著者
高橋 仁 柴田 智 田口 隆信 岩野 君夫 小林 忠彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.447-455, 2010-11-15 (Released:2011-01-06)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

We developed “Akita-sake-komachi”, which is the rice cultivar suitable for brewing. The refined sake produced from “Akita-sake-komachi” is characterized by the taste of refined sweetness and a light finish. We tried to make “Akita-sake-komachi” local branding. In order to make “Akita-sake-komachi” of high quality, we developed a cultivation method, which enabled us to get grains with low protein content, low expression of white-berry and less crack. Since the protein of “Akita-sake-komachi” had little glutelin, it was recognized that the peptidase activity of koji (malted rice) was stronger, but that there was little amino acid generation from the steamed rice. To develop a new type of sake of “junmai-shu” using the property of “Akita-sake-komachi”, the Aspergillus oryzae “Gin-aji” was selected. The peptidase activity of the koji used by “Gin-aji” was less with “Akita-sake-komachi”. And the yeast “Akita-kobo No. 12 and No. 15” were selected for producing the “Junmai-shu” which fit to “Akita-sake-komachi” and the Aspergillus oryzae “Gin-aji”, and we commercialized “Akita-sake-komachi” brand “junmai-shu”. Accodring to the result, the product amount of the rice “Akita-sake-komachi” increased to about 2 times (2009/2005), and the shipment amount of the “Akita-sake-komachi” brand sake increased to (2009/2005) more than 3 times.
著者
藤井 智幸
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.226-232, 2017-04-15 (Released:2017-04-29)
参考文献数
3

In this paper, the effects of oil bodies, coagulant, pH and enzyme treatment on the aggregation behavior of soymilk were reviewed from the viewpoint of a colloidal dispersion system. The applicability of Einstein's and Krieger-Dougherty's theories of viscosity was examined using soymilk samples. The oil bodies in the soymilk behaved as suspended substances, and it was possible to predict the relative viscosity from the volume fraction of the oil bodies. The coagulation of soymilk with magnesium chloride was also investigated, and the validity of the novel viscous model with the effect of cross-linkage was discussed. The viscosity during coagulation could be predicted by the model, based on particle size as a property of the dispersion system. From the results of the effect of pH on the stability of soymilk using the centrifugal method, the state of soymilk components changed in three steps as a function of decreasing pH. The aggregation of high-fat soymilk digested by papain required heat pretreatment. It was suggested that oleosin, which stabilized the oil body emulsion, was digested by papain and the aggregation was promoted by heat pretreatment.
著者
本間 太郎 北野 泰奈 木島 遼 治部 祐里 川上 祐生 都築 毅 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.541-553, 2013-10-15 (Released:2013-11-30)
参考文献数
53
被引用文献数
5 27

日本は長寿国であり,日本の食事である「日本食」は,健康有益性が高いと考えられる.しかし,ここ50年ほどで日本食の欧米化が進行し,健康有益性に疑問が持たれる.本研究では,健康有益性の高い日本食の年代を同定するため,様々な年代の日本食の健康有益性について,特に脂質・糖質代謝系に焦点を当てて検討した.国民健康・栄養調査に基づき2005年,1990年,1975年,1960年のそれぞれ1週間分の食事献立を再現し,調理したものを粉末化した.各年代の日本食をそれぞれ通常飼育食に30%混合して正常マウスであるICRマウスと老化促進モデルマウスであるSAMP8マウスに8ヶ月間自由摂取させた.その結果,両系統のマウスとも1975年の日本食含有飼料を摂取した群(75年群)において白色脂肪組織への脂質蓄積が抑制された.このメカニズムを探るため,脂質代謝において中心的な働きをする肝臓に対してDNAマイクロアレイ解析を行った結果,ICRマウスの75年群において,エネルギー消費を促進する遺伝子の発現が促進されていた.そして,SAMP8マウスの75年群において,トリアシルグリセロールの分解や脂肪酸合成の抑制,コレステロールの異化を促進する遺伝子の発現が促進されていた.以上より,1975年頃の日本食の成分は,現代日本食の成分に比べてメタボリックシンドローム予防に有効であることが示唆された.
著者
山崎 勝子 村上 哲生 岡田 直己 寺井 久慈 宮瀬 敏男 佐野 満昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.87-95, 2013-02-15 (Released:2013-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

本研究は,プーアル茶に特有な成分の探索を目的とし検討したもので,三次元蛍光スペクトルの解析をもとに,プーアル茶中に特異的な蛍光をもつ成分が存在することを見出した.この成分は,腐植物質と類似しており,微生物発酵による長期の熟成期間で産生するものと考えられ,カテキンなどのポリフェノールや微生物由来のたんぱく質が含まれる可能性が示唆され,高極性の高分子複合物であることを認めた.茶の熱湯抽出液を用い,この特異的な蛍光領域を測定することで,プーアル茶の品質評価や他の発酵茶との分別に利用できるものと考えられた.
著者
田中 充
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.285-293, 2017-06-15 (Released:2017-06-30)
参考文献数
32

This study demonstrated the vasorelaxation effect of small peptides and their underlying mechanisms as a novel function of blood pressure-lowering peptides. In particular, the small peptide Trp-His elicits not only a vasorelaxation effect in isolated aorta but also an anti-atherosclerotic effect in vivo. Viewing the composition of food products as a mixture of many components, the synergistic effect on vasorelaxation by the combination of multi-food compounds was also investigated. In this review article, we summarize the aforementioned beneficial effects of food compounds on vascular functions as well as the intestinal absorption and bioavailability of these bioactive peptides, clarified by using LC-MS and/or MALDI-MS imaging analyses.
著者
中村 彰宏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.559-566, 2011-11-15 (Released:2011-12-31)
参考文献数
23
被引用文献数
3 3

水溶性大豆多糖類(SSPS)は, 分離大豆蛋白質を製造する過程で副生するオカラから抽出した水溶性の多糖類である.食物繊維含量が高く, 水溶液は低粘度であり, 酸性下でも熱安定性に優れた特徴を持つ.分散安定性, 乳化性, 結着性, 造膜性に優れることから, 食物繊維強化食品への利用のみならず, 様々な食品の物性改良剤として利用されている.本稿ではSSPSの多糖類としての基本的性質と食品における物性改良機能について紹介する.
著者
荒 勝俊 吉松 正 小島 みゆき 川合 修次 大久保 一良
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.377-387, 2002-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
38
被引用文献数
1 3

(1) 日本の伝統的発酵食品である醤油から豆乳発酵食品の呈味性改善効果の高い乳酸菌としてS85-4株を見出した. (2) 豆乳の呈味性改善効果の高いS85-4株の同定を行ったところ,Streptococcus thermophilus又はStr.mitis近縁の株である事が判ったが,糖の分解性が若干異なる事から新規の乳酸菌としてStr. sp. S85-4株と命名した. (3) 各種乳酸菌(標準菌)を用いて豆乳発酵を行ったところ,Str. cremoris, Str. lactis, Str. diace. tilactisに改善効果を見出した. (4) 各種乳酸菌を用いて乳酸発酵を行い,得られた発酵液のHPLCによる分析を行ったところ,豆乳発酵において呈味性改善効果の高かった分離乳酸菌Str. sp. S 85-4株及び標準菌のStr. cremoris, Str. lactis, Str. diacetilactis共に大豆の不快味成分であるダイジン及びゲニスチンといった大豆イソフラボン類に変化は認められなかった.また,呈味性が改善されなかったLactobaeillus caseiなどの発酵液では,ダイジン及びゲニスチンが分解されてアグリコンであるダイゼイン及びゲニスティンに変化する事を見出した. (5) 分離乳酸菌Str. sp. S85-4株で製造した豆乳発酵食品をTLCで解析したところ,新たな糖の生成が認あられた.また新たな糖を含む画分を豆乳に加える事で大豆特有の収斂味が低減し,呈味性が大幅に改善する事が明らかとなった.

1 0 0 0 OA 筋電位

著者
神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.273, 2010-06-15 (Released:2010-08-07)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

筋細胞(あるいは筋線維とも呼ぶ)が収縮活動するときに出される活動電位を筋電位と呼び,これを記録したものを筋電図という.古くから動物やヒトの生理学研究で用いられてきたが,近年,食品物性の研究にも応用され,食品を食べている時の咀嚼筋の筋活動が筋電位計測により解析されるようになった.筋電位には,針や細いワイヤー状の電極を筋細胞に直接刺して記録する方法と,目的とする筋肉上の皮膚に表面電極を貼り付けて導出する方法があるが,食品研究には,非侵襲的な後者が用いられることが多い.倫理的な問題が解決できても,痛みを伴う針電極では,普通の咀嚼運動が行いにくくなるためである.測定対象となる筋肉は,咀嚼筋の中でも,咬筋,側頭筋等の,顎を閉じたり,噛みしめたりするときに使われる閉口筋が一般的である.例は少ないが,開口筋や舌や頬の筋肉の筋電位を用いた研究もある.表面電極により得られた閉口筋の筋電位は,下顎を閉じる,すなわち噛みしめる動作毎に,筋活動が現れ,安静時や顎を開く時には,ほとんど電位が現れない.そこで,一回噛む毎の,筋電位振幅,筋活動時間を解析したり,食品咀嚼過程全体の咀嚼回数や咀嚼時間を計算したりできる.かたい食品を噛むときには,筋電位の振幅は大きくなるので,より強い咀嚼力を必要とする食品,噛みにくい食品が数値で表現される.また筋電位の時間積分値は,筋肉が行う仕事に相当するものと考えられており,咀嚼始めから嚥下までの筋電位を時間積分した値は,咀嚼仕事の感覚量とよく一致することが知られている.ヒトは咀嚼力が無理なく出せる,おおむね最大咬合力の20%くらいまでの範囲では,かたい食品ほど咀嚼力を上げるため,筋電位振幅が大きくなる傾向にある.それを越えると,一噛みの力を変えずに,咀嚼回数を増やしたり,咀嚼リズムを遅くしたりといった,時間で制御する咀嚼を行うようになるので,筋電位から食べにくい食品を検出することができる.食品の研究開発で用いられている機器による力学測定は,食べる前の食品の物理的状態を調べている.咀嚼中に,食品は小さく砕かれ,また唾液と混ぜられて,水分や温度も変わる.したがって咀嚼中に大きく変化する食品の力学特性により,時々刻々と変化していくヒトのテクスチャー感覚を表すためには,筋電位測定等のヒトの咀嚼計測は大変有効な手段である.食品による差は,咀嚼初期に大きく,咀嚼中に徐々に減少していくが,それでも異なる種類の食品では,嚥下できる状態になった食塊の物性も大きく違っている.また,テクスチャー感覚には,食品の硬さや粘性等の物性と,大きさや量の両要因が関係している.機器では後者の分析が難しいのに対し,筋電位データからは,一口に入れた食品量,切り方の影響等も解析できる.官能評価では他人の感覚は調べられないので,食べている人の個人差の解析をするには,筋電位等の咀嚼計測の方が向いている.咀嚼能力は,小児期に訓練によって発達し,高齢期になると加齢に伴う筋力低下,または歯の欠損や持病によって衰える.個人の咀嚼の特性を解析するために,咀嚼筋の筋電位は,歯科医学領域で長く活用されてきた.筋電位法の欠点としては,一般に食品間の差よりも個人間の差の方が大きいために,食品テクスチャーの分析を行いたい時には,解析に工夫が必要なことであろう.また,小児や高齢者等,テクスチャーを食べやすく制御した食品を要するような対象者では,若年成人に比べ咀嚼運動が不規則になりがちなため,より解析が困難である.筋電位測定値に大きな個人差があっても,同時に測定した一被験者による食品間の相対値は,年齢や性別,歯の状態が変わっても,比較的一致することが報告されている.当誌でも,食品テクスチャーや噛みにくさの解析に関して,最近論文が増えているが,筋電位は,装置も比較的安価で測定も難しくない,新しいテクスチャー解析のツールである.
著者
堀江 裕紀子 根本 英幸 藤田 仁 池川 繁男 熊木 康裕 大西 裕季 久米田 博之 出村 誠 相沢 智康
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.139-146, 2019-04-15 (Released:2019-04-18)
参考文献数
25
被引用文献数
1

Fermented brown rice and rice bran with Aspergillus oryzae (FBRA) is a processed food prepared from brown rice and rice bran. Although FBRA α-amylase activity is monitored as an indicator of fermentation, the evaluation of FBRA quality remains insufficient. We non-targetedly compared metabolite profiles in accepted FBRA, defective FBRA, and unfermented materials using 1H-NMR coupled with principal component analysis (PCA). Accepted FBRA was clearly separated from defective FBRA and unfermented materials. We also compared twenty-five accepted FBRA samples, where PCA showed that plotting of accepted FBRA results in dispersion that is unbiased toward different production dates and different fermentation apparatuses. These results indicated that accepted FBRA is manufactured with a consistent quality.
著者
吉田 充 市川 水音 富田 樹 知久 和寛 八戸 真弓 濱松 潮香 岡留 博司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.47-51, 2019-02-15 (Released:2019-02-23)
参考文献数
11
被引用文献数
1

放射性セシウムを含む玄米をとう精加工し,さらにそれを炊飯した際の放射性セシウムの濃度と残存割合Frを調べた.精米歩合99.5%および98.8%の場合の放射性セシウムの除去率は3%および8%で,とう精により除かれた糠の質量の割合よりも米の放射性セシウムの濃度の低下割合が大きかった.また,とう精・洗米・炊飯後では,玄米に比べた放射性セシウムの除去率は,それぞれ21%および27%で,とう精以上に洗米による放射性セシウムの除去効果が大きいことが示された.放射性セシウムの濃度としてみると,精米歩合99.5%および98.8%の低とう精加工では,加工係数Pfは0.97および0.92であったが,炊飯までを含めると玄米を炊飯した場合の加工係数Pfの0.46に対して,0.38~0.34にまで低下した.既報の結果を合わせると,とう精による加工係数Pfは精米歩合99.5%の低とう精米から91%の精白米まで,炊飯まで含めた加工係数Pfは精米歩合99.5%の低とう精米から97%の3分づき米まで,精米歩合に比例して低下した.この実験結果は,放射性セシウムを含む玄米やとう精米の摂取による内部被ばく量の推定に役立ち,食品からの放射性セシウムの摂取に関するリスク評価やリスク管理に利用できるものである.
著者
稲垣 宏之 杉谷 政則 瀬戸口 裕子 伊藤 良一 織谷 幸太 西村 栄作 佐藤 進 加藤 正俊 齋 政彦 山本(前田) 万里 亀井 優徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.403-411, 2009-07-15 (Released:2009-09-01)
参考文献数
17
被引用文献数
6 6

エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート(EGCG3″Me)を始めとするメチル化カテキンを含有する茶品種「べにふうき」と,国内流通量の大半を占め,かつメチル化カテキンを含まない茶品種「やぶきた」の抗肥満効果を比較検討した.12週齢のC57BL/6J雄性マウス(n=10/群)に低脂肪飼料,高脂肪飼料,高脂肪飼料に2%「べにふうき」茶葉または2%「やぶきた」茶葉を添加した飼料を与えて5週間飼育した.2%「べにふうき」茶葉高脂肪飼料を摂取した群は,高脂肪対照群に対し,体重,皮下および内臓脂肪組織重量,血中レプチン濃度が有意に低減した.一方,2%「やぶきた」茶葉高脂肪飼料を摂取した群では有意な抗肥満効果は皮下脂肪組織重量のみで観察され,相対的に抗肥満効果が弱かった.また工業的利用性の高い「べにふうき」熱水抽出エキスを1日1回体重1kg当りのカテキン総量として100mg,50mgおよび25mgを強制経口投与した結果,用量依存的な抗肥満効果が認められた.以上の結果より,「べにふうき」は「やぶきた」よりも強い抗肥満効果を示し,その効果は用量依存的であることが明らかにされた.また,「べにふうき」の強い抗肥満効果は,EGCGよりも吸収性および血中滞留性に優れたEGCG3″Meを始めとするメチル化カテキンが特異的に含まれているためと考えられた.
著者
鷲家 勇紀 西川 友章 藤野 槌美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.433-438, 2014-09-15 (Released:2014-10-31)
参考文献数
10
被引用文献数
4

市販のコーヒー焙煎豆は,通常エージング処理が施されている.エージング処理によってコーヒー抽出液中の多くの揮発性成分が減少する.エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆は,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を誘導する.関与する成分は2,5-dimethylpyrazine,2,6-dimethylpyrazineであった.血中IgGの産生増強効果には2-methylpyrazineも関与した.これらの成分は何れもエージング処理時間の経過と共に減少する成分であった.以上の結果から,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆抽出液は,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を有することが分かった.エージング処理は焙煎豆中の有効成分の減少を招き,血中のIgG,およびIgAの産生増強効果を弱めることが分かった.
著者
吉村 美香 長野 宏子 辻 福美 Anh To Kim 大森 正司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.603-610, 1998-10-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

(1) 酸肉にはいずれの試料においても,LBSもしくはTATACのどちらか,または両方の培地に生育が見られた.また,ポテトデキストロース寒天培地においては全ての試料で生育が普遍的に見られた.層そして,DHL寒天培地において多くの試料で生育が見られた.(2) 一般成分を分析した結果,豚肉のpHは5.61で,酸肉(ネムチュア)のpHは3.81と低かった.また,乳酸の生成が顕著に見られた.(3) 遊離アミノ酸は,酸肉(ネムチュア)の方が多く含まれ,特に旨味成分のグルタミン酸が多く,次いでアラーン,ロイシンなどが多く含まれていた.これは,豚肉のタンパク質の自己消化による変化とほぼ一致した.(4) SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びペプチドパターンの分析の結果,発酵によって肉タンパク質が分解し,低分子タンパク質やペプチドの生成が認められた.
著者
松井 崇晃 石崎 和彦 中村 澄子 大坪 研一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.204-211, 2013-05-15 (Released:2013-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
5

イネにおいてLgc1遺伝子を用いて胚乳貯蔵タンパク質中のグルテリンを低下させた低グルテリン品種が開発されている.本報告ではLgc1座に関する準同質遺伝子系統対を2組用いてLgc1遺伝子による米の低グルテリン化が米粉の特性や米飯の食味に与える影響を検討した.今回用いた準同質遺伝子系統対では低グルテリン系統で味度値の低下が見られ,米飯の食味低下が示唆された.また,低グルテリン系統のアミロース含有率は通常のタンパク質組成の系統を約1ポイント上回った.ラピッド·ビスコ·アナライザーを用いた糊化物理特性において低グルテリン型の系統では最終粘度が有意に上昇し,コンシステンシーが増加した.テンシプレッサーを用いた米飯の物性測定においては米飯表層の粘りが低グルテリン型の系統で有意に低下し,硬さと粘りのバランス度においても有意な低下が認められた.15°Cにおける白米粒の吸水においては低グルテリン化による有意な差は認められなかった.一般に低グルテリン品種は通常のタンパク質組成の品種に比べて米飯の食味が不十分であることがこれまでにも指摘されている.今回の測定において低グルテリン系統と通常のタンパク質組成を持つ系統との間に見られた差がタンパク質組成の変化だけによるものとは限定できなかったが,低グルテリン品種の米飯の食味や加工特性の違いの一因と考えられた.
著者
久永 絢美 阪中 達幸 吉岡 照高 杉浦 実
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.83-89, 2019-03-15 (Released:2019-03-19)
参考文献数
15
被引用文献数
2

ウンシュウミカンは日本国内で最も消費量の多い国産果樹の一つであり,近年,ウンシュウミカンに多く含まれる β-クリプトキサンチンが骨の健康維持に有効であることが示されている.本研究において,可視・近赤外分光法による非破壊光センサーと最近新たに開発された β-クリプトキサンチンの簡易測定法を組み合わせることで,果実中の β-クリプトキサンチン含有量を非破壊で推定できるか検証を行った.2016年度に入手した340個のウンシュウミカン果実について,非破壊光センサーによる吸収スペクトルと簡易測定器による含有量データとの関連についてPLS回帰分析を行った.これらの回帰分析から得られた検量線の妥当性を評価したところ,決定係数(R2)は0.897,RMSEP値は0.169,RPD値は3.01であった.これらの結果から,β-クリプトキサンチン簡易測定器と非破壊光センサーを組み合わせることで,ウンシュウミカン果実中のβ-クリプトキサンチン含有量を精度高く非破壊で推定できることが判明した.
著者
稲荷 妙子 竹内 徳男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.319-324, 1997-04-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
7 12

イチゴ(宝交早生)を熟度別(未熟果,緑白果,成熟果)に分別採取して,ペクチン質とイチゴ果実の成熟との関係を把握しようと試みた.ペクチン質は,イチゴ可食部の熱エタノール不溶性成分(AIS)を収得し,さらに溶媒によりWP,PP,HP,KPに抽出分画し,次いで,それらを構成するガラクチュロン酸,全糖,中性糖,メトキシル基,無機成分含量及び分子量分布形態を比較解析した.(1) イチゴ100g当たりのAISの収量は,未熟4.06g,緑白1.87g,成熟1.45gと成熟に伴い減少した.同様にペクチンの主な構成糖であるガラクチュロン酸の総量は未熟736mgに対し,緑白359mg,成熟279mgと明らかに減少した.(2) 未熟段階におけるイチゴペクチンはヘミセルロース等と結合した水不溶性ペクチンHPが主体をなすが,完熟時では水溶性ペクチンWPとほぼ同濃度まで減少した.一方,WPは未熟16.7%,緑白28.1%,成熟34.8%と成熟するに伴って増大した.このことから,イチゴの成熟に伴う多汁化と軟化にはHPの減少とWPの増加が寄与すると考察した.(3) ガラクチュロン酸と中性糖量の比較で,いずれの成熟段階でもガラクチュロン酸量が多いペクチンはWP,PP,HPであり,逆にKPは中性糖が高かった.また,前3者はメトキシル含量が7%以上で高メトキシルペクチンと考えられた.(4) 未熟時のイチゴペクチンの分子量は,他の果実のペクチンより大きく,WP,PPは約100万,HPは30万,KPは1万と推定され,HP,WP,PPは成熟に伴って低分子化の傾向があり,特にHPは緑白時では約15万,成熟時では10万と推定され,イチゴの成熟に従って明らかに低くなった.(5) イチゴ果実,AIS,各抽出画分ペクチン中には無機成分(K,Na,Mg,Ca,Fe)が測定されたが,いずれも成熟するにつれてやや減少の傾向にあった.特に一般に金属イオンと結合して水に不溶といわれるPPにはMg,Caの含有量が高かった.
著者
広瀬 直人 小野 裕嗣 前田 剛希 和田 浩二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.27-31, 2019
被引用文献数
2

<p>試験用黒糖製造において,仕上加熱工程と冷却撹拌工程を連続して実施できる,卓上型の黒糖試験製造装置を開発した.この装置は,PC制御されたマイクロヒーターと水道水利用の冷却管を備えた加熱冷却容器,および撹拌トルクを検出できる撹拌装置から構成される.この試験製造装置を用いて黒糖を試作する過程で,冷却撹拌工程の終了時に品温が上昇する現象を見出した.この品温上昇は,温度上昇幅と糖蜜の推定比熱からショ糖の結晶熱が要因と推測された.</p>
著者
中川 禎人 奥田 弘枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.727-730, 1996-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

水,乳酸,NaClおよびSuc溶液中で加熱した昆布の軟化機構を明らかにするため,これらのモデル調味液中で浸漬加熱した昆布の細胞壁構成物質の組織形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した.TEM観察の結果,水透析のみ行った試料は,組織の表面にわずかに浮き出た不規則に分布する微小繊維がアモルファスな細胞壁基質の中に半ば埋まった状態,水区は微小繊維が浮き出た状態,乳酸区は,水区と同様アモルファスな細胞壁基質が除去されていたが,水区と比べて繊維の丸みが取れ偏平で押しつぶしたような様相,NaCl区は,アモルファスな細胞壁基質が除去されており,繊維は水区と同様丸みがあって長く伸びた状態,Suc区は,微小繊維間を埋めるアモルファスな細胞壁基質がわずかに観察され,水区に近い形態であった.
著者
植野 壽夫 増田 秀樹 武藤 亜矢 横越 英彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.435-441, 2012-09-15 (Released:2012-10-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

本研究では,ストレス性疾患として代表的なうつ病と胃潰瘍に対するラベンダー熱水抽出物(Lavender aqueous extract, LAE)の効果を,それぞれの疾患モデルマウスを用いて検討した.抗うつ試験では,うつ病の動物モデルとして汎用さている強制水泳試験(FST)を用いてLAEの長期投与による効果を検証した.1日当たり500-2500mg/kgのLAEを15日間マウスへ反復経口投与することにより,自発運動量に影響することなくFSTにおける無動時間が有意に短縮した.さらに,抗うつ薬であるイミプラミン30mg/kgを15日間反復投与した場合も同様の挙動を示した.これらの結果から,LAEはマウスへの長期投与において抗うつ様作用を有することが示唆された.抗ストレス潰瘍試験では,マウスに強制水泳を負荷することにより発生させた実験的ストレス潰瘍に対して,予め500-2000mg/kgのLAEを単回経口投与することにより,マウスの潰瘍面積が対照群と比べて有意に減少した.以上の結果から,LAEの摂取がストレスに起因するうつ病や胃潰瘍の予防・軽減に有効である可能性が示唆された.