が大いに期待される研究であるが, これまでに得られた成果を中心にビールの健康機能性について解説していただいた。
著者
日野 明寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.100-105, 1994-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
36

生物は外部から急激な温度・浸透圧等の物理的な刺激あるいは化学物質等による刺激 (ストレス) を受けると代謝レベルで特異的な反応を示す。酵母においても同様の現象が認められており, ストレス応答や対ストレス防御機構解析のモデル生物としての研究が進められている。一方, 実用上においてもストレス耐性は重要課題であり, アルコール耐性, 浸透圧耐性などについて従来から研究が進められていた。パン酵母については冷凍耐性酵母の育種が重要課題となっているが, その耐性機構に関与しているトレハロースの代謝系の制御については遺伝子レベルで明らかになりつつある。
著者
中山 二郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.724-733, 2013 (Released:2018-02-13)
参考文献数
32

100兆個の細菌を保有するヒトの腸管は巨大なバイオリアクターと言っても過言ではなく,腸内細菌を調べれば,その人の食生活や健康状態の一端がわかる。ヒトの腸管は胎児期には無菌であるが,誕生後,生育環境や成長に伴う食生活の変化によって各人の腸内フローラが形成され,各人の健康と密接に関連していく。腸管は単に栄養や水分を吸収するためだけの器官ではなく,そこに生育する腸内細菌とともに免疫系,神経系,内分泌系といった様々な生体機能に影響することが明らかにされつつある。本報は,以上について解説をしていただいたので,ぜひともご一読いただきたい。
著者
小関 敏彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.578-585, 1995-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
21

低アルコール清酒の開発は, 業界全体の早急に解決されるべき課題となっている。これまでにもいろいろの製品が市販されてきたが, 定着するまでにもっていくことは伝統的な酒だけに大変な努力が必要である。ここに, 現在注目されている吟醸酒の香りの良さと生酒のフレッシュ感をあわせ持った低アルコール清酒を開発した筆者に, 開発の経緯, 製造法, 低アルコール清酒に対する考え方などを解説していただいた。
著者
山田 巳喜男
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.115-120, 2007-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

食酢は塩と並ぶ人類最古の調味料である。食酢は穀物や果実をアルコール発酵後, 酢酸発酵させてつくられ, それぞれに調理特性を持った食酢が数多く生産されている。食生活をより豊かなものにする基本的な調味料として昔から愛用されているが, 近年は健康を意識して食酢を飲用する人も多くなっている。第92回醸造調味食品セミナーで食酢の歴史や製造法について御講演を頂いたので, その内容についてまとめて頂いた。
著者
岩見 明彦 大森 俊郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.784-793, 2004-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1

麦焼酎の原料である大麦は, 国内産では到底まかなえないため, その大部分を豪州産大麦に頼っている。そこで, 豪州産大麦の研究の重要性に鑑み, 筆者等は平成9年より研究を重ねてきた。今回は, 研究成果を基に豪州産大麦の生産状況, 流通の仕組み, 品質・安全性についての報告と, 焼酎用原料としての精麦特性と醸造特性について, SKCSを用いた測定結果が紹介されている。麦焼酎の生産者にとっては, たいへん参考になると思われる。
著者
伊豆 英恵 樋詰 和久 後藤 邦康 広常 正人
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.646-652, 2008-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

我々はマウスの慢性アルコール性肝障害モデルを用い, 血漿のGPT活性, 血漿・肝臓のTG値を測定して清酒濃縮物 (CS) 及び清酒特異的な糖の1つであるα-エチルグルコシド (α-EG) の肝保護作用を調べた。雄性C57/BL6マウスにLiber-Decalliのアルコール飼料またはコントロール飼料を4週間投与し, この間, CS (3m1/kg体重) またはα-EG (200mg/kg体重) を週5回, 経口投与した。この結果, アルコール摂取で誘導される血漿GPT活性及び血漿・肝臓TG値の上昇がCSまたはα-EGによって抑制されており, CSとα-EGが慢性アルコール性肝障害を抑制することが示唆された。以上より, 清酒にアルコールによる肝障害を軽減する成分が含まれることが推定される。
著者
石見 佳子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.927-933, 2008-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

大豆に含まれるイソフラボン (ダイゼイン, ゲニステイン, グリシテイン) はエストロゲンに類似した構造をもつため, イソフラボンの摂取量が多いほど骨粗懸症, 更年期障害や乳がんに対する予防効果があると言われている。更に, ダイゼインの代謝産物であるエクオールは乳がん, 前立腺がんの発症率を抑えるほか, 骨量減少抑制効果についての報告もある。最近, イソフラボンはサプリメントとして市販されているが, 必ずしも大量摂取すればよいと言うわけではない。厚生労働省はサプリメントによるイソフラボンの過剰な摂取に対して注意を呼びかけている。著者らの研究によると, 閉経後の女性に対しては大豆イソフラボン投与と適度な運動の併用が大腿骨骨密度の維持に効果があった。またエクオールを産生する腸内乳酸菌にはラクトコッカスのほか数種類が関与していることが判明したが, 今後はこれらを含む乳製品の開発が期待される。本稿では著者らのデータを含め, 大豆イソフラボンに関する最新情報を解説していただいた。
著者
澤野 泰治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.177-181, 1991-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15

本誌昨年の解説のシリーズテーマは〈酒類・発酵食品の機能性〉であった。その中で清酒の機能性の研究進展が待たれると述べられていたが, 本解説は, まさしく清酒の三次機能の研究の切口になるのにふさわしい内容と言えよう。この分野の研究が更に進み, 清酒の理解及びイメージアップにつながれば幸いである。
著者
大澤 実 桑畑 修 飯田 知彦 西釋 英章 田村 學造 吉澤 淑
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.465-469, 1992-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

A method for the determination of furfurals (furfural and 5-hydroxymethylfurfural) in aged sake by gas chromatography was established. Five ml of sample was reacted with 4 ml of 2, 4-dinitro phenylhydrazine (2, 4-DNP) solution for 30 min at 80 °C. The solution was shaken with 30ml chloroform. The chloroform layer was concentrated to dryness in vacuo, and dissolved in 0.5 ml of 0.16% methyl-2-furfural-2, 4-DNP (internal Standard) in ethyl acetate. One μl of the solution was analyzed using a gas chromatograph (Shimadzu GC-14 A). This method will ensure determination of furfurals in aged sake with 104-108% recovery.The results of analysis on 44 samples aged for 3-20 years were: furfural 2-4 ppm, and 5-hydroxymethylfurfural 1-289 ppm. Furfurals were considered to be one of the characteristic components of aged sake.
著者
中山 素一 細谷 幸一 宮本 敬久
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.7, pp.494-501, 2014 (Released:2018-03-15)
参考文献数
22

近年,消費者の健康志向,マイルドな風味の要求により,ドレッシングの低酸・低塩化が進み,それに伴い抗菌性が低下しているために,風味に影響を与えないLactobacillus fructivoransの制御技術が不可欠となっている。そこで,筆者らはL. fructivoransの制御は膜を損傷して酢酸の取り込みを促進させることが必要で,これにはキトサンの利用が適しているが,添加量が多いと,風味に悪影響を与えることを明らかにした。油水界面に局在しやすく,膜をさらに損傷するチアミンラウリル硫酸塩の併用が有効であることを明らかにしたので,解説いただいた。
著者
棚橋 博史
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.524-529, 1994-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

ワインにとって味の厚みや豊かさは良質な官能評価を得るための必須条件である。また, タンニン量が多い赤ワインでも渋味の強いものもあれば口当たりの滑らかなものに出合うことがある。その原因となっているのが種々の多糖類であると考えられており, 重要な意味を持つ。多糖類の官能的役割と種々の多糖類の起源及び増加させるための醸造技術等について詳述していただいた。
著者
新潟県立吉川高等学校醸造科
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.306-309, 1997-05-15 (Released:2011-09-20)

新潟県の吉川高校には全国唯一の醸造科があり, その卒業生が関係分野で活躍している。この伝統あるユニークな醸造科の教育の現状及び最近の社会変化に応じた新しい取組等について, 紹介いただいた。
著者
林 健司 池崎 秀和 都甲 潔 山藤 馨
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.633-639, 1991-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

人間の感じる感覚は一つの物理量 (光, 音, 圧力) と複数の化学物質を総合的にとらえる味覚や嗅覚が存在する。後者の測定を行うには複数の要棄の測定法の検討と得られるデータの解析が必要となる。現在のところ, まだ味覚等の客観的な基準はできておらず, あいまいな量の変化で表現されている。味覚について, 生物の受容機構を模倣した複数の人工膜を用いたセンサによる食品検査について解説していただき, 将来の展望として, 味覚センサによる客観的な味覚の測定法の説明をしていただいた。
著者
佐無田 隆 谷山 健弘 岡村 壮一郎 廣 あおい
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.37-47, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

1.黒糖焼酎(タンク5年以下貯蔵,常圧及び減圧蒸留)及び泡盛(カメ10年及びタンク15年貯蔵)の動粘度を測定した結果,貯蔵年数が長いほど動粘度が大きい傾向が認められ,また,貯蔵年数が長いほどTBA価が高い傾向が認められた。2.製造後約5~30年間経過した黒糖焼酎及び泡盛を蒸留処理(試料を蒸留して約70%留出させ,留出液と蒸留残液を混合する)しても動粘度に変化は認められず,蒸留処理による貯蔵効果の測定はできなかった。3.エタノール(試薬特級,99.5%)に蒸留水を加え5.4年間保存されたエタノール水溶液(25.05%v/v)の動粘度は,同等の試薬エタノールを蒸留水により希釈した直後の溶液(25.05%v/v)の動粘度と差が認められなかった。4.以上のことから黒糖焼酎の貯蔵による動粘度の増加にはエタノール-水クラスターの変化は影響しておらず,化学反応による組成変化が影響していると推察された。
著者
蟻川 幸彦 髙橋 寿知
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.8, pp.554-564, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
2

市販清酒は,品質の良し悪しに加えて,売る酒,売れる酒としての要件を備えていることがもとめられる。筆者らはラベル等に表示される製品コンセプトに着眼し,長野県産と全国的に評判が高い市販清酒についてコンセプト審査を行って,コンセプト達成度などを評価し,品質や成分,指摘項目等との関係を解析された。コンセプト審査法ならではの有益な知見が随所に得られており,長野県のみならず,全国の清酒関係者にとっても大いに参考となる記述となっている。