著者
中村 道子 佐藤 薫 小泉 詔一 河内 公恵 西谷 紹明 中島 一郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-6, 1995-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
13
被引用文献数
8 12

WPI溶液を予め加熱処理し,室温で塩化ナトリウムを添加することによりゲル化する現象について検討し,以下のことが明らかとなった.(1) 80℃ 30分加熱処理した10% (w/w) WPI溶液に塩化ナトリウムを0.3-1.2% (w/w)添加すると,20℃において溶液は粘度の上昇をともないながら徐々にゲル化した.塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい粘度上昇は速く進み,ゲル化時間は短くなる傾向を示した.さらに,WPI溶液の加熱処理温度,塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい,ゲル強度は高くなることがわかった.(2) 電子顕微鏡観察の結果,WPI溶液を加熱処理することによりやや太く短い線状の可溶性凝集体が形成されることを確認した.さらに塩化ナトリウムの添加により,可溶性凝集体同士の会合が始まり,高分子化してゲルに至ることがわかった.塩化ナトリウム添加により得られたゲルは,GDL添加による酸性ゲルとよく似た網目状構造を呈していることがわかった.また,ゲルの網目状構造を形成している凝集体の太さは,塩化ナトリウム添加により得られたゲルの方がGDL添加による酸性ゲルよりもややランダムな構造をとることがわかった.

1 0 0 0 OA 細胞壁多糖類

著者
西沢 隆
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.515, 2008-10-15 (Released:2008-11-30)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

細胞壁は動物細胞以外の細胞生物に見られる細胞外マトリックスである.植物にはセルロース,ヘミセルロース,ペクチン質が,真菌類の多くにはキチンが,細菌類ではペプチドグリカンが含まれる.1)セルロース(cellulose)(C6H10O5)nで表される植物細胞壁の骨格となる多糖で,グルコースがβ-(1→4)結合により直鎖状に連結した高分子である.植物細胞壁では,数十本程度のセルロース分子が束状になった微繊維(ミクロフィブリル ; microfibril)と呼ばれる構造を取る(図1).さらに,微繊維同士はロープ状に会合し,マクロフィブリル(macrofibril)と呼ばれる構造を作り,細胞壁の強度を高めている.セルロースは地球上に最も多く存在する炭水化物で,「繊維素」と呼ばれることもある.2)ヘミセルロース(hemicellulose)ヘミセルロースはセルロース微繊維間を架橋結合できる架橋性多糖(cross-linking glycan)の総称であり,セルロース微繊維間をつなぐことにより網目状構造を作り,細胞壁のマトリックス強度を維持する(図2).“ヘミセルロース”は,多糖の構造と関係なく,細胞壁からアルカリ性水溶液で抽出される多糖の総称を指す言葉であり,実態が分かり難い.現在では,“ヘミセルロース”という総称名ではなく,キシログルカン(多くの植物の一次細胞壁に存在する)やグルコマンナン(コンニャクイモの貯蔵性多糖)など,それぞれの多糖の構造名で呼ばれることが多い.3)ペクチン(pectin)ペクチンは果物などに多く含まれる多糖で,植物組織中では一次細胞壁だけでなく中葉(ミドルラメラ ; middle lamella)にも存在し,隣接する細胞同士を結び付けている.ペクチンは主に負に荷電したガラクツロン酸(galacturonic acid)がα-(1→4)結合した鎖状分子(ポリガラクツロン酸)を基本とする.ガラクツロン酸のカルボキシル基が部分的にメチルエステル化され,メトキシル基(R-OCH3)を含むものをペクチニン酸(pectinic acid),メトキシル基を含まないものをペクチン酸(pectic acid)と呼ぶ.植物細胞壁中では,通常ガラクツロナン分子に部分的にラムノースが結合したラムノガラクツロナン(rhamnogalacturonan)を主鎖に,ガラクトースやアラビノースなどの中性糖を側鎖に持つ分枝性多糖として存在する.ガラクツロナン分子同士は,カルシウムイオンが介在することによるイオン結合により構造を強化することができる.4)キチン(chitin)真菌類の他,節足動物や軟体動物にも含まれる.キチンはβ-(1→4)ポリ-N-アセチルグルコサミンで,しばしばポリグルコースとβ-(1→3)結合している.5)ペプチドグリカン(peptidoglycan)ムレイン(murein)とも呼ばれる.短いペプチドによって多糖鎖が架橋することにより網状の分子を作り,細胞壁の強度を維持している.
著者
柚木崎 千鶴子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.549, 2009-10-15 (Released:2009-12-08)
参考文献数
6

1. フリーラジカルがんや動脈硬化,心臓病などの生活習慣病や老化促進に,活性酸素種による生体組織の酸化が密接に関与していることが明らかとなりつつある.活性酸素種は,酸素を含む反応性の高い化合物の総称であり,ラジカルと非ラジカルがある.脂質関連物質を含む広義の意味においての活性酸素のうち,前者としては,反応性の高いものからヒドロキシラジカル(・ OH),アルコキシラジカル(LO・ ),ペルオキシラジカル(LOO・ ),ヒドロペルオキシラジカル(HOO・ ),一酸化窒素(NO・ ),二酸化窒素(NO2・ ),スーパーオキシドアニオン(O-2・ )などがある.後者の非ラジカルグループには一重項酸素(1O2),オゾン(O3),過酸化水素(H2O2),脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)などがある1).一般に電子は2個で対をなしている状態で,原子軌道あるいは分子軌道に安定に収容されているが,対にならずに一つだけ軌道に存在する場合(不対電子)がある.これがフリーラジカルできわめて反応性が高い.酸素分子は不対電子が2個存在するのでビラジカルと言われている.体内に取り込まれた酸素は4電子還元を受けて水になる.その過程で1電子還元によりO-2・ ,2電子還元によってH2O2,3電子還元によって・OHが生成する.さらに生体内で発生したフリーラジカルは,高度不飽和脂肪酸のラジカル反応に関与し,脂質ヒドロキシペルオキシド(LOOH)を生じる2).2. ラジカル消去能これらの活性酸素種は,生体防御において積極的に利用される反面,一方では,高い反応性を有するために,生体内たんぱく質,脂質やDNAなどの生体成分を酸化して,たんぱく質の変性,脂質の過酸化,遺伝子の損傷を引き起こし,種々の疾病の発症に関与していると考えられている.このような酸化傷害から自己を防御するために,生体内では,H2O2はカタラーゼにより不活性化され,LOOHはグルタチオンペルオキシダーゼにより分解され,O-2・ はスーパーオキシドディスムターゼにより不均化されることが知られている3).このような生体内防御機構の他に,活性酸素種はアスコルビン酸,トコフェロール,カロテノイド,種々のポリフェノール類等によって消去されることから,植物由来抗酸化成分が,活性酸素が関与する種々の疾患の予防に有効ではないかと期待されている.抗酸化成分の作用メカニズムの一つとしてラジカル阻止があげられる.この過程は,以下のような段階を経るものと考えられている4).1) ラジカル補足段階 : フリーラジカルに抗酸化物質が水素原子を与え,抗酸化物質がもとのフリーラジカルよりも反応性の低い安定フリーラジカルを形成する段階.2) ラジカル終結段階 : 安定フリーラジカルが非ラジカル化合物となりラジカルが消去する段階.3. 分析法ラジカル消去能を含む抗酸化能をin vitroで測定する方法は,HAT(hydrogen atom transfer水素原子供与)反応,あるいはET(electron transfer電子供与)反応の2つのタイプに大別される.HAT反応に基づく測定法では,ORAC(oxygen radical absorbance capacity)法,TRAP(total radical trapping antioxidant parameter)法が,ET反応に基づく測定法では,DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)法,TEAC(Trolox equivalence antioxidant capacity)法などが代表的である5).このうちORAC法の公定法化がAOU(Antioxidant Unit)研究会により検討されているが,DPPH法は,非常に簡便な方法であるため抗酸化活性を有する作物のスクリーニングに広く用いられてきた.筆者らもDPPH法により,種々の宮崎県産農産物の可食部,非可食部150試料の抗酸化活性を測定した結果,茎葉利用カンショ(すいおう)葉,サトイモ(泉南中野早生)果皮,マンゴー(アーウィン)果皮,茶(やぶきた)葉,シソ科ハーブ類のブラックペパーミント,スペアミント,スィートバジル,レモンバーム,ローズマリー,ステビアの葉およびブルーベリー葉が高いラジカル消去能を示した6).
著者
松村 康生
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.271-289, 2019-08-15 (Released:2019-09-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Food emulsions are thermodynamically unstable systems due to destabilization processes such as flocculation, creaming and coalescence. Thus, the maintenance of kinetic stability is critically important to obtain high-quality commercial products. Our group has been studying the adsorption behavior and interaction at the interface of several components in oil-in-water emulsions, particularly, the two major components, i.e., proteins and low-molecular weight surfactants (emulsifiers) to understand the factors governing quality of food emulsions. In this review, I show the main results of our studies on food emulsions over the past 30 years. The topics are as follows: 1) the interaction of proteins and emulsifiers, particularly the displacement of proteins from the interface by emulsifiers; 2) Fat crystallization as a cause of partial coalescence of oil droplets; 3) Emulsion formation and stabilization by adsorption of fine particles; 4) Rapid evaluation of long-term stability of emulsions.
著者
大澤 克己 松井 淳一 丸田 正治 森田 祐子 斉藤 信博
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.585-590, 2015
被引用文献数
1

長野県木曽地域の伝統食品である無塩乳酸発酵漬物すんきから植物由来乳酸菌を分離し,ヨーグルト製造に適した乳酸菌を選抜を行い,その乳酸菌を用いたヨーグルトが開発できた.初発菌数1.0×10<sup>8</sup>cfu/ml,発酵時間24時間以内で良好なカードが形成でき,牛乳以外に他の乳酸菌増殖用添加物を使用しないで商業ベースでヨーグルトを製造することを可能にした.
著者
丸 勇史 大西 淳 山口 信也 小田 泰雄 掛樋 一晃 太田 泰弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.146-149, 2001-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
4 6

We examined an estrogen-like activity in the pomegranate (Punica granatum) juice. The juice or its methanol eluate from C18 cartridge competed with 17β-estradiol for estrogen receptor (ER) binding and also stimulated proliferation of human ER-positive cell (MCF-7) in vitro. Furthermore, they effectively increased uterine weight in the ovariectomized rat. On the basis of these data, we concluded that the pomegranate juice contained estrogen-like compounds.
著者
星 幸子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.292-297, 2020

<p>The superiority of domestic fruits, seaberry, <i>Hippophae rhamnoides </i>L., which was launched in 2005 in domestic commercial cultivation, was verified by analyzing component data and oil component data etc. and comparing with foreign seaberries.</p>
著者
原田 修 桑田 実 山本 統平
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.261-265, 2007-06-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
13
被引用文献数
3 8

開発した高圧熱水抽出装置を用いてイワシ鱗からゼラチンの抽出を行い,ゼラチンの抽出挙動および抽出ゼラチンの性状について検討した.本方法による抽出では抽出管のフィルターに目詰まりは認められず安定した抽出を水だけで行うことができた.抽出管出口温度が温度領域143-153℃以上において加水分解反応が顕著になり,抽出管入口温度225℃ 8分間(抽出管出口温度156-202℃)の抽出でほとんどのイワシ鱗コラーゲンが溶出することが分かった.抽出物中のタンパク質はほぼゼラチンであり,数パーセントのアパタイトと考えられる灰分が含まれていた.またアミノ酸の顕著な熱分解は認められなかった.抽出されたゼラチンの分子量はGPC曲線のピーク地点で443kDa付近から6.5kDa付近となっており,抽出温度が高くなるほど低くなった.入口温度225℃で400-1000mLの画分では,分子量分布の狭いペプチド領域のゼラチンが得られた.
著者
増田 亮一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.218-219, 2017

<p>大豆を磨砕し水に分散させた豆乳は最近,いわゆる "豆乳" とは違った加工素材としての利用が発展している.2015年大会の研究小集会大豆部会では,豆乳ベースの素材開発の背景となる大豆成分の分離技術の原理とその応用を扱った.長年,豆腐凝固過程の解明に取り組まれてきた小野先生には,豆腐用と飲用では豆乳の加熱処理条件が異なり,豆乳コロイド分散系の凝集に関わるタンパク質,オイルボディや共存する凝固剤や各種成分の働きに相違が生じる現象を解説して頂いた.次いで,食品工学的な観点から豆乳を解明し,脂質·油滴に着目されている藤井先生には,豆乳コロイド分散系の構造と凝集過程の挙動の解説,さらに豆乳中の安定なオイルボディをプロテアーゼと加熱処理によって変性させるとクリーム様素材となる実例を示して頂いた.</p>
著者
村田 容常
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-12, 2020-01-15 (Released:2020-01-27)
参考文献数
100
被引用文献数
2 2

Food chemistry studies on enzymatic browning and the Maillard reaction were reviewed. Enzymatic browning can broadly be categorized into immediate and delayed types. We investigated the mechanisms and regulation of enzymatic browning of apple as an example of the immediate type, and browning of lettuce and mung bean sprout as the delayed type. The Maillard reaction is the major cause of non-enzymatic browning. However, melanoidins, which are the major brown pigments formed by the reaction, are large, heterogenous, high-molecular-weight compounds with chemical structures that are difficult to elucidate. We therefore focused on the low-molecular-weight pigments formed by the Maillard reaction. We identified various novel pigments in model systems and foods based on instrumental analyses.
著者
星 幸子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.292-297, 2020-08-15 (Released:2020-08-26)
参考文献数
14

The superiority of domestic fruits, seaberry, Hippophae rhamnoides L., which was launched in 2005 in domestic commercial cultivation, was verified by analyzing component data and oil component data etc. and comparing with foreign seaberries.
著者
金子 成延 児玉 偉丈 神山 紀子 渡辺 寛人 早瀬 文孝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.439-442, 2013-08-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
17
被引用文献数
4 9

押麦加工した大麦に加水後加熱して生じる揮発性化合物を連続水蒸気蒸留法で抽出してGC,GC-MSで分析し,炊飯した大麦の香気成分についてアルデヒド11種,アルコール11種,ケトン9種,カルボン酸1種,フラン化合物2種を同定した.AEDA法により最大のFDファクターを示したアルデヒド4種(hexanal,(E,E) -2,4- nonadienal,(E) -2-nonenal,(E,E) -2,4-decadinenal) が炊飯大麦の香気の特徴に関与していることが明らかになった.
著者
中澤 洋三 坂 尚憲 山﨑 雅夫 佐藤 広顕
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.476-482, 2017-09-15 (Released:2017-09-22)
参考文献数
20
被引用文献数
2

エミュー肉は,アメリカやオーストラリアにおいて,健康的な食材として流通しているが,その加工特性は不明な点が残されている.本研究は,エミュー肉を使ったフランクフルトソーセージ製造のための化学的および加工特性を明らかにすることを目的とした.豚もも肉と比較し,エミューもも肉は,高タンパク質であるが,コレステロールを含む脂質の量が顕著に低かった.また,エミューもも肉は豚もも肉よりも6倍多くの鉄を含んでいた.エミューのひき肉に塩を加えたところ,塩溶性タンパク質の溶出が低かったが,得られた加熱ゲルは高いゲル強度を示した.発色剤によって発色されたエミュー肉糊の色は,豚肉のそれと比較し,加熱に対し安定性を示した.これらの結果を基に,最適化した方法で調製したフランクフルトソーセージは,良好な物性と色調だけでなく,高タンパク,高鉄分,低脂質,低塩分および低カロリーを示す製品であった.
著者
村山 徹 長谷川 浩 宮沢 佳恵 武田 容枝 村山 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.314-318, 2010-07-15 (Released:2010-09-01)
参考文献数
28
被引用文献数
3 2

夏秋作における有機および慣行栽培ミニトマトの品質成分の実態を明らかにするため,有機および慣行栽培ミニトマトを各16圃場から試料を得,果実特性とアスコルビン酸,リコペン,β-カロテン,糖類,遊離アミノ酸,クエン酸含量およびエチレン生成量を調査した.有機栽培ミニトマトでは,慣行栽培のものと比較して,果実硬度が小さく,アスコルビン酸とリコペン含量が有意に高かった.また,エチレン生成量が有意に低かった.これらの差違の原因として,実際に流通している有機と慣行栽培ミニトマトには熟度に差がある可能性が推察された.
著者
元賣 睦美 吉瀬 蘭エミリー 松山 博昭 細谷 知広 門岡 幸男 浅田 千鶴 内田 俊昭 川上 浩
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.442-446, 2007-10-15 (Released:2007-11-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

ラクトフェリン可溶化鉄(FeLF)は溶解性および生体利用性に優れ,鉄特有の異風味を殆ど呈さない特徴を有する.本研究では貧血傾向のある成人女性にFeLFを含有したサプリメントを12週間摂取させ,FeLFが貧血指標に及ぼす影響について検討した.その結果,血中Hb値13g/dl未満あるいはフェリチン濃度45ng/dl以下の被験者において,血中Hb濃度,MCV,MCHおよびフェリチン濃度が有意に上昇した.また,血液生化学的検査項目に関して臨床上の問題は認められず,一般的な鉄剤にみられるような胃痛やむかつき等の副作用もまったくみられなかった.以上の結果から,FeLFは医薬品で治療するレベルではない貧血傾向あるいは潜在的貧血傾向の人々が安心して日常の食生活の中で摂取できる安全性の高い素材であると考えられた.
著者
石崎 太一 黒田 素央 杉田 正明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.225-228, 2006-04-15 (Released:2007-05-15)
参考文献数
11
被引用文献数
19 17

プラセボ食群を対照とした,シングルブラインドの2群並行試験により,中高年の気分・感情状態に対する鰹だし継続摂取の影響について調査を行った.全被験者を対象とした解析の結果,鰹だし摂取により「眼の疲れ」,POMSの「抑うつ-落込み」得点が有意に低下(改善)することが示された.疲労感を自覚している被験者を対象とした解析の結果,気分アンケートの「疲労感」,「集中力」の項目において,鰹だし群は摂取時に有意に低下(改善)した.また,POMSについて,鰹だし群は「緊張-不安」において有意に低下し,また,TMD(総合感情障害指標)変化量において鰹だし群はプラセボ群よりも有意に低値を示した.すなわち,鰹だし群はプラセボ群と比較して有意にTMDが改善することが示唆された.これらの結果から,味噌汁形態で鰹だしを摂取した時に,気分・感情状態が改善する可能性が示唆された.
著者
植村 邦彦 井上 孝司 星野 貴
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.185-189, 2016-05-15 (Released:2016-06-30)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

Heat treatment is commonly used to inactivate microorganisms in liquid foods in order to improve food safety and extend shelf-life. However, using heat treatment to kill heat-resistant microbial spores also thermally damages the food, which can adversely affect the flavor and lead to loss of nutrients. We have developed an apparatus for applying high electric field alternating current (HEF-AC), which inactivates not only vegetative cells but also spores in liquid foods while preserving the freshness of raw fruit. In this study, HEF-AC was applied to inactivate Alicyclobacillus acidoterrestris spores in fresh juice. As a result, A. acidoterrestris spore numbers were reduced by four logarithmic orders of magnitude. The purpose of this study was to clarify qualitative changes in treated juice, and an ultra-high-temperature (UHT) treatment was employed for comparison purposes. Quality parameters of orange juice treated with HEF-AC maintained higher values compared to UHT treatment; meanwhile, the two treatments showed an equal inactivation effect. Notably, lemon juice treated with HEF-AC has been commercially available since 2014 from POKKA SAPPORO Food & Beverage Ltd.
著者
佐藤 俊郎 加茂 修一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.527-533, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
44

Soyasaponins : Soyasaponins are triterpene glycosides that possess an oleanane-type aglycone with 1 or 2 polysaccharide chains. Due to differences in the aglycone compounds, soyasaponins are mainly classified as group A or B soyasaponins. Soyasaponins, especially group B soyasaponins, have been reported to have several physiological functions such as antioxidative, cholesterol-lowering, antiviral, anti-inflammatory, renin-inhibiting, hepatoprotective, and antitumor effects. We found that group B soyasaponins are more readily absorbed than group A soyasaponins, which may explain why group B soyasaponins exhibit more potent effects.Vitamin K2 : Vitamin K is a cofactor required for post-translational gamma-carboxylation of vitamin K-dependent proteins, including coagulation factors, anti-coagulation factors, osteocalcin (OC) in bone, and matrix Gla proteins (MGP) in arteries. Among major vitamin K homologues in foods, only vitamin K2 as menaquinone-7 (MK-7) can activate osteocalcin, which modulates bone structure at nutritional doses. Vitamin K2 also induces collagen accumulation in bone, contributing to bone quality and strength. In addition, MK-7 activates MGP, an artery calcification inhibitor, and is reported to be associated with the prevention of cardiovascular diseases. The higher efficacy of MK-7 compared to other vitamin K homologues is due to the better absorption and longer half-life of MK-7.
著者
小堀 真珠子 雨宮 潤子 酒井 美穂 白木 己歳 杉下 弘之 坂上 直子 星 良和 柚木崎 千鶴子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.408-415, 2006-08-15 (Released:2007-09-14)
参考文献数
24
被引用文献数
6 6

We previously demonstrated that bitter gourd (Momordica charantia L.) ethanol extract induced apoptosis in HL60 human leukemia cells. To examine the effect of different bitter gourd cultivars on cancer cell growth, we determined the effect of nine bitter gourd cultivars grown in Miyazaki prefecture on the growth of HL60 cells. Although growth inhibitory effect of seed extracts was stronger than that of pericarp or placenta extracts, all the extracts inhibited the growth of HL60 cells at concentrations of 25-200μg/ml. The extracts of pericarp, placenta and seeds of bitter gourds cultivars induced apoptosis in HL60 cells after 24h incubation.Suppression of inflammatory responses is expected to reduce inflammatory disease and development of cancer. Therefore, we determined the effect of the major bitter gourd cultivar ‘Sadowara 3’ on the bacterial lipopolysaccharide (LPS)-induced TNFα production from RAW264.7 mouse macrophage-like cells. Placenta extract inhibited the TNFα production induced by LPS ; however, it did not have any effect on the growth of RAW264.7 cells. The bitter gourd placenta is suggested to possess the suppressive effect on inflammatory responses.
著者
木村 啓太郎 久保 雄司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.379-384, 2017-07-15 (Released:2017-08-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

納豆発酵過程での香気成分変動を明らかにするため,納豆菌接種前の煮豆および接種後3,7,12,18時間の納豆をサンプリングし,香気成分をGC/MSシステムによって分析した.香気成分一斉分析用に開発されたソフトウェアMetAlignおよびAIoutput2を用いてデータ解析した結果,38種の香気物質が同定あるいは推定された.この内23種は納豆菌接種前の煮豆からも検出された.煮豆に存在した成分のうち6種は発酵が進むにつれて減少あるいは消滅し,12種については発酵過程での変動は小さく発酵前後での違いが顕著ではなかった.5種は納豆発酵中に増加した.納豆の主要な香気成分であるピラジン類や短鎖分岐鎖脂肪酸を含む12種の香気成分は納豆菌の増殖が定常期に達した頃(12時間後)に急激な上昇が見られた.