著者
阿部 純大
出版者
Entomological Society of Japan
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.179-183, 2023-09-25 (Released:2023-10-17)
参考文献数
11

This study reports on the morphological variations in Nothoserphus afissae (Watanabe, 1954), which are important for species identification. Neglecting these characteristics could lead to misidentification and an underestimation of species diversity among similar species. In this paper, I provide a redescription and updated diagnosis of N. afissae.
著者
渋谷 園実 桐谷 圭治 福田 健二
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-31, 2017-01-05 (Released:2019-01-05)
参考文献数
60

クロツヤヒラタゴミムシは,日本全国に分布し,幅広い標高に生息する森林性の種で,生息地の変化に鋭敏な反応を示すことから,生物指標種として期待されている.しかし,その生態については不明な点が多い.そこで,本研究では,本種の生活史を明らかにするため,千葉県柏市の里山で2012年4月から2013年4月の期間,32個のピットフォールトラップで44回の定期調査をした.定期調査に加え合計196個のトラップを使用して6月と7月,9月,10月に拡大調査を実施した.さらに,本種の飛翔の有無を確認するために,2013年に年間を通じマレーズトラップ(3基),衝突板トラップ(10基)を設置した.定期調査で捕獲した1,272個体のうち142個体を解剖し,生殖器官の成熟度と飛翔筋の経時的変化を調べた.また,体長と後翅長については,拡大調査で捕獲した901個体を測定した.本種は,5月に新成虫が出現し,7月までの間は未成熟で活動性は低い.その後10月までは活動を停止することから,夏眠すると考えられる.秋に短期間で斉一的に性成熟し,活動性が高まり多数捕獲される秋繁殖型の種である.活動最盛期の蔵卵数は平均109個で,卵サイズはほぼ斉一の小卵多産型である.後翅は長翅型であるが,体長および前翅長に対する後翅の相対比率が小さく,飛翔筋は認められなかった.さらに,マレーズトラップと衝突板トラップで捕獲されなかったことより,長翅型だが飛翔しないと考えられる.本研究は,フィールド調査と解剖を組み合わせたことにより,生殖器官の成熟度や飛翔筋の発達状態などの経時的変化を把握し,本種の生活史の解明に寄与した.これらの知見は,今後,近縁種との比較研究の基礎的資料となるばかりでなく,本研究で採用した方法は,オサムシ科甲虫の生活史に関する知見を蓄積する際に活用できる.
著者
吉田 匠 竹中 將起 東城 幸治
出版者
Entomological Society of Japan
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.165-174, 2023-09-25 (Released:2023-10-17)
参考文献数
26

Elmomorphus beetles were recorded for the first time on Okinoerabu-jima Island in the Ryukyu Archipelago. Morphological examinations of the specimens clearly identified them as being Elmomorphus amamiensis. To date, based on the results of morphological classification and molecular phylogenetic analyses, two Japanese Elmomorphus beetles have been recorded; namely, Elmomorphus brevicornis and E. amamiensis. However, a third lineage was detected among them based on our genetic analyses. This third lineage was identified as being within the E. amamiensis populations of the Okinawa-jima and Kume-jima Islands and also in the Okinoerabu-jima Island populations and was newly discovered in this study. According to the analyses of all their nuclear and mitochondrial DNA, this third lineage did not constitute a monophyletic group with E. amamiensis of Amami-oshima Island (which is the type locality of this species), but rather formed a monophyletic group with E. brevicornis. These results suggested the following two possibilities: 1) the existence of a third distinct species, different from the other two species, 2) all three lineages together constitute one species as a whole and each lineage corresponds to a regional sub-clade within that species. In addition, the morphological characteristics that have been used to distinguish species/subspecies may themselves be problematic. Although it is not possible to come to a definitive conclusion as to which hypothesis is correct in this study, it has become clear that Elmomorphus beetles are an extremely significant species in discussions about the origin and phylogeographic history of the Ryukyu Archipelago.
著者
夏秋 優
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.2-11, 2020-03-25 (Released:2021-10-21)
参考文献数
12

昆虫による皮膚炎は,昆虫由来の毒成分や唾液腺成分に対する刺激性炎症反応,あるいはアレルギー性炎症反応によって生じる.本稿では有害昆虫の中で,刺咬性昆虫であるハチ類やアリ類,サシガメ類,吸血性昆虫であるカ類,ブユ類,ヌカカ類,アブ類,ノミ類,トコジラミ,そして接触性昆虫である毛虫類,甲虫類について概説した.そしてこれら有害昆虫による皮膚炎の治療や予防対策についても述べた.
著者
関根 一希 渡辺 直 東城 幸治
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.119-131, 2020-12-25 (Released:2021-10-21)
参考文献数
65

Ephoron of polymitarcyid mayflies in East Asia includes three species, E. shigae, E. limnobium, and E. eophilum, but the former two species are not separated on their molecular phylogenetic trees. All-female automictic parthenogenetic reproduction is known only in Japanese E. shigae in which bisexual and unisexual populations are distributed across Japan without any clear biogeographic boundaries. Population genetic structure studies show the parthenogenetic origin occurred only once in western Japan and then expanded all over Japan. In some rivers, both reproductive types coexist, and parthenogenetic females occupied the population within 20 years after unisexual introduction. Ephoron shigae has univoltine life cycles, and adults emerge synchronously in early autumn in bisexual or unisexual populations. It is a future problem for this ecologically interesting mayfly to inhabit the same rivers with both reproductive types.
著者
中村 剛之
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.121-130, 2016-07-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
7

昆虫の形態をスケッチする方法を鉛筆による下書きから,インクを使ったペン入れ,仕上げまで手順を追って解説した.スケッチは観察した内容を人の頭の中で咀嚼し,その内容を紙の上に描き写したもので,写真のような単なる色や明るさの転写とは大きく異なる.見えるものを見えた通りに描くのではなく,描き方を工夫することで写真ではとらえにくい構造を人に伝わりやすい形で描くことができる.これがスケッチの利点であり,面倒を排して図を描く意義である.
著者
武藤 将道 吉井 重幸 塘 忠顕
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.18-24, 2022-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
16

We report the distribution, infestation, and feeding plants of the alien longhorn beetle Apriona swainsoni swainsoni (Hope, 1840), recently discovered from Fukushima Prefecture, Japan, which is a serious pest of Styphnolobium japonicum in China. We found a specimen collected at Sukagawa City in 2014, suggesting that this species was introduced in Japan by 2014 at the latest. In some areas of Sukagawa and the adjacent Koriyama Cities, where A. swainsoni swainsoni has been found, S. japonicum and Maackia amurensis, which are planted as a roadside tree, especially the latter, have been infested by this alien species. Additionally, in captivity, we found that A. swainsoni swainsoni can eat two native Fabaceae species, Lespedeza bicolor and L. homoloba, which are widely distributed from hilly to montane areas in Japan. It is necessary to consider whether A. swainsoni swainsoni will be expand its distribution in Japan.
著者
永幡 嘉之 越山 洋三 梅津 和夫 後藤 三千代
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.104-112, 2013-04-05 (Released:2018-09-21)

電柱から回収されたカラスの巣から,ハナムグリ亜科の空の土繭2個と幼虫の死体1個体を発見した.この昆虫種および巣の持ち主の鳥種を同定するため,土繭の中に残っていた蛹殻,幼虫の死体,および巣材からDNA試料を抽出した.昆虫種については,ミトコンドリアDNAのCOI領域を分析対象とした.まずコウチュウ目用のユニバーサルプライマーセットを用いてPCRを行い,その後ダイレクトシーケンス法でPCR産物の塩基配列779bpを決定することで種同定した.鳥種については,ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域を分析対象とした.ハシブトガラス,ハシボソガラス,ミヤマガラスの各種に特異的なプライマーと全種に共通なプライマーを用いてPCRを行ったのち,そのPCR産物のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い,増幅されたバンドの鎖長でカラスの種類を判定した.その結果,土繭と幼虫の死体の計3個体は全てアカマダラハナムグリであり,巣の主はハシボソガラスであることが判明した.また,これらのアカマダラハナムグリ3個体で2つのハプロタイプが識別されたことから,少なくとも2個体のメス成虫がこの巣に産卵したことがわかった.アカマダラハナムグリは,これまで猛禽類など動物食性鳥類の比較的大型の巣内で幼虫が腐植土や雛の食べ残しを餌として発育することが知られていたが,雑食性で比較的小さい巣を作るハシボソガラスの巣も繁殖資源として利用していることが,今回はじめて明らかとなった.
著者
中山 裕人
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.67-74, 2007-12-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
14

従来,日本では北海道と本州から知られていたヒメシカシラミバエを北部九州の犬鳴山系で発見した.本種は九州から記録される唯一のシカシラミバエ類の種である.2004年から2006年にかけての犬鳴山系の調査で本種有翅成虫が多数採集されたが,犬鳴山系には約700頭のニホンジカが生息しており,ヒメシカシラミバエはニホンジカに寄生していると思われた.ヒメシカシラミバエ有翅成虫は犬鳴山系では5月から12月に現れたが,これは本州の既産地に比べると出現終了期が遅く,結果的に長い出現期間だった.本州ではヒメシカシラミバエに加えてクロシカシラミバエが同所的にニホンジカに寄生しているが,ヒメシカシラミバエ有翅成虫は春から秋に出現する一方,クロシカシラミバエ有翅成虫は晩秋から初冬に出現している.犬鳴山系でヒメシカシラミバエ有翅成虫が晩秋から初冬にかけても現れていたのは,犬鳴山系にはクロシカシラミバエが生息していないため,ヒメシカシラミバエとクロシカシラミバエの生態的競合がないからではないかと推察された.また,ヒメシカシラミバエ有翅成虫はしばしば捕虫網の外側に飛来したが,捕虫網の色が白でも青でも飛来傾向に差は認められなかった.加えて,ヒメシカシラミバエは,ヨモギの葉を入れたシャーレ中で120〜135時間(丸5日以上)生きた個体がいたことから,羽化後未吸血のまま5,6日生きる個体も存在しうることが示唆された.
著者
林 成多
出版者
Entomological Society of Japan
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.175-178, 2023-09-25 (Released:2023-10-17)
参考文献数
4

The carabid beetles, Lebidia octoguttata Morawitz were raised under laboratory conditions. The adults preyed on spittlebug nymphs and laid eggs in foamy masses of the nymphs. The hatched larvae preyed on the nymphs within foamy masses. They had three larval instars, and the egg-to-adult development took 28–29 d.
著者
野間 健吾 西村 知良
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.58-65, 2023-06-25 (Released:2023-06-28)
参考文献数
28

移入種であるカメムシ目カメムシ科キマダラカメムシの地理的分布やその拡大を理解するためには生活史を詳しく知ることが重要である.そこで2020年4月から2021年4月まで神奈川県藤沢市のサクラ類36個体とカツラ11個体に見られる個体数を月に2回の頻度で測定し季節消長を調べた.どちらの木でも1齢幼虫は6月に,2齢以上の幼虫は6月から9月に見られた.成虫は5月から10月に見られたが,その個体数には越冬世代の出現と思われる6月の小さなピークと第1世代の羽化と思われる9月の大きなピークが見られた.このことから調査地では成虫で越冬する年1化の生活史だと考えられた.また1齢幼虫と成虫の個体数のピークの間をふ化から羽化までの期間として成長期間を推定すると約90日だった.国外の個体群の生活史には,高緯度に見られる年1化性から低緯度の多化性まで存在することが知られている.年間世代数で見れば,国内の個体群は高緯度地域の国外個体群に由来する可能性がある.またこれまで寄主植物として知られていなかったカツラにおいて幼虫は成長可能であることが分かった.
著者
杉本 美華
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-29, 2009
参考文献数
34

日本には約50種のミノガ科が生息しており,幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノでの同定によって過去の生息範囲を推測することができる.若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を2論文に分けて発表する.第2報では,害虫として注目されている種やレッドデータにリストアップされている種を含めた大型種10属11種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,または円錐形で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えており,これらの特徴に基づいて,30種についてミノの検索表を付けた.
著者
杉本 美華
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-15, 2009
参考文献数
26

日本には約50種のミノガ科の種が生息しており,成長した幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノによる種の同定によって過去の生息範囲を推測することができる.一方,若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を,2論文に分けて発表する.第1報では原始的な小型ないし中型種の中で比較的普通な13属19種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,円錐形または管状で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えていた.
著者
吉澤 和徳
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.112-120, 2016-07-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
61

Current understanding of the phylogenetic placement and higher-level systematics of the order Psocodea (“Psocoptera”+Phghiraptera) was reviewed. Recent molecular phylogeny and phylogenomics placed Psocodea to the sister of the Holometabola, but those studies could not reject the monophyly of Paraneoptera (Psocodea +Condylognatha) statistically. Therefore, monophyly of Paraneoptera, as strongly suggested morphologically, remains a well-founded and highly likely hypothesis. Monophyly of the Psocodea and the placement of Phthiraptera within the “Psocopteran” suborder Troctomorpha are well established morphologically and molecularly. Monophyly of all“Psocopteran” (Trogiomorpha, Troctomorpha including Phrhiraptera, and Psocomorpha) and Phthirapteran (Amblycera, Rhynchophthirina, and Anoplura) suborders is also well supported morphologically and molecularly, but monophyly of the Phthirapteran suborder Ischnocera is controversial.
著者
杉本 美華
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-15, 2009-03-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
26

日本には約50種のミノガ科の種が生息しており,成長した幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノによる種の同定によって過去の生息範囲を推測することができる.一方,若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を,2論文に分けて発表する.第1報では原始的な小型ないし中型種の中で比較的普通な13属19種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,円錐形または管状で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えていた.